孤島「死刑島」に集められた死刑囚8人に隠された秘密とは? 謎解きの後に訪れる驚きのエンディング

孤島「死刑島」に集められた死刑囚8人に隠された秘密とは? 謎解きの後に訪れる驚きのエンディング

 「死刑島」と呼ばれる孤島に集められた男女8人。彼らは、それぞれ異なる罪を犯した確定死刑囚だった。お互いに好きな漫画のキャラクター名を名乗り、パズルゲームを解きながら罪状を告白していく。果たして脱出は可能なのか。ラストに全ての謎が明らかになる。
 原作者は『ザ・シェフ』や『女医レイカ』等の漫画原作も手がける剣名舞。剣名氏の父親が実際に死刑を執行した刑務官であったことから着想された作品だ。RPGやミステリーのエンタメ性を盛り込みながら、現行の死刑制度や安楽死と言った答えのない問題を考えさせられる。劇団虹色くれよんがお届けする死刑島は3度目となる再演にあたり、主役のキリコ役(ダブルキャスト)に金光卓人と稲月祥の2人が、フジコ役に景也流水と山本ゆうの2人が抜擢された。
 インタビューは前半がキリコ役の2人、後半がフジコ役の2人と2回に分けて行った。


―――キリコ役に決まった時の感想を教えてください。

金光卓人(以下、金光)「最初に『死刑島 2023』の台本をいただいたんですが、本当に読めば読むほど、読む手が止まらなくて……そのくらい引き込まれたというか、その中で主演のキリコをやらせていただく。最後の最後にすごい見せ場があるんですが、本当に大役をいただいたと思っています。
 私事になるんですが、数年前に亡くなった祖母が晩年まで刑務所で教誨師(きょうかいし)をボランティアで十数年やっていまして、オファーをいただいた時は役職こそ違いますが、不思議なご縁を感じています。このことは作者の剣名先生にもお話したのですが、その時に『キリコも教誨師たちの代弁者のような存在であって、最後の死刑囚たちのメッセージは教誨師の代わりにキリコが受けている』とおっしゃっていました」

―――「教誨師」という死刑囚の言葉に耳を傾ける職業の人がいるというのは大杉漣さんの映画で知りましたが、女性の方もいるんですね。

金光「職業というかボランティアなんですけど、刑務官という役職こそ違えど、死刑囚の声に耳を傾け続けた祖母への想いを感じながら、役作りに活かせて行けたらと思っています」

稲月祥(以下、稲月)「僕は、もちろん大役をいただいたとは思うんですけど、正直、この脚本に関しては誰もが主役になっていく作品なので、それほど『主役』という感じはしていなかったんですが、剣名先生からは『キリコはすごく大切な役だから』というプレッシャーをいただきまして(笑)。あとは、台本を読みはしますが、読み込まないようにはしています。自分が先をわかってしまうと、この作品がぼけてしまう気がして。お客様と当事者として同じ速度で進みたいと思う感じで、台本に関しては自分の中で進めています」

―――お2人のこれまでの経歴についてお聞きしたいと思います。役者になったきっかけも教えてください。

金光「大学時代に入っていた野球チームのメンバーで劇団を立ち上げたんですけど、その頃キャプテンをしていた叔父が俳優をしていた人で、それ繋がりで俳優の卵の子もいたんですけど、その中に養成所に通っているお笑い芸人志望の子がいて『ネタ見せをする機会がない』と言うので『じゃあ何か俺らでやるか!』みたいに。最初は本当にそんな感じで、近所の子どもを集めて、ちっちゃい所で始めたのがきっかけです」

―――最初はお笑いだったんですか。

金光「最初はそうでしたね。初舞台がお笑いで小劇場でやった時はドリフみたいで(笑)。その当時はお芝居は全くやっていなかったんですけど、それがきっかけで(叔父に)『お前も出てみるか』みたいに言われて出させていただいて、そこからお芝居面白いなみたいな感じで始まりました」

―――劇団「虹色くれよん」との出会いはいつ、何の作品からですか。

金光「劇団とは前作の『ブラックジャックによろしく』からです。昨年12月にオーディションを受けて、そこからです」

―――『ブラックジャックによろしく』では、どんな役だったのですか。

金光「田辺秀勝という弁護士の役だったんですけど、自分の病気が原因で子どもがなかなか授からないという人間です。そのこともあって自己肯定感も低く、弁護士をしていることから社会の不条理さも見てきて、社会に対して憤りを抱えています。不妊治療をしてようやく双子を授かるんですけど、片方がダウン症で生まれてきて、弁護士をやってきてわかった障害者に対する風当たりの強さとか、見て見ぬふりをする大衆、マジョリティとか、その中で自分の子どもが生きていくことは果たして正しいのか葛藤している。子どもは生まれてすぐに命の危機があって、手術をしなければ助からないのですが、そこで手術はしない選択をするという」

