その王国が大きな戦乱もなく千年もの間続くのは何故なのか その秘訣を探るために隣国から送られた2人の騎士が目にしたものは?

その王国が大きな戦乱もなく千年もの間続くのは何故なのか その秘訣を探るために隣国から送られた2人の騎士が目にしたものは?

 毎回、物語の場面設定や複雑に入り組んだ物語を送り出している空想嬉劇団イナヅマコネコ。さらに主宰するCR岡本物語が持っている小劇場系劇団の運営についての信念と実行力も注目すべき存在だが、昨年に引き続いて新作を発表する。企画書にダークファンタジーロイヤルミステリーとあるとおり、架空の2つの王国を舞台にした物語になるようなのだが、よくあるようにその2国の争いを描くわけではないようだ。主宰の岡本と、俳優であると同時にプロデューサーとして岡本の”右腕”とも言える堀雄介が、新作について語ってくれた。

―――まずはどんな物語なのかお伺いできますか。

岡本「2つの『王国』がでてきますが、主な舞台は世襲制の絶対王政が千年続いている王国になります。もう1つはようやく統一が果たされて間もない国なのですが、そこの国王は実に民衆想いで、だからこそ自分が不在になった時(後継者に王位を継がせたとき)の不安を抱えています。そこで隣の千年続く王国に、その秘訣を探るため2人の主人公を留学させます。そして王国が続く理由が見えてくるという話です」

―――なるほど、隠された秘訣を探るわけですね。こうした物語は岡本さん1人で思いつくんですか。

岡本「僕はアニメをよく観ますが、それも堀さんの家にいってアニメやドラマを見ながら色々話はしますけど」

堀「助言はしても基本的には岡本の頭の中で生まれるんです。どうしたらこんな発想が出るのかと思うことが多いですよ。しかもこの物語を書いたのはロシアによるウクライナ侵攻の前でしたから、ちょっと震えましたね」

―――予感を感じたわけではないでしょうが。凄いタイミングですね。

岡本「プーチン大統領がこの(千年続く)国の王と同じ気持ちを持つなら、こんなことは起きていないわけですし、我が国の現政権もそういった気持ちがあればこんな円安も起きていないし、利権ズルズルな状況にはなっていないでしょう。だって消費税上げて円安になって物価が上がれば国は儲かるわけで、だから今年最高の税収だというのに国民は貧しいままですから。そういったことで国に対してイライラしていることが作品の基になってます」

―――作劇のモチベーションはそこにあったと。

岡本「今回、僕にとってチャレンジなのは、そんな国はどうですか?とお客さんに僕が提案した時に、どう反応するかですね。もちろんきれい事ではなくてリアルな提案です。それをお客さんが納得するかどうかです。

―――提案されるのが国を統治する“制度”というわけですか。

堀「テュシアス制度と呼んでいます。造語ですがこれが統治のキモで、それに伴う影や闇、犠牲もあるけれど成立していて千年続いている。それをお客さんがどう受け取るかです」

―――劇団メンバーと客演を交えてのメンバーですね。

岡本「僕の場合、脚本ができてからキャスティングを進めますが、まず脚本を見せて面白かったら出てください、というオファーをします。ただ劇団員は僕の作品に出演したいという役者が集まっていますから、ほぼフル参加です。まずは脚本にどれだけ役者さんが反応するか。だって役者さんはお金を払わないでこの作品を観る1番最初のお客さん。だからそこでよい反応がない芝居はやっちゃいけないと思ってます」

―――役者の立場としての堀さん、脚本の感想を聞かせてください。

堀「最初読んだときに舌を巻きました。僕は大学時代には政治学を専攻していたのである程度知識も身につけているし、政治に対してそれなりの拘りもあるつもりですが、それでもこんな切り口できたか!と思いました。月並みかも知れませんが僕の好きな『銀河英雄伝説』に匹敵するのでは、とも思います。もちろん『銀河~』は長いし不朽の名作ですが、その要素を凝縮したような感じで、同じような衝撃を受けたんです。だからこの物語を舞台に乗せるとどのように伝わるか。それが楽しみですし、役者としての自分がどうなるのかも素直に楽しみです。

―――キャストの選択に当たって、作品の内容に伴って特別に考慮した点などはありますか。

岡本「今回は王国の話なんでお姫様が出てくるのですが、これが姫ドレスといった感じの衣装になります。だからそれにハマるような人を選びました。そのうちのひとりが金髪のカツラを買ってきたんですが、凄く似合うんです。日本人にはなかなか似合わないんですけれどね。ともあれ今回はその点はビジュアル重視で残酷に選びました。もう1つ、内容が政治的な話で会話劇になるし、説明的なセリフも多いです。だから主演クラスは脚本読解力がある人を選んでます」

―――読解力? ですか。

岡本「演技に1番大切なのは日本語の読解力ですから。台詞の意図がわからないのに、書かれたものを読むだけなのは駄目で、1つの台詞をどう解釈するかを稽古場で凄くしつこく突き詰めます。それが固まれば動きもできてほぼ完成するんです。これは汎用性があることですよ。だから逆に主演クラスの方は脚本について重箱の隅をつついた質問をしてきます。

