【開幕レポート】「TOHO MUSICAL LAB.」第2弾『わたしを、褒めて』『DESK』の2作品同時上演

【開幕レポート】「TOHO MUSICAL LAB.」第2弾『わたしを、褒めて』『DESK』の2作品同時上演

2020年夏、コロナ禍と向き合いながら演劇の灯をともそうとの熱い思いで、シアタークリエで上演された東宝ミュージカルのプロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」

無観客の劇場全体を「実験室=LAB.」と捉え、わずか1カ月での新作製作、観客がいないからこそ客席も縦横に使った斬新な演出を駆使して、インターネットライブ配信で届けられた短編二作品同時上演の舞台は、東宝ミュージカルの新たな挑戦であると同時に、演劇の可能性を改めて示してくれる貴重な舞台となった。

その好評に応えての第2弾が、今回11月22日~23日のたった2日間、3公演の上演となる今回の企画で、東宝ミュージカルが初めて迎えた、演劇界大注目の二人のクリエイターの手による、それぞれ約30分のオリジナルミュージカルで、高羽彩(タカハ劇団)が脚本・演出を手掛ける『わたしを、褒めて』と、池田亮(ゆうめい)が作詞・脚本・演出を担う『DESK』の新作2編が、今度は有観客のシアタークリエから届けられることになった。

この極めて特徴的で、斬新な作り方の作品には、ミュージカル界の豪華キャストが集結。

『わたしを、褒めて』に有澤樟太郎、美弥るりか、エリアンナ、屋比久知奈
『DESK』に東啓介、豊原江理佳、山崎大輝、壮一帆が出演。

当然ながらチケットは瞬く間に満席となり、11月23日 16時の部のライブ配信が決定。
また新たに、11月22日16時のゲネプロを有料公開として開催したが、この異例の形の追加公演も満席の盛況のなか、二つの新作ミュージカルが産声をあげた。

一作目の高羽彩 脚本・演出による『わたしを、褒めて』は、初日を目前に控えた舞台裏で起こる大騒動を描いた一篇。

まず高羽自身がナビゲーターとして登場し、ライトをあびる俳優たちだけでなく、舞台を創るためにどれだけの人たちが裏で働いているかを紹介していく。そこで自然に登場人物たちが舞台に揃い、物語が滑るようにはじまっていくテンポがなんとも快調だ。

舞台は「スチームパンクフランス革命」がテーマの作品の初日開幕まであと二時間と迫るステージ。客席は完売の盛況で、思いがけず多く集まったメディア向けの囲み取材をプロデューサーがどうしても舞台上でさせろと言い出し、キレかかる舞台監督や、スタッフたちというなんともリアルな情景が紡ぎ出されていく。

この大賑わいの理由は、ちょっと出たドラマがスマッシュヒットを飛ばして、一夜でスターになった俳優の初舞台、初主演だから。けれどもその主演俳優が突然あり得ないわがままを言いだして……という、なんだか本当にどこかで起こっていそうなドラマが怒涛のように進んで一瞬も飽きさせない。

何よりもいいのは、作品全体が35分というコンパクトさのなかで、きちんと起承転結があり、冒頭からラストにかけてちゃんと同じナンバーに収れんされていく、見事なミュージカルになっていることだ。

劇中劇の題材を「フランス革命」に取っていることも、ミュージカルファンはやたらとフランス革命に詳しい、と言われるミュージカル界のど真ん中を突いていて、高羽の演劇愛、ミュージカル愛が舞台からこぼれ出てくるかのよう。

台詞から歌、また芝居の動作から大和振付のダンスにつながる流れも滑らかで、大変な才能を「TOHO MUSICAL LAB.」という稀有な企画が、東宝ミュージカルに招きいれたことをまず頼もしく感じた。

そのなかで、主演俳優、星奈和(ほしな・かなう)役を演じる有澤樟太郎の、伸びやかに弾ける魅力がシアタークリエの舞台を覆いつくしていく感覚に、まずワクワクさせられる。

