劇団創立15周年、主宰・大西弘記が舞台に立つ! “人権て何だろう”TOKYOハンバーグ流の切り口とは

劇団創立15周年、主宰・大西弘記が舞台に立つ! “人権て何だろう”TOKYOハンバーグ流の切り口とは

 人に寄り添う作品を発表し続け、今年設立15周年を迎えた劇団「TOKYOハンバーグ」。Anniversaryの最後を飾る作品は、初めて外部から演出家・磯村純を迎え、主宰の大西弘記が役者として5年ぶりに舞台に立つ意欲作をお届けする。
 ふだんスポットが当たらない人々。誰にでもある心の葛藤。小さな幸せが欲しかっただけなのに。今作は、ある兄弟に起こる家族の物語を3人芝居として濃厚に描いていく。


15周年の締め括りはとんでもないことに

―――少人数公演は久しぶりですね。やりたいことをやろうという想いが伝わってきます。

大西「15年やってきて、ひとつの節目としての最後の公演は僕が締めたいと。最初は勝俣さんとの2人芝居で考えていましたが、(山本)亘さんとご縁がありお声がけしたら『やる!』と言ってくれて、これはとんでもない15周年の締め括りになるなと。
 5年ぶりに自分が舞台に立つので、ちゃんと演出家を立てようと思いまして、15年で初めて外部から演出家として磯村さんに来ていただきます。磯村さんは最近一緒にお仕事をさせていただくことがあって、ぜひやっていただきたいと。引き出しがいっぱいある本当に頼れる演出家さん。ミニマムですが豪華です」

―――只今(取材当時)絶賛台本執筆中とのことで。

大西「今作品の終わらせ方をどうするか悩んでいるところです」

―――キャスティング済みですから、役者さんにこれを言わせたいなどもありそうですね。

大西「ふだん僕は当て書きをしないのですが、僕の中で設定は決まっているので、その設定を勝俣さんや亘さんがやると、いくらか潜在的にあるので、考えなくてもそうなっているような気はします。ハマり役といいますが、そうではなくて、例えばアングラ演劇ばかりやっている俳優さんが、とても魅力的でこの人にストレートの芝居をやらせたらどうなるのだろうみたいな、そういうことを思ってキャスティングすることがあります。役に俳優さんが寄っていく、みたいな。そういう感じをイメージしていつも書いています」

―――今回演出家として磯村さんをお迎えします。TOKYOハンバーグの魅力とは?

磯村「僕がTOKYOハンバーグを観て思うのは、世の中のうまくいっていない人達、ちょっと語弊がありますが弱者とかそういう方々に寄り添うお芝居を、とても優しい視点で書いていらっしゃると常々思っています。テーマとしては厳しいものや深いものを扱っていると思いますが、作品としては人に優しいお芝居を作っていらっしゃる方だなぁと。それは大西さんの人柄によると思うんですけど。
 今年一緒に仕事をした時に意気投合しまして、そこからあれよあれよとこの場にいます。15周年にお声がけいただいて光栄ですし、せっかく一緒にやるなら面白いことができればと思っております」


なぜ人間は稼ぐのか、それは生活をしていかなければいけないから

幸せになるはずなのに、人生ってなんだろう。
物語はリアルな現代、2人の兄弟が生きて行くためにとった手段とは?

磯村「リアル現代のお話で社会問題になっていることも盛り込まれています。今SNSの影響力が強くなって、しかもその中で正義と言われているものが正義にも悪にもなって、新しい人が出てくるとみんなすぐそちらに飛びついてしまう。今まで叩かれてきた人は忘れられてしまい、嫌な時代になっているなあと感じます。
 本人たちはそう生きたくないけれど世の中の弱者と呼ばれる、そう生きざるを得ない生き様、現代社会の光と闇みたいなものがとてもリアルに鮮明に描かれています。先ほど結末を何パターンか聞いてどっちに転んでもすごい話だなと。僕はこれからどうしようかと(笑)。楽しみですね」

山本「ええ!?ってね。どっちに転んでも大変だよね」

勝俣「大西さん演じる茂樹の兄・崇役を演じます。ある理由で20数年ぶりに実家に帰り、弟と生活するところから始まります。役づくりはこれからですが、ちょっとクズな野郎で(笑)。クズって演じるとなると楽しめるんです。でも斜めな生き方のクズではなくて、真っ直ぐだからこうなってしまった。そういう気はしますね。実は弘記とは半年くらい一緒に生活していたことがありまして(笑)」

大西「そうなんです。僕と勝俣さんは出逢って23年目で研究所時代からの先輩です。勝俣さんが劇団をしていた時に一度本を書かせていただいて、お仕事は2008年以来ですね」

―――十数年ぶりという意味では作品の状況と近いですね。

大西「勝俣さんにとって僕は、どうしようもない後輩だったと思います(笑)。いろんな事をいっぱい教えてもらいましたし、一番的確なアドバイスをくれた先輩」

勝俣「そうだったね(笑)。それからとても活躍されて、基本的には変わっていないです。会って話すと前の時間に戻れるというか、現場では久しぶりですがそう思えなくて。どこの現場に行っても貝を食べた時のジャリッとした違和感みたいなものは感じていて今回もそうで(笑)。その感覚を楽しみながらできたらと思っています」

―――そして山本さん、大西さんとの出会いは?

