
『勇者ヨシヒコ』シリーズをはじめ、『今日から俺は!!』、映画『銀魂』、『新解釈・幕末伝』などを手掛ける脚本家で映画監督の福田雄一が、1990年の旗揚げより座長を務める劇団「ブラボーカンパニー」。約5年5か月ぶりとなる第46回公演の『下北沢フライドプレイ』は、ブラボーカンパニーのルーツをたどり、自身が主人公がモデルとなっている、2014年(第36回公演)と2018年(第42回公演)に上演した『タイトル未定』の続編。
最近では映画監督として多くの人気作品を送り出す福田雄一に、本作のあらすじや見どころだけでなく、演劇界に対して感じることや劇団への熱い思いなどを大いに語った。
―――よろしくお願いします。福田さんが座長を務めるブラボーカンパニーですが、今回が第46回公演になります。
福田「46回ですか。そんなにやっているんですね。信じられないけど、学生の頃は年に3~4回やっていましたから」
―――前回第45回公演『天晴ロケット~そして迷宮へ』が2020年9月で、今回久々の本公演となります。
福田「『天晴ロケット~そして迷宮へ』こそ上演出来ましたが、2020年3月上演予定だった『宇宙の仕事』がコロナの影響で中止になって、2022年のプロデュース公演『やらなさそうな3人』では、山本(泰弘)が本番前日になってコロナに罹ってしまって……。ブラボーカンパニーにとって痛恨の出来事だったんです。
もちろんやり続けたい思いはありましたが、チケットを買っていただいた方々をがっかりさせてしまうと思って、役者たちと話し合って、コロナが明けるまではお休みという形をとったんです。ところがコロナが明けたら僕のスケジュールがなかったという、ちょっと悪い展開になっていてしまって(苦笑)。それでも2026年の1月、2月ぐらいで空きそうだということになって、久々にやらせてもらうことになったんです」
―――久々過ぎて、『ブラボーカンパニー公演は当分ないのでは』と心配するファンの声もあったのではないでしょうか。
福田「実際にファンの方から『何でブラボーカンパニーは公演をやらなかったんだ』と言われたりしました。コロナ禍も公演をやりたいという思いはずっとありました。ただコロナの影響で小屋入り後や本番中に公演中止になってしまって、演劇界に携わる人間全てが『これだけ準備してもコロナの影響で中止になっちゃうんだ』と思っていたはずで、僕らもトライしたけど中止になってしまうことは、いいことではないと思ったんです。ファンの方にはお待たせする形となってしまいましたが、とてもいいタイミングになったかなと思います」

―――前回『天晴ロケット~そして迷宮へ』は1995年公演の再演でしたが、今回は書き下ろしの新作と伺いました。言える範囲で構いませんので、どんなあらすじになるか教えていただけますか。
福田「2014年と2018年に上演した『タイトル未定』という演目がありまして、島本和彦先生の『アオイホノオ』とミュージカル『サムシング・ロッテン!』から大いに影響を受けて描いた作品の続編になります。
成城大学演劇部の主人公・福山は、僕自身がモデルのキャラクターで、インチキ預言者から『将来、小劇場でこんなものが流行るよ』というのを教えてもらって、これからこういうものを書くべきではないかという話で劇団のルーツをたどる作品でもあります。例えばインチキ預言者に『ジョビジョバという奴らが現れる。お前ら男だけの劇団と被っているから絶対無理だよ』と言われたり、鴻上尚史さんや野田秀樹さんのことを呼び捨てしながら、『第三舞台』や『夢の遊眠社』のことをクソミソ言っているようで、実は大絶賛していたりと、当時思っていたことを実名でバンバン出したんですね。
その後、ファンの方から『もう1回見たい』という声をたくさんいただきました。ただ、当時の設定が成城大学生で、言っても保坂(聡)以外全員50代だし、もう大学生じゃないだろって(苦笑)。それなら続編をやりましょうという話になりました」
―――『タイトル未定』を観劇したことがある方は、より楽しみになりますね。
福田「今回は福山が30歳を超えて結婚して、バラエティの放送作家になったものの、劇団は売れていないという状況を描く舞台になります。
既に小劇場ブームが終わって『第三舞台』や『夢の遊眠社』も解散して、そんな中で自分の劇団はどうやったら売れるんだと格闘する話にしようと思っていて、『タイトル未定』ではインチキ預言者が現れましたが、今回は未来の自分がやってくるという設定にしようと。なので、福山のもとに見たことのない太った男が現れます(笑)。そして太った男は『お前はこうしたらいいよ』としたり顔で言っては、過去の福山を未来に連れていって、今僕がやっている映画制作の現場を目の当たりにして、過去の福山は全く納得いかないという話にしようと思っています」
