「えっちでポップで社会派」をキャッチフレーズに、女性のエンパワーメントを掲げてきた「劇団だるめしあん」。25周年記念公演として今夏に上演されるのは、2024年の初演が「第31回劇作家協会新人戯曲賞」の最終候補に選ばれた『ラブイデオロギーは突然に』。20年前に爆発的ヒットを記録し、ドラマ化したケータイ小説『あまこい』の原作者と脚本家が突如ドラマの世界に転生。原作のあらすじ同様、性暴力、DV、薬物、妊娠、そして事故死といった展開が次々に起こる中、2人が危機的状況を回避しようと奔走するストーリー。
作・演出の坂本鈴と俳優・河南由良の劇団立ち上げメンバー2人に話を聞いた。
———本作の話を伺う前に、お2人は大学の文学部の同級生とのことですが、どのような経緯で劇団を立ち上げたのでしょうか。
坂本「私の19歳の誕生日パーティーで劇団を結成しました。高校時代、演劇部に所属していて、大学でも演劇をやりたい気持ちがあって、ちょうど誕生日パーティーで『演劇をやりたい』とポロっと口にしたら、『やっちゃおうぜ!』と言ってくれて、ノリで決まったのがきっかけです」
河南「彼女以外は演劇をやったことない人ばかりでした。楽しそうだし、受付や衣装ならという気持ちで劇団に入ったんですけど、私も含めて裏方に志願した人たちが、みんな俳優として舞台に上げられることになってしまって」
———いわば”軽いノリ”でスタートした劇団が25年も続くと思いましたか。
坂本「誰も思ってなかったですよね。私も1回で辞めるつもりでした。思い出作りみたいな感じでしたし。ところが公演が終わった直後『2回目はいつ?』と聞いてくれたり、花束もくれたりして、私自身感動して『もう1回やろう』と言って、気づいたら25年経っていました。紆余曲折あって、ここ10年ほどは私たち2人での活動でしたが、今年5月に2人劇団員が増えまして、今回新体制になって初めての公演になります」
———25周年記念公演として『ラブイデオロギーは突然に』を選んだ理由を教えていただけますか。
坂本「私の自信作だったこともありますし、初演では河南さんが出ていなかったので、一緒にやりたいなという気持ちもありました」
———河南さんは初演をご覧になられましたか。
河南「はい、面白かったです。傍から見て、坂本さんは今作が大好きだろうなと思っていて、過去の台本を読むと彼女は恥ずかしがるんですけど、この作品は1人でゲラゲラ笑いながら観ていて、全然恥ずかしそうな感じではなかったですし、今回この作品を選んだのも納得できます」
———2年前の初演を振り返っていただけますか。
坂本「生まれて初めてダブルコールをいただいて、本当にうれしかったです。フェミニズムがこの作品の大きなテーマになっているんですけど、”エンタメ×フェミニズム”みたいなことがすごく上手くいったというか、前半の割と楽しくてバカバカしい転生ものから、やりたかったテーマの話までしっかり最初から最後まで辿り着けたし、それが客席に届いたという手応えがありました。
劇団としては”えっちでポップな社会派”を掲げているんですが、若い頃は女性が中心となって、ちょっとエッチなことを言ったりやったりする、というスタイルだったんですよね。女性の性の主体性を取り戻していく、ということを意識していたんですが、女性のお客さんに敬遠されたり、男性のお客さんに消費されているように感じたりして、自分たちでもうまく消化できない時期がありました。
今作は、そういう時期も経て、私たち自身も中年になり、悩みながら作った作品なんですが、『中年女性のバディと、恋愛ドラマの高校生ヒロインとの出会い』を描くなかで、本来やりたいと思っていたシスターフッドがいままでと違った形で表現できたと感じました。いろんな世代の女性たちをエンパワーメントできる作品ができたと思っていますし、男性のお客さんからも評判がよくて、とても励みになりました」
———今回は旗揚げ公演以来の単独ホール公演になりますね。
坂本「そうですね。旗揚げ公演は、右も左もわからない中で、近所の市民館のホールを借りて上演したんです。単独でのホール公演は、それ以来になります。私たちのような小さな団体にとって、単独でホール公演を行うというのは、やはりそれなりにハードルが高いことでした。ただ、去年参加した6団体合同のイベント『カンテン「The Foundations」Final.』や、今年主催した『ガチゲキ!! Part3』で、座・高円寺1での上演を経験しまして、その経験が大きな後押しになって、私たちもホールで作品を届けられるという手応えを持てたんです。初演の会場は収容人数が少なかったので、今回はより多くの方に観ていただきたいです。満を持しての単独ホール公演だと思っています」
———20年前のケータイ小説の世界に転生してしまうストーリーですが、どのような思いで脚本を書きましたか。
