日本をこよなく愛し、“幕末明治を駆け抜けた“蒼い目のサムライ”達 シーボルト父子の物語が、今年も縁深き築地に舞い戻る

日本をこよなく愛し、“幕末明治を駆け抜けた“蒼い目のサムライ”達 シーボルト父子の物語が、今年も縁深き築地に舞い戻る

 今や世界の主要国の一つとして認められている日本。しかし、ほんの200年ほど前は武士を中心にした前近代的な社会が続いていた。それが近代化に大きく傾いたきっかけのひとつは明治維新だが、急速な近代化は日本人だけの力で為し得たわけではなかった。そこにはお雇い外国人と呼ばれる諸外国から呼ばれた学者や技術者たちが、日本の発展に尽力してくれたことが大きな推進力となっていた。

 そういった外国人の中にシーボルト父子がいる。父のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは日本開国よりも前に医者として来日。西洋医学を伝える一方で日本研究を進め、数多くの資料を母国に持ち帰った。その中に持ち出し禁止の日本地図が含まれていたことで国外追放の処分を受け、関係者も厳しい処分を受けた「シーボルト事件」は、日本史の授業でも触れることが多いのでご存知の方も多いだろう。

 しかしそのシーボルトが後に幕府の外交顧問として再び日本の地を踏んだこと。その時に息子のアレキサンデルを伴い、そのアレキサンデルは後に弟のハインリッヒを連れてきたこと。そしてこのシーボルト兄弟は外交官として日本の対外政策に力を尽くしただけでなく、特にハインリッヒによる日本研究は評価が高く、日本の考古学の礎を築いたといってもいい、といったことはあまり知られていない。  そんなシーボルト父子を主人公にした『シーボルト父子伝』がこの夏再演される。昨年の初演では新型コロナ感染症の影響下ながらも公演を敢行し、日本が近代化する裏で働いた“蒼い目のサムライ”たちの物語に、観客から高い評価を受け、その好評を受けての再演だ。初演に引きつづいてシーボルト兄弟を演じる鳳恵弥と塩谷瞬。イギリスの外交官、アーネスト・サトウ役で今回新キャストとなる竹若元博。初演の演出にして今回は総監修をつとめる映画監督、木村ひさしの4人に話を聞いた。


―――丁度一年ぶりにハインリッヒ・シーボルトと仲間たちが築地に帰ってきますね。鳳さんは昨年、ハインリッヒ役のためにロングヘアーを切ったわけですが、もう慣れましたか(笑)。

鳳「ショートカットですか? 慣れたし、だいぶ馴染んできた気がします。正直言って手入れはすごく楽ですね(笑)」

―――では再演に向けての気持ちを聞かせてください。

鳳「今回も引き続いて主演という大役を頂きました。気を引き締めて頑張らなくてはと思っていますが、今回はさらに新キャストを迎えてパワーアップした作品を届けたいです。もともと昨年の初演はいろいろ変化する状況の中で創り上げた作品なので、まだ未完成な部分もあると思います。そこを詰めていって、グレードアップさせたいです」

―――塩谷さんも引き続きハインリッヒの兄で外交官のアレキサンデルを演じる訳ですが、再演を控えてどんな気持ちですか。

塩谷「キャストも台本も少し変更があるので、作品としての見え方は変わってくると思います。新しいシーンが加わるので構成も変わりますから、どのように成立させるかを考えています。僕が演じるアレキサンデルは外交官として日本の激動期に命をかけて働いた訳ですが、あの時代に日本がどのように荒波を越えてきたか、そこにシーボルト兄弟を初めとする異人たちが日本の変化にどのように関わってきたかを伝えたいです。
 そして僕の役はこの芝居の伝道者というか、シーボルト家の持つ使命感をしっかり伝えるのが役目だと思っています。一方で弟のハインリッヒは凄く自由な存在で、父である大シーボルトの日本研究の部分を継承しました。そんな兄弟関係から、それぞれ違った日本の魅力や誇りが見えてくればいいですね」

―――今回初参加となる竹若さんは、イギリスの外交官、アーネスト・サトウを演じられるそうですね。

竹若「僕が演じるアーネスト・サトウはシーボルト兄弟と対立する存在ですが、アーネストがしっかりしないと、それに対するシーボルト兄弟も輝かない訳ですね。まあ圧倒的に身長も低いし(笑)存在感も薄い…、そうではなくて(笑)演技的にしっかりした対立軸を演じる事が出来ればと思っています」

鳳「竹若さんはお笑いコンビ、バッファロー吾郎としての活躍で知られていますが、なにしろ芸能界1の人格者でもあるんです。舞台はそういう良い人だからこそ“悪い奴”がハマるんです。それでお願いしました」

―――そして木村さん、今回は総監修という立場ですね。初演の時はずいぶん細かい表現まで演出されていたようですが。

木村「意外かも知れませんが、僕は結構細かいんです。まあ今回は総監修で一歩退いたわけですが、そもそも僕は主戦場が舞台ではないので、舞台演出のプロ、中野(敦之)さんがどんな演出をされるかがすごく楽しみです。脚本を見ると結構上演時間が長かった作品を整理されているのに、結構昨年僕が付け加えたセリフが残っているんです。きっと中野さんの気遣いだと思いますけれど恥ずかしいですね(笑)。僕は今回は中野さんの手でかなり疾走感に溢れた『シーボルト父子伝』ができると思い、実はかなり楽しみにしています」

―――主人公のハインリッヒは日本に対して凄い好奇心を持っていて、収集した資料はシーボルト・コレクションとして残されています。そんなハインリッヒの強い好奇心をどう思いますか?

