藤原歌劇団創立90周年。壮大なグランドオペラの名作を新制作 欲望の罠、永遠の贖罪―― 魂の契約が生み出す壮大な物語

藤原歌劇団創立90周年。壮大なグランドオペラの名作を新制作 欲望の罠、永遠の贖罪―― 魂の契約が生み出す壮大な物語
Image by Amy Drake Photography

 日本オペラ界で最古の歴史を持つ藤原歌劇団が創立90周年を迎えるにあたり、フランスの作曲家シャルル・グノーが作曲したグランドオペラ『ファウスト』を新演出で上演する。ドイツの文豪ゲーテの劇詩を題材にした本作は、人生に疑念を持ち、悪魔と禁断の契約を交わして永遠の若さを手に入れた老博士の、1人の美しい女性との出会いを通して愛と呪い、悔恨を描く壮大な物語だ。同劇団の節目を飾ってきた大切な作品に、ヒロイン・マルグリート役の迫田美帆(ソプラノ)も特別な思いを寄せている。

 「マルグリート役に抜擢されたのは光栄な事ですし、自分達が新たな劇団の歴史を創るという意味も身が引き締まる思いです。本作は色んな人間の感情が詰まった壮大なドラマであり、バレエや合唱なの豪華な要素も加わるので、初めてオペラを観る方にもうってつけの機会と言えます」

 ファウストと一夜を共にして身籠った子を、騒乱の中で亡くしてしまう悲劇のヒロインをどのように捉えているのだろうか。

 「マルグリートは愛が深くて純粋な子だと思っていて、ファウストと出会うことで恋に落ちて、様々な苦悩に苛まれていく。ある意味、物語の最大の犠牲者なのですが、最期の最期まで、献身的な愛でァウストを包み込みます。彼女のそんな心情が色濃く表現されることで、ファウストと悪魔のメフィストフェレスが手を組む罪深さがより引き立つのではないかと思います。感情をいかに繊細に表現することができるかが大切であり、自分自身にとっての挑戦でもあります。また歌手を志した時からの憧れの存在である砂川涼子さんとWキャストとしてご一緒できることは非常に嬉しいです。でも、意識し過ぎず自分なりのマルグリートを表現したいです」

 オペラの魅力を伝えるべく尽力してきた藤原歌劇団。だからこそ多くの方に観て欲しいと呼びかける。

 「オペラの最大の魅力は歌手の生の歌声ですが、同じ人でも毎回全く同じ歌にはなりません。その場、一度限りの芸術を体感できることだと思います。また歌だけでなく、音楽と演技と舞台美術が融合して加わった総合芸術がオペラだと言えます。物語としても楽しめることは勿論、目や耳だけでなく、お客様ご自身のすべての感覚を研ぎ澄まして楽しんでいただける作品だと思いますので、この機会に是非、沢山の方に観て頂きたいです」

(取材・文:小笠原大介)

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2023年を総括!と聞いて、一番最初に浮かんだ出来事は?

 「夏にアメリカのサヴァンナという町で蝶々夫人のタイトルロールを歌ったことです。初めての海外での舞台に、不安もありましたが、素晴らしい共演者やスタッフの皆さんに恵まれ、とても良い舞台を作り上げることができました。会場が総立ちとなったカーテンコールでの感動は、忘れることができません。また大変ありがたいことに、この時のパフォーマンスが高く評価され、アメリカでのキャリアをスタートするきっかけとなりました」

プロフィール

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迫田美帆(さこだ・みほ)
東京藝術大学卒業。サントリーホール オペラ・アカデミー・アドバンスト・コース修了。第13回東京音楽コンクール第2 位。第50回日伊声楽コンコルソ、第86回日本音楽コンクール入選。藤原歌劇団には、2019年、『蝶々夫人』のタイトルロールでデビュー。藤原歌劇団 団員。アメリカ在住。

公演情報

藤原歌劇団公演『ファウスト』

日:2024年1月27日(土)・28日(日)
  ※他、愛知公演あり
場:東京文化会館 大ホール
料:S席17,000円 A席14,000円 B席11,000円
  C席8,000円 D席6,000円 E席3,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://www.jof.or.jp/
問:日本オペラ振興会チケットセンター
  tel.03-6721-0874(平日10:00〜18:00)

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