CRUSH KITCHEN ENTERTAINMENTがおくる『the Selected World』(TSW)シリーズの最新作『the Satisfied World』と『the Sacrificed World』は、身に覚えのない場所に集められた12人の男女による密室劇で、「Satisfied(満足)」と「Sacrificed(犠牲)」という対照的なテーマで繰り広げる”2作品同時上演”という形でお届けし、脚本には佐藤信也(疾駆猿)、演出には石毛元貴(MileStone)とシリーズ初演から携わっている2人が今回もタッグを組む。
『the Satisfied World』よりテン役の室たつき、『the Sacrificed World』よりワン役の其原有沙、両作品にて12人の前に現れるジャッジメント役の滝川達也の3人に話を伺った。
―――まず出演が決まった時の心境から教えていただけますか。
室「お話をいただいた時は、ご縁が広がったなという思いでした。知っている初めましての方が多くて、そういう方との役者同士のぶつかり合いが楽しみですし、趣味が『人間観察』というくらい、キャストの方を観察するのが好きなので、若い人のエネルギーを学びながらも、上手く立ち回りたいなと思っています」
滝川「絶対間違えないようにしようと思いました。以前同じ役を演じたことがありまして、その時のテーマが『選択』だったんですけど、今度のテーマが『犠牲』と『欲望』の2つに増えて、しかも同じ日に同じ役で別の作品をやるので間違えちゃったら土下座ものですが、脚本の信也さんと演出の石毛さんに昔からお世話になっているのでしっかり仕事で恩返ししたいなと思いました」
其原「配役がまだ決まってない段階でキャスト表を見た時に、知っている方がほぼいないということと、舞台上にほぼ出続けている作品は初めてになるので、私のセリフじゃないところもみんなで共有して、しっかりやらなきゃいけないと思いました」
―――お話を伺っている時点ではまだ稽古前の段階ですが、台本は既に読まれたそうで、台本を読んでの感想や演じる役に対しての印象を聞いてみたいなと思います。
其原「台本を読み進めていくうちに、役的に共通点を探せばいろいろとありました。ワンはある罪を犯してしまうんですけど、やってしまった罪をワンはしっかりと反省していて、そういう意味では、真っ直ぐ演じられたらいいなと思っています」
室「実は当初違う役を演じる予定でしたが、制作陣がいろいろと考えてくださった結果、テンの役を与えてくださったので、しっかり全うしようと思っています。あと台本を読んでの感想だと、集中が切れたら終わりだなと思いました。もちろん大丈夫だと思いますけど、誰か1人でも切れてしまうと、周りも引っ張られてしまう状況が一番嫌だし、観劇される方も絶対冷めるので、全員がエンディングに向けて上がっていけるように、セリフを入れる事よりも、しっかりと一致団結できることが第1の課題なんじゃないかなと僕は思いますね」
滝川「ジャッジメントは、他の12人とは違って、物語をかき回したり動かすポジションで、12人の人たちをどう動かしていけるのかという部分に注目して欲しいですし、観に来てくれる人に語りかけるシーンがあるんですけど、密室劇のはずが僕が喋る時はその壁を超えているところがあるので、お客様が”観測者”として舞台を観てもらってもいいですし、自分がそこにいたらどうなんだろうと考察するという楽しみ方もあるんじゃないかなと思います」
―――先程、室さんと其原さんが『初めましての方が多い』と話されていましたが、以前共演したことがある方を教えていただけますか。
其原「小野瀬みらいさんと石渡真修さんとは一度だけ共演したことがあります。ただ絡みがあったシーンはお2人ともなくて、稽古場でも積極的にお話することが出来ませんでした。初めましての方が多い中で数少ない共演者でもあるので、顔合わせの時は『お久しぶりー!』みたいな感じで接しようと思っています(苦笑)」
滝川「佑太さんとはこれまで7、8回ほど共演していて、『Golden Time』という月1回のラジオ番組で一緒にパーソナリティーを務めています。あと真修くんとは2年前の作品で彼が主演で僕がラスボスとして戦っていました。あとは渡辺さんと海月さんとは2年間関わっていた現場で一緒でしたし、中島明子さんも一度共演しています。なので共演経験者は多いですけど、お芝居でガッツリ絡んだのは真修くんぐらいでして。ただ逆に”今まで見られなかった部分”が今回観られるのは嬉しいですし、それを目当てに来てくださる方には、新しい姿を楽しんでもらえたらいいんじゃないかなと思います」
室「『the Satisfied World』だと服部くん(服部武雄)のみですね。今回は比較的年下の共演者が多くて、先程『若い人のエネルギーを学びたい』と話しましたが、今回に限らず毎回そう思っていて、いろいろな現場で実年齢を言うと『もうちょっと若く見えない?』と言われることが多いのも、若い人とお芝居をすることによって、自分を若々しくいさせてくれているんじゃないかって。年下の共演者には、お芝居をちゃんとやらないとという精神では来ないで欲しいですし、上手く見せなくていいから、とりあえず声だけ張って、熱量で伝えてもらればというのを伝えたいですね」