―――とても難しい役どころですね。

金光「でも、この田辺という人間は子どもに対する愛情はあるんですよ。あるからこそ、こんな社会で子どもを生かしていいのかと思ってしまう」

―――稲月さんは、どういうきっかけで役者になったのですか。

稲月「僕は大学時代にサッカーと学校とアルバイトという毎日を過ごしていまして、サッカーは部活には入らずに先輩のクラブチームに入っていて、それがお遊びみたいな感じだったので退屈に感じていたんですね。そこでやったことがないことをしてみたいなと思ったときに、ふと出会ったのが芸能で、これから先(芸能界に)いくこともないだろうけど、大学時代だけは時間がいっぱいあるしやってみようということで芸能事務所を受けてみたら、もちろん受かるんですよ(笑)。
 今だったらわかるんですけど、養成所ビジネスのようなものがあって、その中の大手のひとつに入って1年ちょっとくらいいたんですけど、その頃は僕、公務員になろうと決めて勉強もしていたので、やめようと思っていました。それを同じ事務所の子に言ったら『もったいない』と。僕の芝居を買ってくれて、その子が勝手に知り合いの人が事務所を立ち上げたからそこに行けとスケジュールを決めて、そのまま、そこの社長に『うちでやりなさいよ』という事になったんですが、公務員も保険としてやろうと思っていました。
 今でも覚えてるんですが、大学4年の12月頃にそこの社長さんに呼ばれて『将来どうするの?』と聞かれて僕は『はい、公務員になります』と自信満々に言っちゃったんですよ。向こうからしてみれば役者としてどういう方向性でやるかと聞いたと思うんですが『公務員になる』と聞いて社長の顔がみるみる変わって『何〜?』みたいな(笑)。その圧に押されて『あっ、俳優業がんばります』と言ったことがきっかけで勉強もやめちゃって、でもその一言がきっかけで翌年の3月から商業演劇の舞台に立つことになったんです。東京で言う新橋演舞場や歌舞伎座みたいな所です。実は僕の初舞台は歌舞伎なんですよ。歌舞伎は2年くらいやっていました。すごく珍しいパターンなんですけど。歌舞伎の松竹のプロデューサーさんにも気に入っていただいて、もちろん歌舞伎役者じゃないからいい役がつくことはないんですが色々と教えていただきました」

―――歌舞伎ってそういう入り方の人もいるんですね。

稲月「その当時、お弟子さんがいない役者さんもいて、僕がやりたいって言ったら、その人の一番弟子と言うこともありえたと。今だから言えることですが。そうなっていたら歌舞伎の舞台に立っている世界線もあったのかなと(笑)。
 商業舞台をずっとやっていたんですけど、僕は大阪出身なんですが京都の松竹の撮影所とか東映の撮影所にも行かせていただいていて。ただ、事務所が頑張っていたこともあってお仕事はいただけていたんですが、毎回やることは決まっているんですよ、『この人はこの分野』とか。また会う方もいて『今月もよろしくね〜』という感じなんです。香盤というか『番手』が決まってるんですよ。なかなか成り上がれないというか、事務所の力関係で上がるかバーターで上がるかしかないとしか僕は感じなかったんですよ。
 そのうちに東映の撮影所に行ってる時に、ちょっと役をいただくようになっていたんですけど、お世辞にも上手いなと思えないような方が東京からパッと来ていい役をいただいてたんですよ。僕らがオーディションで一生懸命やっている中で。それで『もう、ここにいたらダメだ』と思った時期があって、単身何も考えずに飛び出して東京に来たという経緯があります」

―――そうなんですね。「虹色くれよん」との出会いはいつだったのですか。

稲月「僕は(虹色くれよんの)『ザ・シェフ』という舞台に出る予定だったんですよ。『ブラックジャックによろしく』の前の作品ですね。それが家の事情で出れなくなってしまって、それを覚えていて下さって、白羽の矢が立ったという。なので今回が初めての出演になります」

―――今回『死刑島』を初めて観に来る方にメッセージをお願いします。

金光「ミステリーやサスペンス、そういった要素でもすごく楽しんでいただける作品だと思いますし、同時に、それぞれに死に対する考え方、安楽死とか死刑制度とか、そういう答えのない問題を考えるきっかけのひとつになる。そういったものを観に来ていただいた方が心の片隅に持ち帰っていただけたらいいなと思います」

稲月「題名に『死刑』と入ってしまっているので、内容もなんだか重そうに感じるというか、もちろん重いところもあるんですけど、ぜひ、漫画や原作を読まずに一緒に体験して欲しいなと思っています。読んじゃうと新鮮さが半分薄れてしまうと思うので、この作品に関しては新鮮に体験して欲しいと思ってます」

