生演奏に加えて生SEまで。進化を続ける音楽朗読劇第3弾! 最強且つ豪華な客演陣とともに、ベーカー街が舞台に浮かび上がる。

生演奏に加えて生SEまで。進化を続ける音楽朗読劇第3弾! 最強且つ豪華な客演陣とともに、ベーカー街が舞台に浮かび上がる。

 世界中で愛されている推理小説の頂点、『シャーロック・ホームズ』シリーズは、コナン・ドイルが最初の作品を発表してから100年以上が経っているにも拘わらず、今でもたくさんのファンに愛されている作品群である。映画やアニメ、舞台など様々な形で語り継がれている『シャーロック・ホームズ』の世界を、音楽朗読劇という形で舞台化しているのが、人気演出家・野坂実が主宰するノサカラボの音楽朗読劇『シャーロック・ホームズ』だ。
 現代の声優界でトップを走る山寺宏一がシャーロック・ホームズ、そして水島裕が相棒であるワトスンを演じる人気のシリーズだ。第3弾となる今回は、タイトルを新たにTASTE OF SOUND WAVE Reading with Live music『シャーロック・ホームズ3』とし、田中敦子、津田健次郎、大塚明夫の3名が出演する。このシリーズでは音楽を生演奏するのだが、3作目となる今回は、演奏陣が5名に増え、さらにSE(=効果音)まで生で参加するという前代未聞の企画となっている。常に進化を遂げている作品なのである。
 そこでこの舞台について伺うべく、演出の野坂と、出演者の山寺、水島に集まっていただきインタビュー取材を行ったが、話が始まるとどんどん先に進んで止まらない。そこで3人が話す様子を対談&ドキュメンタリー形式でお伝えすることにする。


この三人だから実現できる世界

野坂「お客さんの反応ですか? それが公演の評価とかお客さんの声は、意外に届いてなくてですね」

山寺「え? 主催者がそれでどうするのよ」

野坂「いや、お客さんから良い言葉を聞くと、手を抜いちゃいそうになるので。それより山寺さんと水島さんが何気なく話していることからヒントを得るというか。水島さんが……」

水島「それ(水島さんという呼び方)、気持ち悪いからやめて(笑)」

野坂「じゃあ、裕さんが『こんな風にすればもっと面白くなるんじゃない?』とか、山寺さんのアドバイスとか、2人が話す言葉を受け取って作り込んでいます。僕が頼りない分、2人が支えてくれる。だってこれだけこの世界でトップにいる人だから、彼らが発した言葉は重いですし、共通してもっと上に行きたいと思ってらっしゃるのが嬉しいですね」

山寺「色んなことをやっているノサカラボの主宰で演出家なんだから、お客さんの声とかを吸い上げて活かしてくれているのかと思ったら……と、言いつつ信頼してますが(笑)。

ともあれ心優しいお客さまの声に、楽しんでいただいていると手応えは感じています。世の中に溢れるたくさんの『シャーロック・ホームズ』企画の中でも、僕はちゃんとしたシャーロックになれるように頑張っていますし、毎年この季節になったら我々の『シャーロック・ホームズ』を観たくなったと言われるようになりたいと、いつも思っています。またかぁ……とは思われないように(笑)。しかも3回目だけど再演じゃないんですよ。毎回違う話なんだし。早く他の話が観たいと思うくらい夢中になってもらえればなと思います」

水島「なんか力説してるね(笑)。あのー、生楽器の生演奏と一緒に作る空気感ってそうそうないと思います。電気を通さない音楽に触れる機会って少ないじゃないですか。そこに皆の言葉が重なり合う。そんな世界はあまりないので、そこは大切にしたいです。『シャーロック~』はノサカラボの第1作目なんですが、ノサカラボができる以前から僕たち3人は、ラフィングライブという演劇ユニットで7~8年一緒にいて。培ったチームワークも魅力だと思います。」

野坂「麻布十番で飯食ったときからだからね」

山寺「ずいぶん前だよね」

水島「それだけに『シャーロック~』は気負わず、リラックスして入れる。そんな空気感を持つ3人がゲストを迎えてお客さまに提供するわけです。山ちゃんが言った通り毎回違う話だし、オムニバスなので、役が変わるゲストは大変だし(笑)」

