レストランに訪れる人たちの人間模様と、芝居の合間に演奏されるジャズ 一緒にお店にいるような雰囲気で、あらゆる世代に愉しんで欲しい

レストランに訪れる人たちの人間模様と、芝居の合間に演奏されるジャズ 一緒にお店にいるような雰囲気で、あらゆる世代に愉しんで欲しい

 クリスマスの風物詩『僕のフレンチ』が今年も開店する。1989年に青山円形劇場でスタートし、ロングラン公演となった『ア・ラ・カルト』は今年で37年目を迎える。2019年から形態を変えた『ア・ラ・カルト公認レストラン 僕のフレンチ』は、芝居あり、ジャズ演奏あり、豪華ゲストありの大人のエンターテインメントショーだ。構成・台本・演出を手掛け、役者としても出演する高泉淳子に話を聞いた。


―――今回も高泉さんは様々な役を演じながら、ギャルソン役の役者3名とレストランの客役で日替わりゲストが参加されますね。

 「今年のゲストは東京公演に初出演の岡本健一さん、ドリアン・ロロブリジーダさん、お馴染みの石井一孝さん、ダイアモンド☆ユカイさん、篠井英介さん、三谷幸喜さんと6日間、大阪公演は最多出演 ROLLYさんと2日間。三谷さんは昨年の公演日翌日に『来年もお願いできないかな』と、お電話をくださって。公演の翌日に、嬉しかったです! 優しい方だなぁって感激しました。
 毎公演出演するギャルソンたちは、舞台上でワインを注いだり、料理をサーブしたり。ゲストの反応によってその都度対応も変わってくるから、大変なんです。今年で出演が2回目の小林隆さんは、昨年の公演終了後に『緊張感でずっと眠れなかった』とおっしゃっていたほど。そうかと思えば、中山祐一朗くんみたいに舞台上で『あ、ソムリエナイフ忘れた!』とか言っちゃうタイプのギャルソンもいて(笑)。こんな個性豊かな雰囲気が作品の醍醐味かなと思いますね」

―――白井晃さんと旗揚げされた劇団「遊◉機械/全自動シアター」でボツになったシーンをオムニバス形式で作品にしたことが本作のはじまりだそうですね。

 「前身となる『SEASON OFF シアターらいぶ』ですね。“ボツ=悪い”ということではないので、逆に抜きんでていて組み込めなかったシーンを生かす作品をつくりたかった。
 私は映画と音楽が好きで。“映画みたいに、シーンとシーンの間に音楽を取り入れたい”という思いがずっとありました。映画にはセリフがないシーンが多くありますよね。それが情景や心情を観ている人の心に触れ、観終わったあとも心に残り続ける。そんな作品がつくれたらと『ア・ラ・カルト』にはシーンとシーンの間に話を引き立てる音楽を……と、大好きなものを詰め込んでいきました」

―――大きく編成を変えるきっかけとなった20周年を経て、現在の『僕のフレンチ』のスタイルを確立していったと聞きました。

 「20周年は一番の転機でしたね。メインの役者 白井晃と隂山泰が抜け、プロデューサーも辞めることになったので、最終公演になるはずでした。ただ、私には終わりにする理由が見つからなくて。音楽監督の中西俊博さんに相談しました。『あっちゃんがやるんだったら、やる』って言ってくれて。その言葉に勇気をもらいました。
 新たにキャスト選びからはじめて『ア・ラ・カルト2』として再出発しました。それからいろいろと工夫を重ねて。ゲスト選びにも力を入れました。『どうすれば、出演OKを貰えるか』を念頭に(笑)、稽古は参加しなくてもOK、セリフも料理のメニューやワインリストに書いて。それがスリリングでライブ感が増して面白いシーンになって。
 でもね、ゲストに来てくれる方はそんな虎の巻がなくてもできるような人たちばかりで。何度も出演していただいている春風亭昇太さん、山寺宏一さんは毎回セリフを完璧に覚えて来られますし、昨年の三谷さんもほぼメニューを見ていなかったんじゃないかと思います」

