赤星ユウが満を持して立ち上げる「ゼロテラ」始動! 3次元の演劇を起点にプロジェクトが多彩に展開する「逆2.5次元」の世界を!

赤星ユウが満を持して立ち上げる「ゼロテラ」始動! 3次元の演劇を起点にプロジェクトが多彩に展開する「逆2.5次元」の世界を!

 「レティクル東京座」の主宰・脚本家・演出家として活躍してきた赤星ユウが、劇団解散後に立ち上げた、自身の作品を展開するための個人団体「ゼロテラ」。旗揚げ公演であり、新プロジェクトのスタートでもある『クラド』が、9月28日~10月2日に東京・品川の六行会ホールで上演される。
 2次元の平面に存在する非現実の存在を、3次元の実在する人間たちが、原典に最大のリスペクトをもって実体化する「2.5次元」と呼ばれる作品群。『クラド』はそんな「2.5次元」の向こう側、3次元の演劇を起点に、イラストレーションをはじめ様々なメディアに展開していくことを目指して「逆2.5次元」を掲げた壮大なプロジェクトの第1作だ。
 かつて美しかった出雲の地が、度重なる再開発の末に「水」害に吞み込まれゴーストタウンと化し、黒社会の無頼漢たちが闊歩する「出雲水都」に変貌した……。という世界観のなかで、「出雲水都」の解体を画策する役人と、その繁栄を守り抜こうとする者との、決して混じらず、交わらない絆が描かれていく。
 そんな作品で、元エリート官僚で不祥事に巻き込まれ「出雲水都」に左遷されたニック(新國アラト)役の千葉瑞己。任侠一家・八戸掛組の組長、八戸掛キュウセン役の黒木文貴。かつて刑事としてキュウセンと死闘を繰り広げた真琴ジン役の氏家蓮が、赤星と共に新たな作品とプロジェクトに臨む思いを語り合ってくれた。

───待望の新プロジェクト始動ということですが、まずこの「逆2.5次元」という着想についてお話いただけますか?

赤星「この20年くらいの間に、漫画、ゲーム、アニメなど他媒体とのタイアップ、何か原作があるものを3次元化していく作品群がメジャージャンルとしてあったと思うんです。その中で私は2012年に『レティクル東京座』を旗揚げして、オリジナルの演劇をずっと作ってきました。劇団は2021年に解散したのですが、そこで培ってきたノウハウを活かして今度は演劇、舞台作品がまず中心にあって、そこから他媒体に派生していくプロジェクトを作りたいなと思ったんです。その為に新たにスタートしたのが『ゼロテラ』で、この『クラド』が旗揚げ公演になります。元々私は漫画やアニメなどの媒体が大好きで、私が作る演劇にもそれらの要素が多くありましたし、劇団時代にファンの方たちが、私の舞台をイラスト化してくれたり、小説化してくれたりしていたんですね」

───いわゆる二次創作ですね?

赤星「そうです。それがとても盛んだったこともあって、周りの方々から『舞台を原典にして他媒体に派生していく……これは逆2.5次元だよね』と数多く言っていただいたことが、このプロジェクトを意識したきっかけでした。今回はその第1弾として、キャストさんが役柄に扮したャラクタービジュアルを、プロのイラストレーターさんにイラスト化していただきました。ここからゆくゆくは漫画やアニメなど、色々な媒体に派生していけばいいなと思っています」

───作品や役柄のお話の前になってしまって申し訳ないのですが、キャストの皆様は、ご自身から書かれたイラストをご覧になっていかがでしたか?