鳳「私も結構目移りするタイプだから、色々なものに食いつく部分は似ていると思ってます。でも私の場合は不器用だからあまり上手くいかないですね」

塩谷「僕は事業とかプロジェクトとか、自分でなにかを興す時は、周りも巻き込むだけに責任がありますから厳格になります。アレキサンデルも外交官として、異人なのに日本という国を背負って活動するので、きっと近い気持ちがあったのでは無いでしょうか。でも一方で僕は世界を旅するなど自由で冒険者な所もある。そこはハインリッヒに近いですね」

竹若「僕も色々な趣味があるので、まあわかりますね。ただ理解されることとそうではないこととあるんです。まああんまり考えないで、ノリでやってみることの方が周りもついてくる気がしていますけれど」

木村「僕は映画が大好きでその結果として映像の仕事をしているわけですが、好きでのめり込んで仕事になるのは良いことですよね。そこはハインリッヒも、そしてお父さんの大シーボルトも同じなのだろうと思います」

―――劇場は昨年と同じ築地本願寺ですが、鳳さんは築地の寿司屋さんをモデルにした人気舞台シリーズ『こと~築地寿司物語~』からこの劇場の舞台に立たれてます。そろそろ鳳さんと言えば築地、というイメージが生まれて来たのでは?

鳳「築地に拘るわけではないですが、築地には外国人居留地があって、アレキサンデルとハインリッヒが住まった場所だし、また彼らと縁が深い新富座もありましたから、場所の力は感じています。皆さんも帰る時にちょっと物語の時代を思い描いてもらえると嬉しいです」

―――最後にファンへのメッセージをお願いします

塩谷「舞台というのは2時間程をみんなで共有できますし、役者同士、また舞台と客席の反応で変化するのが醍醐味です。今回40人近いメンバーが出演しますが、それぞれの表現を楽しんでもらいたいです。そしてブディストホールという背筋の伸びる劇場で、この夏に熱い魂をぶつけていきたいと思います」

竹若「僕は今回が初参加なので、初めての方も2回目の方も納得できるような芝居を、他のキャストの皆さんと一緒に創り上げられればと思ってます」

木村「中野さんの演出による疾走する『シーボルト父子伝』を楽しんでもらいたいですね。変だな?と思う台詞はきっと僕が付け加えたものでしょうから、クレームは僕に言ってください(笑)」

鳳「またこの舞台に戻ってきました。昨年監督につけてもらった演出をベースに中野さんが演出していきます。3人のシーボルトの愛した日本の美しさを肌でしっかり感じてもらえるように、勇気を分け与えられる舞台を目指したいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

鳳 恵弥(おおとり・えみ)
東京都出身。2002年のミス・インターナショナルにおいて、準ミス日本代表に選ばれる。その後、舞台への出演やモデルとしてTV、CMへの出演を経て、つかこうへい劇団に入団(13期)。
以降は女優としてドラマや映画、舞台と本格的に活動を続けるほか、プロデュース、キャスター、執筆活動、演技やダイエットなど様々な指導などマルチに活躍し、芸歴20年目を期に2019年には演劇ユニットACTOR’S TRIBE ZIPANGを旗揚げ、演出、脚本も手がけるようになる。

木村ひさし(きむら・ひさし)
東京都出身。演出家、映画監督。堤幸彦作品に助監督として参加し、さらに幾つもの作品では演出にもかかわる。『民王』で数々の賞を受賞。
近年の監督作品として『任侠学園』、『屍人荘の殺人』、『仮面病棟』などがある。プロレスをこよなく愛している。鳳も『IQ246』や『名探偵明智小五郎』、『あじさい』(主演)、舞台『女医レイカ』(主演)などで木村作品に出演している。 2018年民放年間平均視聴率No1を獲得した『99.9刑事専門弁護士』は映画化が決定し今冬全国公開予定。

塩谷 瞬(しおや・しゅん)
石川県出身。15才の時、自分の波瀾万丈な人生経験を生かせる職業は俳優ではないかと考え上京。『忍風戦隊ハリケンジャー』で主演デビュー、映画『パッチギ!』にて日本アカデミー賞俳優賞他を受賞。2007 年度には日本映画・最多出演賞を受賞。舞台出演は蜷川幸雄『トロイラスとクレシダ』、白井晃『ジャンヌダルク』など。
最近では世界200か国を巡り、アフリカや東ティモールなど海外支援活動や、世界の子どもたちへの「夢の授業」を行っている。ネパール親善大使他。
来年俳優人生20周年を迎える。

竹若元博(たけわか・もとひろ)
京都府出身。高校卒業後に吉本興業の養成所であるNSCに8期生として入学。1989年には木村明浩とお笑いコンビ「バッファロー吾郎」を結成。キングオブコント初代王者(2008年)。現在はコンビとしての活動を休止中で、ピン芸人として活躍している。

公演情報

ACTOR’S TRIBE ZIPANG プロデュース
舞台『シーボルト父子伝 ~蒼い目のサムライ~』

日:2021年8月4日(水)~9日(月・祝)
場:築地 ブディストホール
料:S席8,000円 A席6,000円(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/butai_koto
問:ACTOR’S TRIBE ZIPANG
  mail:siebold.ticket.2021@gmail.com

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