“奏でる側”と“観る側”が互いに支え合い、文化をともに高めていく 旦那衆の文化を手本にした合唱コンサート

 音楽には鑑賞する楽しみの他に、自ら奏でる楽しみがある。かつてはプロを凌ぐ愛好家が多くいたものだ。その1つの例が江戸での旦那衆の文化だろう。今で言うところの大企業の経営者たるものは、長唄・常磐津・義太夫などを嗜み、時々披露して楽しんでいた。そんな旦那衆の文化を合唱と結びつけたユニークなコンサートがある。公募で集まった未経験者を含む合唱団が、一流のオペラ歌手やオーケストラと共にステージに立つ。今回で2回目となるこのコンサートを企画・主催するのは一般社団法人Mirai Music Resonance Japan。代表の柿澤寿枝は東京藝大の声楽科出身のソプラノ歌手だが、実は歌舞伎音楽の1つ、”清元”を伝承する家に生まれ育った。

 「歌舞伎が大好きで、小さい頃から週末は両親や祖父が歌舞伎座で仕事をしていますから、自分も歌舞伎座の楽屋をうろうろしていました。(坂東)玉三郎さんがお化粧しているところを見せてもらって、『あんた変わってるね』なんて言われていました(笑)」

 自らはクラシック音楽の世界に飛び込み、卒業後はイタリアと日本を往き来して研鑽を積んだ。しかしその道は厳しく、30歳を過ぎて一度諦めたという。

 「もうボロボロでした。でも48歳の頃、このままじゃ死ねない。もう一度歌いたいと思って動き始めたら、ある方からアマチュア合唱団を作ったら?と言われて始めてみたものの、みんな練習してこないので、本番1週間前に大激怒(笑)。もう二度とやらない!と大騒ぎ。ところが本番は一転して大成功。これは一体何だったのかって考えたときに、幼い頃に親しんだ、旦那衆の文化を思い出したんです。自分たちの楽しみに時間とお金を惜しみなくつぎ込む。そうした心意気はさらにプロの演奏家へのリスペクトを高めていく。芸術という答えのない世界で音楽家と支援者が対等な立場で支え合い、高め合う世界を現代に再構築すべくこのプロジェクトを推進しています」

 指揮の駒井ゆり子がタクトを振る三浦章宏率いるオーケストラ、4人のオペラ歌手と共に、一般公募の参加者がプロ顔負けの合唱を披露する。きっと忘れえぬ一夜になることだろう。

(取材・文:渡部晋也 撮影:間野真由美)

プロフィール

柿澤寿枝(かきざわ・としえ)
東京都出身。祖父と伯父が人間国宝という清元の家に生まれ育ち、東京藝術大学声楽科でソプラノ歌手として学ぶ。卒業後、イタリアと日本で活動を展開。30歳を過ぎた頃に一度断念。2024年より”アラフィフの挑戦”と称して約10年ぶりに音楽活動を本格的に再開。一般参加者を交えた合唱コンサートを企画し大成功。今回、規模を大きくしたホールで第2回の公演に挑む。

公演情報

『第2回 Mirai Music Resonance 合唱コンサート』とんでもない体験を共に ―その瞬間、文化が生まれる―

日:2026年9月2日(水)19:00開演(18:15開場) 
場:第一生命ホール
料:VIP席20,000円 SS席12,000円 S席8,000円 A席5,000円(全席指定・税込)
HP:https://mmrjapan.jp 
問:アートウィングス tel.03-6869-5641(平日11:00~17:00)

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