連続対談企画②『“演劇”のある生活』[5月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

連続対談企画②『“演劇”のある生活』[5月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第2回 無料放送局『BS松竹東急』 5月の演劇ラインナップをご紹介!

 BS松竹東急は、映画、歌舞伎、一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、今年3月26日開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。

また演劇以外にも、映画、オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという…、なんとも謎に包まれた放送局である。

 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、シアター情報誌『カンフェティ』編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

吉田「先日は縦走、お疲れ様でした。」

湯浅「本当にありがとうございました!なめこ汁、おいしかったですね!」

吉田「なめこ汁は、山頂の茶屋でふるまわれているのですが、ひたすら山頂を目指して歩いて疲れ切った身体に染み渡るんですよね。」

湯浅「前回の対談で、吉田さんのプロフィールに趣味が縦走とあって、縦走って何?ということで。」

吉田「縦走っていうのは、登山の一種なんですけど、山頂まで登ったあと下山せずそのまま次の山へ向かうことを縦走って言います。私も始めたのは1年半前くらい、コロナ禍になってからです。ただ登って下りるだけじゃなく、あえて演劇的に言えば、さらに非日常の世界へ一歩踏み入れるみたいな感覚があって、実際、縦走中はすれ違う登山客も一気に減るので、日常では味わえない体験ができますね。」

湯浅「それを聞いては一度やってみたい!と思い…先日高尾山に行きました!」

吉田「ほんとに実現するとは思っていませんでした。ちょうどいい天気でしたね!」

湯浅「ええ、高度が高いところで平坦な道を歩くということはあんまり経験できないので、空気もおいしく、確かに楽しかったです。さて、というわけで…2回目です。※1回目の対談はこちら

吉田「1ヶ月が早いですね。」

湯浅「そして、早速ですが、5月のラインナップをまず発表します。」

吉田「いきなりですね。」

湯浅「エゴサーチをしていたら、この対談記事長い!そんなことより早くラインナップ知りたい!ってのがあったので(笑)そういう方のために!」

吉田「エゴサーチは大事ですね!」

5月のラインナップはこちら!

土曜ゴールデンシアター
 5月7日(土)  夜6時30分~「NINAGAWA・マクベス」
 5月14日(土) 夜6時30分~歌舞伎「竜馬がゆく 風雲篇」
           歌舞伎「竜馬がゆく 最後の一日」
           ※昼12時からは、歌舞伎「竜馬がゆく 立志篇」を放送
 5月28日(土) 夜6時30分~ブロードウェイ版「ロミオとジュリエット」

週末ミライシアター
 【演劇】
 5月7日・21日(土) 深夜0時30分~DULL-COLORED POP「丘の上、ねむのき産婦人科」
 5月14日・28日(土) 深夜0時30分~serial number「すこたん!」
 【映画】
 5月1日・15日(日) 深夜0時30分~渋谷悠監督 作品集
 5月8日・22日(日) 深夜0時30分~小原正至監督 作品集
 【お笑い】
 5月29日(日) 深夜0時30分~松竹芸能お笑いライブ「トップ座」

吉田「今回も魅力的なラインナップですね。そして週末ミライシアターの項目にも気になるところがあります。」

湯浅「それではまず土曜ゴールデンシアターのラインナップから紹介します!」

吉田「お願いします!」

湯浅「まずは、Bunkamuraシアターコクーンで上演された『NINAGAWA・マクベス』を放送します!」

吉田「蜷川幸雄さん。演劇界のレジェンドですよね。厳しい演出方法で有名でしたが、その厳しさに鍛えられ磨き抜かれて、スターになった俳優は数知れずです。古典から現代劇まで幅広く手がけられましたが、戯曲の台詞には一切手を加えないということでも有名。その中でもこの『NINAGAWA・マクベス』は、世界各国から上演のオファーが殺到し、ニューヨークでも上演され、まさに蜷川さんが、「世界のニナガワ」と呼ばれるようになったきっかけの作品ですよね。」

湯浅「蜷川さんといえば、勝手なイメージですが、上から下まで黒い格好という印象があります。」

吉田「確かに!」

湯浅「学生の頃、全身黒ずくめの格好の生徒がいて、演出もするもんだから、心の中で勝手に『日芸のニナガワ』ってあだ名を付けてました。」

吉田「(笑)」

湯浅「その翌週は歌舞伎『竜馬がゆく』を放送します!市川染五郎時代の松本幸四郎さんが坂本竜馬を演じられた作品ですね。」

吉田「これはどういう演目なんですか?」

湯浅「司馬遼太郎原作のベストセラー作品を歌舞伎化したものになります。『立志篇』『風雲篇』『最後の一日』の三部作で構成されており、こちらを一挙放送します。」

司馬遼太郎のベストセラーを歌舞伎化した三部作「竜馬がゆく」を一挙放送!