―――未来の福山は、今の福田さんをモデルにしていると思うので、『タイトル未定』だけでなく、福田さんの作品が好きな方であれば、たまらないストーリーになりそうですね。
福田「今回は、僕が映画を作る時に思っていたことを赤裸々に言うつもりではいます。最近思うんですけど、『コメディを作る』とは一体何だろうなと。先日『新解釈・幕末伝』でムロツヨシくんと佐藤二朗さんと話したんですけど、今の日本人は“一生懸命頑張りました”“辛かったです”と言うと、すごく納得してくれる傾向にあるじゃないですか。映画監督さんの中には『このシーンは20テイクやり直しした』と普通に言う人がいるけど、それがコメディにおいて正しいのかというのをずっと疑問に感じているんです。
僕は『監督として仕事をそんなにやっていないんですよ』『福田組は結構適当にやっているんですよ』を売りにしてきたわけで、例えば『「勇者ヨシヒコ」は3時間あれば1話分書くことが出来る』とずっと言ってきましたが、その3時間に至るまでには膨大なシンキングタイムがあって、そのシンキングタイムはうちの嫁が見ていればいい話で、僕はそれがコメディであるべき姿だとずっと思ってきたから、『苦労しています』とは一度も言ったことがないですし、今後も言うつもりはありません。
プロデューサーさんから『苦労していないというのは、決してウリにならない』と言われるんですけど、僕はそこを貫きたいんです。僕たちが『大変だった』と言ったとしても、子供や中高生からしてみたら全く関係ないじゃないですか。コメディは特殊で、どれだけ苦労していても、笑えなかったらそこで終了で、『このシーンは笑えないですけど、実はこんなこだわりが……』というのは完全な言い訳ですから。“苦労している人が絶賛されている風潮に対して、今僕が思っていることをこの舞台で表現したいです」
―――たしかにコメディで笑えなかったら、裏側を知ったところで何も関係ないですからね。
福田「30代の時、この先ドラマの脚本や映画監督で売れるようになったら、劇団も絶対に売れると思っていました。結果的に劇団は売れていないんですけど、もともと抱いていたギャグ色の強い舞台を作るという志は当時からあって、きっと今の僕を見たら『なぜお前は適当にやっているんだ』『なぜメッセージ性のないギャグ色の強いコメディを作るんだ』と過去の自分は許さないと思うんです。だからこそ今の自分が過去の自分に対して“そのような視点でコメディを作ることが大切なことか”というのは言いたいと思いますし、、多分そこが一番の核心部分になると思うんですよね。
僕は『新解釈・幕末伝』のパンフレットに『映画監督になりたいと思ったのは、幕末太陽傳の川島雄三監督に憧れていたから』と書いたんですけど、もう川島雄三になりたいというより、川島雄三の生まれ変わりと思うくらい敬愛しています。周りからは“川島雄三はそんなに大柄じゃないし、撮影にスーツをしっかり着込んでやっていた”と言われるんですけど、きっと川島雄三は『もし生まれ変わったら、大柄で、現場にTシャツと短パンで行けるような映画監督になると思っていたんだ』と亡くなる時に思っていたと今も言い張っています(笑)。
川島監督は20代の頃から“筋萎縮性側索硬化症”(通称:ALS)という、筋肉がどんどん硬く細くなって、最終的には心臓が止まってしまう難病にかかっていて、晩年はほぼ体が自由に動かなかったかったはずで、それでもスタッフやキャストに気遣わせないように作品を作り続けていたんですよ。そんな彼の遺作が伴淳三郎さん主演の『イチかバチか』という作品で、とてつもなく“メッセージ性のないくだらない映画”でして。
彼が監督を務めていた当時は黒澤明監督、小津安二郎監督、木下恵介監督の全盛で、基本的に喜劇は求められていなかったですけど、川島監督は評論家に評価されるわけでもない映画をお客さんのために作り続けていました。『相惚れトコトン同志』という作品で初めて川島作品の助監督を務めた今村昌平監督から『何でこんなくだらない映画を撮るんですか』と早々に言われたり、ヒロインの岸恵子さんから『こんな映画に出させられるなんて死ぬほど悔しい』と言われたりするんです。でも僕からしたら、こういうエピソードを聞けば聞くほど羨ましくてしょうがないんですよ(笑)。僕も『こんなくだらない映画に出るのは悔しいです』と言われてみたいです!」
―――福田さんは今までキャストやスタッフにそのようなことを言われたことはないんですか。
福田「言われたことはありませんが、『アンダーニンジャ』に出演した浜辺美波さんが会見で『得たものより、失ったものの方がよっぽど多かった』とコメントしていたんですけど、僕からしてみれば、あんなことを言われて本当に嬉しいんです」
(一同笑)
