1949年創立の歴史を持つ、児童・ファミリー向けミュージカル専門劇団「劇団東少」がこの春に贈るオリジナルミュージカル『PINO』。原作を横山由和、演出を源紀、脚色を井上龍哉、音楽を塩谷翔が手掛ける本作は、イタリアの童話『ピノキオ』をモチーフに、永遠の命を持ったロボット・ピノが、人間の心を理解しようと、いろいろな人と出会いながら成長していく、「命の尊さ」「愛」をテーマに描いた感動作。
昨年5月の前回公演に引き続き出演する主人公・ピノ役の深澤悠斗とヒロイン・ナーナ役の河崎千尋、昨年12月のミュージカル『Red Shoes』に続く劇団東少作品出演となるステファノ役の橋本汰斗に話を聞いた。
―――まず、続投キャストの深澤さんと河崎さんに、前回公演を振り返っていただけますか。
深澤「前回の『PINO』は、コロナ禍以来約5年ぶりと久々だったこともあって、新作ぐらいのバタバタ感で、僕自身『もっと稽古したい!』と思うくらいでしたが、いざ幕が開くと、老若男女問わずたくさんの方に来ていただき、皆さんに笑顔になっていただきました。とても良い作品だったので、またピノを演じたいなと思っていたら、再演が決まって嬉しかったです」
河崎「私は劇団東少さんと4年近く関わらせていただいてるんですけど、前回出演した時はこの作品が『どういう風に出来上がるんだろうな』と稽古の時から思っていましたが、幕が開いたらどんどん自分の理解も深まっていく感じがしていて、たくさんのことを学ぶことが出来ましたし、すごく素敵な作品で、皆さんからも良い評価いただいたので、再演があったらまたやりたいなと思っていました」
―――大好評だったということで、観劇された方からたくさんのメッセージをもらったと思いますが、中でも印象的に残ったメッセージがあれば教えてください。
河崎「テーマが“生きる”だったので、観ていただいた方から『生きていることのありがたさ』や『命の大切さ』、あと家族についても『もっと大切にしよう』とか、『たくさんのことを考えさせられた』という言葉いただきました。作品を通してこんなふうにメッセージを伝えられて、とても嬉しかったです」
深澤「遠方から観劇に来てくれた僕のファンの方から『親に会いたくなった』というメッセージをもらったのが印象に残っています。ピノ自身がある家族と触れ合うことで、愛や喜怒哀楽などを知っていくんですけど、その過程で“愛や命というものを伝えたい”と思いながら演じていたので、『親や家族に会いたくなった』という感情を生むことができたとしたら、この公演は成功だったんだなと思いました」
―――お2人ともまた演じたいと話されましたが、再演、そして続投のお話をいただいた時はどのような心境でしたか。
深澤「率直に『え、もうですか?』でしたね」
(一同笑)
深澤「演出の源紀さんにフランクな感じで『深澤くん、この期間何してるの? PINOやりたいんだけどさ』と直球で聞かれて、もちろん『出演します』と伝えつつ、『それにしても早いですね』とも付け加えました(苦笑)。先程も話しましたが、前回はドタバタの状態だったので、今回は一度経験していることに付加して、もう一段階深められたらと思っていて、もっと素敵な作品にしたいです」
河崎「源紀さんのフランクな感じ、わかります(笑)。私も昨夏ぐらいに源紀さんからチラッと『なんかやりたいんだよね』みたいな感じで言われて。私もすぐに再演が決まると思っていなかったので、『あ、もう?』という気持ちになりながらも、皆さんから好評いただいていましたし、またナーナ役として出られたらいいなと思ってたので、とても嬉しかったです」
―――そして、新キャストとしてステファノを演じる橋本さんにも出演が決まった時の心境をお聞きしたいなと思います。
橋本「僕自身が約3年ほどお休みをして、昨年末にミュージカル『Red Shoes』でゲスト出演したとはいえ、本格的の舞台出演は本当に久しぶりだったので、ちょっと構えていた部分はあったんですけど、台本を読んでみたらすごく面白くて、構えていなくても大丈夫そうだなと思いました」
―――みなさん劇団東少さんの舞台を経験していますが、劇団東少さんにどんな印象を持たれていますか。
橋本「『あまりピリつかないんだな』という印象です。もちろん誉め言葉ですよ! 確かにピリつくのも時には大事なのかもしれませんが、楽しんで作品を作っていくことがやりやすい環境だなというのは『Red Shoes』の稽古に参加した時に感じましたね」