―――先日、ビジュアル撮影があったそうですね。衣装にまつわるお話もお聞きしたいなと思います。
滝川「ディザービジュアルの撮影で、本番の衣装はまた違ったものになると思いますが、撮影自体は楽しかったです」
其原「私の衣装はシンプルなアイボリーのワンピースで、鳥の巣みたいな装飾もありましたし、チーム毎に作品テーマに合った花を持つ写真も撮りました。『Sacrificed』チームはブルースターという花で、花言葉は”信じあう心”という意味だそうです」
室「『Satisfied』チームは、”欲望”という花言葉のグロキシニアでした。衣装ですが、レースっぽい上下のセットアップで、きっと男性はああいうタイプの服は着ないと思うんですけど、個人的にはすごく好きで、新鮮でしたしサイズ的にもちょうど良くて、買い取ってもいいんじゃないかと思うくらいの衣装でした。さすがにこれを着て街でファンの方と会ったら、ビックリするでしょうから、例えば僕のファンイベントでこれを着るならアリですね」
―――稽古前という段階で本作の見どころや注目ポイントを挙げていただけますか。
室「いろいろな人間が出ているので、きっと観劇されている人も『この人、私と似ている』というのが、絶対出てくると思うんです。なので、観ている方と僕たちが演じているナンバーズたちが重なり合った時に、モヤモヤするのか、スッキリするのか。その答え自体はお客さんに任せたいなという気持ちですけど、僕らは演出の石毛さんと一から作っていくもので、稽古が進むにつれて、僕らが提示したいものもあると思いますが、やっぱり脚本・演出家さんが伝えたいものを全て伝えるのが僕らの仕事であって、石毛さんの伝えたいことを僕らがお客さんに伝えつつも、僕らもその空間を楽しめているかという部分が見どころじゃないですかね」
其原「私自身の役の部分だけでなく、観る方に届けているメッセージもすごく共感できるものが多いです。台本を読みながら『誰でも”加害者”になり得る』『実は自分も思いがけないところで人を傷つけてしまっているところがあるのかもしれない』と思ってしまったので、きっと観てくださる方もそう思うのではないでしょうか。それとこのお話は喧嘩っぽいシーンが多くて、その中でワンは『やめたほうがいいですよ』となだめることが多いので、舞台上で起きていることを誰よりもしっかり周りを見ながらお芝居をしたいなと思っていて、劇中12人がずっと舞台上にいるからこそ、稽古期間中は心が繋がっている絆のようなものも、みんなでしっかり見せられたらいいな思います」
滝川「演出と脚本のお二方とお話しをさせていただいて感じたのは『Sacrificed』は”犠牲”がテーマで、何かを得るためには何かを犠牲にしなくちゃならない。人間関係に置き換えると、幸せを得るため人を傷つけたり、傷つけられたり。知らぬ間に誰かの犠牲の上で自分の幸せが成り立っていると思いますし、その”犠牲”と”相手を受け入れる心”という部分がすごく大事になってくると思っています。このお話は最初お互い何もない状態から始まるので、きっと観ている方々はモヤにかかる感覚にはなると思うんです。それが各々の記憶が戻って、そのモヤが晴れるような感覚を一緒に観ていてくれたらいいのかなとは思っています。
『Satisfied』は”欲望”がテーマで、人間誰しも欲望は少なからずあると思うんですけど、記憶を断片的に失った12人にとって、名前や記憶は存在のありどころ。その記憶を取り戻したいということで欲が生まれ、動いていく人間たちに注目して欲しいですし、自分の人生を見返す際に『こうあるべきだ』『今、自分はこういう立場だから』という”価値基準”が肉付けされて今の自分がいるわけで、その肉付けがなくなって初めて対等になり、本来のありのままで話すところを楽しんで欲しいです。あと両作品にも言えることですが、『この人はこういう人なのかも』とかいろいろ推測して、徐々にタネ明かしを楽しむというのもアリかななんて思っています」
―――特にこんな人に観て欲しいというのはありますか。
滝川「全人類じゃないですかね。台本を読んだ時にすごい刺さるというか、自分も身に覚えがある経験をしているなと思ったので、きっとお客さんもセリフのやり取りにグサグサ来ると思うんですよね。おそらく観た方はこれを機に価値基準というか考え方が変わるんじゃないかなと台本を読んで感じました。生きていく中で普段の仕事や環境は違えど、皆さんの生活の中で人と関わりはあると思うので、見つめ直すことによってより良い生き方に感じやすくなるんじゃないのかなとすごく感じました」
其原「私も滝川さんとほぼ同じですが、小学生以下はまだちょっと早いかなと思うので、道徳の授業として中学生以上には観て欲しいというのはありますね。台本を読んだ時に、中学時代に自分自身の夢や将来なりたい職業を決める時に、『こういうこともあり得る』『人を傷つける可能性もあるよ』というような教材として欲しかったなと思いました。今ではSNSで誰でも発信できる時代になって、年齢問わずみんなが被害者にも加害者にもなる可能性がありますので、私たちのファンの方だけではなく、たくさんの方に観ていただきたいです」