山寺「たくさんの役をやるからね。僕たち2人はホームズとワトスンだけど」

水島「ゲストは本当に役作りが大変なんですよ。皆さん色んな役を演じ分けるので、わ〜、こんな風に演じるんだと感心しながら楽しんでいます」

山寺「僕の場合は、ホームズ1役であることが不安ですね。いっぱい役をやりたい方なので。ホームズだけでもつかなぁと」

水島「山ちゃんは別格だからね」

山寺「変態なんですよ。いっぱいやっている方が安心」

水島「たまに、シャーロックだけど違う役みたいな展開があるじゃない」

山寺「変装しているシャーロック」

野坂「今回も原作にはないけど、変装シーンを作ってありますよ」

山寺「そうなんだ。でも我々この取材の時点では、まだ脚本見ていないからね。原作は読んでいますが。朗読するには脚本が大事ですよ。原作のままだとずっとワトスンがしゃべり続けることになっちゃう(笑)」

野坂「事件の説明を1人でずっとしゃべり続けるのね(笑)」

山寺「まぁ、それは安心した。でも書き換えることを『シャーロック・ホームズ』のファンは怒らないかなぁ」

水島「野坂さん、ファンからもお墨付き貰っているんでしょう?」

山寺「シャーロキアンから?」

野坂「そう。皆さん結構楽しんでくれているみたいです。まぁ人伝ですが。だから結構今回は大胆に手を入れています」

山寺「最初はそこが不安だったんだよね。『シャーロック・ホームズ』のファンは“シャーロキアン”という呼称が付くらいで、うるさいんじゃないかと思ったら」

野坂「意外に好評で。しかもこの2人であることも良いようです。実は原作だとホームズ、ワトスン2人の会話シーンってあんまりないし、楽しい会話はない。ところがラフィングライブのとき、山寺さんと裕さん2人の掛け合いが凄く面白いし、普段の会話も面白い。そこで2回目からは2人のユーモアのある会話を足しました。僕らのホームズ&ワトスンの世界はその方向です」

水島「で、脚本はいついただけるんですかぁ?(笑)」

野坂「いや、一昨日まで泣きそうになりながら詰めて、作曲家さんに渡しました」

水島「で、いついただけるんですかぁ?(笑)」

野坂「近日中に……」

山寺「(笑)。取材中に演出家の言い訳を聞くという(笑)」

水島「期待度が上がるねぇ」

生演奏だけで無く、生SE(効果音)?!

野坂「『シャーロック・ホームズ』シリーズを始めるときに、六本木の街を歩きながら考えてて、もう山寺さんと裕さんしかいないじゃない!と閃いて2人に電話したんです。それが始まりで、やるからにはこれをベストな作品にしたいと思い、役者さんのセレクションを深く考えたり、生演奏を入れたりして、贅沢な作品を作りました。そしてさらに、生SEが加わったら、凄く面白いと考えたんです。声優さん、役者さんと生演奏、そして今度は生SEともセッションすることになる。音に特化した凄く豊かな世界が提示できるんじゃないかと思いました」