湯浅「『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』というのが、BS松竹東急の演劇編成のコンセプトにあります。歌舞伎を観たことがないという方でもわかりやすい内容のものを優先的に編成しました。」

吉田「歌舞伎というと、全部漢字のタイトルとかそういうのを思いがちなんですが、『竜馬がゆく』となると、普通、歌舞伎のタイトルにはならないようなもので、原作を知っている人も多いタイトルなので、確かに歌舞伎の入口としてもいいんじゃないかと思います。」

湯浅「そして、28日にはデヴィッド・ルヴォー演出、オーランド・ブルームが主演を務めた「ブロードウェイ版『ロミオとジュリエット』」をお送りします。」

吉田 「『ライオン・キング』『オペラ座の怪人』『ウェストサイドストーリー』など、数々の人気ミュージカルを生み出したブロードウェイ。ニューヨークのタイムズスクエアを中心に広がる劇場街で、みんな一度は聞いたことあるかと思いますし、ニューヨークを訪れる観光客は必ずと言っていいほど訪れる一大観光地ですね。実は弊社が展開しているTKTSというチケットストアは、NYブロードウェイでTKTSを運営する『Theatre Development Fund (TDF)』から公認を受けて、2019年8月から日本で運営を開始しました。」

湯浅「色々と手広くやられていますね!」

吉田「いやいや…。改めてですが、本当に幅広いラインナップですね!5月は日本と海外を代表する演出家によるシェイクスピア作品を楽しめるという…!」

湯浅「さらに、日本を代表する小説家原作の歌舞伎作品もです!」

吉田「いやあ、恐れ入りました。」

湯浅「5月のテーマとしては、名前に親しみがあれば、それだけ作品にも入り込みやすいのでは、と思いまして、『マクベス』『シェイクスピア』『ロミオとジュリエット』、そして『ブロードウェイ』といった『名前は聞いたことがあるけど観たことがない』という方も少なからずいるんじゃないかと思われる作品を編成しました。

吉田「そしてここからは…。」

湯浅「そうですね、急に吉田さんが語り始める、週末ミライシアターですね。」

5月の週末ミライシアターは、『DULL-COLORED POP』、『serial number』 そして…映画に、お笑いライブも!?

湯浅「はい、5月第1・3週はDULL-COLORED POPの作品をお届けします。大人気劇団ですね!」

吉田「明治大学の演劇サークルを母体に旗揚げした劇団です。斬新でありながら古典的な要素も取り入れて、ポップでかつ演劇的な奥行きも兼ね備えた実力派の劇団。このスタイルをハイクオリティで持ち合わせている劇団は、DULL-COLORED POPしかないんじゃないかな思っています。」

湯浅「学生の頃に主宰の谷賢一さんが若手演劇人の交流会を企画していた時期があり参加したことがあります。そこで知り合った俳優に芝居に出てもらったりしていました。今回この企画の話をご説明した際に、あの時ご挨拶してはいたんですが、覚えてないですか?って聞いたら、まったく覚えていなくて…(笑)」

吉田「残念!谷さんは劇作家・演出家以外にも翻訳家でもあり、本当に多才な方ですよね。日本とイギリスで演劇を学ばれて、小劇場にとどまらず、古典からミュージカルまで幅広く活躍されています。特に近年では、福島と原子力発電所の50年の歴史を描いた『福島三部作』が多方面で注目されましたね。岸田國士戯曲賞・鶴屋南北戯曲賞のW受賞は圧巻でした。」

湯浅「そして、続いては、serial numberですね。」

吉田「もともとは風琴工房という団体名で活動されていましたが、2018年からserial number として活動されています。詩森ろばさん(劇作家・演出家)が作り上げる、多彩な題材を綿密な取材に基づいた社会派演劇が特徴ですが、骨太でありながらエンターテインメント性のある作品が魅力ですね。詩森さんは舞台以外でも評価が高く、映画『新聞記者』ではアカデミー賞受賞など、映画脚本家としても大活躍されていますね。」