―――今年は3年目の開催となるI’M A SHOW(東京)と、近鉄アート館(大阪)での開催ですね。

 「35周年公演の2023年、押さえていた会場がその年の春に突然クローズするという大事件があって。どこも場所が見つからず、諦めかけたところに、有楽町のI’M A SHOWを紹介してくださる方がいて。奇跡です。コロナ以降、ライブハウスから劇場に戻ることは考えていませんでした。捨てられなくて、長いこと倉庫に保管していたテーブルや椅子と赤いカーテンが舞台に並ぶ光景を見た時は、涙が流れてきて。初日、幕が上がると、同時にお客さんが総立ちで迎えてくださって、忘れられない出来事です。
 大阪公演は東京初演の翌年の1990年から、2018年の30周年まで続けてきました。今年、様々な人にサポートいただき、7年振りに復活します。本当に嬉しい。大阪公演は東京公演とは違った反応と観客席に熱気があり、楽しみです。あとはやっぱり、大阪の高槻市出身のROLLYがゲストに出てくれること。ROLLYの素晴らしい歌とギター、味のある芝居を楽しみにしていただければ」

―――この作品を続けてこられた秘訣はなんでしょうか。

 「まず、私がこの作品を好きということですね。この作品は、私が芝居をはじめるきっかけになった要素がすべて詰まったものだと改めて感じます。そして今の私が役者として、面白味を持って続けられているのもこの作品のおかげだと思ってます。毎年、生みの苦しみはありますが、楽しみのほうが大きい。その年の公演が終わった時から“さて次はどうしようかな?”って、来年の公演のことを考えてます。
 いま、目指すのは40周年ですね。今回も初演から変わらずあらゆる世代に楽しんでいただけるものになるはず。味なお話と洒落た音楽に浸りながら、思う存分お楽しみください。会場でお待ちしています」

(取材・文:山田浩子 撮影:Tanabe Atsushi)

 

1/24~30は「全国学校給食週間」です。あなたが好きだった給食のメニューを教えてください。

 「給食嫌いだったので、いい思い出はありません。好きだったメニュー、みなさんカレーシチューとか、けんちん汁とかあるのでしょうけど、なに一つありません。器とお皿がアルミで、なにがのっかっていても、美味しそうには見えない。おまけに問題視された先割れスプーン。フォーク、スプーン及びナイフの合体? これ1つですべて食べろというのは苦行でしたね。
 台風で電気系統が故障したとき、給食が休みになり、商店街のパン屋さんが何軒かで協力してコッペパン、菓子パンを提供してくれて。牛乳屋さんもコーヒー牛乳とか混ぜて持ってきてくれて、夢のようでした。なぜか焼きそばと杏仁豆腐が付いていて。熱血漢の中華屋さんの提供だったんだと。美味しかったなぁ。わたしの忘れられない給食のメニューです」

 

プロフィール

高泉淳子(たかいずみ・あつこ)
宮城県出身。役者・劇作家・演出家。早稲田大学在学中、早稲田大学演劇研究会で演劇を始める。卒業後、1983年に劇団「遊◉機械/全自動シアター」を結成。少年少女から老人まで様々な人物を演じ注目される。1991年に『ラ・ヴィータ』で劇作を務め、以降2002年の劇団解散まで時間・記憶・家族をテーマにした作品を執筆。2004年、英国の演出家と村上春樹の短編を舞台化した『エレファント・バニッシュ』のニューヨーク・パリ・ロンドン公演で世界的評価を得る。2013年2月、パルコ劇場40周年記念公演の三谷幸喜書き下ろし『ホロヴィッツとの対話』でホロヴィッツの妻・ワンダを演じ、高く評価された。著書に「昭和演劇大全集」、「高泉淳子仕事録」、『アンゴスチュラビターズな君へ』、『メランコリーベイビー』、『ラ・ヴィータ』、『モンタージュ』、『学習図鑑』など。1994年に『ラ・ヴィータ』で文化庁芸術祭賞、2009年に『ア・ラ・カルト』でスポニチ芸術優秀賞、2014年に『ア・ラ・カルト2』『ホロヴィッツとの対話』で第21回読売演劇大賞 優秀女優賞を受賞。みやぎ絆大使・おおさき宝大使を務める。

公演情報

『ア・ラ・カルト公認レストラン 僕のフレンチ』

【東京公演】
日:2025年12月20日(土)~25日(木)
場:I’M A SHOW
料:S席11,000円 A席9,800円
  (全席指定・ドリンク代別・税込)

【大阪公演】
日:2025年12月28日(日)~29日(月)
場:近鉄アート館
料:9,800円(全席指定・ドリンク代別・税込)

HP:https://www.facebook.com/alacarte2/
問:遊機械オフィス mail:info@yu-kikai.net

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