第5回にして衣装さんが付くようになりました YouTubeで人気急上昇中のコントユニット「転転飯店」が描く未来予想図とは?

 「無理なく楽しく健康に」をコンセプトに、作家の平山犬と俳優の中村亮太を中心に結成されたコントユニット「転転飯店」。
 2023年から活動を開始し、毎年1~2回のペースで“持続可能なコント公演”を実施。また自身のYouTubeチャンネルでは、ショート動画を毎日投稿、毎週金曜日には「まかないラジオ」を配信し、約66.3万人(2025年10月17日現在)のチャンネル登録者を記録。さらには今年のキングオブコントに初挑戦した転転飯店の第5回持続可能なコント公演『トーキョー・ラッキー・フー!』が2026年2月、中野 ザ・ポケットにて上演。史上最大規模のコント公演となる今回の見どころや今後の展望などを平山犬と中村亮太に聞いた。


―――宜しくお願いします。まずはユニットを結成した経緯を教えていただけますか。

平山「僕たちは大学の同級生で、大学時代にも劇団をやっていたんですけど、コロナ禍で解散してしまって。その後、中村は就職したり舞台に出たりして、僕はいろいろな役者さんを呼んでコントをしていたんですけど、お金が無さ過ぎてしまい、1人でコント公演を成立させるのが無理になりそうな時に、中村くんが『お金かけずにやってみよう』と引き留めてくれたのがきっかけでユニットを組むこととなりました」

中村「最も多い辞める理由って、お金なんだよね。2人なら公園でも稽古出来るし」

平山「劇団とかやっていくと、すごいお金がかかるけど、コントユニットとしてなら、正直そんなにお金をかけずにいけるなと思ったので」

―――まずは「お金をかけない」というところが大前提なんですね。

中村「力ずくで『お金をかけない』という気持ちでスタートしました」

平山「2,000円という激安価格で音響機材がレンタルできるところがあったんですけど、それもケチったもんね(笑)」

―――「転転飯店」といえば、ショート動画を毎日投稿するなど、膨大なコント数を誇っていますが、どのようなスタイルでコントが作られるんですか。

平山「ショートコントやラジオの企画はスタッフ3人を加えた5人全員でアイデアを出すスタイルですが、コント公演に関しては僕が台本は書いて、それにボケを中村くんが足す感じです」

中村「いっぱいふざけて、平山くんを困らせようと(笑)」

平山「台本のない状態でも、ト書きだけ書いて『こういう流れです』と説明することもあります。中村くんはすぐにやりたくなっちゃうタイプなので、だいぶ楽をさせてもらってます」

―――これだけたくさんのコントを作られて、寝る前にどんなことを考えているのか、閃きのタイミングは不規則なのかというのをちょっと聞いてみたいです。

平山「実は不眠の体質で、寝る前は極力何かを考えないようにしています。閃きのタイミングは不規則ですね。朝起きてパッと思いつくこともあれば、電車の喧嘩を見て閃くこともあります。ちなみに何か思いついたら中村くんの耳元でボソッと言って、彼の反応を見て使えるかどうか判断します」

中村「耳元でボソッと言わず、もっとみんなに言いなよ(笑)。僕もあまり寝られないタイプですけど、単語と映像を思い浮かべて眠りを促す『認知シャッフル睡眠法』で寝ることができます」

―――このインタビューをご覧になっている方の中で睡眠に悩んでいましたら、是非試してみてください。さて第5回公演について触れたいと思いますが、今回のタイトルを『トーキョー・ラッキー・フー!』にした理由をおしえていただけますか。

