ミュージカル『レイディ・ベス』は、16世紀後半に英国を統治し、長きに渡って繁栄をもたらした女王・エリザベス1世の半生を描いた歴史ロマン大作。2014年に帝国劇場で世界初演を迎え、2017年に再演。約8年ぶりの上演となる本作で、レイディ・ベスをWキャストで務めるのは、奥田いろは(乃木坂46)と小南満佑子。初主演&初タイトルロールとなる2人に、開幕直前のタイミングで話を聞いた。
奥田「稽古も終盤で、(インタビュー)前日に満佑子さんの通し稽古を観ていたんですけど、いろいろなところに感情移入できるし、フルオーケストラの音楽もカッコよくて、早く皆さんに届けたいなと思いました」
小南「約2ヶ月間と、たっぷり稽古する時間があると思っていたら、怒涛のスケジュールで、稽古中は毎日懸命にベスを生きるのに精一杯でした。海外の音楽チームやフルオーケストラが合流して、結束感も日に日に高まっています」
製作発表会見では、初のグランドミュージカル主演で緊張やプレッシャーを口にした2人。
小南「プレッシャーは常にあります。作品の中心に立つ人の重圧を、今までそばで見てきました。同じようにならねばと自らプレッシャーをかけてしまうことも多かったのですが、キャストの皆さんやスタッフの皆さんが、常に私のそばにいてくれたおかげで、のびのびとお稽古させていただきました」
奥田「どのキャストさんも全力で演じられていて、皆さんの努力を無駄にしないように、私も頑張らなきゃと思っていました。稽古中、プレッシャーでついつい落ち込むことも多かったんですけど、皆さんが励ましてくださって、『いろはの雑念はいらないから、ベスとして生きよう!』と思ってからは、少しずつ楽しめるようになりました」
「特に心の支えになったのは?」という質問に、奥田はメアリー・チューダー役の有沙瞳、小南は初演&再演でベスを演じた平野綾の名を挙げてくれた。
奥田「私と組み合わせが違う時の通し稽古でも、ずっと観ていてくれて、しかも気になったところをメモしてくださったり、稽古が終わった後も1時間くらい電話で話してくださったり。私のためにたくさんのアドバイスをくださって、どうやって御礼をしたらいいのかというぐらい、助けられています」
小南「綾さんとは私の初舞台『レ・ミゼラブル』で共演して以降仲良くさせていただいて、ベス役が決まった時もすぐに報告しました。稽古中、役作りに行き詰まっていることを綾さんに伝えたら、すぐに稽古場まで駆けつけてくれたんです。先日も最終稽古が無事終わったことを報告したら、『満佑子なら絶対できるから!』と言ってくださって。光栄なお言葉をいただけてすごく心強いです」
初演から演出を務める小池修一郎氏とは、奥田が3回目、小南は初めてとなるが、小池氏から受けたアドバイスで特に印象に残った言葉を聞いてみた。
小南「史実に基づいたベスを演じなくてはと悩んでいた時に、小池先生が『満佑子自身でいいんだよ。あなた本人が持っているナチュラルな素材を信じて、もっと自信を持ちなさい』と言ってくださいました。役を生きるという上で、自分をどこか捨てなければいけないと思っていたのですが、先生にそう言っていただいてからは自分自身にも自信が持てるようになりました」
奥田「『ミュージカルは、曲が始まった時と曲が終わった時とで、心情が絶対に変わっていなきゃいけない』という小池先生の言葉にすごいハッとしたんです。確かにミュージカルの楽曲は、ずっと同じ気持ちで歌っているわけじゃなく、曲の中では必ず変化が起こっていて。例えば曲の始めは辛かった気持ちだったのが、最後は前を向く気持ちになるように、ミュージカルの楽曲はそうなっているんだと気づかされました」
稽古を積んだからこそ気づいた新たな見どころや、注目ポイントについて語ってもらった。
奥田「私が演じるベスと満佑子さんが演じるベスとでは、全然タイプが違うところが面白いなと思っていて、同じセリフを与えられても解釈が全然違うんです。私が演じるベスは素直で真っすぐなタイプで、素直さゆえに傷ついたりすることがあるんですけど、この作品は、ロビンという刺激的な人に会って成長していく、ベスの青春物語だと思っていて。きっと感情移入できると思うし、それが魅力的な部分かなって思っています」