観る度に躍進している、伸び盛りの俳優の眩しさを近年感じさせ続けている有澤が、整った顔立ちと抜群のスタイルで一気にスターになり、いま主演舞台を控えている星奈の、一見傍若無人のわがままを生き生きと見せてくれる様に、カリカチュア感がないのに驚かされた。

この役柄はそうした言動をある種大げさに見せて登場し、このあとどうなっていくか?で引っ張る効果が十分狙えるものだと思うが、有澤が演じるとキラキラと華やかな衣装も、居丈高な言動もすべてが誇張をある意味で超えたナチュラルに見える。そのことが星奈という人物が確かにスターだと納得させるし、ではドラマは?に惹きつけるさらに大きな興趣を生んでいて、あぁまた大きくなった…と感嘆させてくれる、有澤樟太郎という俳優の勢いをここでも感じさせたのが嬉しい。

その星奈に振り回される新進気鋭の演出家・朝日の美弥るりかは、自らの仕事にプライドを持ち、クオリティを高く保って観客に届けることに腐心する演出家役を、独特の個性と演技力で見せている。

シアタークリエには縁の深い一人で、俳優としてこの舞台で活躍してきた美弥が本来持つ神秘性を、クリエイターとしてのプライドにうまくマッチさせて、自らの信念に真っ直ぐな演出家像を描いたのが作品のきっきりとしたポイントになった。大きな瞳が雄弁に語る視線の演技が客席にも伝わってくるので、これは配信で観ると更に豊かな効果になることだろう。

そんな朝日と意見を闘わせるプロデューサー水川のエリアンナは、はじめ現場の空気を読まない人物として登場するが、彼女の主張もまた「興行」の本質を突いているもので、どちらが悪いわけではなく、それぞれが己の正義を貫いていると感じさせる役作りがいい。

特にエリアンナが元々持っている懐深さが、役柄を強烈に演じてもどこかで憎めなさを残すのが生きている。ポップしなないでによるオリジナルミュージカルナンバーのキーが、総じてかなり高く、エリアンナの登場があったからこそミュージカルとして破綻しなかった思えたほど豊かな歌唱力が光った。

同じことが星奈のマネージャー田之倉役の屋比久知奈にも言えて、タイトルに関連する重要なナンバー「褒めて」に至っては、びっくりするほどのハイキーが続いているのだが、これを歌いきれるのは屋比久あってこそ。

星奈の非は潔く認めて謝罪したうえで、彼の心情を訴える姿に、俳優をきちんと愛しているマネージャーの美徳が浮かび、小柄な屋比久が直角90度で頭を下げるシーンが殊更目に残った。ティーンエイジャーも無理なく演じる屋比久だが、いつの間にかこうした大人の役柄も見事に演じるようになっていることが、感慨深い。

他にやたらと口が回る演出助手・岡野の新井海人の表情豊かさ。絶対に良い人だ!と思わせる衣装・海江田の石井千賀、一瞬本物の舞台監督かと見紛うほど役にはまっていた鈴木の焙煎功一と役者も揃い、演劇賛歌が爽やかななんとも後味の良い新作になった。

そこから25分の休憩を挟んでスタートしたのが『DESK』。

そのブラックぶりで、人手を次々に失い、更に現場のブラック度が増していく悪循環に陥っているアニメーション製作会社を舞台に、仕事のやりがいと犠牲になるばかりのプライベートの狭間で惑っていながら、そんな自分を振り返る時間さえない人々のドラマが、タイトルのDESKが積み重ねられた山本貴愛の印象的な美術のなかで繰り広げられていく。

仕事現場の舞台裏を扱っていることは同じでも、池田亮によるこちらの作品が提示する世界観はかなりシリアス。「上がらない/眠れない/終わらない/帰れない」と歌いながら、せめてランチを摂ろうとした瞬間に寝落ちしている登場人物たちの姿が、あまりにも身につまされて泣きたくなってしまう瞬間があったほどだ。