―――読解力以外の、例えば滑舌とか声の良さとかはキャスティングに当たって加味されるのでしょうか。

岡本「ほぼ無いですね。例えば滑舌が悪いといってもそれは実は早口なだけなことがほとんどです。だって普段のコミュニケーションがとれているのに舞台で通じないわけがない。本人が舞台に適した速度を理解していないことが多いです。声が通らないというのもそれほど影響しません」

―――堀さんから見た岡本さん、というのも聞いてみたいですね。

堀「役者を本格的に始めてから足かけ10年になります。最初の舞台で岡本に出会ったんですが、彼にはまだまだ引き出しがあると思います。僕はいろいろな劇団の作品を拝見しますが、2回続けて観に行って良かった劇団は残念ながら多くありません。ところが岡本の場合、常に良質なものを更新し続けることができています。これは内輪の評価ではなくて客観的に、これまで(俳優以外の)仕事の関係もあって色々なエンタメ作品を観ている中での判断です。あと劇団の運営としては再演の方が観客の反応がある程度予測できて堅実なのですが、岡本の場合それを越える期待が新作に対して生まれるんです」

―――さて、今回は前作に続いて新作ですね。

岡本「時間がありましたからね、コロナで」

堀「まあ前回公演はコロナの状況が良くなったときに当たって運が良かったですね。公演中止もなく、公演関係者からの感染者も出さずに済みましたから」

岡本「キャストも良く自制心を働かせてくれたと思います。みんな徹底してましたから」

堀「それにああいった状況だったから配信という手段も充実しました。でも今回は昨年よりは広くお知らせして見てもらえる機会はあるかと思います」

岡本「昨年は『観に来てね』となかなか言えなかったからね」

堀「今作は状況が許すのであればより多くの人に劇場でご覧いただきたいですね。毎回ご覧頂いた人が必然的に考えてしまうメッセージ性のある作品をお送りしているつもりですから」

岡本「作品に込めたメッセージは、学校の花壇や家庭菜園みたいなもので、あれは適当に撒いた種から色々な芽や花がでるでしょう。お客さんにはそのどれを摘み取ってくれてもいいと思うんです。でも例えば“戦争反対”という大きなものを1つだけ植えちゃうと、それは摘み取れないよ、という人も出てきますから。もっとも世の中には全く種をまかない脚本というのもありますね。コスプレして格好良く刀振り回しているだけとか」

堀「まあ、それを観たい人もいるわけだし。それはそれでひとつのエンタメだから」

―――以前も同じような話の展開があったような(笑)。もう少し作品のヒントを伺いましょう。

堀「本作は徹底的な会話劇ですね、きらびやかなドレスも出てきますが、それがメインではなくて。そういった衣装に身を包んだ人が何を語り、悩み、問い詰めるのかが浮かび上がり、自分自身に投影できると思います。そこは期待してもらいたいですね」

岡本「人間って生まれ育った状況によって培われる常識が人によって大きく違うものですが、なかでも経済的な部分は非常にギャップがある。そんなギャップを含んだ多様な常識が集まる中で、みんなが納得する政治はどうやって作るのか、ということですね。そんなハードルが高い目標を、たった1つの制度だけで、お客様に納得して頂くというのが今回の挑戦です」

堀「本当の平等とはなにか、ということを考えさせられると思います」

―――どんな“制度”が出てくるのか。気になりますね。

堀「なかなか残酷なシステムですが、それでも納得はしてもらえる話になっていると思いますよ」

岡本「きっと観た人はすごくモヤモヤすると思います。主人公の2人もモヤモヤするけれど、彼らは国に帰ってそれを自国に伝えなくてはいけない。だからさらに悩むわけです。まあ安直なハッピーエンドでは終わりません。あともうひとつ、矛盾するかも知れないけれど、観た人は少し他人に優しくなれる、そんなお話だと思います」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

CR岡本物語(しーあーるおかもとものがたり)
俳優・声優・脚本・演出・ライター。空想嬉劇団イナヅマコネコ主宰。過去に劇団ぺピン結構設計、さらに劇団ポップンマッシュルームチキン野郎に所属し、ほとんどの作品に出演。イナヅマコネコ旗揚げ以降は、座付き作家・演出家として作品を発表している。また効率の悪い稽古や遅れることが既定路線になっているような脚本など、小劇場系劇団のスタイルを是正すべく、自ら実践を続けている。

堀 雄介(ほり・ゆうすけ)
年間に100本前後の演劇作品を観る観客から、役者として活動を拡大。2012年までは某大手企業の社員としてニューヨークに赴任。ブロードウェイ・ミュージカルをはじめとしたステージを客席で体験する。空想嬉劇団イナヅマコネコで俳優・プロデューサーとして活躍するが、企業の社員としても職務を継続している。

公演情報

空想嬉劇団イナヅマコネコ 作品No.6
『影と刻罪のテュシアス

日:2022年9月15日(木)~25日(日)
場:上野ストアハウス
料:5,000円(全席指定・税込)
HP:http://inaneko.ciao.jp
問:空想嬉劇団イナヅマコネコ
  mail:inaneko@p-hit.net

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