室「僕も年齢問わずという気持ちでして、僕は子供さんも観てもらっていいと思うんです。子供たちにしたら難しいかもしれないけど、その子なりに解釈はできるような気はしていて。この時代だからこそ、僕らの同年代はもちろん、若い世代や上の世代の方と全世代に観に来て欲しい思います。あと、会社に勤めている方には、職場の上司と部下と一緒に観に来たら面白いんじゃないかなって。普段舞台を観劇しない方にも引き込める作品なので、『ちょっと芝居興味ないでしょうけど、ちょっと一回観ませんか?』と声をかけてみて、観劇後はそのまま飲みに行って、舞台の話で盛り上がったら、こちらとしては万々歳なので」
―――室さんは本作の演出を務める石毛元貴さんとは初めてだそうですね。せっかくなので、多くの演出作品に出演されている滝川さんと舞台現場でご一緒になった経験がある其原さんに石毛さんがどんな方か教えてあげていただけますか。
滝川「ちなみに室さんは、ビジュアル撮影の時に石毛さんとお会いされましたか?」
室「はい、お会いしました」
滝川「その時はどんな印象でしたか?」
室「いや~、すぐどこかに行く印象でした」
其原「それわかります!!」
室「僕が挨拶してすぐ『○○に行かなきゃ』みたいに出かけられたので、僕とあまり喋りたくなかったのかなって」
(一同笑)
滝川「石毛さんは優しくて、見ていないようで見ているというか、視野はすごく広い人だと思います。どうしても立場上、演者と演出家との切り分けみたいなものは出てくると思うんですけど、あくまで対等としてみんなで作っていけば、あの人は喜ぶと思います」
其原「石毛さんとは演出補の現場でご一緒した経験があって、演出していただくのは今回が初めてですけど、滝川さんと同じ印象です。みんなから好かれてるイメージで、私がどう表現したらいいかわからないことがあっても、すごくいつも優しく教えてくれて、そのままどこかへ行ってしまいます」
(一同笑)
其原「どこか行ってしまっても気になさらないでください」
室「ご挨拶した時、優しい感じはしていたので、お二人の話を聞いて安心しました」
―――ありがとうございます。では最後に、公演を楽しみにされている方に向けてメッセージを其原さんからお願いします。
其原「世代を問わず、いろいろな方に刺さる物語だと思います。稽古が始まるまでにいろいろな準備をしつつ、キャストの皆さんとたくさんフィーリングをして、楽しみながら舞台に挑むことができたらいいなと思います」
滝川「ここに集まっている3人もいろいろなキャリアがあるように、登場人物達が生きる上で肉付けされてきたキャリアを全部取っ払った状態で、話し合いを進め、答えを出す作品です。演者がやっている様を観て観測をするのか、当事者として一緒に考えるのか、それぞれの楽しみ方は僕らが強制するものではありませんが、作品を楽しんでもらって、劇場から出た後に『明日からも頑張ろう』といったような生き方の糧になってくれたらいいなと思っております。本当にたくさんの方やいろいろなお仕事をしている方に観てもらいたいなと思うので、ぜひ劇場でお待ちしております」
室「この作品に垣根はないと思っています。リアルな自分の生活と舞台上で繰り広げられるリアリティを感じていただけたらなと思いますし、僕らは全力の熱量を持って来ていただいた方を後悔させません。普段全然連絡取らない方にも誘って、観ていただいた方に、喜怒哀楽だけでなく、それ以外の何かしらの感情も持って帰っていただけるように精一杯務めさせていただきます」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)
プロフィール
室たつき(むろ・たつき)
1987年12月28日生まれ、京都府出身。主な出演作に、『サラリーマンナイトフィーバー』『イケメン戦国 THE STAGE』、『TARKIE~伝説の女たち~』、オールディーズ・ミュージカル『リトル・ダーリン』など。
滝川達也(たきがわ・たつや)
1992年11月9日生まれ、三重県出身。主な出演作に、舞台『淡海乃海』シリーズ、『ティアムーン帝国物語 THE STAGE Ⅱ』、『いつかのもの語り。』、名古屋おもてなし武将隊『絆~天華の城~』など。
其原有沙(そのはら・ありさ)
2001年8月24日生まれ、東京都出身。主な出演作に、舞台『鬼滅の刃』、『ワールドトリガー the Stage』、『アサルトリリィ・新章』、『Collar×Malice -deep cover-』など
公演情報
TSW2026 新作公演
『the Satisfied World』/ 『the Sacrificed World』
日:2026年5月28日(木)~6月7日(日)
場:萬劇場
料:S席[特典付]9,500円
A席[特典付]8,300円
[特典なし]6,500円
(全席指定・税込)
HP:https://crushkitchene.wixsite.com/home
問:CRUSH KITCHEN ENTERTAINMENT
mail:crush.kitchen.e@gmail.com