坂本「ドラマ『不適切にもほどがある!』へのアンチテーゼのような思いもありました。あの作品が、コンプライアンスに関して『昭和に比べて現代の方が少しやりすぎなんじゃないか』『もっと寛容になろうよ』というメッセージを含んでいるように感じられて、そこが自分の中ではあまり腑に落ちなかったんです。『昭和も令和も、いいところも悪いところもあるよね』みたいなことって、それはそうだろうけど、問題に向き合う姿勢としては不誠実なんじゃないか、と思ったりして。今の視点で見れば、昔はコンプライアンスや福祉の面でも、整っていなかったことがたくさんある。そういうものを、ただ懐かしむのではなく、『平成に比べれば、この点は少しずつ良くなってきた』という希望を持てる話にしたいと思って書きました」
———本作の見どころや注目ポイントを教えていただけますか。
河南「劇団だるめしあんとして、初めてのダブルキャストというところが見どころだと思います。いろいろな方に観ていただきたいということで、オーディションを実施して一緒にやりたいという人たちがたくさん来てくれた結果、初演のメンバーを中心とした”甘組”と新キャストが集まった”恋組”の2チームという形で上演します」
坂本「どういう違いが出るのか今から結構楽しみです」
河南「先日初演メンバーに会った際、『敵だからな!』と言われました(笑)」
———稽古ではバチバチになりそうですね。
坂本「そんな! 仲良くしてほしい!! 私の見どころは、脚本とキャストです。自信あります。あとは初演より8倍ぐらい大きくなるステージの広さでしょうか。どう考えても同じ演出というわけにいかないですし、何から何までガラッと変えないといけないので、わくわくしています。それにあたって今回初めてセットを組むんですよ。もちろんプレッシャーもありますけど、新しいことに挑戦するのは楽しいことだなと思っています」
———劇団として今後こういうことをやってみたいという計画や野望などありましたら教えていただけますか。
坂本「25年目にして新たな挑戦をやっていいんだということがわかったので、海外公演や地方の旅公演、それに大きい賞を目指してみようという気持ちはあります」
河南「最近、旗揚げメンバーや今まで出てくれた方と会うことがありまして、そこで周りから『30年頑張ってね!』とすごく言われたんです。私自身、言われるとすぐやっちゃうタイプなので、30周年のホール公演を目指して頑張りつつ、昔はよくやっていた坂本さんの地元・熊本での公演を復活させたいなと思っています。それと新しい劇団員が2人入ったので、私の憧れでもある”劇団員だけの公演”もやってみたいです」
坂本「私も観たいです。最近は劇団員は河南さん1人しかいなかったから」
———『ラブイデオロギーは突然に』というタイトルにちなんで、お2人が大切にしている”信念”を教えていただけますか。
坂本「”楽しくやろう”みたいなことが1番の信念ですね。あと最近は『いつ、どこにいても自分自身でありたいな』と思っていて。そしてそれは他の人に対してもそう思うというか。なので、これから演劇活動やっていく中でも、みんなが抑圧されたり、『自分自身ではいられない』みたいな空間じゃなくて、一緒にいる人たちが自分自身でいられるような空間の中で、作品作りをしていきたいです。まあそれも”楽しくやろう”のためなんですが」
河南「私も一緒ですね。楽しいことしかしたくない! 私たち快楽主義なんですよ」
———信念が一緒というところが、劇団として長続きしている大きな理由かもしれませんね。では最後にこのインタビューをご覧になられている方に向けてのメッセージを、お2人を代表して坂本さんにお願いします。
坂本「25周年で大きな一歩を踏みますので、一緒に目撃しに来てください!」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)
プロフィール
坂本 鈴(さかもと・りん)
1982年1月13日生、熊本県出身。劇作家・演出家。劇団だるめしあん主宰。劇団本公演全ての脚本と演出を担当。2023年『あの子の飴玉』にて第49
回部落解放文学賞 戯曲部門 佳作を受賞。また昭和音楽大学、桐朋学園芸術短期大学、尚美学園大学、日本大学芸術学部にて非常勤講師などを務める。
河南由良(かわなみ・ゆら)
1982年1月16日生まれ、神奈川県出身。劇団だるめしあん所属。主な出演作に「魔法処女★えるざ」、「絶対恋愛王政」、「10978日目の鏡」、「ひとごと。。」、「バイトの面接に遅刻しそうだったが、どうやら遅刻していたのは世界の方だったらしい」など
公演情報
劇団だるめしあん 25周年記念公演
『ラブイデオロギーは突然に〈劇場版〉』
日:2026年8月7日(金)~11日(火・祝)
場:座・高円寺1
料:一般5,000円 U-25[25歳以下]3,500円
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://darumesian.cranky.jp
問:劇団だるめしあん
mail:gekidandarumesian@gmail.com
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