『嵐になるまで待って』が今夏、キャストと音楽を一新して待望の上演! 作品を通じて、手話という文化の素晴らしさをより多くの人に伝えたい

『嵐になるまで待って』が今夏、キャストと音楽を一新して待望の上演! 作品を通じて、手話という文化の素晴らしさをより多くの人に伝えたい

 長く愛される成井豊の代表作の1つ『嵐になるまで待って』が、7年ぶり6度目の上演を迎える。

成井「初演は手話のことなど知らずに脚本を書き、演出家に託しました。97年に自分の演出で再演するにあたり、手話やろう者、ろう文化をきちんと知りたいと思い、ろう者の方を招いたワークショップなどで学びました。舞台で手話をやりたいと思ったのは、ろう者の方が手話で話している様子が美しく、格好良いと思ったから。1つの身体表現としての面白さも感じました。

俳優教育をする際、手を使えない若い役者が多いのですが、手話を教えると非常に役立つんです。作品を通じ、手話という素晴らしい文化を広める役割を果たせればと思います」

 作品のキーマン、波多野を演じるのは多田直人。意外にも、これが本作初出演だ。

多田「ずっと客席から観ていて『いいな』と思っていたので、今は『やるぞ!』という気持ちです。波多野は狂気を孕んだ役ですが、役者にとって狂気を演じるというのは魅力的。稽古場や本番で相手役と向き合った時、どんな自分が出てくるか。まだ見ぬ自分に会えそうな気がしています」

 成井が絶大な信頼を寄せる俳優・粟根まこと。西川浩幸が務めてきた広瀬教授を演じる。

粟根「広瀬教授は語り部として舞台上にほぼずっといて、客席とストーリーを繋ぐ役。演者と観客両方に寄り添う必要があり、西川くんはそれが上手いんです。彼は優しさが際立つ人間性ですが、私はそれほど愛がある人間ではないので(笑)。彼とは別のアプローチ、たとえば冷静な観察者的な方向になるのかなと」

 成井が「ベストキャスト」と胸を張る布陣。しかも今回は使用楽曲を一新するという。

成井「23年の『嵐~』を作るには、音楽も変えた方がいいかなと。最終的に面白いものになる自信はありますが、その面白さがどういう形なのかは未知数。そのスリルも含めて楽しみたい」

多田「劇団公演では劇団員が成井さんの意図を汲んで稽古を進めていきますが、プロデュース公演は成井さんが役者たちに丁寧に説明をしてくださる時間があり、それが僕は好きで。成井さんの“今”の思考に触れられる貴重なチャンスだと思っています」

粟根「成井さんがある種“やり慣れた”作品に、どれだけ新しいものを持ち込めるか。みんなでどう作り上げていくかが楽しみです。何が変わろうとも“これが成井豊の『嵐になるまで待って』だ”と証明したいと思っています」

(取材・文:木下千寿 撮影:山本一人(平賀スクエア))

お祭りといえばこれ!ついつい食べちゃう屋台飯は?

成井 豊さん
「私は子供の頃からお祭りが嫌いです。混雑がひどいし、屋台で綿あめなどの食べ物を買うか、金魚すくいなどのゲームで遊ぶぐらいしか、することがない。何が楽しいのか、今もってわかりません。それでも、娘や息子が小さい頃は仕方なく行っていました。2人はチョコバナナが大好きで、私も一緒に食べていました」

粟根まことさん
「大人になってからはほとんどお祭りに行っていませんが、子供の頃に好きだったのは“東京コロッケ”。パチンコの入った場所によって数個の小さなコロッケを串に刺してくれました。ジャンクでしたが美味しかったですねえ。ただ、これって実は大阪北部の屋台にしか無かったそうなんですよ。だから東京コロッケなのに東京には無い。逆のパターンもありまして、東京の屋台に行くと“大阪焼き”ってのがあるんです。直径8cmくらいの小さなお好み焼きなんですけど、これって大阪には無いんです。いや、無いと思っていたんですけれども天満駅前の路地にある小さなお店で発見しまして、ああ大阪にもあるんだとか思いました」

多田直人さん
「一番惹かれるのは“わたあめ”です。まさにお祭りのときじゃないとお目にかかれない、流行りのアニメの外装を身にまとった、あの邪悪な砂糖のふわふわ妖精に心奪われます。でも、無粋な私は、価格面のコストパフォーマンスを省みて、結局手を出さず、よだれだけ分泌して通り過ぎます」

プロフィール

成井 豊(なるい・ゆたか)
1961年10月8日生まれ、埼玉県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、高校教師を経て1985年に演劇集団キャラメルボックスを創立。劇団公演の脚本・演出を手掛ける。外部公演での脚本・演出、テレビドラマの脚本、演劇講師など多角的に活動。

粟根まこと(あわね・まこと)
1964年8月7日生まれ、大阪府出身。1985年、『ヒデマロ2~銀河烈風斎の逆襲』より、劇団☆新感線に参加。冷酷な悪役からインテリジェンス漂う役どころまで、多彩なキャラクターを演じ、劇団内外で広く活躍。

多田直人(ただ・なおと)
1983年12月17日生まれ、北海道出身。桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻を経て、2004年演劇集団キャラメルボックスに入団。劇団公演では主演も多く務めるほか、外部公演にも多数出演。

公演情報

NAPPOS PRODUCE『嵐になるまで待って』

日:2023年7月22日(土)~30日(日)
場:サンシャイン劇場
料:一般8,000円
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://napposunited.com/arashi2023/
問:ナッポス・ユナイテッド mail:support@napposunited.com

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