河崎「劇団東少さんのミュージカルには、何度も出演させていただいていますが、小さな子供キャストが本当に可愛くて。大人になってから作品で子供キャストの方と関わることはあまりなかったんですけど、私も子供が大好きですし、とても明るくて楽しい稽古場で、みんな楽しみながら和気藹々と作品を深めていくような現場だと思いました」
深澤「前回の『PINO』が初めて劇団東少作品への出演だったので、関わり合いはまだ1年も経っていませんが、役者がやりたいことを提示すると、チャレンジさせてくれる環境だなという印象です。
子供キャストが多くいる中、大人の僕らが見苦しい姿は見せられないじゃないですか。僕も憧れの役者さんがいた時、その人みたいになるにはどうしたらいいかというのを考えたりするので、大変おこがましいんですけど、子供キャストに向けて“考えてくれたらいいな”と思いながら稽古場にいます。普段の現場とは違ったアプローチでいろんなことが試せるので、様々な勉強ができる学びの場だなと感じています」
―――河崎さんと橋本さんは、このインタビューが初対面だと伺いました。そこで共演済の深澤さんにお2人のことを紹介していただけますか。
深澤「河崎さんはとっても綺麗な声で歌います。本当に天使の歌声で、年齢は僕の5個くらい下ですけど、とってもしっかりしてます。ただ、まだ猫を被っているかなと思うんですよ。最初の頃と比べてだいぶ本性が出てきたようではあるんですけど、今回の現場で剥がしていきましょう」
河崎(苦笑)
深澤「橋本さんは、僕が紹介するのもおこがましいくらい大先輩です。3年ほどお休みされていたことも知らなくて、復帰作の『Red Shoes』でご一緒できることを知った時はメチャメチャ興奮しました。あと、バッキバッキにカッコいいダンスが踊れますし、先輩過ぎない感じで関わってくださる優しい方です」
橋本「他己紹介、120点! 一語一句逃さず書いてくださいね」
(一同笑)
―――楽しい現場になりそうですね。さて「生きることの大切さを伝える」がテーマである本作の見どころや注目ポイントを教えてください。
橋本「この作品は、現代と重なる部分が多いという印象で、世界的に見ると戦争というのが、昔と比べてそこまで遠くない、昔よりは遠くないと感じる部分があって。その中で、ロボット視点で命の大切さを学んでいく作品かなと思っているんですけれども、とあるキャラクターからピノが感情を教えていってもらうシーンがとても好きで、教えてくれる子の感情の表現の仕方がいいなと感じましたね。
詳しい内容は言えないんですけど、ロボットがちょっとしたことをきっかけに“?”を感じて、それを一緒に学んでいくという、教えてくれる側の人たちの温かさや、それを学ぶロボットの温かさにグッとくるなと思って、そのシーンは特におススメです」
深澤「前回とお話は大きくは変わらないと思うんですけど、ピノが誰と関わってどんな感情を学んで、どう成長していくのか。そして成長していった先にピノは、喜怒哀楽や感情を持っているがゆえに起きてしまう人間の愚かな部分も学習してしまう。そんなところも、現代と繋がりますし、AIもどんどん進化して、前回の時よりもっと頭が良くなっていると思うんですよ。
そういう現代社会と重ね合わせて、人間であることのありがたみを感じられる作品だと思います。前回演じた時よりも、もっともっと学んでいく過程を大事にして、最終的にピノが愛する人たちと過ごしてきた中で、言葉がいらないくらいの表現が出来るように進化できればなと思っていますので、進化版『ピノ』を楽しみにして欲しいです」
河崎「この作品は『ピノが生きた100年の物語』『ピノが成長していく物語』ですが、ピノだけではなく、ナーナやナーナの家族も、ピノと出会ってから成長し、年を重ねて変化してしていく姿というのも見どころかなと思っています。私も『PINO』という作品に出会って、役者としてもさらに成長できました。100年の中でピノだけじゃなく、周りの人も一緒に成長していくところを皆さんに注目していただきたいなと思います」
―――これから稽古が始まるということで、それまでに何か役づくりなどされますか。
深澤「ロボット役なので、ペッパー君とか見ちゃいますね(笑)。でも今のロボットって、ロボットダンスのようなカクカクした感覚がなくて、本当に動きが滑らかなんですよ。だから、よりロボット感を出すために、先日『スター・ウォーズ』を見て、C-3POの動きを学びました」
橋本「僕は実年齢よりかなり上の役を演じるので。どうしたらより老人の感じを出せるかと模索しています。あまり声を変えたりとはしないと思うんですけど、なるべくナチュラルな感じで演じたいとは思っていて、最近だとおじいちゃんを見かけては、『すごいゆっくり喋るんだな』とか『わけのわからないことを言ってるな』とか『歩き方が可愛いな』とか、そういうのを見たりしていますね」
