東京マハロ20周年記念公演は主宰・矢島弘一の実体験がモチーフ⁉ どこまでリアルに書けばいいかという“葛藤”との戦い

 脚本家・演出家の矢島弘一が主宰の劇団「東京マハロ」が今年旗揚げ20周年を迎え、記念公演『可もなく不可もない戦争』を上演。矢島の家族をモデルに実際に起きた出来事を元にフィクションを絡めながら作った作品で、和田雅成、榊原郁恵、渡辺哲らが出演する。

矢島「本当に20周年の実感はないですが、今までやってきたことにとらわれず、いつもと違うアプローチで台本を書きました。しかし自分の家族のことを書くわけですから、どこまでリアルに書けばいいかという“葛藤”との戦いでした。『可もなく不可もない平和』というタイトル案もありましたが、今の世界情勢と絡められればと思って、このタイトルに決めました」

 ビジュアルにも相当こだわったとのこと。

矢島「心機一転、新たなデザイナーさんにお願いしました。細かいディテールや配置を伝えて、デザイナーさんがそれをまとめてAIで作ったものです」

 本作に出演する劇団員5名に意気込みを伺った。

内谷「劇団だからこそできる面白味や阿吽の呼吸を本番で表現していきたいです。あと、20周年グッズも作ってみたいです」

お宮の松「今回が旗揚げ20周年を迎える矢島さんの集大成でもあり、さらなるステップだと思っています。僕らも20周年の全部を見せてリスタートしますので、ぜひ観に来てください」

春木「今回1年ぶりにマハロ公演に出演します。矢島さんは劇団員にしか言えないフィードバックを全部ぶつけて欲しいですし、全身で受け止められるように頑張ります」

福田「これまでマハロの作品に20本以上関わっていて、その度に違った景色を見せてくれました。20周年公演も何かが生まれる予感がしていて、新たなスタートと覚悟を持って本番に挑みたいです」

西野「20周年を迎えられるのも、矢島さんだけでなく、周りの支えてくれるスタッフさんのおかげでもあるので、今回の公演で恩返しという形になればと思います」

 「今後劇団でやりたいこと」という質問には全員が「地方公演」と回答した。

矢島「内谷さんが北海道で30人ぐらい入る演劇小屋を借りていて、住み込みのような形でロングラン公演をしてみたいというのと、本公演で震災の被災地を扱った作品を描いたという点では、東北や能登といった場所でも上演したいですね」

(取材・文:冨岡弘行 撮影:友澤綾乃)

ステージでのハプニングはありますか?(その時のエピソードや、どうリカバリーしたか教えてください)

矢島弘一さん
「劇団ですし、このメンツですからハプニングは沢山あります。
まず最初に思い出すのは、春木と西野が本番中に終演後の打ち上げ会場(居酒屋)を探していたことにより、出とちったこと。カバーはしてません。舞台上に現れるまで只管待ちました。
福田ユミは稽古中頻繁に喉を枯らします。あと捻挫もやります。いつも本番ギリギリ間に合います。
お宮の松はセリフがイップスになります。福田同様、本番ギリギリ間に合います。
内谷は芸歴が一番長いですが、未だに演劇用語を覚えてません。照明の事を『電気』と呼びます。
今回出演しないですが唯一、輝山だけがまともです。そんな劇団です」

内谷正文さん
「バックの中から携帯を取り出すシーンがあったのですが……バックの中にあるはずの携帯が見当たらず、焦っていたら妻役の女優さんが『あなた2階!』と楽屋を指さしたので、慌てて袖に入り階段をドタドタドタと上がっていくと、階段の上で『携帯、バックに入れました!』と後輩俳優に大きなジェスチャーと小声で言われたので、ドタドタドタと階段降りて舞台上に戻りバックの中身を全部取り出し、ようやく携帯を見つけて『あった〜!』と携帯を突き上げたが、劇場全体がシーンとしました。それ以降、プリセットは必ず自分でやるようになりました」

