強盗放火殺人を機に巻き起こる、取調室での攻防 「こんな世界があるんだ、の一歩先を届けたい」

強盗放火殺人を機に巻き起こる、取調室での攻防 「こんな世界があるんだ、の一歩先を届けたい」

 RISU PRODUCEの社会派三部作の1作『ぼくはだれ』が、新キャストで6年振りに上演される。初演時に大阪の演劇祭にてグランプリ・最優秀脚本賞・作品賞の3冠を獲得。その後、戯曲の改訂を繰り返し再演を重ね、今回4度目の上演となる。自他共に認める“リスプロ”の代表作だ。朝枝知紘はリスプロメンバーになる前に観劇した今作をこう振り返る。

朝枝「取調室という密室の中で、人の葛藤や憎しみが混じり合う。一言では言い表せない怖さを感じ、これぞ演劇だと思いました」

 本作で描かれるのは、強盗放火殺人事件の被疑者として浮上した青年・亀矢と警察との攻防だ。亀矢を犯人と決めつける警察は、無罪を主張する亀矢に度を超した取り調べを強行する。

 主演の富田健太郎は、自身が演じる亀矢についてこう語った。

富田「亀矢は、本来自分達を守ってくれるはずの警察から、脅迫まがいのことをされます。自分の意見が通らない苦しみ、また彼に隠された“真実”を切実に忠実に演じていきたいですね。」

 警部補役を務めるのは高橋明日香。警部補役を女性が演じるのは、今回が初となる。

高橋「ずっと男性の方が演じていた役なので、濃密な空間に溶け込めるのかというプレッシャーはありますね。ですが女性ながらに警部補にまで昇任しているということは、かなりの覚悟を持って働いているはず。そういう部分を深く掘り下げてつくっていきたいなと思っています。一体誰が本当のことを言っているのかも見どころです」

富田「リスプロには人間に対しての愛と懐の深さがあるんです。ヒールのような役にも、それぞれ信じるものがあり、心があります。だからこそ起こる人間と人間のすれ違いを、ものすごく丁寧に描いているんです」

 どの人物にもそれぞれのストーリーがある本作。自分たちを取り巻く社会について考えるきっかけとなるはずだ。

朝枝「人は弱くて脆いもの。だから他人に意地悪をするし、優しくもできるのだと思います。登場人物の誰か1人にでも共感して、響くものがあればと思います」

高橋「“社会派”と聞いて難しそうと思う部分もあるかもしれませんが、深い人間ドラマもある作品です。ぜひ多くの方に観てほしいです」

富田「目を背けたくなるような事実を丁寧に描いている作品だからこそ、いろんな方に観ていただきたいです。『こんな世界があるんだ』の一歩先、『自分だったらどうなんだろう』というところまで届けることができたらと思っています」

(取材・文:いつか床子 撮影:山本一人(平賀スクエア))

「突然ですが、急遽一週間の休暇が取れることになりました。どこへ行っても、何をしても自由だとしたら……どのように過ごしますか?」

朝枝知紘さん
「アフリカのサバンナで野生動物たちを追いかけるキャンプに参加し、雄大な大自然の中で自身のちっぽけさを実感したいですね。ライオンやチーターに襲われたらそれはそれで悔いはありませんが、ハイエナは嫌です。
 時間に余裕があるなら、カナダのイエローナイフでオーロラ観測もしてみたいです。どちらも過酷な環境ですが、本物の感動が待っているはずです。
 理由は、たまに僕自身がとても狭い世界の中で生きてるなーと思うことがあるので、もっと地球を感じてみたいです」

富田健太郎さん
「最低限の装備を持って山の中で一人で過ごしたいです。それか、ご時世でずっと行きたくても行けなかった海外へ行くか。ちょうどベトナムへ一人旅に行こうとしてたタイミングでコロナが流行してしまったので……。
 「一人」という点にこだわるのは、自身で考えて行動し様々な事を感じることが大切だと思っているので、それを純粋に素直に感じたいからです。自分が一人の人間として何がやりたくて何をすべきなのか。それを探す旅ですね。友達や先輩、周りの方に恵まれ支えてもらっているからこそ、自分という人間と向き合っていきたい。これは、今後人生をかけて大切にしていきたい事です」

高橋明日香さん
「どこへ行ってもいいと言われたら……やはり海外に行きたいです。
 コロナ禍で自由に海外に行き来できなくなってしまったので、余計に行きたいという気持ちが募っています。
 今一番行きたいのはアメリカ。まだ行ったことがなくて、生きているうちに一度は行ってみたいと思っている国だからです。本場ブロードウェイのミュージカルは絶対観たいし、1週間あるなら気の向くままに自由に一人旅もしてみたい。そして海外の友達をつくるのも夢なので、まずは英語を勉強するところから始めたいと思います」

プロフィール

朝枝知紘(あさえだ・ともひろ)
1989年2月15日生まれ、山口県出身。2015年、RISU PRODUCE vol.17『イキザマ3』をきっかけに客演として出演を重ね、2019年にメンバー入り。2022年10月には『片隅に灯す』で自身初となる作・演出を担当する。テレビ・CMなどの出演も多く、幅広く活躍。

富田健太郎(とみた・けんたろう)
1995年8月2日生まれ、東京都出身。2011年にスカウトをきっかけにモデルデビュー。2013年『恋するブロードウェイ♪ vol.2』で初舞台を踏み、以後俳優として活躍。主な出演作に『宝塚BOYS』、『ボーイズ・イン・ザ・バンド ~真夜中のパーティー~』など。映像作品への出演も多く、2022年には出演映画3本の公開が決定している。

高橋明日香(たかはし・あすか)
1987年10月19日生まれ、神奈川県出身。2009年に朝倉薫演劇団『恋する悪魔』で初舞台を踏み、以後100本を超える舞台に立つ。2012年より、アイドルユニット「アリスインアリス」のリーダーとして2016年まで活動。今出舞と「あすまい」を結成し、お笑い芸人としても活動するなど、ジャンルの垣根を超えて活躍。

公演情報

RISU PRODUCE vol.26  ぼくはだれ 〜取調室での攻防 2022〜

日:2022年6月1日(水)~5日(日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:5,800円(全席指定・税込)
HP:https://risuproduce.stores.jp/
問:RISU PRODUCE
  tel.042-364-4881(10:00~18:00)

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