“揺るぎない表現力とカリスマ性”が絶賛された舞台が待望の再演 紀元前より観客を惹きつける、ギリシア悲劇の最高峰

“揺るぎない表現力とカリスマ性”が絶賛された舞台が待望の再演 紀元前より観客を惹きつける、ギリシア悲劇の最高峰

 紀元前より約2500年にわたり世界の観客を惹きつけてやまないギリシャ悲劇の最高峰『オイディプス王』。パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念として2023年に上演された本作が、今年2月にパルテノン多摩、3月にSkyシアターMBSで再演される。タイトルロールのオイディプスを演じるのは、三浦涼介。再演にあたり三浦が本作への想いを語った。

―――再演となりますが、今のお気持ちはいかがですか。

三浦「初演から1年半以上経っていますが、自分にとって相当濃い時間だったということなのか、あまり時間が経った感覚がなくて……。お稽古に入る前も、お稽古に入ってからも、本番期間も、本番を終えてからも、『オイディプス王』がずっと頭にあったので、つい昨日までやっていた感じなんです」

―――演出の石丸さち子さんとは、これまでも何度もタッグを組まれていますね。

三浦「そうですね。初めてお仕事させてもらってから、定期的にお仕事でご一緒していますし、プライベートでも時々連絡をとったりしています。
 石丸さんと会っているときは、凄く熱く、ひたすら芝居の話をするんです。僕はプライベートで同業者と会うときに仕事の話をあまりしたくないタイプなんですけど、石丸さんと会うとどうしても芝居の話になっちゃいます(笑)。
 石丸さんは、僕が芝居を好きになったきっかけをくださった人でもあります。蜷川幸雄さんをはじめ、大切な人たちが僕の前からいなくなってしまう絶望を味わい、同時にこの仕事にどこか飽きを感じていた頃に石丸さんと出会って……。芝居の面白さを思い出させてくださいました」

―――以前、別作品で石丸さんの稽古場を取材したことがありますが、石丸さんご自身がとてもパワフルでいらっしゃって、まるで演劇少女のようだなと感じました。三浦さんとしては、初演の稽古場で印象的だったことはありますか?

三浦「稽古場での最後の通しですね。心身ともに極限状態だった僕を見て、通しの途中で、石丸さんが『このまま通しを続けると、あなたのトラウマになる気がするから、止めるならここで止めよう』と通しを中断したんです。前代未聞だったと思います。初日も近い稽古場での最後の通し稽古で、芝居を止めるなんて。このままでは初日を迎えられないと僕も思っていたし、周りの方々もきっと不安に思っていたと思うんですけど、石丸さんは『涼介は大丈夫!』と僕のことを信じてくれたんです。そして『1回全部忘れて、本番に臨んでみて』と。
 その言葉通り、何も考えない数日間を過ごした後、衣装を着てメイクをして初日の舞台に立ったんです。そうしたら不思議なもので、取り憑かれたように時間が過ぎていって、気がついたらカーテンコールだった。あの感覚は忘れられないですね。
 なぜあのとき通しを止める判断をしたのか。石丸さんとそのことについて話をしたことはないですけど、石丸さんが『涼介は大丈夫!』と信じてくれて、きっとその思いが周りの方々にも伝わったんじゃないかなと思います。
 僕はいつもどこかで格好つけたり、“ここまではしゃべっていいけど、ここから先は知られてはいけない”と、ミステリアスな部分を残したりしていた。
 だけど前回の『オイディプス王』で石丸さんをはじめ、キャスト・スタッフのみなさんに僕の全部を見せたんです。というか、見せざるを得なかった。家族にも所属事務所にも見せたことのない、僕のダメなところ、足りないところ、寂しいところ、恥ずかしいところを。そんな経験は、この業界に入ってからの20数年で初めてだったと思います」

―――石丸さんに、“蜷川幸雄”を感じることはありますか。

 「それはもう! 蜷川さんの訃報を聞いたときに僕はどうしたらいいんだろうと絶望したし、芝居をもうやりたくないと思ったし……色々なことが崩れていったんですね。
 そんな中で石丸さんと出会った。『演劇少女のよう』と仰っていましたけど、本当にそう。蜷川さんも石丸さんもとにかく芝居が好きだし、すべてに対して愛がある人なんですよね。もちろん厳しい人でもあるんですけど、厳しさの中にも愛がある。興味があるものに対して愛情を注ぐのは誰でもできますが、すべてに愛を注ぐというのは本当にパワーが必要なことですから」

―――先王 ライオスの妻でオイディプスの母、後にオイディプスの妻となるイオカステを演じられるのは、初演に引き続き大空ゆうひさん。どんな印象をお持ちですか。

三浦「彼女は相手を受けて芝居をする人なので、僕と似てるなと思いました。いい日は凄くいいけど、どちらかがダメになると、それに引きずられて共倒れしてしまう(笑)。
 前回は本当に自分のことでいっぱいいっぱいだったので……。今回はもっとコミュニケーションをとりたいなとは思います」