山本「今年だよね『愛、あるいは哀、それは相。』(4月公演)のタイトルを見た時に、こんな題名をつける人がいるのか!とまず思った。それから観に行ってみようと、そうしたらすごく良かったの。今こんな本を書く人がいるんだと。あの間合いといい、セリフといい、舞台からぶあ~~ではなく、うわ~~と押し寄せてくる感じにすっかり魅せられて。僕は突撃主義で気に入ったらその人に直接会いたくなるから会いに行った。
 先日のリーディング公演『正直 私は立派な軍国少年だった〜青い空とM少年〜』も素晴らしくて。セリフがすごくいいんだよね。ふわっとぎゅーーとしっかり掴まれる感じね。それが随所にあって、これは大西くんしかいないと思うんだよね。今年初めて観て惹かれて、生きている間にこの人と仕事をしたいと思っていたらこのお話をいただいてね」

大西「亘さんとは以前ご挨拶はしていましたが、出会いは舞台終わりの受付でありがとうございましたと、お客様をお送りしていたら『あなたが書いた人?』と声をかけてくださって。僕は亘さんを存じていたので驚いて、その場で連絡先を交換しました。亘さんは僕たちの父親役になります。初め2人芝居を考えていましたが、3人になると発想が広がって面白くなっていくんですよね。今だから言えるのは、この役は亘さんだから成り立っています」

山本「さっきいくつか結末の候補を聞いて、どうなるのかと楽しみだね。僕、YouTuberって知らなかったんですよ。どういうものなのか今回初めて知りました。こうやってお金を稼ぐ人がいるんだなーって。今の父親は大変だよね。生きていく上で急激に世界が変わったからもう追いつかない。僕なんかも追いつかないもんね。その差をどうするか、だからといって合わせられないよね。だけど生きていく以外ないんだから、どれだけ遠くから見ていて理解できるか、かな」

―――YouTuberというキーワードが出てまいりました!

大西「なぜ人間は稼ぐのか、それは生活していかなければいけないからで。楽しい配信をしよう!ではなく、切実なほうですね。この兄弟は選択肢がない中でYouTuberを続けます。YouTuberには様々なジャンルがあって、でも兄弟が選んだジャンルは通常選ぶようなジャンルではなくて」

磯村「直地点が気になりますね」

勝俣さんは、一番最初に板に立った時に僕の兄役だった

―――磯村さんはこの3人をどう演出していこうと?

磯村「今考え中ですが、本に関係性がきちんと書かれていますのでまずそこをはっきりお客様に伝えられるようにしていきたいなとは思っています。そして大西さんが俳優としてどんなお芝居をするのかはまだ未知数なので。(大西笑)そこも睨み合いつつ大西戯曲をいかに届けるか」

―――磯村さんが演出することによって、いつもとは違うハンバーグになりそうですね。

勝俣「以前、弘記が書いた本で磯村さんが演出の作品を拝見しましたが、弘記が演出した時と全く色が違って、飽きさせないように常に仕掛を作っていて、弘記も言っていたようにすごく引き出しの多い方だなって思ったので、この戯曲もどうなるのか凄く楽しみ」

大西「そうそう! 子供がいっぱいポケットにおもちゃを入れている感じ」

磯村「あははは。楽しくてしょうがなくて」

―――亘さんが楽しみにしていることは?

山本「まずこの2人とどうやるか、磯村さんがどんなダメ出しを出すのか。ダメ出しで演出家ってわかるからね。(全員笑)この人はすごいなとかね、僕は演出家の考えや方向性をよく聞くんだよね。自分の受けた言葉で精一杯にならないで、それと同時に客観的にも見たいんだよね。大西くんもどう彼らにダメ出しを出すのか、今回全部が新しい出会いですし、どう芝居が立ち上がるのか、それが非常に楽しみですね」

磯村「怖いな(笑)」

―――稽古も濃いですよね、4人が集まればできてしまう。

山本「そうなの、この4人でグッとできそう。たくさん人数がいると、なかなかそうなれないよね。もちろん大人数の魅力もあるけど、4人の魅力がどう育っていくのか楽しみだね!」

大西「この間、顔合わせを兼ねて4人でZoom飲みをしまして楽しかったですね(笑)」

―――本番でも4人の呼吸でどんどん変わっていきそうです。

磯村「それは絶対にあるね」

大西「本当に僕が楽しむ準備はできました。僕の一番の楽しみは僕が5年ぶりに舞台に上がることです。今まで素敵な俳優さんがいっぱい出演してくれています。素敵な方はいっぱいいるんです。勝俣さんに声をかけたのはもちろん僕との歴史はありますが、一番最初に板に立った時に僕の兄役だったんです。15周年の一環ではありますが、僕自身が板に立つことを考えると自分にご褒美をあげたくなりまして」

僕っぽい作品ではないかもしれません

―――この作品で描きたい事は?