山寺「昨年はやっていないよね。どうやるの?(笑)」

野坂「例えば、ドアの音なら実際にドアを建てて“バタン!”と」

水島「馬車はどうするの?」

山寺「入れるの⁇ 馬と馬車(笑)」

野坂「そこは昔のラジオドラマで使ったような道具があるんです」

山寺「裕さんの時代はそれだったでしょ。俳優の周りに音効さんがいてね。僕はその時代を知りません(笑)」

水島「僕はやったことがあるよ。小豆で波の音出したり」

野坂「あとはカッコウや夜のフクロウとかの鳥の声、環境音ですね。でもともかくドアの開け閉めは多いんです」

水島「馬車も毎回出てくるよ」

山寺「どうしても馬車が気になるのね」

野坂「馬車はかなり減らしました」

山寺「でも効果音全部生ではないでしょ?」

野坂「いや、全部」

山寺「全部??」

水島「ほらー、(野坂さん)そう言っていたもの」

山寺「ノーデジタル? 嘘でしょ。もう職人さん少ないよ」

野坂「まぁ、出来る方に来ていただくことになってます。すでにホームセンターで色々な音を探してくれています」

山寺「お客さんが俺たち観ないで、ずーっとSEの人を気にするかもしれない」

水島「それは辛い(笑)」

山寺「凄い緊張だけど、まぁやってみましょう」

水島「でも馬の嘶きとか、『俺やれるよ』って山ちゃん言ってたものね」

山寺「僕は声優の中でも結構色々な音をやってきましたからね」

野坂「さらに生の音楽も加わるから」

水島「あれ? 音楽メンバーが増えるって言ってなかった?」

野坂「はい。増えます。5人になりました」

水島「乗るの? 舞台に」

野坂「乗りました。美術家がぼやきながら図面引いて」

山寺「そして将来はフルオーケストラにしたいと(笑)」

水島「そんなことも言っていたね」

野坂「だからお客さんにいっぱい来てもらわないとね」

山寺「予算の都合で朗読が減っていく可能性があるよね(笑)」

野坂「曲も増えてるしね、もう50曲くらいに(笑)。だんだん作曲家さんが無口になってきましたね」

そして豪華な客演陣と

山寺「毎回素晴らしい皆さんとやっていますが、今回もよく揃ったなという印象です。スケジュールもいっぱいな皆さんだから心配でしたが、よく揃いました。大塚さんは前回に引き続きのご参加ですが、実はこの3人、アニメ『攻殻機動隊』で共演しているメンバーなんですよ」

水島「あっちゃん(田中敦子)とは、ドラマ『フレンズ』という作品で10年一緒にやってきた仲間です。僕は勝手にツーカーだと思ってます(笑)」

山寺「むこうがどう思っているかはともかく(笑)」

水島「ツダケン(津田健次郎)とは、6年くらい前に『プリキュア』でご一緒していて、面白い演技するな〜と惚れて、仲良くなりました。(大塚)明夫ちゃんはデビュー作が一緒だった」

山寺「芸歴もの凄く長いから凄いですね(笑)」

水島「長いだけだから(笑)。なので変な緊張感はないし、むしろあの3人がどんな演技を見せてくれるかとっても楽しみですね。山ちゃんも、僕が一番そばでセリフを聴けるんだから贅沢ですよね。お互い阿吽の呼吸で出来ると思ってるし」

山寺「僕だって同感です。もう裕さんがいればね。ラフィングライブの時代から裕さんとの掛け合いを楽しみにしていたので、3回目となる今回も良いコンビぶりを発揮できると思っています。でもさっきアニメで共演している3人だと言いましたが、田中さんと津田さんは舞台でご一緒するのは初めて。だからどうなるだろうと緊張感もありつつ楽しみでもありますね。素晴らしいメンバーですね」

水島「ツダケンはスケジュールが大変なのに出たいと言ってくれたと聞いてるよ?」

山寺「断りづらかったんじゃない? 裕さんとの付き合いもあるしね。だってスケジュールだけはどうしようもないからね。本番も来られるかわからないかも(笑)」

水島「それはないでしょう(笑)」

山寺「いや、じゃあもう稽古は代役の人で、本番だけ津田くんでも……僕は良いと思っていますから」

水島「それはダメだって(笑)」

舞台=朗読劇ならではの緊張感とは

水島「台本を落とさないようにするという緊張感!」

山寺「そこですか?(笑) 確かに落としちゃダメだけど」

水島「だって収録で2時間台本持っていることはないでしょう? それに収録なら落としてもゴメンナサイでなんとかなるかもしれないけど、舞台で万が一落としたら、皆にメチャクチャ迷惑かけるじゃない」

