2021年に主宰・高畑裕太が旗揚げした演劇団体「ハイワイヤ」の第三回公演『GOOD NEIGHBORS』が、2026年8月19日(水)~25日(火)に下北沢OFF・OFFシアターで上演される。
本作は、企画・作・演出を務める高畑が実際に暮らしていた街で出会った隣人たちとの記憶を起点に生まれた物語だという。絶妙な距離感の人間関係、その中で生じる軋轢などを、現実と非現実の狭間を行き来する演出で丁寧に描いている。
キャストは大河日氣、菅野恵、鄭亜美、佛淵和哉、茂手木桜子。高畑もハイワイヤ第一回公演『ジャム』ぶりに出演する。個性と実力を兼ね備えた俳優陣による化学反応にも期待したいところだ。
<ストーリー>
とある住宅街で暮らす男は、自宅の周りで発生する騒音に悩まされていた。
隣には数年前から統合失調症を患ってしまった女性が住んでおり、毎日のように表通りへ出ては、支離滅裂な言葉を叫んでいた。
やがてそのことは近隣住民たちの間でも問題視されるようになり、男は地域の平穏を取り戻そうと動き始める。
しかしいつまで経っても解決しない隣人トラブルに男は次第に追い詰められていき、少しずつ様子がおかしくなっていく。
そんなある日、向かいに住む青年が、とある奇妙なことに気付いた――。
稽古場レポート
この日行われたのは、冒頭から中盤までの場面通し。
覗見明(高畑裕太)と隣人・裏井戸鏡子(茂手木桜子)のトラブルから始まり、近隣住民たちとの付き合い、病気の妻・万里(鄭亜美)との生活、まとまりのない自治会の会議……と、見ているだけで疲れてしまうような日常が描かれる。
高畑は、親切で真面目だがどこか不安定な人物を好演。裏井戸への態度、万里とのいまいち噛み合わないやり取り、いつの間にか隣の家に住み着いていた怪しい男・佐藤(佛淵和哉)との問答などを通して、だんだんと「まとも」の仮面が剥がれていく。
一見、共感しにくいキャラクターのように感じるが、自分も同じような立場におかれたら……と想像させられた。特に、近隣住民たちの会話や万里の言葉から見えてくる明の性格と明自身が思っているだろう「自分」の差、人付き合いのままならなさは、誰もが思い当たる節があるのではないだろうか。
トラブルの相手である隣人以外の住人たちも一筋縄ではいかない。
クリーニング屋を営む小川原(菅野恵)は、面倒見が良く頼れる女性。しかし、話を聞いているうちに彼女の悪い意味での適当さや裏表が見えてくる。気のいい青年・タカト(大河日氣)も、素直で人懐っこいが好奇心のままに突き進む危うさがあり、ハラハラさせられる。
自治会員たちも、自分の意見と権利は主張するものの、面倒ごとは極力避けたいのが明らか。家族でも友達でも、仕事仲間でもない「隣人」や「近所の人」だからこその距離感がリアリティを持って作り上げられていた。
「自分が快適・安心に暮らせる環境にしたい。でも厄介ごとに巻き込まれたくない」「誰かが困っていて、自分にも危害が及びそうなら対処したほうがいい。でも困っている本人がやるべき」という態度に不快感を覚えつつ共感もしてしまう。
一方、そういった環境の中で追い詰められていく明、近所の人々に振り回される明に憤る万里にも共感や同情を覚えるため、物語が進み、登場人物の心が揺れるのと同じように見ている側の気持ちもぐらぐらと揺らされる。
大河、菅野、鄭、佛淵は自治会員たち、通行人をはじめとするモブキャラクターも演じており、本役とは全く違う芝居で物語に深みを与えていた。役の演じ分けはもちろんのこと、身体表現や醸し出す雰囲気によって、シーンに緊張感を生み出す様子も見事だ。
その中で高畑が物語の主軸を担い、茂手木は実在しているのか概念なのかわからなくなるような奇妙な隣人として強烈なインパクトを放っている。
批判する側とされる側、それぞれの都合や主張が混ざり合い、混沌としていく様子に翻弄され、自分の価値観や考えを改めて見つめ直せるような作品に仕上がるのではないだろうか。
舞台美術や照明が加わることでさらに印象的な場面になりそうな部分がいくつもあり、完成系が楽しみになった。
稽古後、高畑は「舞台空間で生きることを大切にしたい」と語りつつ、SNSなどでの糾弾や批難が起きた時、立場が徐々に逆転していく様子、噂話によって人間関係が拗れていくことなどが裏テーマとしてあると明かした。現代社会の悪辣とした空気の中で生きていくことについて伝え、考えさせられる作品を目指しているという。
本作からどんなメッセージを受け取り、何を感じられるかは、ぜひ劇場で確かめてほしい。
本作は2026年8月19日 (水)より、下北沢 OFF・OFFシアターで上演される。
(写真・文 吉田沙奈)
公演概要
『GOOD NEIGHBORS』
公演期間:2026年8月19日 (水) 〜 2026年8月25日 (火)
会場:下北沢 OFF・OFFシアター(東京都 世田谷区 北沢 2-11-8 TAROビル3F)
■出演者
大河日氣
菅野恵
高畑裕太
鄭亜美
佛淵和哉
茂手木桜子
■スタッフ
舞台美術:およぐひと
照明:山内祐太
音響:香田泉(零’s Record)
音響オペレーター:吾犀秋吉(零’sRecord)
舞台監督:宮腰慧
演出助手:大月リコ(yoowa)
稽古場代役:妹尾竜弥
楽曲製作:wahei mario(ハイワイヤ)
衣裳協力:神脇清人・平林明夏
スチール撮影:阿部裕介(YARD)
スチールヘアメイク:豊増優美
宣伝美術 WEB:茶谷果倫(ハイワイヤ)
記録映像:雨無麻友子(スタジオねこ)
運営サポート:文目ゆかり
運営・表券:及川晴日
協力:株式会社高畑事務所・アプレ・クリオネ・LOTSTAFFS
企画・製作・主催:ハイワイヤ
■公演スケジュール
8月19日(水)19:00
8月20日(木)19:00
8月21日(金)14:00/19:00
8月22日(土)14:00/19:00
8月23日(日)14:00
8月24日(月)14:00/19:00
8月25日(火)14:00
※受付開始・開場は開演の30分前からとなります。
■チケット料金
一般:4,500円
U22:3,000円
(全席自由・税込)
※U22はご入場時に年齢が確認できる身分証明書を確認いたします。
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