―――フジコ役の景也流水さんと山本ゆうさんにお聞きします。山本さんから、フジコ役に抜擢された経緯をお聞かせください。

山本ゆう(以下、山本)「私は前作の『ブラックジャックによろしく』に出演したことがきっかけでフジコ役のオファーをいただきました。看護師の赤城カオリ役でした。漫画でも読んでいて知っていたのでオーディションに応募して合格しました」

―――率直な感想はいかがでしたか。

山本「とっても嬉しかったです。あ、私でもいいんだって。フジコの印象と良く合ってるみたいで。フジコのイメージとしては台本も原作も読ませていただいたんですけど、色々訳ありな女性ということもありセクシーな大人の女性っていう印象があって、前回の赤城カオリもまさにそういう大人の女性でした。そういう女性を演じられるようになりたいというのが自分の目標でもあったので、すごくがんばり甲斐のある役どころかなと嬉しく思っています」

―――景也さんは、今回が「劇団虹色くれよん」初出演とのことですが。

景也流水(以下、景也)「私はオーディションで『死刑島』という作品をリサーチしまして、扱っているテーマが自分が興味を持っていたテーマでしたので、オーディションに応募させていただき、今回のご縁となります」

―――どんな点に興味を持ったのでしょうか。

景也「死刑がもつシステム自体が違憲か合憲かでの話ではないとは思うんですけど、執行する刑務官の立場に立つと苦役にあたるのではないかと思っていました。自分自身が生きてきた中で考えたいテーマに溢れていたので応募しました」

―――フジコ役が決まった時はどんな気持ちでしたか。

景也「決まった時は『大変なことになったな』と思いました(笑)。考えたいテーマではあるんですが、実際に自分がそれを演じるとなると、かなり難しいところがたくさんあるなと思っています」

―――お2人が役者になるまでの経緯を教えてください。

山本「私はタレント活動というか写真を撮られる仕事をこれまでメインとしてきたんですけど、そのお仕事の他、趣味として映画を観たり舞台を観ることが好きでミュージカルなども結構行っていました。好きだからこそ触れることはできるタレントの活動はしていたんですけど、すごい世界だなと言うか基礎を身につけたり学校とか行った方が良かったのかなと思って、若い20代前半の時とかは、ちょっとあえて触れてこなかったんですね。でも、そういうことを言っているだけでは成長しないなと思って、好きなものには敢えて触れていこうという、挑戦することを色々なジャンルで始めて、それが2年前で。初めてオーディションに挑戦したりお芝居の方でオファーをいただいたり、ひとつ出てみたら苦しいことや楽しいことを今までの被写体だけじゃない、役者としての面白さに気付けたので、そこをメインとして活動していきたいと思いました」

―――写真を撮られる仕事とはモデルですか?

山本「一番最初に始めたのがグラビアアイドルで、モデルのお仕事もしましたし、過去には総合格闘技RIZINやキックボクシングのラウンドガールやレースクイーンなどのお仕事もしていました。長野県出身で、高校を卒業してから東京に出てきたので、もうすぐ10年になります」

―――景也さんが役者になろうと思ったきっかけは何だったのですか。

景也「私は初舞台が3歳の頃だったんですが、役者になろうと思ったきっかけが児童劇団に在籍していた時に、赤い鬼と青い鬼が出てくる話がありまして、その青い鬼の方が悪役だったんですね。悪役の青い鬼さんの方がカーテンコールで出てくると怖すぎて、子どもから花束をもらえなかったということがありまして。その時に私はリアリティを持った役者さんになりたいなと思って役者を目指しだしたのがきっかけでした」

―――それは何歳くらいの時ですか。

景也「小学生に上がるぐらいなのでしょうか。その後は勉強のこともあって、演劇から離れていた時期もありました。その後にダンスなどを勉強して、映像関係のお仕事もさせていただいて、その後は自分で劇団をやって今に至るという感じです。事務所にいた時はミュージカルとかドラマとか時代劇など色々なものに出演させていただきました。今はもう事務所には所属していないです」

―――『死刑島 2025』の脚本を読んでどんなことを感じましたか。

山本「最初は心理的な話というよりは、スリリングなホラー系の話かと思っていました。恐怖系の話だと思っていたんですが読み進めていくうちに死刑囚というか犯罪には関わっているんですけど、その犯罪に至った経緯とか心理的なものが描かれているので、タイトルだけ見ると怖いイメージですが、人間味のあるお話だなという印象です。あとは、どんどん読み進めていった時の後半にかけての驚きというものが大きかったです」