千葉「普段2.5次元の舞台をやらせていただいていて、原作のキャラクターがあって、それに寄せるような形でメイクをしたり、衣装をつけて写真を撮っていただくことが多いなか、自分をイラストにしてもらうという経験がなかったので、『こうなるんだ!』という感動がまずありました」

黒木「シンプルに言うと『似てるな』と思いましたし、ビジュアル解禁のあとも『こんなに似てることある?』と言われたりしたんですが、僕をイラストにしていただいた訳ですから、それはそうですよねと(笑)」

千葉「そうなんだけど(笑)やっぱり『おぉ~!』って思ったよね」

黒木「思いました。ここからさらにどんな展開に繋がっていくんだろう、と思うとワクワクします」

氏家「とても素敵なイラストを描いてくださって嬉しかったんですが、イラストが素敵すぎて、このイラストに負けないようしないと、という気持ちでいます」

───全く負けてはいないと思います!そうしたプロジェクトの第1弾として選ばれた『クラド』ですが、内容に込められた思いというのは?

赤星「出雲をモチーフに、様々な要因で水に沈んでしまった『出雲水都』という街が出来上がって、そこに任侠一家ですとか、黒社会の人々が集まって、『クラド』という巨大リゾート施設を作り、そこに巻き込まれていく人々の話です。主人公は官僚側の人間で、黒社会の人間と対立していく任侠ものですが、そこに様々な神話から着想を得た架空の出雲神話という新たなエッセンスを入れていますので、カオス感も強い作品になっていくと思います」

───そうした作品世界のなかで、演じる役柄について教えていただけますか?

千葉「いま言ってくださった官僚の新國アラト、ニックを演じます。出雲水都に左遷されてくる元エリート官僚で『クラド』を解体しようとしている人物です。(赤星)ユウさんとは『レティクル東京座』時代の作品に出演させていただいていて、そののちも僕の舞台を観に来てくださったり、僕が観に行かせてもらったりと、ずっと親交があったなかで、今回主人公的な立ち位置の役柄をいただいて。そうした蓄積があったので、ユウさんが脚本を書かれる時に、キャストを見てかなりの部分であて書きをされる方だと知っていましたから、今回の役柄には驚きがありました。以前にご一緒させていただいた時の役とも全く違いましたし、僕がこれまでに全く演じてこなかったタイプの役だったので。でも台本を読み進めるうちに、なるほど僕のなかからこういう部分を拾って、ユウさんは書いてくださったのかな?と、役を通して自分を見ているようなところもあり、とても新鮮で面白いです。しかも衣装がカッコ良くて! フィッティングの時からものすごくテンションがあがりました。そのビジュアルを見て、更にユウさんが脚本を修正したりもしてくださっているので、自分のなかからどんなものが出てくるんだろうか?と自分でもちょっとドキドキしています。最初にご一緒したのが2018年なので、4年の間に成長した姿を見せられたらなと、気合いが入っています」

黒木「僕は今回初めてユウさんからお声がけいただけたのですが、演じる八戸掛キュウセンが任侠一家の組長なので、いまあて書きされると伺って、僕ってそういうイメージだったのかな!?と(笑)、そこがいますごく気になっています(笑)。僕は鳥取県の境港市出身で、お隣の県である島根県の松江市は『水の都』と言われているんです。それが今作の題材に近しく、また大社は車で+2時間くらいの場所で、実家に住んでいる時にはよく行っていましたから、そういう親しみの強い場所がモチーフになっているストーリーを読んで、はじめての経験でもありこれは楽しみだな!と思いました。特に僕は元々和服がすごく好きなので、キュウセンの衣装が和装と伺ってとても嬉しかったですし、それに加えて今回のキャラクターには左足が不自由という要素もあるので、表現の幅をさらに広げて演じたい と思っています」

氏家「僕が務める真琴ジンは、かつて刑事で黒木さん演じる八戸掛キュウセンと死闘を繰り返し、現在は何故だかホームレスのように扮しているという役柄です。とても謎めいた部分が多いのですが、かなり熱いものも持ち合わせているのかな?と、台本を読んで思いました。物語は過去と現在を行き来するのですが、千葉さん演じるニックとは共通点もあり、行動を共にするシーンもあるので、どのキャラクターにもドラマがありますが、真琴ジンもひとつのキーマンになる部分があると思うので大切に演じたいです。衣装はホームレス風と伺っていたので、どんなものだろうと思っていたら、すごくオシャレでカッコいい衣装で! そこもひとつの謎として楽しんでいただけるのかな?と思っています。」

───いま、自分のどこをイメージして役を書いてくださったのかな?というお話が出ていますが、その辺りはどのように?