―――初演を経て、三浦さんとしてはどんな風に再演をブラッシュアップしていきたいと思われていますか。

三浦「ちゃんと毎日洗える衣装にしてほしいですね(笑)。きちんと毎回セットしてくれるんですけど、いいもの過ぎて下手に洗えない衣装だったので(笑)。
 というのは冗談ですが。そうですね、『難解な芝居だ』とか『セリフの量が多い』とか、そういう次元を超えて『やっぱり僕は芝居が好きだ』というところまで持っていきたいんです。
 こういう古典的な作品は何かに囚われてしまいがちだし、何を言っているのか全然分からなかったと感じるお客さまもきっといる。それでも、当たり前なんですけど、気持ちを込めて届けるのが役者の仕事だと思うんですよね。改めて自分としても芝居が楽しいと感じたいし、それをお客さまにお届けしたいです」

―――三浦さんのファンだけれど、これまでギリシャ悲劇に触れてこなかった方がギリシャ悲劇に出会ったり、逆に古典の演劇が好きな方が“俳優・三浦涼介”を知ったりと、初演時でも十分“出会いの場”になったのかなと思いますが。

 「いや、本当にそうだったらいいですよね。僕のファンの方や、もちろんファンの方でなくても、この観劇体験をきっかけに何かの“出会い”に繋がったら素敵ですよね。そのためにも僕はきちんと芝居をしたい。当たり前のことを当たり前にしたいと思っています」

―――そもそも三浦さんとしてはギリシャ悲劇についてはどういう印象をお持ちだったのですか? いつかはやってみたいと思われていたのか、実は敬遠されていたのかなどを伺いたいです。

 「若い頃に平幹二朗さんの舞台を観る機会がありました。平さんが舞台に立ったときの迫力というか、オーラというかが凄くて、異常なほど美しかったんですよね。終演後に楽屋にご挨拶に行ったら、さっきまで舞台で観た人とはまるで別人のようにちょこんと座っていらしたんですけど(笑)。
 僕も内容がわかっていたかと問われると自信がないんですけど、それでも圧巻の舞台で、前のめりで観ていたことは思い出すんです。“ギリシャ悲劇をやりたい”という思いより、“ああいう華のある舞台人になりたい”と思いましたね。
 自分が『オイディプス王』をやることで、見えてきたものはたくさんあるんですが、こんな話の中でも1ミリでもいいから可能性を残して終わりたいと思って、演出の石丸さんと話したんです。生きることを選択する希望、ドクンドクンという心臓の鼓動を感じる希望を感じられる終わり方にしてもらっています」

―――2025年も多くの作品にご出演されると思いますが、改めて2024年は三浦さんにとってどんな1年でしたか。

 「2024年は学びの年でした。近年、なんとなく上っ面で芝居をやってきてしまったという感覚が自分の中であったので、2024年はとことん芝居を知りたいと思ったんですよね。それで規模感などは全く関係なしに、自分がやりたいものや、やったことのないもの、立ったことのない劇場、それから朗読劇をやりました。
 ちょっとやり過ぎたかなというぐらい、詰め込み過ぎたんですけど(笑)。でもお陰様でより芝居が好きだなと思いました。それに、それまで舞台に立つ前は毎回毎回ゼロからスタートしている感覚だったんですけど、コンスタントにステージに立つことで、ゼロにはならずに、段階を踏んで登っている感覚が得られました。
 これまではただただ緊張して、ようやく慣れてきたら千秋楽を迎えるなんてこともあったんですけど、これだけ舞台を立て続けに経験すると、変な緊張がなくなりましたね」

―――1年の学びが2025年、そしてその先にまた活きていきそうですね!

 「そうですね。いつどうなるかなんて、誰もわからないといつも思うんです。僕が詰め込んで生き急ぐのは、悔いがない日々を送って、いつどうなっても大丈夫と思いたいから。そういう意味で、2024年は精一杯生きられたなと思いますし、『オイディプス王』も心を込めて演じたいと思います」

(取材・文:五月女菜穂 撮影:永石 勝 舞台撮影:引地信彦)

プロフィール

三浦涼介(みうら・りょうすけ)
1987年2月16日生まれ、東京都出身。2002年に俳優デビュー。以降、ドラマ・映画・舞台・ライヴなど幅広く活躍。近年の主な出演作に、『リーディングシアター GOTT 神』、音楽朗読劇『手紙』、舞台『ブラックジャックによろしく』、地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』、舞台『SaGa THE STAGE〜再生の絆〜』、『銀河鉄道ノ夜』、『オイディプス王』、『桜姫東文章』、『呪術廻戦』シリーズ、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』、『銀河鉄道999 THE MUSICAL』、ミュージカル『マタ・ハリ』、ドラマ『君とゆきて咲く〜新選組青春録〜』、『顔だけ先生』、『マイルノビッチ』など。

公演情報

オイディプス王

【東京公演】
日:2025年2月21日(金)~24日(月・振休)
場:パルテノン多摩 大ホール
料:9,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.oedipus.jp
問:パルテノン多摩 
  tel.042-376-8181(10:00~19:00/休館日除く)

【大阪公演】
日:2025年3月1日(土)
場:SkyシアターMBS
料:一般11,500円
  U-25チケット[25歳以下]5,000円 ※要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://stm-mle.jp/schedule/oedipus
問:SkyシアターMBS 
  tel.06-6676-8466(10:00~18:00/休館日除く)

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