大切なものを守る時、人は本音でぶつかり合う!舞台『ワイルド番地』ゲネプロレポート

若手俳優を積極的に起用しつつ、老若男女問わず楽しめる大衆向けエンターテインメント作品を世に送り出している劇団ホチキス。大台の第50回公演も見えてきた中、第48回公演『ワイルド番地』が池袋・あうるすぽっとにて開幕した……いや、“戦いの火蓋が切って落とされた”という表現が合っているかもしれない。今回ホチキスが送るのは決闘をテーマにした“デュアルコメディ”。約20年前に東京に進出したホチキスで、現在20歳の石川雷蔵が初主演を果たし、本音でぶつかり合う大人たちに巻き込まれていく。

この街に決闘がやってきた…

時は現代。個人間で起こるいざこざを”決闘”を通して決着させる法律『決闘法』が制定される。しかし、決闘をするには役所に申請をする必要があった。身体への危害、生死に関わる危険行為は避けるなど、細かいルールも設けられおり、決闘するのも一苦労。市民の皆様がスムーズに決闘を行えるように、各市町村には、決闘を取り仕切る『決闘課』ができた。そんな『決闘課』に一人の若者が配属される…。

主宰の米山和仁が1997年、愛知県立芸術大学在学中に高校時代の同級生を中心に結成した劇団ホチキス。2003年より活動を東京に移し、多くの人が楽しめる大衆性の強いエンターテインメントを創造し続けている。近年では2.5次元で活躍する若手俳優を主演に迎え、新たな客層も取り込みながら演劇文化の裾野を拡げる同劇団。48回目の公演となる今作では『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ役で話題となった石川雷蔵が舞台初主演を務める。

物語の舞台は現代日本……なのだろうか。もしくは近未来なのかもしれない。個人間で起こるいざこざを、決闘を通して決着させる法律“決闘法”が制定された世界。しかし、決闘をするには役所に申請をする必要があり、各市町村には、決闘を取り仕切る“決闘課”なるものが作られた。

石川演じる北原聡は、高校野球部の監督・三田村崇(演・小坂涼太郎)とのいざこざから、彼に決闘を申し込むことを決意。しかし“決闘課”の天満康男(演・山﨑雅志)にあれよあれよと諭され、あえなく決闘を諦めることに。

そんな彼に、夕日が差し込む中、「人にはね、避けては通れない闘いってのがあるんだ!」と言葉をかけてくれた人がいた。

その言葉を忘れられず、数年後に北原は自ら望んで市役所に就職し、“決闘課”に配属される。しかしそんな彼を待ち構えていたのは、決闘をよしとしない“決闘1課”と、決闘を積極的に推進する“決闘2課”の対立であった。市民の決闘を管理するはずのお役所内で、すでに大きな闘いが起きているのである。

課長の天満率いる“決闘1課”に所属するのは、若手職員の真壁浩介(演・松井勇歩)、室井拓海(演・正木郁)、堀内智也(演・日向野祥)。この3バカ……いや、仮にも市役所職員であるため頭は良さそうだが……3人の一体感のある芝居にも注目だ。そして若手3人からゴマをすられ、機嫌をうかがわれているのが副課長の来栖秀作(演・野口オリジナル)。野心に燃える彼は、同期であり幼馴染でもある“決闘2課”の綾部秀一(演・齋藤陽介)を常にライバル視している。

一方の綾部は飄々とした態度で、来栖の対抗心などどこ吹く風。彼を含めて自由なメンバーが集まる“決闘2課”を率いるのは破天荒でワイルドな課長の五大一三(演・小玉久仁子)だ。さらにムードメーカーの副課長・柴倉隆二(演・我膳導)、明るいギャル・香西あき(演・内村理沙)が揃い、ノリのいい“決闘2課”では、全員が決闘といえばウエスタン!という安直なアイディアから西部劇に出てきそうな衣装を身に纏い、さらには施設内に専用のプロレスリングまで作って、市民らを積極的に戦わせる。……といっても、物理的に殴り合うなどの決闘をさせるわけではなく、言いたいことを言い合わせたり、時には俳句を詠みあったりと、実に平和的に決闘を行っているわけだが……。

“決闘2課”に配属された北原は、初めはテンションの高い彼らに戸惑うものの、決闘を通して本音をぶつけ合い、スッキリとした表情で帰っていく市民たちと、そのために努力を惜しまない2課の面々に、徐々に感化されていく。さらに、“決闘課”に入るきっかけとなった“夕日を背負う人”を探す中で、北原の心には1つの恋が芽生えることに……。石川演じる北原の、社会人としても男としてもピュアで懸命な姿勢は、観るものを惹きつけていく。

日々を慌ただしく過ごす決闘2課の面々。彼らの行きつけのレストランには、クセの強い店長の佐倉水(演・本西彩希帆)と、彼女をフォローするウエイターの築山昇(演・山本洋輔)が忙しなく働いている。本役としての存在感もばっちりだが、本西、山本、そして冒頭で高校野球の監督として登場した小坂は、実は多くの“兼ね役”がある。出てくるたびに印象が変わる彼らの芸達者ぶりもぜひ見逃さないでほしい。

決闘をしに来る市民たちは、何も初めから憎みあっていたわけではない。気持ちがすれ違い、いつしか本音を語り合う機会がなくなってしまっているのだ。それは“決闘1課”と“決闘2課”も同じ。もともとは1つの部署だった彼らは、何故道を分かつことになってしまったのか。そこにも根の深い人間ドラマがあった。それぞれの課長を演じる山﨑雅志と小玉久仁子の熱量のあるセリフの応酬、そしてその陰で静かに闘志を燃やし合う野口オリジナルと齋藤陽介の鋭い眼光は見所だ。

SNSが普及し、思っていることをポロっと言えば、反対意見を持つ者たちから徹底的に叩かれる昨今。人はいつしか“本音”を言うことを恐れて生きるようになったのではないだろうか。それでも、北原の恩人が言う通り、人には誰しも“闘いを避けては通れない時”がある。それはもしかすると、大切な誰かを思う時、何かを守りたいと思う時なのかもしれない。

大切な恩人と再会した北原は、その人のために自らも “決闘”を挑むことに――!?
ホチキスらしいハートフルな“デュアルコメディ”。勝ち負けだけではない物語の行く末を、ハラハラしながらも笑って見届けてほしい。

執筆:通崎千穂(SrotaStage)

公演概要

ホチキスvol.48『ワイルド番地』

公演ホームページ:https://hotchkiss.jp/wild/

公演日・開演時間:
4月5日(金) 19:00
4月6日(土) 13:00 / 18:00
4月7日(日) 13:00
4月9日(火) 19:00
4月10日(水) 19:00
4月11日(木) 19:00
4月12日(金) 14:00 / 19:00
4月13日(土) 13:00 / 18:00
4月14日(日) 12:00 / 16:00

会場:あうるすぽっと

キャスト:
石川雷蔵
松井勇歩
正木郁
小坂涼太郎
日向野祥
本西彩希帆
我膳導
野口オリジナル
小玉久仁子
山﨑雅志
齋藤陽介
内村理沙
山本洋輔

スタッフ:
脚本・演出:米山和仁

<カンフェティ取扱チケット(当日引換券)>
【指定席引換券】
スーパープレミアム:10,000円(税込)
※最前列含む前列エリア・非売品特典付(当日会場にてお渡し)
一般:7,000円(税込)
※当日、開演の30分前より受付にて指定席券とお引き換え致します。 
 連席をご用意できない場合がございます。予めご了承ください。

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