Daisy times produceが贈る「開」に続く待望の続編 ファンタジーな世界観の中に描かれる霊導士たちの成長と人間模様

 2025年に上演された舞台『カミシバイ-開-』の続編にして、“はじまり”の物語、『カミシバイ-閉-』が6月10日(水)から上演される。本作で描かれているのは、怨霊に変わってしまった兄を自らの手で祓ってから1カ月後の霊導士ウタたちの姿。ウタのもとに一人の少女が現れ、その少女の一言によって避けられない業へと巻き込まれていく。前作に引き続きウタを演じる星守紗凪、作・演出の星璃(劇団Patch)、Daisy times produceのプロデューサーで、本作にも出演する植野祐美に、本シリーズへの思いや公演に向けた意気込みを聞いた。


―――カミシバイ』という作品は、どのような思いからスタートした企画だったのですか?

植野祐美(以下、植野)「そもそもこのDaisy times produceという団体は、6年ほど前のエンタメに手が届きづらい時期に始まったのですが、その当時から『誰かの希望となるように、無邪気に切磋琢磨する』ことを理念に活動してきました。この『カミシバイ』も、そこから大きく逸れることなく、誰かの希望になる、楽しみにしていただける作品が作りたいという気持ちから始まったものです。『できるだけ派手に、観ている皆さんがワクワクして、でもホロッとして…という王道の作品を作りたい。誰かの気持ちを熱くしたい』と星璃さんに強くお話ししたところ賛同してくださって」

星璃「賛同という言葉が聞こえましたが、正しくは“強引に”です(笑)。賛同はしていますが、最終的には“強引に”(笑)。劇場の目の前で、『劇場(の予約)が明日から取れるんですよ!』と」

―――お2人は、今回の企画以前から、作品作りについて話す間柄だったのですね。

植野「そうですね。2年ほど前に、Daisy times produceの作品に出演して、殺陣振り付けでも関わってくださっていたので、そのときにいろいろとお話をさせていただきました。この企画のお話をしたときは、ちょうど会場の予約が始まる時期だったので、半ば脅迫のような形でお願いしましたね(笑)」

星璃「僕の記憶が正しければ、胸ぐらを掴まれて……(笑)」

植野「その記憶は正しくない(笑)」

―――星璃さんは、もともと作・演出にご興味があったんですか?

星璃「もちろん、興味はありました。僕は劇団Patchという団体に入っていますが、末満健一さんが劇団の立ち上げをしてくださって、5年ほど座付きのような形で携わってくださっていたんです。末満さんは、脚本も演出もデザインも何でもやられる方で、それを見ながら育ったので、僕自身もいつか脚本、演出をやってみたいと目標の一つにしていました。ただ、やるぞと言って簡単にできるものではないですし、お客さまからお金や時間をいただくことへの責任を僕が負えるのかと考えていて。
 そうしたときに、植野さんからお話をいただいたんです。先ほど、植野さんが2年前にDaisy times produceの作品に出演したというお話をしていましたが、実はそのもっと前にも主演を務めさせていただいていますし、ほかの現場でも植野さんとご一緒させていただくことが多かったので、いつか何かあればお力添えできればと思っていました。なので、今回は、タイミングがあってやらせていただくことになったという経緯です」

―――本作は、どのような発想から生まれた物語ですか?

星璃「脚本を担当するにあたって、どう立ち上げていくべきか、いろいろと考えたのですが、いわゆる処女作と呼ばれるものにはその人のルーツが入っている作品が多いと思うんです。それで、僕自身も原点に立ち戻れたらと思いました。僕は京都出身なので、神社やお寺が身近にありましたし、人の愛情にとても敏感に生きてきたので、そうした要素と、植野さんから提案のあった王道の少年漫画のような物語をかけ合わせて、バディもの、しかも神社やお寺からイメージした陰陽師にしようと。それで、陰陽師を自分なりに解釈し直して、霊導士の物語を立ち上げさせていただきました」

―――今回の「閉」は前回の続編という形になるのですよね?

星璃「そうです。前作の『開』では主人公のウタちゃんが、お兄ちゃんを自分の手で祓うというところで終わりました。そこから1カ月後を描いたのが今回の『閉』です」

―――最初からシリーズ化を予定していたのですか?