湯浅「詩森さんにご挨拶した際に、書きたいことは尽きませんか?って…学生みたいな質問をしたところ、書きたいことが多すぎて時間が足りない!っておっしゃられて、本当に創作欲にあふれた作家さんなんだなあ、すごいなあ、とただただ思いました。」

吉田「そうなんですね。」

湯浅「今回、週末ミライシアターでは、DULL-COLORED POPさんは“出産”をテーマにした作品、serial numberさんは、“性的マイノリティー”をテーマにした作品で、どちらも取材をベースに作り上げられた“社会派演劇”のラインナップとなりました。」

吉田「演劇でしかできない社会問題の切り方というのもあると思っていて、普通に暮らしていると、テレビやネットニュースなど、割とステレオタイプの情報しか入ってこないと思うんですが、そうじゃなくて演劇を通してだからこその鋭い切り口もあって、見応えがすごくあるんじゃないかと思います。」

湯浅「冒頭で吉田さんが『縦走』を演劇的に例えたと思うんですけど、演劇的である、ということは、4月もそうでしたけど、この5月のラインナップについても、台詞であったり、演出であったりと、映像では表現できない、演劇だからこそできる表現に到達されている方々の作品だと思うので、これまで演劇を観たことがなくてご覧になる方がいらっしゃれば、そういった『演劇的』なところを楽しんでもらえたらいいなあと思います。

吉田「いいですね!そして…今回のラインナップを見ていて気になっていたのですが、週末ミライシアターに『映画』、そして『お笑い』…とありますが?」

湯浅「はい、4月より毎週土曜に演劇を届けるとしていた週末ミライシアター。5月からは日曜には映画やお笑いなどもお届けすることになりました!」

吉田「展開が早くないですか!」

湯浅「ですよね!BS松竹東急の編成コンセプトに『演劇』以外に、『映画』があります。小劇場や人気劇団の舞台を届けるのがミライシアターであるならば、インディーズ映画や映画祭の上映作品もお届けするのもミライシアターなのかなと。」

吉田「なるほど。」

湯浅「ということで、日曜にはインディーズ映画を中心として新進気鋭の監督の作品を放送します!」

週末ミライシアターでは、5月から日曜にインディーズ映画などをお届け!

吉田「にしても、展開が早い!」

湯浅「そして、この週末ミライシアターは、あらゆる世界における“ミライ”を担う才能の作品をお届けする番組にしたいと思っていることもありまして、29日にはお笑いライブもお送りします!」

吉田「お笑いライブまで…!」

湯浅「そこに行かなければ見られなかったもの、はずのもの。演劇や映画に関わらず、音楽や美術など、あらゆる芸術の“ミライ”を支える創作活動を、作品を今後も積極的に編成していきたいと思っています。」

吉田「しかし、まさか1ヶ月で週末ミライシアターの放送枠が増えるとは思いませんでした!しかも、映画に、お笑いライブ…。」

湯浅「ぜひ、演劇が好きで週末ミライシアターをご覧になったという方がいましたら、日曜の映画やお笑いも見ていただきたいです。もしかしたらそこにはこれまでの自分ではたどり着けなかった感動があるかもしれません。」

吉田「確かにこれを機会に、私も見てみます!」

湯浅「前回の対談で、テレビの可能性は生活の幅が拡がるところにあるのでは、とどや顔で言いましたが、配信がこれだけ浸透してきた社会において、新しく開局したテレビ局がおくる番組は、これまでの自分では選ばなかった可能性だと思っています。」

吉田「確かに私も配信サブスクは利用していますが、ある一定のジャンルに偏っている気はします。」

湯浅「たまたまテレビをつけていたら、小劇場舞台を、インディーズ映画を、お笑いライブをしている。 それがもしかしたらとても面白く感じられるかもしれない。“選択ではたどりつけない感動”をテーマに4月クールは編成するように心がけています。」

吉田「はい、毎度それっぽい言葉で締めようとしたがりますね。」

湯浅「(笑)」

吉田「ということで、今回はこのあたりですかね。」

湯浅「そうですね。あ、ちなみに、この対談企画ってどんな反応なんですか?」

吉田「これまであまり私自身が表に出ることが少なかったので、業界関係者から、『見ましたよ!』ってよく声をかけられます。この企画も、さらに認知度を広げていきたいですね。」

湯浅「引き続き、よろしくお願いします!」

吉田「6月の演劇ラインナップも楽しみにしています!」

プロフィール

●湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

●吉田祥二(よしだしょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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