けれどもそこがミュージカルの良さで、この応酬がずっと台詞で続いたらやりきれないかも、の状況が歌やダンスで描かれることで、適度なポップさが加わり全体のバランスが絶妙になった。特に相当酷い状況にも関わらず、アニメーションに救われた自分が、誰かを救うアニメーションを創りたいという主人公の思いには、業種は様々でもなにがしか心にかかる社会人はきっと多いだろう。現実と地続きの世界から生まれる「オリジナルミュージカル」だからできることの提示が、この作品のなかには確かにあって、池田の働く人々に対する温かな視線を感じる。

そんな思いを抱き、アニメーション会社の制作デスクを務めている和田晋吾の東啓介は、仕事と家庭の両立に失敗し、家を出た妻と暮らしている娘にも容易に会えないでいる和田の鬱屈や、それでもアニメーション作りへの思いが、どこかで断ち切れない人物のペーソスを滋味深く演じている。

この人もまた観る度に階段を昇っていると思わせてくれる若手俳優の一人だが、今回の役柄が社内の制作デスクで、全体を引っ張るポジションにあることから見せる、大人の味わいにもまた特段の魅力がある。

アニメーション業界で大人気の「〇〇もの」がドラマに大きく関わってくるが、それがせめてもの現実逃避であり、実際には起こりえないとわかっている和田の哀しみが時に痛いほどで、一転長い脚を巧みに使ったDESKの美術の移動など、東にしかできない笑いのポイントもあり目が離せない。特に終幕に至る表情は、このシビアな部分も持ち合わせる作品にもたらした光とも言えるもので、配信では確実にアップになるだろうから是非注目して欲しい。歌声もますます伸びて心地よい。

歌声のパワフルさと、可憐なビジュアルが共にある個性が重用されている豊原江里佳は、制作現場のブラックさに辟易しているものの、社会人として区切りだけはつけなければと奮闘している制作進行・上野役を、諦観をにじませて演じているのが新鮮だった。

この人の舞台に常にある前向きなパワーや闊達さを後退させたことで、いっぱいいっぱいになっている役柄の人物造形が良く出ていて、豊原の新たな魅力を観た思いがする。「進捗どうですか」という、〆切を抱えたことのある人間ならとても怖い台詞を、極めて明るいトーンで言う場との落差も際立っていた。

その上野よりある意味ギリギリになっていて、もう誰に対しても取り繕うことをしなくなっている制作進行・中原の山﨑大輝は、眼鏡と敢えて整えていない髪型で、常の高いビジュアル力を封印。

人としてどうなの、と思うことさえ捨ててしまっている中原の、本気で疲れ切ってある意味イってしまっている造形に真実味を持たせることに成功している。この役柄を山﨑が演じているというギャップの効果が極めて大きく、主人公の和田に感情移入しているとイライラしそうな中原役を、もういいから早く休んで!と思わせたのは山﨑が演じたからこそのことだった。

そして、現場の過酷な状況を知りながらも、立場上がみがみ言うしかないプロデューサー・三浦の壮一帆が、役柄が抱えるアンビバレンツを巧みに表現して魅せてくれる。ついこの間まで別の舞台に立っていたのを観ていただけに、こちらがギョッとしたほどのハードスケジュールだったはずだが、それを全く感じさせない実直さと、どこかでとぼけたコミカルさも手放さずに、壮が三浦を演じていることで、終始役柄が人間的だったのが作品の色合いを支えている。

俳優として着実にキャリアを重ね、役幅を大きく広げながら、その根底にある温かさも深めていることが頼もしい。

また、和田の娘として作品の重要なパートを担う奏役は三浦あかり久住星羅がWキャストで演じていて、歌詞を聴いているだけで涙を誘われる大きなソロナンバーも披露するので、活躍を注視して欲しい。