河崎「ナーナちゃんはピアノが好きで、私もピアノを弾くんですけど、少しでもナーナちゃんに近づくために、もっと家でも弾きたいなと思っています。本番ではピアノを弾く演技をしなければいけないんですけど、腕を上げすぎちゃうと弾いていないことがお客さんにも伝わって、そこでお芝居をみる集中力が切れてしまうんじゃないかと思うんです。没入してもらえるよう、本物に近づけた演技ができるように頑張りたいなと思っています」
―――本作は感動の物語ということにちなんで、最近感動して泣いたエピソードがあれば教えてください。
橋本「最近感動して泣いたエピソードですか。泣いていないな……。ドライかもしれないけど、最近心動かされてないかもしれないです」
河崎「ほかの作品を観劇して感情移入しちゃって泣いてしまうことがよくありますね。前回の『PINO』で涙をぬぐっていらっしゃる方を多く見かけましたが、きっと私もお客さん側にいたら泣くと思います」
深澤「僕も結構感動して泣くタイプです。最近も稽古場である重要なシーンでのめりこんじゃった結果号泣したり、それこそ『スター・ウォーズ』でも泣きました(苦笑)」
―――観劇される方は是非ハンカチ持参でお願います。では最後に公演を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。
深澤「自分自身、前回を超えたいのはもちろん、続投のキャストに加えて、新キャストの方々がいらっしゃって、また新しいものが作れるような予感がしています。同じシーンでも違う人が演じると、こんなにも変わるんだというのを、前回観劇したお客さんはその部分を楽しんでいただけたら素敵ですし、初見のお客さんは純粋に作品の良さを噛み締めていってほしいです。
笑いあり涙ありで、感情がガンガン揺さぶられる作品ではありますが、エンターテインメントなので、そこを楽しんで受け止められるポップさと、帰り道に『ここのシーン良かったな』『お母さんに会いたいな』と思ってもらえるように今回も頑張りたいと思います」
河崎「一見ちょっと重たそうな話ではあるんですけど、クスっと笑えるようなシーンもあって、お名前は敢えて出しませんが、面白い方がいて、きっとハッピーにしてくださると思います。音楽もポップで楽しいダンスシーンもあるので。小さなお子様も親御さんと一緒に楽しんでいただけるかなと思っていますし、前回よりもさらに深く、丁寧に、『PINO』という作品を通して、テーマである『生きる』や『愛』を皆さんにお届けできたらなと思います」
橋本「ただのハッピーエンドじゃなくて、ちょっと重く感じる部分も観る人にはあるのかなと思います。すごく響く作品ではありますので、人の温かみや命の大切さを感じるようなつもりで来てくれたら嬉しいなと思っております」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)
プロフィール
深澤悠斗(ふかざわ・ゆうと)
1999年8月3日生まれ、千葉県出身。主な出演作に、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン(桜井雅也役)、『アイ
★チュウ ファイナルシーズン』(十文字蛮役)、東宝ミュージカル『四月は君の嘘』など。
河崎千尋(かわさき・ちひろ)
2004年2月生まれ、千葉県出身。主な出演作に、ミュージカル「アニー」(ジュライ役)、ファミリーミュージカル「アルプスの少女ハイジ」(クララ役)、『キミとアイドルプリキュア♪ドリームステージ♪』(MC)など。
橋本汰斗(はしもと・たいと)
1991年11月1日生まれ、兵庫県出身。主な出演作に、『仮面ライダーオーズ/OOO』(カザリ役)、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』シリーズ(西武新宿線役)、舞台『魔法使いの約束』(ムル役)など。
公演情報
劇団東少 ミュージカル 『PINO』
日:2026年3月26日(木)~29日(日)
場:六行会ホール
料:プレミアム席[前方席・特典付]8,500円
一般6,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.tohshou.jp
問:劇団東少
tel.03-6265-7070(10:00~17:30/土日祝休)