植野「シリーズをやってみたいという気持ちはあったので、そうなったらいいなという話はしていましたが、それは実際に上演してみないと分からないところでもありました」

星璃「ただ、僕は脚本を書くにあたって、その前後も全て考えて書いています。1作品で完結するものももちろん素敵だと思いますが、その物語においてその人たちの人生はそこで終わるわけではないと常に思っていて。
 例えば、ウタちゃんは、『開』では高校生からストーリーが始まりますが、当然、高校生になる前の物語だって彼女にはあるわけです。お父さん、お母さんとの話もあるし、そのお父さん、お母さんにも物語はある。なので、この『カミシバイ』を書く上で、登場人物の前後の物語は、自分の中にはきちんと作っていました。そうした前提があるので、シリーズにしますと言われたら、すぐにその要素を出すことができます」

―――星守さんは、前作に引き続き、ウタを演じます。改めて出演決まったときのお気持ちを聞かせてください。

星守紗凪(以下、星守)「『開』はすごく好評をいただいて、私自身も続編があって欲しいと思っていました。実際に、多くのお客さまに足を運んでいただき、応援していただいたおかげで、1年という早いスパンで続編ができるということがすごく嬉しいです。
 前回、祓ってしまったキャラクターは今回は登場しませんが、また新たなキャラクター、そしてキャストの皆さんがたくさん登場するので、そうしたところも楽しんでいただけると思います。ウタというキャラクターは、物語の元凶のような子で、彼女の周りで物事が起こって物語が進んでいくので、今回も周りのキャストの皆さんと共に進んでいけたらいいなと思います」

―――開」のインタビュー時に「殺陣をたくさん取り入れた作品だからこそ、そこが肝になる」という話をされていたと思いますが、実際にいかがでしたか?

星守「私はこれまで、女の子だけの殺陣はあっても、男性キャストの方を相手にした殺陣はあまり経験がなかったんです。なので、力強さも勢いもスピードも女性とはまた違って、それが大変でした。どうしても勢いに負けてしまうんですよ。もちろん、皆さんプロなので、安全を保ってアクションしていますが、お芝居としてお客さまに見える部分では命を賭けて、ギリギリの戦いに見えるよう、全力を尽くしていました」

星璃「前回は、ウタちゃんの殺陣が一番、手数が多かったんですよ。植野さんからも、殺陣がたくさん入ったら嬉しいという言葉をいただいていたので」

星守「でも、植野さんもたくさん戦っていますよね」

星璃「はい、かなり殺陣は多いですね。僕は、殺陣もお芝居の一部なので、必要ならば入れるし、必要じゃなかったら入れないという思いで作っていますが、前回は必要だったのでたくさん入れています。 “戦う”というよりは、ぶつける方と受け止める方という、気持ちで作っているので、そういう意味でも、前回のウタちゃんは、とにかくぶつけて、受け止めての連続で、かなり大変な芝居になったと思います」

星守「ただかっこつけるためのアクションならば、それほど苦労しないと思いますが、そこに星璃さんの考え方が乗っているので、一振り一振りに感情を込めないといけないんです。相手を傷つけたいから刀を振るのではなく、全てに感情が伴っていないといけない。なので、精神力が必要で、そういう意味でも疲れましたし、自主練もたくさんしました」

植野「気持ちが乗ってしまうと、どうしても安全に行うところまで意識が行きにくくなってしまうからね」

星守「だから、みんな稽古が終わってからも居残りをして、必死に自主練をしていたイメージがあります」

―――今回の「閉」でも殺陣があるということですが、改めて、本作の見どころを教えてください。

星守「たくさんあります。前回からのキャラクターの気持ちの変化も感じていただけると思いますし、新キャラクターも楽しんでいただけるはずです。前回、戦い抜いたことで生まれた気持ちや葛藤、そして今回、新たに芽生える想いを丁寧にお見せしたいと思っています。
 今回、ウタちゃんたちは新たに敵対する人たちに立ち向かっていきますが、実は、昔から因縁のある相手なんです。全てのキャラクターにしっかりと過去があり、それぞれの正義がぶつかることで戦いが起きてしまうという物語になっています。どちらかが良い、悪いではなく、それぞれが正しいと思うことをした結果、ぶつかざるを得なくなった、という構図です。それぞれの立場を丁寧に描いているので、きっとどのキャラクターにも共感していただけるのではないかと思います。そして、今回も、テーマは“愛”です。愛によって戦い、泣き、笑う…お客さまも一緒に心を動かしながら楽しんでいただけたら嬉しいです」