この2本立てを両方観て休憩を含め約1時間40分の公演に、深い見応えがあったことに喝采を贈りたい。両チームの稽古時間は3~4時間の稽古を7回~8回だったそうで、それほどの短期間で、満足できる「オリジナルミュージカル」が生まれていることに改めて驚かされるし、何より開幕前、シアタークリエが水を打ったような、咳払いひとつはばかられるほどの静寂に包まれたことが印象深い。

そこには誰も知らない作品に立ち会う、観客側の期待が漲っていて、名の通った原作のない作品を創ることが非常に難しくなっている演劇現場の現実を打破できる、知恵と勇気がこの「TOHO MUSICAL LAB.」にはあることを知らしめてくれた。

元々コロナ禍が生んだ数少ない良いことの筆頭だと感じていたこの実験企画、「TOHO MUSICAL LAB.」が新たな一歩を踏み出したこと。ここからつながる未来に期待が膨らむ貴重な機会を、是非多くの人に体感して欲しいと願う。「オリジナルミュージカル」の道がこうして続いていくことは、演劇界全体の大きな財産になるに違いないのだから。

有料公開ゲネプロの前に囲み取材が行われ、『わたしを、褒めて』から有澤樟太郎、美弥るりか、エリアンナ、屋比久知奈と脚本・演出の高羽彩、『DESK』から東啓介、豊原江里佳、山崎大輝、壮一帆、作詞・脚本・演出の池田亮が登壇。公演への抱負を語った。

【囲み取材】

──それぞれの役どころと作品への思い、また演出のお二人からは創作意図をお聞かせください。

有澤 『わたしを、褒めて』でお騒がせ主演俳優、星奈和(ほしな・かなう)役をやらせてもらっています有澤樟太郎です。この派手で煌びやかな衣装に皆さん惑わされるかもしれませんが、ものすごい人間ドラマになっています。これだけ短い期間で創ったとは思えないくらい密度が高くて、皆さんの心を打つ作品になっているのではないかと思います。僕自身も役柄とリンクしているところがあって原点に帰れる芝居だなと思っていて。やっぱり人の支えがないと舞台には立てない、皆さんにも共通して通じるところがあると思いますので、是非そこに注目していただきたいと思います。乾燥の季節ですけれども、皆さんの心を潤すような人間ドラマをお楽しみいただけたらと思います。

美弥 星奈さんに振り回される演出家の朝日役を演じます美弥るりかです。まずこうした大変面白い企画の公演に参加できることをすごく楽しみにしていましたし、演出家の役を演じることになるとは思っていなかったので、今まで出会った女性演出家の皆さんを思い出して、皆さんがどんな感じだったかなと、その個性を少しずつ取り入れながら演じております。お稽古期間は本当に短かったのですが、個性溢れる素敵な皆さんと高羽さんとご一緒できて、今日、明日と短い公演ではありますが、精一杯全力で駆け抜けたいなと思っております。

エリアンナ プロデューサーの水川役を演じますエリアンナです。水川はちょっと癖のあるプロデューサーでして、結構みんなを振り回すのですが、美弥るりかさん演じる演出家とそれぞれの正義をもって「ゴジラ対メカゴジラ」のような(一同爆笑)正義のバトルのシーンがあるので、それを是非楽しんでいただけたらと思います。

美弥 どっちがゴジラで、メカゴジラ?(笑)

エリアンナ どっちかなぁ(笑)それは皆さんに観ていただいて(笑)。本当に短い期間だったのですが、笑いの絶えない稽古だったので、短い間にキュッと1チーム一丸となった感じが、舞台から表現できるかなと思うので、是非笑って、そしてちょっとほっこりしていただいて、楽しんでもらえたら嬉しいです。