赤星「『レティクル東京座』では、約10年間ずっと役者の顔を白く塗った、白塗りの演劇を作っていたんです。自分が脚本家であり、演出家でもある時って、もちろん独立している部分もあるのですが、この演出がやりたいからこの脚本にしよう、というような両者がリンクしている部分も多いんですね。そこから今回、役者が一般的な肌の色をしている作品を書こうとした時に、すごく悩んでしまって。白塗りなら成立する脚本や演出が、肌色の顔の人物が演じるのを考えると『これはおかしいな』と思うことがたくさんあり、まずその整合性を取るのが大変で。自分にとって初めて演劇を書いたのかな?というくらいの スタンスなんです」

千葉「へ~!!」

黒木「そうなんですね?」

赤星「そうなの。だからキャストの皆さんの外面の要素、演じ方の要素など、複合的なところから知恵や雰囲気をお借りして、台本に落とし込んでいるものがたくさんあります。もちろん自分が書きたいものも書いていますので、皆さんにない部分、演出でこれから一緒に踏み出していくものも半々にあると思います。それがうまく重なり合っていって、新しいプロジェクトである『ゼロテラ』のオリジン、原点を皆さんと作り上げていくのがとても楽しみです」

───また、今回リゾートカジノ『クラド』を管理するボス、鈴木遥太さん演じる天正ユキ(テネシー)がニックネームをつける、という設定ですよね。名前をつけるとそこに人格が発生するだろうから、とても面白いなと思いますが、皆さんご自身はこれまでどんなニックネームで呼ばれてきましたか?

千葉「僕は今回ニックと呼ばれるんですが、それに近いものだと『みっくん』と呼ばれていました。小さい頃なので瑞己の“みず”が発音しにくくて『みっくん』は、かなり長く呼ばれていましたね」

赤星「ツイッターネームはじゃあそこから?」

千葉「そうです、そこから来ています。ニックに近いですよね!」

黒木「僕はふみちゃんとか、ふみ君と言われていますが、亡くなった祖父は『ふめ!』と呼んでいました(笑)それはすごく印象に残っています」

氏家「僕はダンスをやっていた頃に、ダンサーネームで『ミッキー』と呼ばれていました。名前と関係ないんですけどね(笑)」

赤星「私は『赤星さん』がおそらくちょっと呼びにくいので、皆さんから『ユウさん』と呼ばれていて、それ以上派生していくことがないです(笑)」

───確かに、お呼びしやすいお名前ですよね。今回のお稽古場では、皆さんがどう呼び合うのかな、もとても気になりますし、様々な可能性がここから広がっていく作品に、お話を伺ってますます期待が膨らみます。では改めて、この作品を楽しみにされている方たちにメッセージをいただけますか?

赤星「新しい団体、新しい演目、新しいプロジェクトということで、まっさらな出会いからスタートしています。出雲の縁結びをモチーフにしている作品で、ここから色々な方との縁がつながっていくといいなという願いを込めて、“縁”とは何か?が表現できたらと思っています。ですから皆さんにこの演目を観にきていただいて、私や『ゼロテラ』や『クラド』という作品から様々なご縁がつながっていくといいなと思っています」

黒木「ホームページでストーリーなども見ていただいたと思うのですが、僕から言えることはひとつです。ご来場くださった皆様に『闇戸之姫陰御子神(くらどのひめみこがみ)のご加護がありますように』です。いま『それどういうこと!?』と気になった方は、是非劇場に確かめに来ていただきたいです。『うたかたの楽園、リゾートカジノ“クラド”へようこそ』皆様のお越しをお待ちしております!」