お宮の松さん
「『○○ちゃんが好きなのよ!』で最後、出てくるとこで出とちり。楽屋で完全に確か打ち上げの場所確認とかして話していたと思う。兎に角、出ていったら、皆の目の奥が笑ってない。そのまま、お芝居して終了! 僕が出てくる間、皆がずっと、会話を繋げていたらしい。終了後、ずっとフォローしてくれた演者全員に謝って、お酌をしていた」

春木生さん
「主役が来ない! 芝居を始めて1年目ぐらいの時の話しです。役者6人で演じる、1時間ちょっとの公演で、僕以外は全員先輩! 公演、2日目。主役が来ない! 電話も繋がらず、主役抜きでやるしかない!と覚悟を決め、主役の台詞を、みんなで割り振る。辻褄が合わないところは、演出家の方が【天の声】で、マイクを使って話す。と言う、冷や汗しか出ない事をやりました。1人テンパってた僕に、先輩方は『お前は、お前の台詞だけに集中しろ!』と、セリフの割り振りは全部先輩方がやってくれました。その時の先輩方がとてもカッコ良かったのを鮮明に覚えています! 来なかった先輩は、ただの寝坊でした(笑)」

福田ユミさん
「『スープラに乗って』(東京芸術劇場)での出来事です。冒頭の独白中に、何故か突然ポンと台詞が抜けてしまい頭が真っ白に。独白のため、誰も助けてはくれないし、しかも物語が始まったばかりで絶対に止まる事はできません。ストーリーは身体に入っていたので、何とか自分の言葉で必死に繋ぎました。めちゃくちゃ動揺しましたが、とにかく、『今は目の前の芝居に集中しよう』と踏ん張りました。お客様には気づかれなかったみたいなので安堵しましたが、あんな経験は二度としたくないです。今、思い出しただけでもゾッとします」

西野優希さん
「マハロで10年ぐらい前に派手に出とちりしたことがあります。『すみません〜』って呼ばれて、奥から『は〜い(怠そうに)』出てこなくちゃいけないのに、出てこない。先輩達が小声で叫んでくれて、出とちりしてることに気づきました。言われなかったら、多分ずっと気づいてなかったです。気づいた瞬間、舞台裏は静かにしなきゃいけないということを忘れて猛ダッシュで、舞台に出ました。体感時間とか私は無いです。でも、『すみません〜、、、すみませんー!!!』って舞台上で呼んでくれてた先輩の体感時間はきっと大変なことになっていたでしょう。ありがとうございます!!!!!」

プロフィール

矢島弘一(やじま・こういち)
1975年8月26日生まれ、東京都出身。脚本家・演出家。劇団「東京マハロ」主宰。主な脚本作に、ドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』、『風よ あらしよ』など。ドラマ『夫婦別姓刑事』が放送中。

内谷正文(うちや・まさぶみ)
1969年11月29日生まれ、神奈川県出身。2005年より、一人芝居『ADDICTION ~今日一日を生きる君~』を全国各地で上演し続ける。

お宮の松(おみやのまつ)
1973年6月24日生まれ、福岡県出身。主な出演作に、映画『キッズ・リターン』、『座頭市』、『アキレスと亀』など。

春木 生(はるき・せい)
1979年4月29日生まれ、石川県出身。主な出演作に、映画『見える子ちゃん』、純烈「ありがとう」MV など。

福田ユミ(ふくだ・ゆみ)
1982年5月11日生まれ、奈良県出身。主な出演作に、ドラマ『バントマン』、舞台『母の人生、ガブリと食らう』など。

西野優希(にしの・ゆうき)
1989年11月17日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に、舞台『ラフカット2019』、『僕だけが正常な世界』など。

公演情報

東京マハロ 20周年記念公演
『可もなく不可もない戦争』

日:2026年5月27日(水)~6月2日(火)
場:下北沢 本多劇場
料:8,000円 U25[25歳以下]3,500円 ※要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://tokyomahalo.com
問:東京マハロ制作部
  mail:mahalo.staff@gmail.com

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