お盆の季節に蘇る名作。貫地谷しほりが“ 一葉” として、再び舞台へ もう一歩、地に足をつけて役に向き合いたい

 こまつ座の旗揚げ作品として、1984年に初演の幕を開けた『頭痛肩こり樋口一葉』が今夏、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演を迎える。明治の女流作家・樋口一葉とその母や妹、友人らを少数精鋭の女性キャストが濃密かつユーモアに描いた本作は、キャストを変えながら再演を重ねてきたこまつ座の人気作だ。2022年から続き、井上ひさしの盟友・栗山民也が演出を務め、キャストに貫地谷しほり、若村麻由美らが名を連ねた。

 取材当日、主人公・樋口夏子(一葉)を続投する貫地谷の手には1冊の台本があった。2022年の上演時に使用していたもので、ページをめくりながら当時を振り返っていたという。そんな貫地谷に、本作の魅力を聞いた。


―――こまつ座作品へ初参加となった前回の公演を振り返って、いかがですか。

 「本当に濃い公演期間でした。この台本にある当時の書き込みを見返すと、稽古の密度を改めて感じます。出演者の皆さんとは家族のように濃厚な時間を過ごしましたし、地方公演では共演者の手作りの食事を囲んでから舞台に立つこともあったほど。また同じメンバーに会えるのが楽しみですし、前回は私と瀬戸さおりさんが新メンバーとして温かく迎えていただいたので、今回は岡本玲さんを気持ちよくお迎えしたいと思っています」

―――再演作でも過去の演出をなぞらず、毎回新しいアプローチで演出をつけるスタイルで知られる演出家・栗山民也さんとのタッグも見どころになりそうです。

 「本当にそう思います。栗山さんは日本を代表する演出家ですし、こうやって再びご一緒させていただけることを有難く感じています。栗山さんのお稽古は非常にコンパクトで、すべてが端的かつ的確。無駄がありません。稽古中は毎回ついていくのに必死ですが、共演者の皆さんがその時間を大切に稽古に臨んでいた印象があるので、今回も実りある現場になるのではないかと想像しています」

―――本作では、樋口一葉の評伝として、19歳だった明治23年から、没後2年にあたる明治31年まで1年ごとに綴られています。夏子(一葉)の人物像をどのように捉えていらっしゃいますか?

 「現代とは時代背景が大きく異なるので、若くして大人としての責任を背負っている印象があります。一方で、等身大の少女としての側面も併せ持っている。本音と現実のギャップが抱えきれないほどあって、それらを筆に託して生きた人だと感じています。強さと葛藤が同居する“ちぐはぐさ”があるような……。例えば、恋愛で悩む姿なんかはこの年齢で背負うには重すぎるものを背負っていますから。前回の公演ではそんな部分を、台詞がなくても仕草1つで表現するような栗山さんの演出がありましたね。“年齢で言ったら子供なのに、なんでも大人なんだなぁ”と感じながら、演じていたことを思い出します」

―――本作へは4年越しの出演ということで、心境の変化はありますか?

 「本当に濃い公演期間でした。久しぶりに台本を開くと、前回よりも作品の世界がクリアに見えている感覚があります。メモを見返すと、当時は手探りだった部分が少しずつ解像度を増しているというか。出産を経てライフスタイルが変化したこともあり、現実をより切実に捉えるようになったことも、今回の役作りに影響しているのかもしれません。以前は、一葉が葛藤の中で光を見出し、そこへ向かっていく過程を“演じている”感覚が強かったのですが、いまはもう一歩、地に足をつけて役と向き合えそうです」

―――様々なフィールドで活動されている貫地谷さんにとって、舞台はどのような位置付けのものですか?

 「これは昔から思ってることですけど、舞台は自分をリセットするような、今の自分を整理する場所。映像でしかできない表現はもちろんありますが、どうしても映っている部分での表現になってしまいがち。舞台は全身で向き合う分、より基本に立ち返る場所という感覚があります。同じお芝居を何日も続けていく中で、思考が深まる時間が非常に貴重である気がします。
 そう言えば、前回の本番中に驚いたことがあって。若村麻由美さんや熊谷真実さんをはじめとする共演者が真剣に演じているところ、何故か客席から笑い声が聞こえてきたりするんですね。舞台やコメディの本質を実感した瞬間でした。一生懸命な様(さま)がないとコメディにならない。井上ひさしさんのお芝居にはそんな笑いがたくさん詰まっていて、それが面白いということだと思うんです。私にはまだまだ難しいと感じてしまいます」

―――最後に観劇されるお客様へメッセージをお願いします。

 「私は毎年お盆の時期が来ると、おばあちゃんがこういうのやってたなぁ〜なんて作中の出来事を思い出すんです。お盆という時間の意味を改めて考えていただける、そんな作品になっています。気軽に楽しく観られる作品ですので、ぜひ劇場でご覧ください」

(取材・文:山田浩子 撮影:You Ishii)

プロフィール

貫地谷しほり(かんじや・しほり)
1985年12月12日生まれ、東京都出身。2002年に映画デビュー。映画『スウィングガールズ』で注目され、2007年のNHK 連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインに抜擢される。初主演映画『くちづけ』で、第56回ブルーリボン賞 主演女優賞受賞。近年の主な出演作に、映画『サバカンSABAKAN』、ドラマ『テセウスの船』、『大奥』など多数。映画・ドラマ・舞台のほか、声優やナレーションなど様々な分野で活躍中。こまつ座の作品は、2022年の『頭痛肩こり樋口一葉』以来、2度目の参加となる。

公演情報

こまつ座 第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』

日:2026年7月29日(水)~8月30日(日)
  ※他、地方公演あり
場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
料:11,000円 U-30[30歳以下]7,000円
  ※他、高校生以下あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.komatsuza.co.jp
問:こまつ座 tel.03-3862-5941

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