「死ねばいいのに」が「もう少し生きてみようか」に反転していく 人間の本質に迫った京極夏彦ミステリー堂々の舞台化!

「死ねばいいのに」が「もう少し生きてみようか」に反転していく 人間の本質に迫った京極夏彦ミステリー堂々の舞台化!

 数々のベストセラー作品で知られる京極夏彦の文壇デビュー30周年記念の一環として、舞台『死ねばいいのに』が上演される。独特な世界観の京極作品の中でも異色と言える本作は、他に類を見ない人間の内面を炙り出した、究極のミステリーとの呼び声も高い。この作品の舞台化に向けた想いを、脚本・演出のシライケイタと、主演を務める新木宏典という、その名を聞いただけで興趣の高まる2人が語ってくれた。

シライ「原作ものをお芝居にするときには常に〝原作が何を書きたかったのか?〟から離れないことを一番意識しているのですが、2時間強の舞台にするには演劇的な仕掛けが必要になることもあるんです。でも今回は、京極さんの書かれた構成のまま忠実に戯曲化しています。逆にそれ以外にはないな、というほどしっかりした構造の作品なので」

新木「京極さんの人間観察力がすごいですよね。僕が演じる渡来健也が訪ねていく人とひたすら会話をする話なので、休憩なしでどこまでお客さまを惹きつけられるか。想像力を持たせつつも、不親切にならずに物語を提示していくかが非常に難しいなか、シライさんの台本は、バランスの取れた台本だなと」

シライ「この作品に休憩は入れられないから、一気に突き進むしかないよね」

 「死ねばいいのに」という言葉の重さについてはいかがですか?

シライ「元々10年ちょっと前に書かれた小説なので、『死ねばいいのに』という言葉もポンと提示できたのだろうけど。それをセンシティブになっている今上演するにあたっては、『死ねばいいのに』が反転して、ここから先は死しかないんだったら、じゃあもう少し生きてみようか、と思ってもらえたらいいのかなと」

新木「確かにプライベートで言おうとは思わない言葉ですが、タイトルでもあるこの台詞があることによって、渡来という人物はこれが言えてしまうキャラクターなんだと理解して役作りをしていけるので、俳優としては言えない言葉ではないですね」

シライ「衝撃があるからこそトラウマが引き出されたり、誰にも言えなかった悩みを吐露できたりするわけだしね」

新木「決して難解でも身構えるような話でもないので、『この表紙の人好きだな』と、偶然カンフェティを手に取った方にも、ふっと目に留めて興味を持っていただけたらいいなと思います。気づいたら2時間経っていたと感じられる作品になるよう稽古を積んでいくので、ぜひ劇場にいらしてください」

(取材・文:橘 涼香 撮影:間野真由美)

プロフィール

新木宏典(あらき・ひろふみ)
兵庫県出身。2007年『獣拳戦隊ゲキレンジャー』理央役で注目を集める。2021~ 22年、ミュージカル『刀剣乱舞』にっかり青江 単騎出陣にて、一人芝居で全国47都道府県を巡業。主な出演に、舞台『モノノ怪~化猫~』、ムビ×ステ『漆黒天』、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズなど。また、演出としても活躍しており、舞台『幽☆遊☆白書』(共同演出兼出演)、ドラマチックライブステージ『アイドルマスター sideM』などを手掛ける。

シライケイタ
演出家・劇作家。劇団温泉ドラゴン代表。蜷川幸雄演出『ロミオとジュリエット』パリス役で俳優デビュー。2011年より劇作と演出を開始。温泉ドラゴンの座付き作家・演出家として数々の作品を発表。「若手演出家コンクール2013」において、優秀賞と観客賞受賞。2015年、『BIRTH』で韓国・密陽演劇祭において戯曲賞、第25回読売演劇大賞にて杉村春子賞受賞。2019年度読売演劇大賞においても上半期の演出家ベスト5に選出。日本演出者協会理事長。日韓演劇交流センター会長。2023年7月より、座・高円寺の芸術監督に就任。

公演情報

舞台『死ねばいいのに』

日:2024年1月20日(土)~28日(日)
場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
料:一般9,500円 
  U-25[25歳以下]5,000円 ※要身分証明書提示 
  (全席指定・税込)
HP:http://stage-shinebaiinoni.jp/
問:サンライズプロモーション東京 
  tel.0570-00-3337(平日12:00〜15:00)

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