
オペラは“上演時間が長い”というイメージはないだろうか。ところが比較的上演時間が短いオペラ作もあるという。
日本でオペラの素晴らしさを伝えている藤原歌劇団が来年上演する『妖精ヴィッリ』と『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、上演時間はそれぞれ1時間ほど。配信ドラマと同じくらいなので、飽きることなく楽しめそうだ。さらに楽しむための見どころ・聴きどころを『妖精ヴィッリ』に
出演する岡昭宏と、『カヴァレリア・ルスティカーナ』に出演する小林厚子に聞いた。
岡「数々のオペラで有名なプッチーニ作の『妖精ヴィッリ』ですが、実はこの作品は彼の1作目。元々はコンクールのために書かれたのですが、新人が書いたとは思えないほどのクオリティを持っています。特筆すべきは間奏曲ですね。この曲は同時に上演する『カヴァレリア・ルスティカーナ』の有名な間奏曲、マスカーニが作曲したあの曲のヒントになったと言われています。ただ上演機会は少なく、僕も挑むのは今回が初めてです」
小林「『カヴァレリア・ルスティカーナ』といえば、その間奏曲ですね。皆さまどこかで耳にしたことがあると思います。全編に渡って美しい旋律が溢れています。作曲したのはプッチーニの友人であり、ライバルでもあったマスカーニ。タイトルを訳すと“田舎の騎士道”です。シチリアを舞台に、男女の恋愛沙汰が描かれています。情熱的な音楽に乗せてそれぞれの役の心の内をお届けできたらと思います。メゾソプラノ歌手が演じることも多い役なのですが、ソプラノの私のサントゥッツァ像を見つけることも今から楽しみです」
岡「上演機会が少ない作品ですから、聴けるチャンスを逃さないでほしいですね。そしてマイクを通さない人の声を堪能してほしいです。終わってみて“凄い声だったな”という印象でも構いません。生音の魅力を肌で感じてほしいです」
小林「登場人物が1人で心情を吐露する場面を“ アリア”と言いますが、美しいアリアの他、デュエット、合唱が入った大きなアンサンブル、全てが魅力的です。どこがお気に召したか、私が終演後お客さまに伺いたい。そんな作品だと思っています」
来年から改修に入る東京文化会館で、藤原歌劇団としては改修前最後となるこの公演。二度と戻らない素晴らしい響きを全身で感じるために出かけてみたい。
(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

プロフィール

岡 昭宏(おか・あきひろ)
香川県出身。国立音楽大学声楽科から東京藝術大学大学院声楽専攻に進み、修士課程を修了。新国立劇場オペラ研修所第10期生修了。平成22年度、文化庁新進芸術家海外研修制度研修生としてイタリア・ジェノヴァに留学して研鑚を積む。

小林厚子(こばやし・あつこ)
長野県出身。東京藝術大学卒業、同大学大学院修了。藤原歌劇団『蝶々夫人』でタイトルロールデビューし、数々のオペラで主演を務め、イタリアにて『蝶々夫人』でデビュー。新国立劇場では『トスカ』で急遽代役を務めた後、『ワルキューレ』、『ドン カルロ』に登場し、2025年は『蝶々夫人』で成功を収める。NHK「ニューイヤーコンサート」、「クラシック倶楽部」などにも出演。
公演情報
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藤原歌劇団公演『妖精ヴィッリ & カヴァレリア・ルスティカーナ』
日:2026年1月31日(土)・2月1日(日)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席20,000円 A席17,000円
B席14,000円 C席11,000円
D席7,000円 E席3,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.jof.or.jp
問:日本オペラ振興会チケットセンター
tel.044-819-5550
