トム・プロジェクト30周年記念公演第3弾は、アメリカの支配下にあった琉球で「サンマへの関税撤廃」を訴えた人々の物語。沖縄返還のきっかけを作ったと言われる一風変わった裁判を通して、現代にも通じるメッセージを届ける。森川由樹が演じるのは、柴田理恵が演じるウシおばぁの姪・美奈子だ。
「サンマ裁判のことは今回の芝居の話を頂いた時に初めて知りました。当時のニュースを調べていったら、知れば知るほど面白くて。おばぁ本人は商売や家族など、自分の手が届く範囲を守りたいだけだったんだと思います。それが沖縄全土を巻き込む活動になり、60年以上の時を経て舞台になった。皆の想いがここまで繋がったことにおばぁは驚くんじゃないでしょうか」
終戦直後の沖縄が舞台と聞くとシリアスに感じるが、もっと身近で、自分事として観られる話だと森川は語る。
「あの大きな戦争の後に、自分たちにとって“これだけは譲れない”という想いで、サンマで戦いサンマで勝った。これは凄く意義のあることだったと思います。劇中、裁判や法律に関する話も、『難しいな……』と思ったタイミングでおばぁが『難しいことは分かんないよ!』と言ってくれるので安心して下さい(笑)。物価高というところは私たちにとっても身近な話なので、きっと共感して頂けるはず。おかしいことはおかしいと言っていいし、言う権利は誰にでもある。登場人物たちの強さや逞しさを自分の中に落とし込んでいきたいです」
共演者は柴田理恵をはじめ、ベテラン揃い。「胸を借りて挑みたい」と笑顔を見せる。
「いるだけで存在感や説得力がある方々なので、勉強させて頂きたいです。ただ、作中の美奈子も“若者だから、女性だから”と遠慮することはないので、私自身も先輩方と共に作品づくりをしていきたいです。おばぁと美奈子が女性としてこの時代を生きてきたこと、それぞれが家族への想いを語るシーンは大切にしたいですね」
食卓や家族のために行動した人々の姿から学びや勇気をもらえるこの作品を、ぜひ劇場で見届けてほしいという。
「タイトルから、堅い法廷劇だと思うかもしれませんが、決して難しい話ではありません。もしかしたら今、食卓にサンマがあるのは彼らのおかげかもしれない。遠い過去のことではなく、地続きで感じられる話だと思います。自分が愛しているものやアイデンティティーを、誇りを持って大切にしていく。そんな想いが伝わったら嬉しいです。劇場に来る前より元気になれる、エネルギッシュな舞台になると思います」
(取材・文:吉田沙奈 撮影:平賀正明)
「聞き慣れた音が鳴り、0.5ミリほどの視界でアラームを止めたその瞬間から思う。はやくおふとんに帰りたい。私は昔から早起きが苦手。春夏秋冬季節を問わず、私にとって起床は闘い。ただ、起きられさえすれば、早く起きてよかったな〜♪と思う。そして翌朝アラームが鳴ると、早起きなどするものかと思う。その繰り返し。2025年こそは1ヶ月間、いや、2週間連続で6時30分にはおふとんから出てみようと、思う。、、、たぶん」
プロフィール
森川由樹(もりかわ・ゆき)
1992年1月12日生まれ、埼玉県出身。幼い頃からモダンダンスを学び、新国立劇場演劇研修所に入所。卒業後、2013年にトム・プロジェクトプロデュース『「百枚めの写真」~一銭五厘たちの横丁~』で本格的なデビュー。主な出演舞台に、新国立劇場『ウインズロウ・ボーイ』『ピグマリオン』『夜明けの寄り鯨』『デカローグ』、こまつ座『國語元年』、 梅田芸術劇場『ETERNAL CHIKAMATSU』、名取事務所『少年Bが住む家』など。出演映画『夢見びと』ではヒロイン役を務める。
公演情報
トム・プロジェクト プロデュース
『おばぁとラッパのサンマ裁判』
日:2025年2月3日(月)~9日(日)
※他、地方公演あり
場:紀伊國屋ホール
料:一般6,000円 夜割引[2/3・6]5,000円
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://www.tomproject.com
問:トム・プロジェクト
tel.03-5371-1153(平日10:00~18:00)