最新技術とアナログが融合した演出にも注目! 関西屈指の時代劇エンターテインメント集団が、井上ひさし作の超大作に挑む

最新技術とアナログが融合した演出にも注目! 関西屈指の時代劇エンターテインメント集団が、井上ひさし作の超大作に挑む

 関西を拠点に「古き良き文化を大切にし、かつ時代の感覚を取り込んだ極上のエンターテインメント」をコンセプトに活動する時代劇集団STAR☆JACKSと、その妹分であるCheeky☆Queensが、井上ひさしの1974年作『天保十二年のシェイクスピア』を8月に上演する。2000年代以降にも複数回舞台化されて注目を集めたこの作品は、江戸末期の人気講談『天保水滸伝』をベースにシェイクスピア劇の全37作を散りばめた一大巨編だ。
 STAR☆JACKSファミリーの持ち味を活かしつつ新たな一面を見せることになりそうな本作について、主演を務めるSTAR☆JACKSの寺井竜哉、Cheeky☆Queensのリーダー畠山薫、演出と殺陣を手がけ自身も出演するファミリーの主宰・ドヰタイジ(STAR☆JACKS)の3人に話を聞いた。

―――いつかこの作品に取り組んでみたいという思いがあったのでしょうか。

ドヰ「実はそうなんです。映像でしか観たことがないんですけど、2005年の唐沢寿明さん主演版を最初に観て、すげえ作品やな!と思って戯曲も買って。そのときから、いつかやりたいなと思っていました。自分だったらどういう表現にしようかというのが、ずっと頭の片隅にありましたね」

―――蜷川幸雄さんが演出したバージョンですね。

ドヰ「性描写のシーンが結構多くて、これを舞台上でやる勇気はすごいなと思ったんですけど、自分は照れてしまうタイプなのでなるべくそういうのを避けて表現したいなと。あとは、僕からすると立ち回りが少なかったので、もうちょっと派手にしたいと思っていました」

―――寺井さんと畠山さんも、この作品は映像でご覧になっているのですか。

寺井「はい。とにかくもう……パワーがすごい作品だなと。演出される方によって色が全然違うので、今回は自分たちの色にしたいですね」

畠山「中学生くらいの頃に偶然2005年版を観たんですけど、宝塚に憧れて演劇を観始めた私にはちょっと刺激的で……びっくりしてそのときは途中で観るのをやめちゃったんです。
 今回改めて観て、刺激的な部分もあるけどそれだけじゃなくていろんなエッセンスが描かれてると感じたので、幅広い年代の人に楽しんでもらえる形にしていけたらなと思っています」

ドヰ「どんな表現であれ一朝一夕にはできない、行き当たりばったりの思いつきは通用しない戯曲なので、全員ががっぷり四つに組んでやらないと太刀打ちできないでしょうね」

―――そんな大作に、どのようにアプローチしようと考えていますか?

ドヰ「まず、会場である近鉄アート館の特徴を活かして三面舞台で上演します。そして、僕が最近ずっと取り組んでいる、テクノロジーとアナログを融合した演出も行います。映像や光をふんだんに使って、三面ならではの客席と一体になった仕掛けをたくさん作るつもりです」

寺井「僕は、外部作品だとミュージカルで歌ったり踊ったりすることはあるんですけど、まさかSTAR☆JACKSでそれをやることになるとは思っていませんでした。しかも全曲オリジナルで、殺陣はほぼ封印します。いつもは最初から最後までずっと戦っている人たちが、歌って踊るのかい?っていう。
 客演の方たちも、あまりそういう姿を見たことがない人が多いので、すごく新鮮なものを見られるんじゃないかと思います。“なんちゃってミュージカル”にだけはならないようにしたいですね」

畠山「普段のSTAR☆JACKSやCheeky☆Queensとは空気が全然違う作品なので、今まで私たちの公演を観てこなかった人にもたくさん観ていただきたいです。
 寺井が言ったように、私たちだけじゃなくて客演の皆さんの新たな一面も見てもらいたいし、それで“あの人素敵だったな”と思って別の出演作を観に行ったり、そういう広がりが生まれる舞台にもなってほしいですね」

寺井「僕自身としては、体作りに励んでいます。夏の公演だし、倒れないように……どの役も休む隙ないですけどね。全員が必死にそれぞれの人生をウワーッと生きてる感じがして、そんな作品をやれるのがすごく楽しみです」

畠山「歌も殺陣もある役を演じるということで、今まで積み重ねてきたものを一番出すタイミングだと思いますし、今年は30歳という節目の年齢でもあるので、自分自身の集大成的な作品にしたいと思っています」

ドヰ「先ほど立ち回りを増やしたいと言いましたが、それをショーアップしたくないというのはありますね。なるべく人間対人間というか、生に執着してる人たち同士の戦いを殺陣の中で描きたい。人間の嫌な部分もすごく出る作品なので、それをお芝居でも殺陣でも、歌や踊りでも表現できるような取り組み方をみんなで共有して作っていきたいなって思ってます」

―――皆さんが演じる役柄についても聞かせてください。

寺井「僕が演じる佐渡の三世次は世間一般的には極悪人ですけど、僕はなんか憎めないというか……自分が幸せになることに必死に生きていて、そういう生き方もいいんじゃねえの?って思います」

ドヰ「良いところも悪いところも含めて、一番“人間”を集約している人かもしれません。でも、良いところはあまり見せない」

寺井「たまに出すところがまた、いい具合に憎めない感じになるんですよね。これまで僕が演じてきた役は、あんまり悪い奴がいなくて、結構頑張って“好青年”をしていたので、悪い奴をずっとやりたかったんです。だから、観てくださる方が“誰?”ってなるくらいにしたいですね」

