
様々な舞台映像を、前に出ない天才 板尾創路 の眼(フィルター)を通して語る「板尾のめ゙」。最終回となる第十二回は、2024年12月に新宿FACEで上演された『刃牙 THE GRAPPLER STAGE ―地下闘技場編―』。格闘漫画を原作にした、いわゆる2.5次元舞台である。
<作品紹介>
空手、中国拳法、柔術、ボクシング、レスリング……。最強の名に魅せられた怪物たちが真の決着を求め集う聖地、それが地下闘技場。そこに君臨し続ける齢17の少年王者、範馬刃牙。そして刃牙のクビを狙う強敵(ライバル)たち。一体なぜ刃牙は戦うのか……!?地上最強の称号を巡る、極限の戦いが幕を開ける。
体つきもいいし、動きも本格的。

──秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」の『グラップラー刃牙』を原作とした2.5次元舞台作品ですが、いかがでしたか?
お笑いコンビ「プリンプリン」の田中(章)さん、出てましたよね?顔と声で、どこかで見たことあるなと思って……!久しぶりに見ました。昔はこんなにツルツルじゃなかったですよね(笑)
実際に格闘技をやられている人がキャスティングされてますよね。体つきもいいし、動きも本格的。相当な身体能力がないと、この表現はできないですよね。かなり練習されたのではないですか。見応えがありました。
──映像ではなく、舞台だからこそ、“ウソ”がつけず、より“ホンモノ”が求められるかもしれません。
そうですね。効果音や照明はあるけれど、編集はできないですからね。烈海王役の野間(理孔)さんとか、動きがキレキレで、すごかったなぁ。芝居と分かっていても、ドキドキさせられました。完全にエンタメ作品ですね。
──ジャンルとしては、いわゆる2.5次元舞台になると思うのですが、板尾さんは2.5次元舞台をどう捉えているんですか?
僕、2.5次元舞台に出ている俳優さんと一緒にお芝居をしたことはありますけど、多分2.5次元舞台を生で観たことないと思う。
やはり原作のファンも多いのでしょう?どれだけ作品やキャラクターが再現されているのか。きっと観ていて楽しいし、ワクワクすると思います。普段演劇を観ない人たちも劇場に足を運んでくれるのは、とてもいいですよね。
また、配信が前提とされていたり、SNSで感想がたくさん寄せられたり、僕らの時代にはなかったムーブもあるようで、それもいいですよね。新しい楽しみ方だなと思います。

──ちなみに板尾さんは2.5次元舞台の出演オファーがあったらどうしますか?
うーん、別世界すぎて、考えたことないなぁ(笑)。自分が若い頃や子どもの頃に親しんだ作品だったら出てみたい気もするけど、あまり馴染みがない原作で、一生懸命勉強して本番に臨んだのに、それが全然ハマらなかったらショックだろうな……(笑)
──もし出演される際は取材させてください(笑)。さて、今回で「板尾のめ゙」が最終回を迎えます。これまで12本の演劇映像作品をご覧いただいたわけですが、いかがでしたか。
やっぱりどの作品も生で観たいという気持ちが強くありました。
料理と同じだと思うんです。「有名な寿司職人が作った」と言われて出された寿司も、それはそれでおいしいんでしょうけど、でも、目の前でその職人さんが魚を捌いて、握ってくれた寿司の方がずっとおいしく感じると思うんですよね。その空間も含めて、目の前に人がいるという、圧倒的なライブ感。それがいいじゃないですか。
この連載でも、きっと生で作品を観られたらお互いよかっただろうなと思ってます。どれも厳選された作品だったから、もちろん映像でも面白い作品でしたけど、映像ではなかなか掴みきれない魅力が絶対にあっただろうから。
「板尾さんに芝居を観てほしい」と言っていただくことがあって、それは僕としても、ありがたいし、嬉しいことなんです。芝居を作っている人間は、いつの時代もその芝居の感想や評価が気になるものですからね。
僕は若い人たちの頑張りをもっといろいろな人に知ってもらいたいし、団体さんの集客に繋がるならと思って、「板尾のめ゙」を連載してきました。本を書いて、稽古をして、上演をして……と、演劇を作るのは本当に大変なこと。儲かるわけでもないし、面倒くさいこともたくさんある。でもそれがいいんですよね。
連載を通じて、少しでも作品を見てみようと思った人がいてくれたら嬉しいです。

(インタビュアー・文&撮影:五月女菜穂)
『刃牙 THE GRAPPLER STAGE -地下闘技場編-』配信中!
カンフェティストリーミングシアターにて配信中!

『刃牙 THE GRAPPLER STAGE -地下闘技場編-』
原作:板垣恵介『グラップラー刃牙』
(秋田書店「少年チャンピオン•コミックス」刊)
脚本・演出:田中大祐
出演:
範馬刃牙:佐藤祐吾
松本梢江:大西桃香
愚地克巳:日向野祥
花山薫:桜庭大翔
ほか
[視聴券販売期間]
3月25日(火)10:00~4月13日(日)23:59
[配信期間]
3月25日(火) 10:00~4月20日(日) 23:59
※レンタル視聴可能時間 7日間 (168時間)
[視聴券]3,000円(税込)
板尾創路プロフィール

1963年生まれ。大阪府出身。NSC大阪校4期生。相方のほんこんとお笑いコンビ=130Rを組み数々の番組で活躍。2010年には『板尾創路の脱獄王』で長編映画監督デビューを果たし、『月光ノ仮面』(2012年)『火花』(2017年)を監督。映画・TVドラマのみならず舞台作品にも多く出演し、2019年の初回から『関西演劇祭』のフェスティバルディレクターを務めている。
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