平山「前回のタイトル『スケスケ・ア・ゴーゴー』の“スケスケ”は、透明人間の話をやりたいという理由だけでつけたんですけど、今回は『ラッキー』『運』をテーマにしたコントを1つは作りたいというのがあって、“ラッキー”というワードは絶対入れたい。あと、もともとシティポップが大好きで、東京の夜のドライブみたいなイメージという意味での“トーキョー”。“フー”はもう完全に感覚でつけた感じです(笑)。
 実は、僕が大学を卒業した後に役者さん集めて『Tokyo Lucky Hall』というタイトルのコント公演をしたんですけど、赤字に終わってしまって、今回はなんとか黒字に持っていこうという“リベンジ”の意味合いもあります」

―――今回の会場が中野・ザ・ポケットということで、これまでで一番キャパの大きいところでの開催になりますが、「極力お金をかけない」という理念はこれまで通りですか。

平山「そうですね。ただ前よりは予算をかけられるようにはなりました」

中村「やれることは確実に増えてはきています」

平山「スタッフの数も有難いことに増えてきていまして、今回から衣装さんが専属でつくようになったんです」

中村「稽古や本番が終わってすぐアイロンをかける作業も面倒だったし、稽古をしたいのに、2人で川崎に古着を買いに行ったりと、もったいない時間が多かったので、今回衣装さんが付くことによって、稽古の時間は確実に増えそうです」

―――どんなコントが観られるか、今から楽しみです。ここからは転転飯店のトピックや今後の展望を聞いてみたいと思います。まずは今年初出場したコント日本一決定戦「キング・オブ・コント」に準々決勝進出を果たしました。お二方はこの結果をどう捉えていますか。

平山「最初にエントリーする時に、3年間はエントリーしようと思っていたんですよ。そして3回目で準決勝を目指そうと。終わってみれば『準々決勝まで行けたんだ』と思ってたんですけど、勝ち上がっている時は「準々決勝までは来られるかな』『やっていることは間違えてはいないんだ』という気持ちでしたね」

中村「キングオブコントのネタの時間が1回戦は2分、2回戦は3分、準々決勝からは5分と、僕たちが普段コントをする時間よりも短くて、衣装などを用いて見た目で説明が完了することの大事さを学びました」

平山「今年は僕の大好きなロングコートダディさんが優勝しましたが、3年計画だとすれば、3年目で優勝してロングコートダディさんの後にトロフィーもらいたいというのはあります」

―――優勝宣言ですね!! 昨年までは観る側のみでしたが、今年初めて出場してみて、大会に対する思いの変化はありましたか。

平山「これが全く変わらなくて。今まで通り決勝ではTVの前で応援していました」

中村「会場で拝見した方が決勝に進まれてたりしたので、この人たちと同じところで競い合っていたんだという実感はすごい湧きました。同じ過程を経て、この人たちは今ここまで行けたんだって。逆に決勝を見るまで実感は全然湧かなくて、まるで人事のようでした」

―――キングオブコントで初めて「転転飯店」を知った方も多かったのではないでしょうか。

中村「出場してから『初めてYouTube見ます』『ラジオ聴きます』というコメントは増えましたね。本当に有難いです。あとは僕らの視聴者を小劇場の方に引っ張っていければという野望はあります」

―――ちょうどYouTubeのワードが出たので、YouTubeチャンネルのことも聞いてみたいと思います。約1年前にチャンネル登録者数が10万人を突破して、銀の盾を手に入れた動画が公開されていますが、10月現在で既に66万人を突破しています。この飛躍的な伸びは予想されていましたか。

平山「僕らも一気にこうなるとは思っていませんでした」

―――66万人突破ということで、やはり次の目標は登録者数100万人を突破して金の盾を手に入れることになるのかなと。

中村「確かに金の盾は見たいけど、そんなに焦りはないです」

平山「十分過ぎるほどというのはあるんですけど、目指すことにストップをかけることはないよね」

―――YouTube動画をいくつか見させていただきましたが、本当に2人が楽しそうにやっているのが印象的でした。

平山「YouTubeを始める時に、メンバーのハラくんが『2人が楽しくないことは絶対しないで欲しい』と言ってくれて、それから自由にやらせていただいています。結構大変なこともやっていますが(笑)」