景也「キリコという役が出てくるんですけど、その役の人物の苦悩たるやいかなるものかと想像すると、職務として人を殺めなければならないことは理解できるんですが、人間として会話をしたことがある人を処刑という形にしろ命を奪わなければならない状態が人間の心にどれだけの負荷をかけるのか、というのが一番のポイントだと思いました。やっぱりそこを理解しなければというのがあったので『死刑島』のお話自体は短い漫画だったりとかしたので、剣名舞先生の『ザ・シェフ』とか『M.C.☆LAW』だったりとか今読める漫画作品を買って、とにかく理解しようと思って一生懸命読んでいるところです」

―――キリコやフジコは漫画の登場人物の名前ですが、お2人は好きな漫画などはありますか。

山本「たくさんあるんですが(笑)。『銀魂』というジャンプの漫画が大好きで、原作も全巻持っていたりフィギアも持ってたりのオタクなんですけど、『銀魂』のお話は基本的にはギャグかアクションなんですけど、人情とか人と人との繋がりを大切にしていたりとかその部分が多い漫画なので、ほっこりしたい時も笑いたい時も読める漫画です」

景也「私は、あんまり漫画とかテレビとか通ってきていないアナログなタイプなので。今ちょうど読んでいて興味深いのが、剣名舞先生の『ザ・シェフ』の新章が出ていて、それが20巻くらい出ていて、今11巻を読んでいます」

―――『ザ・シェフ』はどんな漫画なんですか。

景也「1話完結で、シェフが主人公なんですが、その方が手塚治虫さんのブラックジャックみたいな感じで。ニヒルな感じなんですが、中身は暖かくて人にプラスになることをしつつ『自分には関係ないよ』とクールに去っていくとか、人間の赦しの話とか。料理を通じた交流の話とかがたくさん描かれていて、かなりホロッときました。1話完結でもう何年も続いている作品なので、それもすごいと思っています」

―――最後に今回初めて『死刑島』を観に来てくれるお客様にメッセージをお願いします。

山本「トリックや推理が好きな方にもを楽しんでいただけますし、『死刑島』というタイトル通り死刑囚についてのお話なので、そういうことについて知らない方も新しいことを知れるという舞台でもあります。それぞれの死刑囚のエピソードが、その内容を見てみると誰もが起こりうるというか人間の人生としてはあってもおかしくないような苦悩とか人間関係を出しているので、誰かしらのどこかに刺さる部分がある作品になってるかなと思います。あとは、私が『死刑島』に出演しますと発表したら色々な方に言われることで、これだけはちょっとお伝えしないとと思っていることがあって、スリリングではあるんですが、グロくはないと(笑)。グロテスクなお話ではないので、気楽に観にきていただきたいと思っています」

景也「安楽死であったり冤罪というのは、人が生きていく上でどこで何があるかわからないじゃないですか。なので社会の目があまり刑務所に向いていない時代ではあるんですけど、やっぱり人間として興味深い物語がたくさんあるので、ぜひ。でも重たい読後感にはなっていないと思います」

(写真・取材・文:新井鏡子)

プロフィール

金光卓人(こんこう・たくと)
1997年生まれ、岡山県出身。主な出演経歴に、2024年 舞台『がぁでぃあんず』R2役(演出:源清治)、2025年 舞台『Ebbi -エビィ-』 那須役(演出:B.QUIET)、舞台『ブラックジャックによろしくベビーER編』 田辺秀勝役(演出:小堀智仁)、舞台『銀河に結ぶ』 皇朔也役(演出:西本健太朗)がある。

稲月 祥(いなづき・しょう)
大阪府出身。主な出演経歴に、2003年 舞台『がめつい奴』セイガク役、2013年 別世界カンパニー『アポフィス』碧生勇生役(主役)、2019年 D-28企画『マイナンバー』603番/荒川録三役(主役)などがある。

景也流水(かげや・りゅうすい)
兵庫県出身。3歳で子役として初舞台を踏む。児童劇団に在籍し数々の舞台に出演、その後、ダンスを学び、映像作品にも出演する。ミュージカルやドラマ、時代劇の出演経歴もある。

山本ゆう(やまもと・ゆう)
1998年生まれ、長野県出身。主な出演経歴に、2023年 舞台『PIERROT』、東出有貴プロデュース『再遊来〜古の記憶〜』、劇団ココア 第30回記念公演『ロストマン×ロストウーマン』-ジュリィ・コンラッド 役、2025年 劇団虹色くれよん『ブラックジャックによろしく』赤城カオリ役がある。

公演情報

劇団虹色くれよん 
舞台『死刑島 2025』

日:2025年8月27日(水)〜31日(日) 
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:【指定席】SS席[最前列・特典付]6,500円 S席[特典付]5,000円
  【自由席】A席4,500円(税込)
HP:https://www.nijiiro-crayon.jp
問:劇団虹色くれよん
  tel.080-3411-3509

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