【公演レポート】MAO WORKS『われら、たゆたう』異空間で描く“たゆたう”時間

【公演レポート】MAO WORKS『われら、たゆたう』異空間で描く“たゆたう”時間

MAO WORKS 06『われら、たゆたう』が、2026年8月21日(金)〜23日(日)の期間、北千住BUoY 地下スペースにて開幕した。作・演出を務めるのは、同ユニットを主宰する田村真央。元銭湯という特異な空間を舞台に、既存の演劇空間からはみ出し、観客を作品世界へと巻き込むイマーシブな表現に挑む。

2023年に結成されたMAO WORKSは、田村真央と白神冴京小谷俊輔の3人で構成される演劇ユニット。本作ではさらに、野村今日子(フクダ&Co.)と椛島一が客演として参加する。椛島を除くメンバーは、文学座付属演劇研究所の出身で、共に研鑽を積んできた仲間だ。一方、椛島は映像クリエイターとして活動する傍ら、ダンス表現も得意とする。そんな異なるバックグラウンドを持つ、個性豊かな面々が生み出す舞台の様子を、公演レポートとしてお届けする。

本作のテーマは「たゆたう」。日常生活では、あまり使うことのない言葉だけに、タイトルの意味するところも気になるところだ。会場内に入ると、想像以上に広い地下空間が広がっている。一部に銭湯の面影を残す、どこか異質な空間。自由に配置された会場のレイアウトは、田村をはじめとするMAO WORKSの、何ものにも縛られない柔軟な表現そのものを物語っているようにも見えた。

日にちも時間も住所さえもわからない場所で、登場人物たちは逃れられない問いにぶつかり、もがきながら向き合っていく。窓も時計もない(その代わりに舞台セットには、時間が読めない文字盤がある)異質な会場のつくりとも相まって、観客を物語の中へと引き込んでいく。

過去、今、未来……

あれから?いつから……?

普段なら立ち止まることも、考えることもないようなこと。普遍的で壮大なテーマを掲げながら、随所に盛り込まれる映像演出や音楽、強烈なキャラクターたちの言動がインパクトを放つ。

MAO WORKSらしい、「この言葉から、歌詞にしちゃう?」と、思わずクスッとしてしまうラップシーンも印象的だ。メッセージ性を持ちながらも、観る人を楽しませるエンタメ性を忘れない。その絶妙なバランスが、田村の目指すクリエイティブなのかもしれない。芝居、映像、音楽、ラップなど、あらゆる表現を惜しみなく使い、全方位から観客に迫ってくるような“表現の圧”を感じさせる。さまざまな表現の間をたゆたいながら、観る者自身もまた、普段は意識しない問いへと引き込まれていくのかもしれない。

コメント/田村真央

ゲネプロを終えた田村に、少しだけ話を聞くことができた。本作は会場が決まってから約2カ月にわたる稽古期間を経て、キャスト同士で話し合いながら、作品を練り上げていったという。本番を迎えるまでに、比較的長い稽古期間をかけていることからも、作品を形にしていく時間を大切にしてきたことがうかがえる。それほどまでに、この会場から受けたインスピレーションが大きく、作品との親和性も深まっていったのかもしれない。
「やりたいことがあって、この会場に決めて。稽古が始まってからは、メンバーと話し合って、だいぶ書き換えたんですよ。役者には、演じる自分の気持ちを大事にしてほしいですし、それがMAO WORKSっぽさだと思っているんです」そう話す田村は、笑顔を見せた。

今回のテーマは「たゆたう」。レイチェル・カースンの『われらをめぐる海』を読んだことをきっかけに、この言葉に出会ったという。
「自然学の本なんですけど、タイトルが素敵ですし、何よりそこにある哲学や文体に惹かれて。自分と宇宙と自然と……普段は感じないような繋がりみたいなものが、さらに哲学として広がるようなインスピレーションを受けたんですね。それらを文章や物語ではなく、“イメージで伝える”ということを今回は意識したかったんです。もしかしたら、ストーリー的にはつじつまが合っていないこともあるかもしれない。だけどそれよりも先に、観劇される方にどう感じてもらえるのか?を大事にやっていきたいんです」

「たゆたう」という言葉から広がる、MAO WORKSの世界。その感覚を、ぜひ会場で味わってほしい。

(文:山田浩子)

公演概要

MAO WORKS 06『われら、たゆたう』

■日程:2026年8月21日(金)〜23日(日)
■場所:北先住BUoY 地下スペース(東京都足立区千住仲町49-11)
■出演:
田村真央、小谷俊輔、白神冴京、野村今日子、椛島一

■スタッフ
作・演出:田村真央
音響:白神冴京
企画:田村真央 主催:MAO WORKS 協力:フクダ&Co.

MAO WORKS関連記事

稽古場レポートや公演レポートを執筆&掲載します!
【お問合せ・お申込みはこちら

Advertisement

レポートカテゴリの最新記事