―――様々な企画や過去のコントなどのコンテンツがあるので、是非ご覧になって欲しいと思います。それと「転転飯店」として今後やってみたいことを聞いてみたいなと。

平山「そんなにはないですけど、欲を言えば、旅行がすごい好きなので、旅行してお金もらえるような企業さんからのお話がいただければと思っています。具体的には地元・大田区の観光大使になりたいです!!」

中村「僕、大田区に何の所縁もないもんなぁ。五反田観光大使が『さらば青春の光』さんなので、蒲田でも狙ってみる?(笑)」

―――ちなみに中村さんはどこのご出身ですか。

中村「熊本です」

―――親善大使にはなってしまうんですけど、熊本県だと石川さゆりさん、高良健吾さん、コロッケさん、島津亜矢さんなどがいらっしゃいますね。

中村「別に観光大使になりたいという目標じゃないし(苦笑)。僕の目標は、小劇場にたくさんの方を入れまくることで、もう一度小劇場ブームを起こすことです」

―――先程もファンの方を小劇場へと仰っていましたし、小劇場への思いは相当なものですね。ちなみにコント公演として今後の野望などございますか。

平山「ツアーですね」

中村「地方に行ってみたいです。特に地元の熊本!! 地方公演あるあるですけど、九州での公演って、福岡で止まっちゃうか、熊本をすっ飛ばして沖縄というパターンがほとんどなんですよ。確かに熊本にはコントに適したサイズの劇場は少ないですけど、サイズなんかどうでもいいから、とにかく熊本でやりたいです!!」

平山「僕は本多劇場で上演したいという夢があって、中学3年生の時に宮藤官九郎さんの『サッドソング・フォー・アグリードーター』という作品を本多劇場で観劇して、演劇をやろうと志しました。いつになるかわかりませんが、憧れの地でコントをやってみたいです」

―――ありがとうございます。では最後に公演を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。

中村「今回が第5回で徐々に劇場の規模も上がってきて、今回もまた東京のみでの上演ですけど、来年、再来年、またもっと進化できるように、現時点で持ってるものは全部出し切って、とにかく来てくれた方へ感謝のコントが出来るように気合い入れていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします」

平山「確実にスタッフさんも増えたり、劇場が大きくなったり、観に来てくださる方も増えたりで、すごく成長し続けている転転飯店なので、確実に第5回が一番良い作品にはなります。さっき話した地方公演も評判が良かったら実現可能になると思うし、とにかくいいものを作れる自信が今の僕にはあります。毎回新たな試みに挑戦しているんですけど、実は今回も挑戦があります。絶対に損はさせないので、興味がある方は劇場に足をお運びいただけると嬉しいです」

(取材・文・撮影:冨岡弘行)

プロフィール

平山 犬(ひらやま・いぬ)
1994年3月3日生まれ、東京都出身。劇作家・コント作家のほか舞台俳優としても活動を行う。

中村亮太(なかむら・りょうた)
1993年12月18日生まれ、熊本県出身。主な出演作に、ゆうめい『弟兄』『姿』、劇団あはひ『流れる』など。

転転飯店(てんてんはんてん)
作家・平山 犬と役者・中村亮太を中心に結成されたコントユニット。“無理なく楽しく健康に”をコンセプトに掲げ、“持続可能なコント公演”と銘打った年1~2回の公演を制作。YouTubeの登録者は66万人を突破(2025年10月現在)。SNSでは“劇場に向かうハードルを下げる”を目標に主にショートコントなどを公開中。

公演情報

転転飯店 第5回持続可能なコント公演
『トーキョー・ラッキー・フー!』

日:2026年2月3日(火)~8日(日)
場:中野ザ・ポケット
料:一般チケット4,000円
  学生チケット[後方エリア]2,000円
  ※要学生証提示(全席指定・税込)
HP:http://tentenhanten.jp
問:転転飯店 mail:contact@tentenhanten.jp

インタビューカテゴリの最新記事