植野「前回、描ききれなかったキャラクターの過去が今回、描かれているので、また別の角度からそれぞれのキャラクターを見ていただけると思います。私は、台本を読みながら泣いてしまったんですよ」

星守「分かります、私も泣きました。面白キャラに見えるキャラクターにも過去があって、生まれてからいろいろなことが起きて、どの役にも人生の重みがあることを感じます」

星璃「もちろん『閉』だけを観ても楽しんでいただけるように意識して書きましたし、『開』をご覧いただいている方には、より楽しめる内容になっています。実は、『開』を演出した時点で、その先の展開も考えていたので、目を見て話すべき場面でわざと視線を外してもらうなど、本来の意図とは少し違う演出も取り入れていました。だからこそ、今回こうして続編を書けることを本当に嬉しく思っています。
 “愛”と聞くと、思想の強い作品に感じられるかもしれませんが、他者を思うこと、人を思うとはどういうことかを描けたらと思っています。ただ、結論を押し付けるような脚本はあまり好きではないので、観てくださった方が自由に受け取っていただけたら嬉しいです。

演劇一本で人生が変わる人は、きっといると僕は信じています。300人のお客さまが劇場にいたとして、その中の一人の人生が変わるかもしれない。何かの支えになったり、少しでも救われたと感じてもらえたり、元気になったり、笑えたりする方がいたらいいなと思いながら作品を作っています」

植野「期間限定で、『開』の無料配信も行う予定でいますので、もしご覧になっていない方がいらっしゃったら、そちらで予習してきてくださったら、バッチリかなと思います」

―――それぞれの演じる役柄についても教えてください。今、どのように感じていて、どのように演じたいと考えていますか?

星守「ウタちゃんは、ザ・主人公ではあるのですが、周りの助けを突っぱねて、1人で突っ走って、刀を振ってしまうという子なので、演じる上ですごく悩みました。私の性格上、自分の演じる役に引っ張られてしまうので、座組みのみんなとの関わり方も難しかったです。もちろん、みんなとご飯に行ったり、仲良くさせていただいていましたが、楽しく話しつつも、心を開きすぎてもいけないと、考えて苦しくなってしまって。
 ただ、最終的には笑顔でエンディングを迎えられたので、ウタちゃんとしては一歩踏み出せたと思います。今回は、人間としても霊導士としても1つ成長した状態でスタートします。大切な人を亡くしてしまい、心には色々なものを抱えていますが、引き続き、強がりなウタちゃんでいきたいと思います。きっとまたたくさん苦労して、辛いことがあるのかなと思いますが、真摯に向き合っていきたいと思います」

星璃「(星守がいうように)成長した主人公なので、受け止められるものも増えてきています。ただ、人の死はとても辛いものですし、うまく折り合いがつかなくて、周りの人との付き合いでもまだ難しいところもあって…とより難しい役どころになっているのかなと思います」

―――星璃さんは白役で出演されますね。

星璃「僕の役はいいです(笑)。僕の役は一貫して傍観者であり、謎に満ちた役です。一応、自称・神様なのですが、あくまでも自称なので誰も信じていない。まだまだ謎に包まれているので、そこを楽しみとしていただければと思います」

―――植野さんが演じる清水心はどんな役柄ですか?