屋比久 有澤樟太郎君が演じる星奈のマネージャー田之倉役を演じます。マネージャーさんとは関わる機会が私自身結構あるのですが、色々な個性の方がいらっしゃると思ったので、その方たちというよりも屋比久がマネージャーだったらどうかな?と考えながら、私なりの星奈のマネージャーを創っていけたらと思いながら稽古をしていました。本当に皆様がおっしゃるように短い期間でしたけれども、この「LAB.」という名に相応しい、それぞれの個性で皆がアイディアを持ち寄って試して、高羽さんがそれをみてくださってという楽しく濃密な稽古期間だったなと思っています。それぞれのキャラクターが思っていることの、誰かに共感できるところがある作品なので、是非笑って楽しんでいただけたらと思います。

高羽 脚本・演出の高羽彩です。この作品を創った経緯は、私がプロの演劇人になりたいと思ったきっかけが、ある作品のスタッフワークに感動したことだったんです。それからもう二十年あまり私なりの演劇活動はスタッフさんへのリスペクトと共に続けてきたなと思っています。ですから舞台裏で何が起こっているのか、どういう人が働いているかを是非お客様にもわかっていただきたい、そこをわかった上で更に演劇を楽しんでいただきたいという気持ちからこの作品を書きました。演劇の話ではあるのですが、働く全ての皆様への応援になるような作品になっていると思いますので、ちょっと野次馬心というか、覗き心のような感じでコメディを楽しんでいただけたらと思っています。

東 『DESK』という作品で和田役をやらせていただきます東啓介です。いま『わたしを、褒めて』チームの話を聞いていて「あ、一緒の期間の稽古だったんだな」と思うくらい会わなかったんですね。今日ゲネの前の通しを拝見させていただいて、同じ期間で別々に創り上げたものが、いまここに到着したんだなということがすごく嬉しくて。そしていま皆様にその作品を観ていただけることもとても嬉しいです。前回のこの企画の時には無観客での上演だったと聞いていますが、今回はお客様にも入っていただき、配信もあるということで、オリジナルミュージカル、新しい形のミュージカルを肌で感じていただいて、もっともっと日本でもオリジナルミュージカルが増えたらいいなと思っています。『DESK』も働く皆様の後押しをしてくれる部分もありますし、「あぁ、それわかるな」という部分が散りばめられています。僕も先ほど通し稽古をやった時に「わたし、褒めて欲しいな」と思ったので(笑)和田は頑張っているんだけど褒めてくれないなと(一同笑)。その時に見ると、(有澤の役柄が)褒めてもらえているのが羨ましいなと思いました(笑)。やっぱりこのセットのなかで観ることによって、膨らんだ何かがありますので、その膨らんだ何かを皆様に投げて、楽しんでいただけたらと思っています。

豊原 私は皆さんと一緒に働いている上野という役をさせていただいています。今回池田さんはじめ皆さんと原作も何もない台本を一から創っていくということが本当に楽しくて、自分の経験や、今まで感じてきたことも全部作品のなかで生きるような、幸せな稽古期間でした。大人になるとなかなか自分を大事にするとか、自分の為だけの時間を取ってあげるということが、簡単なようですごく難しいなと感じていて、そういうところに気づかせてくれる作品だと思います。観ていただいて自分に優しくなれる作品だなと思うので、お客様にも温かい気持ち、優しい気持ちになっていただけいらいいなと思います。

山﨑 中原という役をさせていただきます山﨑大輝です。今回『DESK』という作品はアニメ制作会社が舞台で、そこで制作をやっているのですが、いまおっしゃっていたように立ち止まるということを教えてくれる作品だなと思っていて。いま、現代は皆さんとても忙しくて自分の時間がとれない。僕も最初に台本を読ませていただいた時に、自分の時間って意外ととれていなかったなと気づかされて、そもそもの基盤のところを取り戻させてくれる作品だと思います。僕の役も信念みたいなものはきっとどこかにはあるんですけれども、学生の気持ちのまま社会の波に出てしまった、そんな人物だなと感じています。色々かき混ぜさせていただくのですが、皆様が立ち止まるような作品になったらいいなと思っています。