大西「硬く言ってしまうと“人間の生きる権利”ですが、社会派で書いているわけじゃなくて、“人権て何だろう”と。例えば学校というコミュニティは学ぶところですが、それだけが学校なのか、学校の本質はなんだろうかと考えることが時々あって、今回もそれを違う角度から描いた物語です。悪い遊び心を働かせていてちょっと僕っぽい作品ではないかもしれません」

山本「ちょっと毛色が違うよね。本はとても新鮮でした。ぜひ観にいらしてください。大西くんがベースに持っている“人間とは何か”というものが物語を通して見えてくるので、そこをぜひ観てください。そして僕は彼と勝俣くんがどんな芝居をするのか、楽しみにしています」

勝俣「ハンバーグさんはいつも大人数で若い女性もいて、お声がけいただいたのでそれを楽しみにしていたらそういう現場でなくて。(全員爆笑)このチームで今まで見た事が無いようなTOKYOハンバーグ作品を創れたらと思っています」

磯村「座組としては意外とみんな初めましてなんですよね。最近のハンバーグファンからしたら、とても新鮮なメンバー。今までにないTOKYOハンバーグ作品になると思います。自覚はありませんが、演出が変わると彩りも変わり、作品に対するアプローチも変わりますから、お客様に届く大西さんの言葉も変わってくると思うんです。そういうことも楽しみに劇場にいらしていただけたらと思っております。お前がハンバーグをダメしたと言われないように(笑)頑張ります」

山本「それは俺も頑張らないと!」

大西「この15年で初めて僕が最年少で初心に帰れそうです。15年という時間でいっぱい失敗もしましたし喜びもありましたが、いろんな経験値が今回の公演に繋がっています。作品を通じてコミュニケーションは取れると思うんです。大好きな劇場で舞台に立つことは一番の喜びです。とりあえず僕を見て欲しいです!」

(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

大西弘記(おおにし・ひろき)
6月29日生まれ、三重県出身。
1999年~2004年、伊藤正次演劇研究所に入所し演劇を始める。2006年に自らの作品を上演するため企画・制作の母体となる「TOKYOハンバーグ」を設立、今年15周年を迎えた。社会問題を取り扱い、普遍性と現代リアルのバランスを保つ丁寧な劇作・演出スタイルでファンを魅了している。外部への書き下ろし、演出も多数こなしている。受賞歴に、サンモールスタジオ選定賞最優秀演出賞、劇作家協会新人戯曲賞最終候補、テアトロ新人戯曲賞などがある。2020年『風の奪うとき』第7回せんだい短編戯曲賞最終候補。

磯村 純(いそむら・じゅん)
1972年7月11日生まれ、愛知県出身。
桐朋学園短期大学専攻科演劇専攻修了後、劇団青年座入団。演出家宮田慶子に師事。青年座公演『蛇』や劇団銅鑼『流星ワゴン』演出で注目を浴びる。書き下ろし作品の演出に定評があり、現代作家の新作を多く演出。主な演出作品に青年座『ブンナよ、木からおりてこい』、『俺の酒が呑めない』、『安楽病棟』、グッドディスタンス『朝、私は寝るよ』、横浜桜座『Don’t say you can’t』、イッツフォーリーズ『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、水戸芸術館ACM劇場『息子たち』などがある。日本大学藝術学部映画学科や青年座研究所、日本工学院専門学校で演技講師を務め、地方劇団・自治体・学校・企業などの演劇ワークショップ講師としても活動中。

勝俣美秋(かつまた・みのる)
1972年7月12日生まれ、千葉県出身。
1994年、伊藤正次演劇研究所に入所し演劇を始め現在はフリーの役者として活動中。

山本 亘(やまもと・せん)
1943年1月21日生まれ、東京都出身。
劇団俳優座、パリのジャック・ルコック演技研究所、ポーランドのグロトフスキー演技研究所で演技を学ぶ。多くの映画やテレビ・舞台で俳優・声優・ナレーターとして活躍中。エランドール賞新人賞など受賞歴がある。主な出演作品に、『影武者』、『ああ野麦峠』、『この子を残して』などの映画、『水戸黄門』、『相棒』などのドラマ、『しみじみ日本乃木大将』、『リア王』などの舞台がある。

公演情報

TOKYO ハンバーグ Produce Vol,32
15th Anniversary サンモールスタジオ提携公演『浮雲兄弟』

日:2021年12月10日(金)~13日(月)
場:サンモールスタジオ
料:一般4,000円
  ハンバーグ割引3,500円
  研究生割[養成機関]3,300円 ※要証明書/詳細は団体HPにて
  学生割[高校生以下]2,500円 ※要学生証提示
  (全席自由・税込)
HP:http://tokyohamburg.com/
問:TOKYOハンバーグ
  mail:info@tokyohamburg.com

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