地域に根ざした劇場として、1年を通して様々な企画を打ちだしているKAAT 神奈川芸術劇場には、子どもたちの夏休み期間中に「KAATキッズ・プログラム」と銘打った企画が用意されている。それも子ども相手だからと安っぽいものではなく、トップクリエーター達が真剣に取り組んだプログラムが登場するのが大きな魅力だ。
今年も2作品が用意されるが、そのひとつが「劇団た組」主宰として注目されている劇作家・演出家の加藤拓也による『らんぼうものめ』。主演するのは、モーニング娘。の絶対的エースとして活躍の後、ニューヨークでのダンス留学を経て、歌手・俳優として舞台や映像の世界で活躍する鞘師里保。加藤の作品に出演するのは初めてだという鞘師だが、実は一方的に作品に惹かれているという。彼女に話を聞いた。
―――今回、主演のオファーを受けたときの率直な気持ちを聞かせてください。
「実は私、加藤拓也さんの作品が好きで、最近ずっと拝見しているんです。そんな加藤さんの作品で、私に声がかかるとは思ってもいなかったので、凄くビックリしました」
―――加藤さんの作品と出逢ったきっかけを教えてください。
「以前、加藤さんが書かれた作品のオーディションがあったんです。その時に加藤さんの舞台を観ておこうと思い、拝見したらはまってしまいました」
―――どんなところに惹かれますか。
「作品を観た後にスカッとすることはなくて、登場人物の言動や行動の節々からにじみ出す、ちょっとした理不尽。それが丁寧に描かれているという印象があります。家庭の中のシーンは、余所の家庭を覗いている感覚になる。そんなところに惹かれている気がします」
―――今回、鞘師さんは8歳の男の子を演じるわけですが、既にご自分なりの準備をされていますか?
「今のところまだできあがっていませんし、加藤さんにお目にかかるのもこれからなんです。どんな作品作りをされるかを踏まえて考えていきたいです」
―――物語では主人公が井戸を境にした“神さまのたちの世界”に迷い込みます。もしも自由に出入りできる未知の世界への入口があったら、入ってみますか?
「好奇心旺盛ですから入っているでしょうね(笑)。でも心霊スポットは無理です(笑)」
―――その旺盛な好奇心がニューヨークでのダンス留学を後押ししたのでしょうね。そのニューヨークにはKAATのように地域と深く関わる劇場や美術館が沢山ありますね。
「ニューヨークは機会が沢山ある街ですね。たとえばMoMA(ニューヨーク近代美術館)にはニューヨーカーなら無料で入れるなど、アートに出逢う敷居を下げてくれて、距離が近いんです。私もMoMAの別館でクイーンズにあるMoMA PS1やホイットニー美術館などいろいろ出かけましたね。もちろんブロードウェイも友だちと一緒に積極的に行ってました。でもお財布事情もあるから(笑)、選んで観てました」
―――様々なアートに触れてこられたんですね。子どもの頃からですか?
「子どもの頃の私は、作品を観に行くこと自体の敷居が高く、芸術がわからないと行ってはいけないと思っていたし、行ったら今度は気の利いた感想を言わないといけない、そんなプレッシャーを勝手に感じていました。でもこのKAATキッズ・プログラムはそんなことはないことを体験できるいい機会になります。早ければ早いほうが良いと思います」
―――最後に皆さんへのメッセージをお願いします。
「夏休みの間に、お子さんが気軽に演劇に触れる機会を、という企画が素敵ですね。そこに参加して、しかも大好きな加藤さんの作品に私が関わることが出来るのも素敵で有難い機会です。子どもたちに劇場で作品に触れることは楽しいことだと感じてもらえるように頑張りたいです。
普段友だちと遊んでいるのとはひと味違う体験が出来る場所になりますから、気軽に遊びに来てほしい。そして大人の皆さんにも作品から感じてもらえる何かがあるし、それが伝われば良いと思います。夏休み中ですから、どの世代の方にも来てほしいですね」
(取材・文&撮影:渡部晋也 ヘアメイク:上野知香 スタイリスト:阿部一輝)
プロフィール
鞘師里保(さやし・りほ)
広島県出身。幼少期よりアクターズスクール広島にて、ダンスを始める。2011年に当時12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビュー。飛び抜けたダンススキルで人気を獲得する。2015年12月31日、惜しまれながらモーニング娘。’15を卒業し、その後ニューヨークへダンス留学。2020年9月より芸能活動を再開し、ドラマや舞台・ミュージカルなど活躍の場をますます広げている。
衣装: チュールトップス(Rouge vif) シースルートップス(Yae) ジャンパースカート(AULA AILA)
公演情報
KAATキッズ・プログラム2024
『らんぼうものめ』
日:2024年7月20日(土)~28日(日)
※他、地方公演あり
場:KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
料:おとな4,500円
神奈川県民割引[在住・在勤のおとな]4,000円
こども1,000円
※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
(入場順整理番号つき自由席・税込)
HP:https://www.kaat.jp/d/ranbomonome
問:チケットかながわ
tel.0570-015-415(10:00~18:00)