氏家「逆2.5次元プロジェクトと、赤星ユウさんワールドに初参加させていただきます。エンタメ要素がたくさん詰まっていて、自分でもまだこれからどうなっていくのかわからない、という状況がとても楽しみでもあります。ユウさんともそうだし、キャストの皆さんともそうですし、観て下さるお客様ともご一緒に、演劇を盛り上げていけるように頑張りたいです。独特の世界観の中にも人と人との“縁”が描かれていますので、そういった部分でもお客様にメッセージを残せるといいなと思っています」

千葉「まず久しぶりにユウさんとご一緒できるということで、ユウさんの作り出す世界のいちファンとしても、またあの世界観のなかで生きられるのがとても嬉しいです。この大好きな世界をたくさんの方にお届けできるのも何よりも嬉しいことなので、絶対に面白いものになると確信がありますから、まだユウさんの世界をご存じない方にもたくさん楽しんでいただけるように精一杯、全身全霊で挑みたいなと思っています。僕自身も“オタク“なので、敢えてこの言葉を使わせていただきますが、“オタク“なら絶対にユウさんの作り出す世界は好きです! 視覚的にも、演出的にも、脚本の台詞の言い回しも、そもそもの世界観も、他では味わえないものがたくさんあります。各個人の持っている趣味嗜好に色々な角度から矢が飛んできて刺さる作品なので、是非多くの方に観に来ていただきたいです! 頑張りますので、応援よろしくお願いします!」

(取材・文&撮影:橘 涼香)

プロフィール

千葉瑞己(ちば・みずき)
宮城県出身。舞台を中心に俳優・声優として多くの作品で活躍している。近年の主な舞台作品に、『滄海天記』カズヤ役、『悪役令嬢ですが攻略対象の様子が異常すぎる』レイド・ノクター役、2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ第12幕『裏斬心-Children are sometimes ruthless and cruel.-』御風呂庵役、ミュージカル『ピオフィオーレの晩鐘』ニコラ・フランチェスカ役、饗宴『茜さすセカイでキミと詠う~絆~』高杉晋作役などがある。

黒木文貴(くろき・ふみたか)
鳥取県出身。舞台を中心に俳優として数多くの作品で活躍を続けている。近年の主な舞台作品に、『一瞬の風になれ』高梨正己役、『オサエロ』中原修役、『爆剣〜東京転⽣死合〜』オノ役、『世界は僕のCUBEで造られる・2022』角田役、『アイ★チュウ ザ・ステージ ~Le musée tricolore~』三千院鷹通役、『The Great Gatsby In Tokyo』─Classic version─ ニック・キャラウェイ役などがある。

氏家 蓮(うじいえ・れん)
北海道出身。俳優として、ミュージカル『ちっちゃな英雄』でデビュー。以降、舞台を中心に活躍する一方、ヒーローユニット「特撮Boyz」“青”としての活動や、レインボータウンFMラジオ番組「Samedi Lips【男塾2】」ではパーソナリティを務めている。主な舞台作品に、音楽劇『男おいらん~歌舞繚乱~』柾木役、『青春歌闘劇バトリズムステージINITIO』ユウ役、『Satorare~キミに届く、心の声~』里見健一役などがある。10月には、舞台『笑わない君と笑う僕』への出演が控えている。

赤星ユウ(あかほし・ゆう)
埼玉県出身。2012年「レティクル東京座」を旗揚げし、主宰・脚本家・演出家として本公演での全ての脚本・演出・作詞を担当。2021年、劇団解散後に立ち上げた個人団体『ゼロテラ』で、演劇が原典となって様々なメディア展開につなげる新プロジェクトを敢行。本作品が第1作公演となる。

公演情報

ゼロテラ /001 『クラド』

日:2022年9月28日(水)~10月2日(日)
場:六行会ホール
料:プレミアムS席[前方席・特典付]10,000円
  特典付き一般席9,000円 一般席8,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://zeroterra.jp/crud/
問:ゼロテラ
  mail:info.crud2022@zeroterra.jp

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