壮 アニメ会社でプロデューサーをやっている三浦役をさせていただく壮一帆です。同じプロデューサー役なのですが、エリアンナとは全然違う衣装で、ヒールも履いていない(笑)。それくらい大変な会社で働くプロデューサーをやっているつもりです。でもただでさえ短い稽古期間なのに、私はその半分くらいしか参加できなくて、追い上げることに必死だったんですね。とにかく少しでも皆に追いつけるようにとやってきました。最初に本を読んだ時に、登場人物の欄からこれは面白い本だな、と思ったんです。その面白さを自分が表現者としてどこまで出せるのか?というところが課題でもありました。色々な役に挑戦させていただいてきて、俳優となってからはますます色々なところで色々な役に挑戦させていただいていて、その都度自分のなかの引き出しになっていると思います。この面白い本を皆さんにお届けできるように頑張っていきたいです。あと個人的にはせっかく宝塚を卒業して同じ舞台に立っているのに、共演が叶わなかった美弥るりかさんとは、また是非一緒の舞台でやりたいと思っています。

美弥 ありがとうございます!

池田 こっちのチームはカーキな感じで、そちらのチームは煌びやかなのですが(笑)、共通するものがあって。今回、プライベートな部分と社会的に身を尽くさなきゃならない部分をテーマにしようと思ったのは、僕は第1回目の『TOHO MUSICAL LAB.』を配信で観たんです。その時、コロナで数々の公演が中止になってしまっていて、自分の公演も中止になっていたなかで、配信で届けてくれた。いまでも舞台をやっているんだ!と感じた時に、いまは生活のことを優先しなければならないと思いつつも、もう一度仕事がしたい、もう一度自分がやっていたことをやりたいという思いがあふれてきて。そういうところを第一弾で届けてくれたからこそ、第二弾でまた返せるものがないだろうかと考えました。その時に近しい人たちがアニメーション会社で働いていて、その方々から話を聞くと、面白いと言ってしまうとなんなのですが、大変だけれども言葉にならない叫びみたいなものをすごく感じて。日本に於けるアニメーションにはすごい力がありますし、日本でやるオリジナルミュージカルならアニメなんじゃないか、というところからアニメーション会社の、叫びたいけど叫べなかった人たちの声、みたいなものを皆さんに叫んでいただこうと思って執筆しました。キャスト、スタッフの皆さんが本当に素晴らしくて、かつさっきの通し稽古がすごく良かった!

東 ありがとうございます!

池田 本当にすごく良くて、すごく良かったです!(全員破顔一笑)。毎回面白いところがあって、それが毎回違い、面白さが更新されていくのが短い期間のなかで本当に特別なことだなと思っています。なので皆様もすごく短い期間なのですが、よろしくお願いします。配信を観てくださる方々、生で観てくださる方々にも、元気になったり、明るさだったり、皆さん仕事とプライベートで頭を抱えることもあると思うので、それを明るく元気づけられるような作品になればと思っています。

(取材・文・撮影:橘涼香)

「TOHO MUSICAL LAB.」

『わたしを、褒めて』
脚本・演出:高羽 彩(タカハ劇団)
出演:有澤樟太郎、美弥るりか、エリアンナ、屋比久知奈

『DESK』
脚本・演出:池田 亮(ゆうめい)
出演 :東 啓介、豊原江理佳、山崎大輝、壮 一帆
●11/22・23◎シアタークリエ
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/tohomusicallab/

【配信情報】
●11/23(木・祝)16 時公演(千穐楽)ライブ配信
販売開始:11/6(月)17:00
視聴料金:3,500 円(税込)
アーカイブ有:公演終了後準備でき次第~12/10(日)23:59 まで
販売期間:11/6(月)10:00~12/10(日) 20:00 まで
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/tohomusicallab/

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