死を目前にした7歳の少女の独り語りに、片桐はいりと安藤玉恵が挑む ただのダブルキャストではなく、それぞれ違う仕上がりを目指して

死を目前にした7歳の少女の独り語りに、片桐はいりと安藤玉恵が挑む ただのダブルキャストではなく、それぞれ違う仕上がりを目指して

 舞台作品だけでなく、ドラマや映画でも強烈な存在感でそこにいる俳優。片桐はいりと安藤玉恵を位置づけるならそういったことになると思う。そんな2人が英国の劇作家 リー・ホールによる『スプーンフェイス・スタインバーグ』に挑む。7歳で病に冒され死を目前にした自閉症の少女が、マリア・カラスの歌声をバックに延々と語り続けるという一人芝居だ。聞いただけでも難しそうな作品に片桐と安藤はどう挑むのか。

安藤「コロナ禍に、一人芝居を実家のとんかつ屋のお座敷で始めて、結構大変だなと思っていたんです。でもこの脚本を読んだ時に、“今、やらなきゃいけない作品だ”という直感が働きました」

片桐「私も声に出して読んでみたら直感しましたね。病気を抱えていて台詞が多い…… 以前、このような作品は嫌だと公言したんですよ。でもそれなのにお話が来るのはなかなかないことで、乗るべき船が来たと言われた感じがしました。しかもそこには安藤さんが先にいらっしゃった。これは大きいです。1人だったらもっとびびったでしょうね(笑)」

安藤「おかげで豪華客船になりました(笑)。だって私が大学1年生で芝居を始めた頃、初めて面白いと思った作品が、片桐さんが出演されていた『マシーン日記』(作・演出: 松尾スズキ/1996年)なんですから」

片桐「あの初演を? じゃあ私にとっての緑魔子さんみたいな位置づけ?(笑) そんなに偉大な存在ではないですよ。それを言うなら、近所のごはん屋さんで『今一番みたい俳優は誰?』という話題で安藤さんの名前が出たんです。私がその場にいるのに、なんで他の名前が?ってちょっとカチンときたんだけど(笑)。でも、そういった存在なんですよ。この人なら面白きことをやってくれそうな……トップランナーですね」

安藤「いやいや(笑)。ともあれ、もう読み合わせを2回しているんです。翻訳の常田さんや、演出の小山さんとそこで色々なプランを話しています」

片桐「そうそう、少しずつ始めようと思って。言葉については色々考えますね。翻訳劇ですから語尾をどうしようかとかね。日本語にすると色々使える訳ですよ。それも含めて私と安藤さんとでは全く違った印象の作品に仕上がるかもしれませんよ」

安藤「そうですね。性別だって変わっちゃうかもしれない。でも私と片桐さんのどちらかしか観られないなら、『ぜひ片桐さんを』って奨めたいくらい信頼しているのですから、安心です(笑)」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))

プロフィール

片桐はいり(かたぎり・はいり)
東京都出身。高校時代に演劇と出会う。1982年、大学在学中から1993年まで劇団で活動。1994年、片桐はいり一人芝居『ベンチャーズの夜』にて全国を公演。近年の主な出演作に、野外劇『嵐が丘』、『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』、ドラマ『季節のない街』、『大奥』、『東京放置食堂』、映画『アイスクリームフィーバー』、『ウェディング・ハイ』、『キネマの神様』など。俳優業の傍ら「映画への恩返し」として、地元の映画館キネカ大森で時々もぎりや、キネカ大森先付ショートムービー「もぎりさん」シリーズの制作を行っている。

安藤玉恵(あんどう・たまえ)
東京都出身。大学在学中に俳優として活動を開始。近年の主な出演作に、舞台『桜の園』、『阿修羅のごとく』、『命、ギガ長スW』、『イェルマ』、『虹む街』、『グリークス』、連続テレビ小説『らんまん』、『あまちゃん』、ドラマ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』、映画『波紋』など。ナレーション出演にEテレ「100分deフェミニズム」の朗読、「こころの時代〜宗教・人生〜」がある。2020年から、実家であるとんかつ屋で『安藤玉恵による“とんかつ”と“ 語り” の夕べ』と題した一人芝居シリーズを開催。

公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『スプーンフェイス・スタインバーグ』

日:2024年2月16日(金)~3月3日(日)
場:KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
料:一般5,500円
  U24[24歳以下]2,750円
  高校生以下1,000円
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
  (全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://www.kaat.jp/d/spoonface_steinberg
問:チケットかながわ
  tel.0570-015-415(10:00~18:00)

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