植野「清水心ちゃんは、元々はお兄ちゃんの式神で、ウタちゃんの1番の理解者で、お友達という立ち位置です。3人の中でもバランサーといった役割で、その場をうまく抑えようと、いろいろなことを考えて立ち回っています。みんなとの確執をどう取り除いて進んでいくか。敵対しているチームとの関わり合いの中でどう殻を破っていくのかがしっかりと描かれているので、私がこんな役どころを演じてしまっていいのかなと思いますが(苦笑)、とてもキーとなっている人物でもあります」

星璃「プロデュースをしていると、あまり役者としては舞台上に出られなくなってしまいますが、僕自身は女優をしている植野祐美ちゃんが好きなので、もっとたくさん出て欲しい。そう思って書かせていただきました。心は、まさにバランサーで、思っていることを言えない人でもあります。自分の考えを抱え込んでしまっている中で、それをどう人に伝えていくか、どう成長していくのかを描きたいと思っています」

植野「たくさん出演させていただくので、1回、プロデューサーであることを忘れるくらい、役にしっかり向き合っていきたいと思います」

―――最後に、改めて読者にメッセージを。

星璃「僕は、演劇は虚構だからこそリアルに作るべきだと考えているので、今回も嘘なく、そして皆さまに肌で感じていただける作品をお届けしたいと思います。そして、お客さまが劇場に入って初めて総合芸術が完成するので、それを常に意識して、脚本から作らせていただきました。今回、こうして続編の『閉』が上演できるのも、『開』を愛してくださった皆さま、応援してくださった皆さまのおかげです。感謝の気持ちを持って、真摯に向き合い、素敵な作品にしたいと思っております」

植野「シリーズ2作目の作品になりますが、シリーズ1作目ともまた違う心意気で挑んでいます。前作をご覧になっていただいた皆さまには、期待以上のものをお見せできるように、そして、今回からご覧いただく方にはこの『閉』だけでも満足していただけるような作品を作るという覚悟を持って臨んでいきたいと思います。ファンタジーではありますが、この物語に登場するキャラクターは、生きていると誰でも感じるようなことをしっかりと代弁してくれるキャラクターばかりなので、きっと共感できる人物が見つかるはずです。
 皆さまに楽しんでいただける作品を、これからの稽古で一生懸命目指していきたいと思っております。観にきて後悔させない作品を作っていこうと思いますので、ぜひ劇場まで足を運んでくださいますと幸いです」

星守「設定はファンタジーではありますが、この物語に登場するキャラクターたちが話している言葉や感じていることは、多くの方に突き刺さるものだと思います。きっとこの物語を通して何かを感じていただけると思っています。今回は、より深く描かれているキャラクターもいるので、前回から一緒に頑張ってきた仲間たちの成長も感じていただけます。
 ぜひ、深掘りされたそれぞれの人物も楽しんでいただきたいですし、新しいキャラクターにも注目していただきたいです。物語の冒頭で、これまでのストーリーの説明があるので、初めてご覧になる方も気楽に楽しんでいただけます。キャスト目当てでも、どんな理由であっても構わないので、ぜひ劇場に足を運んでください。皆さんの感情がジェットコースターのように変わっていく物語を、楽しんでください」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

星守紗凪(ほしもり・さな)
1996年1月21日生まれ、秋田県出身。声優・女優・歌手として幅広い分野で活躍。主な出演舞台に、舞台『アサルトリリィ」シリーズ郭神琳役/天宮・ソフィア・聖恋役/渡邉茜役、『女王旋律』アン役(W 主演)、『タタラの唄姫』出雲あずみ役(W 主演)など。

星璃(しょうり)
1994年3月24日生まれ、京都府出身。2012年、劇団Patch 1期生として入団。武器・小道具制作の腕前に秀でており、劇団公演のほぼ全ての公演で制作を担当する。主な出演舞台に、『鬼滅の刃』『刀剣乱舞』など。

植野祐美(うえの・ゆみ)
1993年8月10日生まれ、神奈川県出身。Daisy times produce主宰を務めつつ、自身も舞台を中心に活躍中。主な出演舞台に、咲女喜劇 舞台『溶く嘘、しょこらと咲き誇り、』桐野りのこ役など。

公演情報

舞台『カミシバイ -閉-』

日:2026年6月10日(水)~14日(日)
場:六行会ホール
料:SS席[特典付]10,000円
  S席8,500円 A席7,500円
  B席6,500円
  ※他、車椅子席あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.kami-shibai.com
問:Daisy times produce
  mail:daisy.times.p@gmail.com

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