舞台女優をより輝かせるつかこうへいの代表作 悔しさと無念を乗り越えて1年越しに実現する『飛龍伝』

舞台女優をより輝かせるつかこうへいの代表作 悔しさと無念を乗り越えて1年越しに実現する『飛龍伝』

俳優・田谷野亮が「好きな仲間と好きな作品を好きな場所で」をモットーに旗揚げした「たやのりょう一座」。劇団☆新感線で活躍するこぐれ修を演出に迎え、旗揚公演の『いつも心に太陽を』から一貫してつかこうへい作品に取り組んできたが、第3回公演『蒲田行進曲』で女優・中村静香と出会い、2020年に『飛龍伝』を引っ提げていよいよ東京芸術劇場の舞台に進出、となるはずだったが、春先からのコロナ禍により中止を余儀なくされた。その『飛龍伝』を第8回公演として上演するという。もちろん東京芸術劇場シアターウエストの舞台でだ。公演の実現に意気が揚がる田谷野亮と、ヒロインを演じる中村静香に話を聞いた。

―――昨年中止となってしまった『飛龍伝』を同じ劇場で実現できることになったわけですが、座長として率直な気持ちを教えてください。

田谷野「一年越しになりましたが、まずはやらせてくれる劇場に、そして出演してくださるキャスト、そして力を貸してくれるスタッフの皆さんに感謝です。その一言に尽きます」

―――中止の決定が出たときはどんな気持ちでしたか?

田谷野「まず絶望しましたね」

中村「当時は心に穴が開いたような感じでした。まず稽古が中断になって、それから中止の連絡が来ましたけど、まもなく田谷野さんから中止ではなく延期にしたいと聞いていたと思います。その時に劇場を押さえる目処があったんですか?」

田谷野「いや劇場は白紙でした。でも最初に中村さんのモチベーションを確認したくて連絡したんです。だから確認ができたので、劇場さえ押さえたら公演をしようと思いました」

中村「じゃああれは確認だったんですね。もうやるつもりでいました。私が嬉しかったのはファンの皆さんが待ってくださっていて“上演を願っています”とか“『飛龍伝』。まだですか?”とかいう声が伝わってくるんです。そうして待っていてくれることが凄く嬉しかったです」

―――ステイ・ホームが叫ばれて思うように活動できなかった時期、何か特別なことはされていましたか?

中村「ダンスを始めました。ジャズとヒップホップです。ずっと家で閉じこもっていて身体が凄く気持ち悪かったんですが、ジムとか筋トレを義務化すると続かないことはわかっていたので、ダンスでリズムに乗って楽しみながらやってみようと。別にダンサーになりたいわけでないし、そういった役が回ってきたわけでもありません。でも汗をかくと気持ちいいし、美ボディを作ろうと思って。ただ私がヒップホップをやっているっていうと、皆笑うんですよ(笑)。まあ、趣味の範囲ですけどね」

田谷野「僕はすでに第6、7回公演が控えていたので、その準備でしたね。すでに劇場を押さえていましたから。さらに『飛龍伝』を上演するための申込とかもありました。2回の公演を挟んでいますが、今までやっていた稽古のスタイルができないのにはどうしようかと悩みましたね。出演者をできるだけシーン毎に分けて、できるだけ稽古場に集まらないように組み立てていって」

中村「リモートではなかったんですね」

田谷野「うん。リアルな稽古だけど絡まない役同士は全体稽古まで会うことが無いわけで。全体稽古で『初めまして』なんてやっているのを見て驚きましたね。ともかくもうパズルみたいで(笑)。ニュースとにらめっこして、どのシーンを何回やったかをカウントして。本当にやりたくない経験でしたね」

―――逆に1年間という時間ができたことで、意識の変化などはありませんでしたか。

田谷野「つかさんの作品で中村さんと組むのも3作目。きっと昨年よりもパワーアップしていると思います」

中村「この1年ちょっとの間にみんなの価値観が変わったと思いますが、私も仕事がある有り難さや、思うようにいかなくなった部分を感じています。だからこそひとつひとつを大切にしたいです。私が演じる神林美智子は全共闘40万人を束ねる女学生なので、リーダーらしさも出したいですね。稽古場では“姉御”って呼ばせようかな(笑)。そして新たな一面を知ってもらい、役者としてステップアップする機会だとも思います」

田谷野「ステージの真ん中に立つ中村さんは凄くカッコイイと思うし、きっと新しい神林美智子が生まれだろうと思います。やはりこの作品をやろうとしたきっかけは中村さんの存在が一番ですから」

―――最後に、今の想いを聞かせてください。

中村「ようやく公演情報を出せるようになったことが嬉しいです。熱意を持って神林を演じていこうと思いますし、皆さんが劇場に来ていただくことで私達のモチベーションも上がります。ぜひお越しください」

田谷野「昨年、盛り上がりをみせたところでの中止には落ち込みましたが、よく考えるとさらにパワーアップしていますし、作品や一座の背骨のようなものも太くなっていると思います。何よりもお客さんが一番楽しみにしていることと思ってます。皆さんにお目にかかれるのが楽しみです」

―――ありがとうございました。


(取材・文&撮影:渡部晋也)


プロフィール

田谷野 亮(たやの・りょう)
大阪府出身。子どもの頃にアメリカンフットボールを始め、早稲田大学を経て社会人チームのオービックシーガルズに入団。日本を代表するプレイヤーとして活躍するが、怪我をきっかけに俳優に転身。2012年に『仮面ライダーウィザード』でデビューする。2013年に初舞台を踏み。2016年には劇団☆新感線のこぐれ修とタッグを組んで、自らがプロデュースする「たやのりょう一座」を旗揚げし『いつも心に太陽を』を上演する。

中村静香(なかむら・しずか)
京都府出身。第9回全日本国民的美少女コンテストにおいて決勝に進出し、その後「美少女クラブ21」の結成に参加。映画、テレビドラマやバラエティに多数出演するほか、グラビアモデルとしてDVDや写真数も発表している。2012年からは舞台にも活動の幅を広げている。たやのりょう一座には第3回公演『蒲田行進曲』、第4回公演『ストリッパー物語』に出演。

公演情報

たやのりょう一座 第8回公演
『飛龍伝』

日:2021年7月28日 (水) ~2021年8月1日 (日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:6,500円(全席指定・税込)
HP:http://www.tayanoryo1za.com/
問:たやのりょう一座
  mail:tayanoryo1za@gmail.com

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事