若手から重鎮まで、 狂言の道を歩む者たちの現在地を見せる定例公演 演じる側と観る側それぞれが、狂言を知り、深める機会に

若手から重鎮まで、 狂言の道を歩む者たちの現在地を見せる定例公演 演じる側と観る側それぞれが、狂言を知り、深める機会に

 人間国宝・野村万作を中心とする万作の会が、年4回行っている『野村狂言座』。その第95回が8月に上演される。『禰宜山伏(ねぎやまぶし)』でシテを務める野村萬斎は、『野村狂言座』を「万作一門の根幹をなす会」と話す。

 「若手が稽古曲で基礎を磨き、中堅が難曲に挑んで経験を積み、重鎮はその熟れた芸をお見せする。また、普段の公演ではかからない珍しい演目を取り上げて伝承し、時に工夫を加えてアップデートします。よその地域、よその流儀の狂言師をゲストにお招きして交流を深めたり、観客の皆様にも個性の違いを楽しんでいただいたりします」

 今回の解説を務める萬斎に、当日の演目を紹介していただこう。

 「まず小舞『柳の下』、『掛川』。野村裕基が舞う『柳の下』は基礎中の基礎で、カルチャーセンターや大学の狂言サークルで必ず最初に習う演目です。次に『以呂波(いろは)』、これは京都大蔵流の茂山忠三郎師親子による、親子でいろはを教えるという今しか見られない演目。実の親子の微笑ましいやりとりにご注目ください。
 『狐塚』は、中堅と若手の織りなすナンセンス。田畑の鳥を追いに使わされた太郎冠者が、日が沈むと疑心暗鬼になり、見舞いに来た主人と次郎冠者を狐と思い込み……。鳴子で鳥を追う風情と後半のナンセンスの対比の妙が見どころです。
 『貰聟(もらいむこ)』は、酒に酔って妻を追い出す聟と、泣いて実家に帰ってきた娘を取りなしかくまう舅。翌日シラフになった聟は、慌てて妻の実家を訪ねます。重鎮・石田幸雄と中堅・高野和憲、若手の中村修一のバランスの取れたセリフの応酬にご注目を。
 そして『禰宜山伏』。街道の茶屋で遭遇する、伊勢の禰宜と出羽山伏。どちらが偉いかの小競り合い。勝負のため、茶屋にある大黒天を祈り比べると……。万作の柔らかな禰宜、萬斎の剛直な山伏、大黒天を万作の孫のなつ葉が演じる三代狂言です。90歳から7歳までの芸の在り方が一眼で分かります。この曲で私が山伏を演じる上で意識することがあるとすれば、横暴でありながらどこか笑いに転じる余裕、でしょうか」

 公演ではさらに詳しい解説が付き、初心者も楽しめること間違いなし。

 「我々は芸を磨き、お客様には、狂言や世代の多様性をまさしく楽しんでいただく。そして持続してゆく、伝統という文化を楽しんでいただきたいです。90歳を迎えた万作の、芸境に達した舞台をぜひお見逃しなく」

(取材・文:西本勲 撮影:政川慎治)


最近新しく始めたこと・始めたいと思っていることは何ですか?

「最近始めたこと。電子レンジのスチーム機能で、温泉卵を作ること。」

プロフィール

野村萬斎(のむら・まんさい)
1966 年生まれ、東京都出身。祖父・故六世野村万蔵、父・野村万作に師事。重要無形文化財総合指定者。3 歳で初舞台。東京藝術大学音楽学部卒業。「狂言ござる乃座」主宰。国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、舞台『敦-山月記・名人伝-』、『国盗人』など古典の技法を駆使した作品の演出など幅広く活躍。芸術祭新人賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、朝日舞台芸術賞、紀伊國屋演劇賞、芸術祭優秀賞等、受賞多数。2018 年には、演出・主演舞台『子午線の祀り』で毎日芸術賞千田是也賞を受賞。作品は読売演劇大賞最優秀作品賞にも輝いた。2002年より世田谷パブリックシアター芸術監督。東京藝術大学客員教授。2021年4月より石川県立音楽堂邦楽監督。同年6月より全国公立施設文化協会 会長。

公演情報

万作の会 第95 回野村狂言座

日:2021年8月26日(木)15:00開演(14:15開場)・27日(金)18:30開演(17:45開場)
場:宝生能楽堂
料:S席7,000円 A席5,000円 B席4,000円
  学生席3,000円 ※主催のみ取扱、詳細は公式HPにて
  (全席指定・税込)
HP:http://www.mansaku.co.jp/ 
問:万作の会 tel.03-5981-9778(平日11:00~17:00)

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