小南「壮絶な人生を送った彼女を演じて、生きる力とはすごいもので、皆が皆、周りにいる人たちからのエネルギーで成り立っているんだなと肌で感じるんです。ロンドン塔に投獄された時に『この人のために生きたい』という原動力になったのも、民衆の人たちの『ベスに生きていて欲しい』というエネルギーがものすごかったからだと思いますし、エネルギー感がみなぎる作品になっているなと思うので、そこは大きな見どころですね」
切磋琢磨する2人にお互いの印象や「ここがすごい」というところを挙げてもらった。
小南「もちろん全てすごいと思いますが、特に、肝が据わっていて、全くブレがないところには驚きました。きっといろはちゃんの中に“自分のモチベーションを保っている部分”がある気がしていて、通し稽古を観ていても、いろはちゃんはとても冷静で落ち着いていました。もし私がいろはちゃんと同じ年齢でこの役を演じるとしたら、こんなに落ち着いてはいられないと思います」
奥田「私にはない“強さ”というものを満佑子さんは持っていて、本当に私とは真逆で、先輩としてとても尊敬しています。感情を込めて歌うシーンでも、私が歌うとぶれてバランスが崩れてしまいがちですけど、満佑子さんの歌は全く変わらなくて、昨日の稽古でも『すごいです!』と満佑子さんに直接伝えました」
最後に、これから公演を観劇される方に向けてメッセージを贈ってもらった。
奥田「この作品は、本当にたくさんのメッセージが込められていて、きっと観てくださった方々はいろいろなものを受け取ってくださったと思うし、まだ劇場に足を運んでいない方々にも、『レイディ・ベス』の世界観をお届けするのがとても楽しみです。心を真っ白にして、温かく見守ってくださったら嬉しいなと思います」
小南「2026年バージョンとして、脚本のクンツェさん、音楽のリーヴァイさん、そして演出の小池先生が力を注いで、新たな想いで作ってくださっていて、タイトルも『レディ』から『レイディ』になったことで、意味がより深く具体的になったんじゃないかなと思います。舞台は皆様に観に来ていただけないと成立しない芸術です。劇場という空間に来ていただいて、この『レイディ・ベス』が皆様の心に力を与える作品になれるよう願っています。ぜひ劇場に足をお運びいただけますと幸いです」
(取材・文:冨岡弘行 撮影:NORI)
奥田いろはさん
「やっぱり今は、イギリスに行きたいです。
エリザベス一世が過ごした場所を巡って、空気を感じて、いろんな景色を見て、想いを馳せたいです。(本当は本番に入る前に行ってみたかったです……! 時が戻ったらなぁ……なんて思います)」
小南満佑子さん
「行ったことのない場所‼
幼い頃から『ドラえもん』のどこでもドアに憧れていました。時間などは気にせずに、国内外問わず、今まで行ったことのない場所へ行ってみたいです。思いついた瞬間にその場所に行けたらいいなと思いますし、特に私は行く前の準備段階で何を用意したら良いのかを考え過ぎてしまう所があるので、ノリでパッと行ってみたいんです。そこで出逢う人たちや景色、文化や食、空気などをフットワーク軽く吸収できたらどんなに楽しいだろうかと思います」
プロフィール
奥田いろは(おくだ・いろは)
2005年8月20日生まれ、千葉県出身。2022年、乃木坂46の5期生オーディションに合格。主な出演作に、ドラマ『古書堂ものがたり』、ミュージカル『ロミオ& ジュリエット』ジュリエット役、『1789- バスティーユの恋人たち-』オランプ役など。
小南満佑子(こみなみ・まゆこ)
1996年8月10日生まれ、兵庫県出身。東京音楽大学在学中の2015年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』でデビュー。のちにコゼットを演じる。主な出演作に、NHK 連続テレビ小説『エール』夏目千鶴子役、ミュージカル『キングアーサー』グィネヴィア役、『ラブ・ネバー・ダイ』メグ・ジリー役など。
公演情報
ミュージカル『レイディ・ベス』
日:2026年2月9日(月)~3月27日(金)
※他、福岡・愛知公演あり
場:日生劇場
料:土日祝日・千穐楽 S席16,000円 A席11,000円 B席6,000円
平日 S席15,000円 A席10,000円 B席5,000円(全席指定・税込)
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問:東宝テレザーブ tel.0570-00-7777