その道を究めたアーティストが、異なるジャンルとコラボレーションはそれほど珍しくはないが、ダンサー・西島数博はその数もクオリティも群を抜いている。和洋を問わず様々な表現者と創作を続けているなかで、日本舞踊の藤間直三、創作和太鼓の岩切響一と共に『幻奏演舞』と題した作品を作り出した。
西島「始まりは熊本の八千代座という有名な芝居小屋での企画でした。それを違う場所でもやりたいねと話していたことが、今回に繋がります。八千代座での企画時、この顔ぶれですから、和と洋でコラボレーションする舞台ということで『白鳥の湖』をやりました。八千代座の松羽目の前で白鳥が舞うんです」
藤間「最初に『白鳥の湖』をやると聞いて、えっ?という感じで(笑)。しかも自分が白鳥だと聞いてまた、えっ?でした。それまで想像もしたことがなかったですが、作品作りを進めると、これは面白いなと思い始めました。『白鳥の湖』の魅力を自分の身体でどう表現するのか、日本舞踊家としてどう飛び込むのか。やればやるほど可能性があると思いました」
岩切「正直言って、どう混ざればいいんだろうと考えました。でも太鼓といっても、担いで打つ太鼓のように、わりと動けるスタイルも存在するので、それを西島さんに上手く振りを付けてもらえればいいと思ったんです」
西島「今回の公演の第1部では、藤間さんに日本舞踊の女方で白鳥を演じてもらって、岩切さんには悪魔・ロットバルトの悪霊のような存在感を太鼓で表現してもらいます。音楽はチャイコフスキーの原曲ですから、僕とピアノだけが洋の側。だから和の世界の中に洋を少しずつはめ込んでいく感覚ですね」
藤間「日本舞踊でも洋の要素を入れた振り付けをすることもありますが、この作品はそれとはまた違う到達点です。だからこその面白さがあると思います。日本舞踊家や業界の人たちが見たことのないものが、この『白鳥の湖』にはあると思うし、逆も然りだと思うんです」
岩切「日本舞踊はともかく、バレエ音楽で太鼓は聴いたことがないので、西島さんに演出や振り付け、曲についてのアドバイスをいただきつつ創っていく感じですね。それでも正解は解りませんが、すごく可能性が広がったと思います」
2部では、3人それぞれが活躍するジャンルの表現が披露され、そのために招いたゲストも出演するという。西島・藤間・岩切による最先端のコラボ。観たことがない舞台の幕が開く。
(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)
西島数博さん
「笑えるハプニングあります! 子供頃のバレエの発表会の時、初めて王子役をやる為に、西洋の髪型のカツラを被って踊ることになり、凄い勢いでピルエット(回転)をしたら、カツラも一緒に回ってしまい、最後の決めポーズの時には、かなり変な髪型になっていました! 一生懸命踊ったのに笑われてしまいました……(笑)」
藤間直三さん
「振付がとんでしまったり、セリフが出て来なかったりは結構あります。やっとこさ絞り出したものを言ったら、それは他の演者の方のセリフだった時は冷や汗が出ました……。そういうことがあった時に自分で意識しているのは、気にしないことです。やってしまったと落ち込んでいるとそれは舞台に出てしまいますし、取り返そうと思って気負っていると、それもミスにつながります……。そもそも取り返せる訳はないですしね。それ以上の失敗をしないよう、いつも通りに舞台を終える。反省するのは終わったあと! 何かあった時の、その生ならではの瞬間を楽しめるくらいが演者としてはベストなのかもしれません!」
岩切響一さん
「野外の演奏で小編成オーケストラだったのですが、突風が吹いて譜面が飛んでいっちゃいまして。次の曲が譜面を見ながらの曲だったのでかなり焦りました(笑)。ただ私だけでなく皆さん飛んでいった事と、本当にすごい突風だったのでステージが一時中断になりまして、助かりました!リカバリーではなく、ラッキーでした(笑)」
プロフィール
西島数博(にしじま・かずひろ)
フランスの国際バレエコンクールで第1位を受賞後、国内外のバレエ公演にプリンシパルとして多数出演。ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』出演など、多彩に活躍。様々な空間で企画・演出・振付を手掛け、常に新たな可能性に挑戦し続けている。
藤間直三(ふじま・なおぞう)
故藤間秀三・藤間秀之助に師事。藤間流師範。藝○座、公益社団法人日本舞踊協会所属。藤間流の若手舞踊家による「黎明の会」、東京藝大出身の若手グループ「蒼天」でも活動。日本舞踊未来座 =才(SAI)=『銀河鉄道999』公演の星野鉄郎役で主演。
岩切響一(いわきり・きょういち)
小学校4年生から橘太鼓「響座」のメンバーとしての活動を開始。日本太鼓ジュニアコンクールで最優秀内閣総理大臣賞を2回獲得。伝統的な太鼓のリズムだけでなく、様々な洋楽のリズムを取り入れた作品を発表するなど、次世代を担う和太鼓奏者として注目され、新たな太鼓の可能性を追求し続けている。
公演情報
『幻奏演舞』
日:2026年6月20日(土)14:00/17:30開演
場:渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール
料:8,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.confetti-web.com/events/14398
問:幻奏演舞公演実行委員会
mail:gensouenbu@gmail.com