畠山「私は双子のお光/おさちを演じます。お光は頭が良くて腕も立つけど、まっすぐすぎて周りが見えなくなるタイプ。おさちは貞淑な妻という感じで、その2人の違いは何だろう?というのを、今台本を読みながら考えているところです。でも2人とも、強さと女性らしさが矛盾なくある人なのかなと思っています」

ドヰ「僕は尾瀬の幕兵衛をやらせていただきます。幕兵衛という男は、誇り高い男だと思っています。侍から浪人になって、浪人からヤクザの用心棒になって、用心棒からヤクザの親分になる。親分とはいえヤクザはヤクザ。侍だった男からすれば成り下がったと言わざるを得ない。にも関わらず妻まで寝取られたとあってはズタボロもいい所。プライドが許さない。そんな男が最後にとる行動の必然性をきちんと描きたいと思っています」

―――客演の皆さんも関西演劇界の豪華な顔ぶれが集い、かなりの大所帯です。演出のしがいがありそうですね。

ドヰ「関西の俳優すごいよ!っていうのをアピールしたいんです。ウチがすごいんじゃなくて、みんながすごいよっていう、そんな場になればいいなと思っています。
 人数については、いつもだいたい40人前後出ている芝居が多いので特に意識していませんが、発表したキャストの中には太鼓と三味線の奏者もいます。つまり、生演奏も入れようと。どこでどのように“生”を出していくか、2人とセッション、ディスカッションしていくのが楽しみですね」

寺井「でも、三面舞台で演出つけるのは初めてですよね?」

ドヰ「そうです。かなりワクワクしてます。ハードルが高いほど燃えるタイプなので」

―――とても注目度の高い公演になると思います。最後に、お客様に向けて一言ずつメッセージをいただけますか。

畠山「先ほども言ったように、STAR☆JACKSとCheeky☆Queensを観たことのない方も来やすい演目だと思うので、あまり構えることなく、1つの大きな作品を楽しもうという気持ちで来ていただけたら嬉しいです」

寺井「演劇ってなんか難しいなとか、ちょっと行くのは緊張するなとかいろいろあると思いますけど、みんなが歌って踊って、ストーリーがあって、絶対に楽しめる作品だと思います。フラッと来てくださった方にも本当にいい時間を提供したいし、目でも耳でも心の中も全部楽しめて、終わった後は“面白かった!”と思ってもらえるよう頑張ります」

ドヰ「先月、木下大サーカスを観に行ったんですけど、これ小さい頃にも観たなと思い出して、もしかしたら自分の原体験ってサーカスかもって思ったんです。ハラハラできるし、可愛いなとか綺麗だなという気持ちにもなれるし、そんないろんな感情が1つになって、すごい満足感が得られたなと。
 今回の舞台も、人間の良いところと悪いところ、楽しいところと嫌なところがごちゃ混ぜになって、最終的に“面白かった!”って思えるものを目指します。
 物語の舞台となる天保十二年は大飢饉があって、そこから人々が這い上がってきたっていう史実もあるので、僕らも関西から、今から這い上がっていくんだっていうメッセージにもなればいいなと思っています。ぜひ楽しみにしていてください」

(取材・文&撮影:西本 勲)

プロフィール

ドヰタイジ(どい・たいじ)
1978年生まれ。2000年代中頃より俳優として舞台・TVドラマ・映画に多数出演。2007年にSTAR☆JACKSを旗揚げし、全作品で出演・演出および殺陣を手がけるほか、2016年に旗揚げしたCheeky☆Queensの作品でも演出と殺陣を担当。主な受賞歴に、2008年関西俳優協議会 最優秀新人賞、2016年池袋演劇祭 大賞、2018年池袋演劇祭 三浦大四郎賞がある。STAR☆JACKS、Cheeky☆Queens、若手育成団体Rising Generation’s Actをまとめる運営母体NEXT ONEでは代表理事を務める。

寺井竜哉(てらい・たつや)
1996年生まれ。2014年、関西文化芸術学院舞台芸術専攻ミュージカルコース卒業。ジャズダンス・バレエ・ヒップホップ・アルゼンチンタンゴなど各種ダンスに打ち込むほか、殺陣をドヰタイジ、島口哲朗(剱伎衆かむゐ)に師事。2016年よりSTAR☆JACKSに参加し、外部作品にも多数出演。2021年、関西演劇祭2021でベストアクター賞を受賞。

畠山 薫(はたけやま・かおる)
1994年生まれ。特技はクラシックバレエ・ジャズダンス・バトントワリング。2014年よりSTAR☆JACKSの作品に出演する一方、関西の劇団を中心に様々な舞台へ出演。2016年に旗揚げしたCheeky☆Queensではリーダーを務め、ダンス・アクションをふんだんに取り入れた作品づくりを牽引。近年は脚本・演出なども担当している。2018年、門真国際映画祭 舞台映像部門にて最優秀助演女優賞受賞。

公演情報

STAR☆JACKS&Cheeky☆Queens Special Act 2024『天保十二年のシェイクスピア』

日:2024年8月23日(金)~26日(月)
場:近鉄アート館
料:SS席7,500円 S席6,000円
  A席 一般4,500円
  A席 U-22[22歳以下・枚数限定]3,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://starjacks-cheekyqueens.bitfan.id
問:STAR☆JACKS制作部
  mail:starjacksticket@gmail.com

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