生活の中に、当たり前のように芸術を取り入れたい。その想いを現実に 代官山の3か所で展開されるユニークなフェスティバル

 「フェスティバルを昔からやりたくて。高校を出てから海外暮らしを続ける中で、芸術環境の違いを実感しました。ヨーロッパは、歴史的な建物で当たり前のように毎日音楽会が開かれ、子供たちが足を運ぶなど、街中に芸術が溶け込んでいる。でも日本だと、クラシック音楽は教養の象徴として固定化されている気がするんです。そこに違和感がありました。もっと芸術を生活に当たり前に取り込んでいければ、想像力を養うことにも繋がり、もっと柔軟な世の中になるんじゃないかと思うんです」

 そう熱っぽく語るのは、『DAIKANYAMA BLOOM Festival』を企画したヴァイオリニスト・滝千春。彼女を中心に、想いを共有する演奏家やダンサー、さらに華道家やヴァイオリン製作者、ウイスキー講師など、多種多様な出演者が集まり、13ものユニークなプログラムを展開。
 
 例えば、滝と華道家・萩原亮大による『花と音』では、生花のライブパフォーマンスに合わせて滝がヴァイオリンを演奏する。

 「バッハから始めて、派生するような現代曲に繋げていこうと考えています。即興はあまりやらないのですが、2つの世界をブリッジさせる部分は即興で演奏しようと思います」

 そして作曲家 メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」を採り上げる『JUST MESSIAEN』は、ダンサーや語りを交えて演奏する試みで、朝と夜の2プログラムを上演。

 「演奏するのは同じ曲ですが、朝の部では子供にも伝わりやすいように、『ヨハネの黙示録』に基づいたこの作品を、作家 オーウェルの『動物農場』が持つ世界観で語りを作り変えています」

 さらに即興パーカッション・グループLA SEÑAS が登場する『LA SEÑAS!!』。こちらも午後と夕方の2プログラムあり、午後は楽器紹介も交えて音と遊ぶ楽しさを、夕方は理性を解放する迫力の即興パフォーマンスを繰り広げる。

 「クラブで踊って騒ぐカルチャーも好きで。ベルリンにいた頃はよく行きましたが、クラシックの愛好家はそんなパッションに無縁だから、巻き込んでしまおうと(笑)。殻を破って一緒に騒ぐ楽しさも必要だと思うんです。LA SEÑASをテレビで初めて観た時に『これだ!』って思ったんです」

 そんな多彩なフェスティバル。滝たちが掲げたフレーズは「あなたの“インサイド・アーティスト”を呼び覚ます3日間」。様々なプログラムに触れることで、自らの深層に眠る新たな感性に出逢ってみるのはいかがだろう。

(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

どこにでも繋がる扉、開けた先はどこに繋がっていましたか?

「南フランスのヴァンスにあるロザリオ礼拝堂(Chapelle du Rosaire)。画家アンリ・マティスが晩年の4年間を費やして、設計・装飾を自ら手がけた“生涯の最高傑作”とされている礼拝堂。私はマティスの大ファンで、小高い丘の住宅地に建っているそこに、念願叶って3年前の夏訪れました。白を基調とした空間に、マティス独特の曲線と、青・黄・緑でデザインされたステンドグラスから差し込む光や、線画で描かれたマリア像など、そこは唯一無二の空間。マティス独自の“抜け感”が、空気全体を優しさで包み込んでいます。青い空と白い壁、そして街のあらゆる所で見かける濃いピンクのブーゲンビリエの花の美しさも、同時に記憶に焼き付いています。絶対に“帰りたい”癒しの場所」

プロフィール

滝 千春(たき・ちはる)
1987年生まれ、東京都出身。メニューイン国際コンクール第1位をはじめ、国内外の主要な国際コンクールに多数入賞。小澤征爾、ユベール・スダーン、ゲルト・アルブレヒトら名匠と共演を重ねる。2016年、スイスのアニマート・オーケストラのコンサートミストレスとして欧州各地の著名ホールで好演。2015〜2017年はピクテ・パトロネージュ・プロジェクトのアーティストとして活動。2018年、デビュー10周年記念「オール・プロコフィエフプログラム」は高い評価を得て、翌年フランスのムジカ・ニゲラ音楽祭他、スイス、ギリシャ、ドイツ、ハンガリーなど欧州各地の音楽祭に出演。2019年1月、ミュンヘン放送管弦楽団 コンサートミストレスに短期就任。2023年発表の「Prokofiev Story」はONTOMO MOOKレコード・アカデミー賞を受賞。2025年、「Schnittke Clowns」がレコード芸術特選盤に選出。2026年、ジャズ作曲家・挾間美帆と共同プロデュースで「MaNGROVE」を結成、日本ツアーを大成功に収めた。

公演情報

『DAIKANYAMA BLOOM Festival

日:2026年3月27日(金)~29日(日)
場:代官山 蔦屋書店/ヒルサイド プラザ/東京音楽大学 TCMホール
料:プログラムにより異なります。詳しくは下記HPにて(全席自由・税込)
HP:https://bloom-fes.com
問:上記HP内よりお問合せください

インタビューカテゴリの最新記事