病と闘う子供達に笑顔を贈るクリニクラウン（臨床道化師）の奮闘　笑いに人生をかけた芸人が挫折の末に見つけた居場所

　社会テーマ・実際にあった事件をモチーフに、「考えてもらう」ではなく、「知ってもらう」をコンセプトとした作品を手掛ける劇団ナイスコンプレックス。「コロナ禍で疲れきった心を治したい」と劇団代表作を7年ぶりに再演する。売れない芸人だった大村直人（おーちゃん）が挫折の末に出会ったのは難病と闘う子供達。消えてしまった笑顔を取り戻したい！とピエロに扮し奔走するが、そこには現在の日本の医療とケアクリニックの形ではできないズレがあった。理想を現実のものにするべく、彼が取った行動とは!?　2012年の公演以来、11年ぶりにおーちゃんを演じる藤原祐規、院長役の赤眞秀輝、看護師役の富田麻帆に本作への意気込みを聞いた。

藤原「11年越しだけでなく、コロナ禍でこの作品を再演する意味合いをより強く感じています。芸人としては成功できなかったおーちゃんですが、その根本にはあなたの笑顔が見たいという無償の気持ちがあり、その感覚を自分の中で増幅していくことが演じる上で鍵になると思っています。また作中には様々な事情を抱えた人物が登場します。親子、上司の立場、独身とそれぞれの立場から見ることで、また違った印象を持ってもらえると思います。約1年の延期を乗り越えた分、気持ちがこもっています。是非、多くの方に劇場で観て頂きたい作品です」

赤眞「前回、院長の梨田を演じた時はとにかく嫌な奴になろうと心掛けましたが、時間が経って実年齢も近くなり考えも変わりました。おーちゃんの活動について出来るものならやってごらんなさい。でも現実を見て、諦めも肝心だよというスタンスで行こうかと。一方で、患者を思う気持ちは同じであり、自分ができない事に取り組むおーちゃんの姿に眩しさを感じている部分もある。その心境の変化をお見せできたらと思います」

富田「おーちゃんが取り組もうとしている事は日本の医療では圧倒的に少数派であり、声を挙げる事はとても勇気がいることだと思います。それでも病気の人達に真っすぐな気持ちと愛情で接するおーちゃんに対して、自分はできないけども、出来る限りサポートしてあげたいと思っているのが看護師の智子です。ナイコンさんには毎年参加させてもらっているので、一体感を大事にしながら、作品の中で届けられるメッセージは何かを一生懸命考えながら創っていきたいです」

（取材・文：小笠原大介　撮影：間野真由美）

藤原祐規さん
「“剣と魔法の世界”。いやまじで普通なんですけど、ゲーマーの僕としてはそういう世界に憧れるんです。でもあれですね、任意で元の世界に戻れる前提で行きたいですね。恐らく剣の才能も魔法の才能もないと思うんだよな。だから観光がてら行ってみたいだけと言うか。だから危険な目にも遭いたくないですし。いきなり強いモンスターと出会ったりもしたくないですし。綺麗な街並みだなあ。この食べ物美味しいなあ。魔法使ってみたいなあ。その程度のやつです（笑）」

富田麻帆さん
「自由に空を飛べて、動物と会話ができる世界に行ってみたい！　空を飛ぶのはミュージカル『ピーターパン』を観た時からの夢なんです。いつもとは違う角度から街を見て新たな発見をしてみたい。鳥の気分を体験したいですね。そして鳥たちと一緒に飛びながら『今日の風は飛びやすいね〜』なんて会話をしてみたいです」

赤眞秀輝さん
「人が自力で空を飛べる世界。“歩く”や“泳ぐ”と同じ様に基本的には誰もが身につけることが出来て、速さや持久力も鍛える事で上昇する、みたいな。大空を飛び回りたいとか爽快感を求めてる……訳ではなくて自力で遠距離を移動出来たら財布に優しいなぁという切実な願いからです」

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