山寺「お客さんもいらっしゃるんだからそれはないでしょ。じゃあ裕さんだけ台本置く台を作りましょう」

水島「それは格好悪いな。あと手の脂が減ってるから台本がめくりにくい」

山寺「それ普段からでしょ」

水島「確かに。あと、暗い(笑)」

山寺「僕は収録現場でももちろん緊張しますけど、生でお客さんがいるのはまた違った緊張ですね。1回スタートすると止められないと思うし」

水島「うん。止めちゃいけないから台本落とさないようにと」

山寺「そうかそうか(笑)。皆さん遠方からいらっしゃって、チケット代を払ってもらい、目の前にいらっしゃるわけだから緊張しますよ。そんなに笑える作品じゃないけれど、皆さんの熱は伝わってくるし、一緒に感動を作っている実感がありますね。収録でも画面の向こう側を感じろ、と言いますがなかなか難しい。それが生だと同じ空間にいるわけですから。緊張もあり喜びでもあります」

水島「役者は音楽チームと息を合わせる訳ですが、さらにお客さんとも息を合わせている。だから毎回違う感動が生まれるんですね」

野坂「そしてこのお2人はいつも高みを目指しているんです。だから僕も一緒に良いものを楽しいことを作り上げたいと思いますね。それが僕らの遊びというかね」

そして最後に……

野坂「色々情報が溢れている昨今ですが、作品の当たり外れもあると思います。でも僕たち3人が作る作品については確実に当たります(笑)。楽しみにしておいでいただければと思います。ともかく生音楽、生SEで芝居が出来る役者が揃っているなんて、そんなことは普通あり得ませんから。もの凄いものになりますので、楽しみにしてほしいです」

水島「絶対に心地よい空間になります。ぜひ、同じ空気感を楽しんでください」

山寺「ちょっと長くなりますが、僕は最近、ヴィンテージ家具に目覚めまして。今まで興味がなかったのに、長く愛されて大切に使われてきたものの素晴らしさに気づいたんです。その理由を考えるとさらに深みにハマって。そういった古い家具が我が家にもいくつかありますが、メンテナンスをしないといけないんです。1回バラして組み立て直すわけですが、そこに日本の素晴らしい職人さんの技術があるんです。その結果、味は残しつつ丈夫に仕上げてくださる。『シャーロック・ホームズ』を今やるのも同じようなことかと思うんです。どこか似ているような部分がある気がします。そんな気持ちで頑張ります」


(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

山寺宏一(やまでら・こういち)
宮城県出身。大学時代に俳優を目指すこととして、卒業後に上京。俳優養成所に通う。卒業後は舞台を中心に出演を重ねる。1985年、OVA『メガゾーン23』で声優としてデビュー。その後いくつものアニメ作品に参加し、やがて映画の吹替にも挑戦するようになる。1997年には、朝の子供向けバラエティ「おはスタ」の司会に抜擢。2016年まで継続して務めることになる。2000年には俳優としてドラマデビュー。映画にも進出する。1つの作品でいくつもの声を使い分けることができ、声優界の中でもトップランナーの1人として幅広く知られている。

水島 裕(みずしま・ゆう)
東京都出身。中学1年生の頃に劇団若草に入り、芸能界デビューし、高校生の時に特撮番組『愛の戦士レインボーマン』の主題歌で歌手デビューする。その後声優として活躍し、多くの作品に出演するが、声優人気が高まった時期とも重なり、俳優・DJ・バラエティーや「連想ゲーム」などのクイズ番組への出演など、アイドル声優の先駆けとなる。現在でも第一線で活躍する人気声優のトップランナー。

野坂 実(のさか・みのる)
福井県出身。ノサカラボ代表。大学進学後に演劇と出会い、友人のすすめもあって加藤健一事務所に入所。卒業後の2002年、文学座や加藤健一事務所の卒業生を中心に、クロカミショウネン18を旗揚げ。2012年の解散まで演出・脚本を担当して小劇場を中心に活動。その他様々な演劇ユニットで精力的に活動を展開する。声優の水島裕、山寺宏一らと共同主宰した演劇ユニット ラフィングライブが『シャーロック・ホームズ』のベースになっている。

公演情報欄

ノサカラボ TASTE OF SOUND WAVEReading with Live music『シャーロック・ホームズ3』

日:2023年7月15日(土)・16日(日)
場:大手町三井ホール
料:特典付きチケット9,000円
  一般チケット:8,000円(全席指定・税込)
HP:https://nosakalabo.jp/sherlock-03/
問:サンライズプロモーション東京
  tel.0570-00-3337(月~金12:00~15:00)

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