福田「ただ浜辺さんのコメントを真に受ける人は、おそらく日本国民のほとんどだと思うし、そんな人たちに対して戦い続けたい、屈したくない自分がいるんです。それは川島雄三監督が病気のことを一切が公言しなかったからで、僕はそんな“川島イズム”を守っていきたいです。
今回の『下北沢フライドプレイ』で描かれる30代前半は、三谷幸喜さん全盛の時代なんですよ。きっと三谷さんがドラマで通用した理由は、人間のリアルを描いていたからで、人間のリアルをかける作家じゃないとドラマに呼んでもらえないと思っていた時に、未来の自分がやってきて、『もっとギャグ色の強い作品でいいと思うよ』と言われたら、『お前は何もわかってない!』と言い返すと思うんです」
(一同笑)
―――当時の時代背景を考えたら、アドバイスとして受け入れられないでしょうね。
福田「僕は30代の頃、親父のことを恨んでいたんです。親父はお笑いが大好きな人で、小児喘息だった僕にお笑いを見ることを勧めてくれました。同じ時間帯に放送していた『8時だョ!全員集合』『オレたちひょうきん族』を両方見られるように、当時あまり普及してなかったVHSビデオデッキを買ってもらったり、僕の世代ではないクレイジーキャッツの映画を見せられたりしたんです。そして、三谷さんは親の勧めで小学生の頃からビリー・ワイルダーの作品を見ていたという話を聞いて、俺もビリー・ワイルダーの作品を見ていたらもっといい作品を書けたんじゃないかって。
ただその後に宮藤官九郎くんが現れて、2人とは違った自分独自の笑いを打ち出さないと売れないことがわかった時、初めて“親父ありがとう”と思いましたし、クレイジーキャッツやザ・ドリフターズに育てられた僕が、コメディ作家として三谷さんや宮藤くんと違った打ち出し方ができたのは、やっぱり親父のおかげだと思うんです」
―――いいお話を聞く事が出来ました。さて福田さんのXを拝見しましたが、本作では、福田さんが毎日ロビーに立ってお客さんにご挨拶するそうですね。
福田「はい。本当なら他の作品でも、時間があればロビーでご挨拶したいんですけど、基本絶対やらせてもらえないんですよ。今年6月のミュージカル『ビートルジュース』大阪公演中に、主演のジェシーさん(SixTONES)が誕生日を迎えるということで、誕生日当日、ファンの方と一緒に『ジェシー、誕生日おめでとう!!』と言いたくて、僕がロビーの前に立ったんですよ。
そしたら『写真撮ってください』『サインしてください』『握手してください』とファンの方が殺到しちゃって。プロデューサーが『速やかに退場してください!!』と叫び続けるも、僕が完全に無視して、ファンの方のリクエストに全て応じたら、プロデューサーに『福田さん、二度とこんなことやめてください!!』とひどく怒られました」
―――プロデューサーのお怒りは理解できます(苦笑)。
福田「もともとブラボーカンパニーでもロビーで挨拶やりたいと気持ちはありました。ただ僕自身コンプレックスの塊だから、僕がいたところで誰も喜ばないだろうと思ってたんです。ただミュージカル『ビートルジュース』の時に、僕が立つだけでこんなに喜んでもらえるなら、今度のブラボーカンパニーでは出来るんじゃないかと。プロデューサーもいないですし、僕を叱る人もいないから、やってみようと決めました」
―――きっと福田さんと直接ご挨拶したくて、観劇される方もいると思いますし、終演後のロビーはきっと凄いことになります。
福田「僕の中でのステータスはずっと“ブラボーカンパニー座長”のままで止まっているんですよ。よく映画のプロデューサーさんから『巨匠としての自覚を持ってもらわないと困ります』と言われるんですけど、仮に僕が巨匠だったら、ブラボーカンパニー公演で本多劇場を1か月分埋められると思うんですよね」

―――そういえば公式Xで「平日は全然売れない」と嘆きのポストをされていましたが(苦笑)。
福田「だから映画のプロデューサーさんには『僕はさほど売れてないですよ。もし売れていたら、ブラボーカンパニーのチケットも売れてますから』と言いますよ。僕からしてみれば、ファンがいること自体嬉しいですし、街角でファンの人に声かけられたら、平均して10分ぐらいは喋り込むんですよ(笑)。本当に映画監督や巨匠とか、そういう自覚がまるでないんですね。
ただ、一緒にU-1グランプリというコントユニットを組んでいるマギーから『福田さんは、演劇界で何も実績がないということが、仕事に対するガソリンになっている』と言われたことがあるんですけど、本当にそうなんですよ。ほとんどの方が僕のことを演劇界の人間だと思われていないですし、演劇界の人間も僕のことを演劇の人間だと思っていないし、僕のミュージカルに演劇界の大物は誰も観に来ないです。
―――世間の方からみれば、福田さんは映画監督のイメージが強いですからね。
