紫綬褒章受章記念。上野水香が全身全霊を込める『ボレロ』が横須賀に 紫綬褒章受章記念。上野水香が全身全霊を込める『ボレロ』が横須賀に 

紫綬褒章受章記念。上野水香が全身全霊を込める『ボレロ』が横須賀に 紫綬褒章受章記念。上野水香が全身全霊を込める『ボレロ』が横須賀に 

 昨年秋。我が国を代表するバレリーナの1人、上野水香に紫綬褒章が授与されたニュースはバレエ界、さらに広くダンスを愛する人々への大きな励みとなった。

 「まさかの出来事に、最初は信じられなかったです。ここに至るまでは辛いことも沢山ありました。でも沢山の人が支持してくださり、そんな皆さんのおかげだと思うと、感情がこみ上げて涙が止まりませんでした。これからは褒章にふさわしい自分でありたいと思います」

 そんな上野による『上野水香オン・ステージ』が昨年に続いて開催され、東京の他、横須賀、浜松へ巡演する。全国ツアーの一環でもある横須賀・浜松公演では、上野の代名詞ともいえるベジャールの『ボレロ』の他に、古典的レパートリーである『白鳥の湖』第2幕を厚地康雄とのペアで。バレエ団の同僚でもあるブラウリオ・アルバレス振付による『Nocturne for Three』をブラウリオ、厚地と踊る。古典作品から最新の作品まで、実にバランスがとれたプログラムだ。

 「東京とは違うものをと考えて、厚地さんと一緒になら『白鳥の湖』だろうと思いました。『Nocturne for Three』は一昨年の『ファンタスティック・ガラ』でブラウリオと創作した作品で、今回は劇場のサイズが大きいので、その分サイズアップして披露します。古典から現代に移り変わる流れ。それを繋ぐのが『ボレロ』でしょうか」

 言うまでもなく『ボレロ』は上野の重要なレパートリー。そしてこの作品を生んだモーリス・ベジャールとの出逢いもまたとても大きなものだという。

 「生前のベジャールさんの指導を受けることができたのは、私が最後だと思いますが、大きな財産になっています。『ボレロ』はストーリーがない作品なので、踊り手のそのものがそのまま出てくるんです。自分が如実に舞台に出てしまう。その時々の精神や身体までもが露わになる、まさに自分そのものを表現する作品で、今となっては古典と呼んでもいいと思います。そしてベジャールさん亡き今は、これから先どのように『ボレロ』を引き継ぐかが課題だと思います」

 鎌倉で生まれ育った上野。地元からほど近い横須賀での公演には並々ならぬ想いがあるようだ。

 「横須賀芸術劇場で『ボレロ』を踊るのは初めてです。この春の
ツアー最後の公演ですから、全ての力を込めて、踊り終わった後に倒れ込むくらいの覚悟で挑みます」

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

気づいたらやっている、どうしてもやってしまう癖はありますか?

「色々ありますが、バレエにまつわることであれば、気づいたらアラベスクを撮影していることです。私は普段からInstagramの投稿をしておりますが、バレエポーズで圧倒的に撮る確率高いのが、アラベスクというポーズです(笑)。なんか撮ろうと思ったら気づいたらアラベスクをしてしまう。意識しないと別のポーズが浮かばないんです。それくらいさまざまな表情をもつ、もっとも難しい、でももっとも魅力的なポーズなんだと思います」

プロフィール

上野水香(うえの・みずか)
神奈川県鎌倉市出身。5歳でバレエを始め、ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞し、モナコに留学。その後、牧阿佐美バレヱ団に入団し古典から現代作品まで幅広く踊る。2004年、東京バレエ団にプリンシパルとして入団。モーリス・ベジャールから指導を受け、『ボレロ』を踊ることを許された日本人初の女性ダンサーとなる。海外の主要な歌劇場からも数多く招かれ、世界的なダンサー達との共演を重ねている。2022年、芸術選奨文部科学大臣賞 受賞。2023年、紫綬褒章を受章した。

公演情報

東京バレエ団 上野水香オン・ステージ 全国ツアー

日:2024年3月31日(日)16:00開演(15:20開場) ※他、地方公演あり
場:横須賀芸術劇場 大劇場
料:S席12,000円 SP席11,000円 A席9,000円 B席6,000円
  ※他、各種チケットあり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事