福田「そう思わせてしまう理由は、ブラボーカンパニーが売れていないからなんです。きっとブラボーカンパニーが大人計画ぐらい売れていれば、僕のことを演劇の人間だと認識してもらえるんですけど。だからブラボーカンパニーが売れるまでは“売れた”という認識を持たないまま生きていくんだと思うんです。ちょっとふと落ち着いた瞬間に、結局自分は劇団を売りたくて、バラエティ作家やドラマの脚本家や映画監督をやっていたんだなと思うことがあって、きっとこれからも変わらないと思うんです。
先日もTVプロデューサーから『福田さんの舞台に出演したい役者さんはいっぱいいるし、客演なんていくらでも呼べるよ』と言われましたが、それは絶対にやりたくないんですよ。ブラボーカンパニーの公演は基本的に客演を呼びません」
―――今回のキャストも劇団員の6人のみですね。
福田「ブラボーカンパニーという劇団を売るというより、“ブラボーカンパニーの劇団員”を売りたいんです。今年、東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来』が上演されましたが、振り返ると三谷さんは素晴らしい足跡を残されたと思うんですよね。
あれだけ脚本家として売れて、しかも劇団員の皆さん活躍中ですし、宮藤くんも大人計画の役者を多くの映像メディアに売ったというのも素晴らしい仕事だと思うし、僕も2人のようなことをしないといけないと思っていますし、役者って何歳で売れるかわからないから、いつまでも希望は持っていたいんです。僕の20代はずっとニートで、その間、僕の創作意欲に付き合ってくれたのがブラボーカンパニーの劇団員。その時の恩義は絶対に忘れないし、『劇団員が1人もいなくなるまで、ブラボーカンパニーを辞めることはない』とずっと言ってきました。この先劇団員が減っているかもしれないけど、1人になるまではやろうという気持ちはあります」
―――ブラボーカンパニーに対する熱い思い、ありがとうございます。それとポスタービジュアルについても触れたいなと思います。
福田「あれは単純に、1970年代の映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』のインスパイアです。ヒットした映画の予告やドラマ・CM・ニュースなどのパロディを集めたオムニバスコメディで、タイトルも過去の福山は未来の福山の映画を見て、『ケンタッキー・フライド・ムービー』みたいな感じで見えるという意味合いで『下北沢フライドプレイ』とつけました」
―――では最後に、公演を楽しみにされている方に向けて、メッセージをお願いします。
福田「小劇場ブームの時代は作家で舞台を観に来る傾向でしたが、今は魅力的な役者さんを観に行きたいという動機に変わりました。演劇界にとってはあるべく姿だと思います。お客さんが面白いものを僕なりに全力で出しますが、うちの役者たちも面白くて、稽古場で普通に僕を素で笑わせてくれるのは彼らだけです。
映画やミュージカルの台本を書く時、“僕が面白いこと”と“お客さんが面白いこと”どっちを取るかとなったら、絶対に後者をとりますが、“笑いの純度100%”のブラボーカンパニー公演は、僕が面白いことしかやりません。今回は僕が全公演観劇出来るスケジュールになっています。お客さん誰1人笑っていなくて、僕だけが笑っているというシーンは、結構出てくるんじゃないかなと覚悟しています(笑)」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)

プロフィール

福田雄一(ふくだ ゆういち)
1968年7月12日生まれ、栃木県出身。ブラボーカンパニー座長で、1990年の旗揚げ以来、全作品の構成・演出を担当。また劇作家・放送作家・ドラマ・映画監督として活躍し、『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『銀魂』シリーズ、『今日から俺は!!』シリーズ、『新解釈』シリーズ、ミュージカル『サムシング・ロッテン!』などを手掛け、2026年GWには映画『SAKAMOTO DAYS』の公開が控える。
公演情報
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ブラボーカンパニープロデュース
天晴お気楽事務所 第46回公演
『下北沢フライドプレイ』
日:2026年2月7日(土)~11日(水・祝)
場:下北沢 駅前劇場
料:一般4,800円 U22割引[22歳以下]3,000円
※要身分証明書提示(全席自由・税込)
HP:https://www.bravo-company.net
問:ブラボーカンパニー
mail:bravo-c@bravo-company.net
