花組芝居が泉鏡花の幻想世界に挑む! 音楽(義太夫+黒御簾音楽)を生演奏で贈る意欲作

花組芝居が泉鏡花の幻想世界に挑む! 音楽(義太夫+黒御簾音楽)を生演奏で贈る意欲作

 加納幸和が主宰する花組芝居が、泉鏡花作品から幻想文学の名作 『陽炎座』に挑む。これまで鏡花作品をいくつも取り上げてきた加納だが、『陽炎座』は初めての挑戦だ。

 「鏡花作品は『草迷宮』から『天守物語』、『夜叉ヶ池』、怪奇もの以外だと『婦系図』、『日本橋』など、ずいぶん手掛けましたが、ここしばらくは離れていました」

『陽炎座』といえば、松田優作主演、鈴木清順監督の映画を思い出す人も多いはずだ。

 「舞台版はおそらく初めてかもしれませんね。それに映画の『陽炎座』は、原作とずいぶん違っているんです。どうやらいくつかの話を混ぜ込んであるようで、設定もだいぶ変わっちゃっていて」

 映画版と比べて、原作により近い作品になりそうな予感だ。もう1つの目玉と言えるのが、なんと生演奏が舞台を彩るところ。そしてこの音楽チームの存在が、『陽炎座』に行き着く大きな要素だったと加納は明かす。

 「昨年の『レッド・コメディ~赤姫祀り~』の時に音楽チームだった義太夫三味線の鶴澤津賀寿さんや、三味線の杵屋邦寿さんから『生演奏だとやりやすいよ』と言われていたんです。このおふたりはずいぶん前からお付き合いいただいていて、僕のこともよくわかっていらっしゃる。
 以前『天変斯止嵐后晴』で生演奏を採り入れたことがありましたが、その後は音楽を録音して使っていました。でもおふたりから『久々にやりましょうよ』と言われて、生演奏を前提に考えて、悩んだ末に鏡花がいいんじゃないかと思ったんです。やはり芝居と関係があるものがいいけれど、あまりに知られていない作品はお客さまにも引っかからないだろうと思い、たどり着いたのが『陽炎座』でした」

 それにしても贅沢な舞台。というのも、鶴澤津賀寿は義太夫三味線の人間国宝。杵屋邦寿も歌舞伎や舞踊公演で活躍する傍ら、ソロライブを企画するなど、長唄三味線界のトップランナーだからだ。そして会場が博品館劇場であることも、花組芝居にとって嬉しい要素だという。

 「あの場所(銀座一丁目)がいいですね。ウチのお客さんはOLさんが多いので、仕事の後に劇場へ来やすいですから」

 鏡花作品の中でも特に難解だという『陽炎座』を加納は何度も読み返し、込み入った構成に手を入れ、劇中の音楽も7割方、詞章を新規で手掛けたと話す。話題満載の本作を、見逃さない手はないだろう。

(取材・文:渡部晋也 撮影:間野真由美)

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「柳楽優弥さん。波乱なこれまでが気になっていたのですが、最近CMでお顔を拝見すると、何故か見入っちゃう(苦笑)」

プロフィール

加納幸和(かのう・ゆきかず)
兵庫県出身。日本大学藝術学部卒業。1987年、『ザ・隅田川』にて「花組芝居」を旗揚げ。かぶきの復権を目標にした男性だけの劇団として活動を開始。小劇場ブームの終焉期に登場した個性派劇団として注目を集める。今年創立38周年を迎えた劇団の座長として、脚本・演出を手掛け、自らも女形で出演。西瓜糖『ご馳走』、花組芝居『毛皮のマリー』で、2019年前期の読売演劇賞 演出家賞にノミネート。外部での客演・演出・脚本提供や、映像にも進出。女形指導、母校の日藝・カルチャースクールでの講師、NHK歌舞伎生中継の解説も務めるなど、多方面で活躍。最近の主な舞台作品に、『ドレッサー』、ミュージカル『刀剣乱舞』髭切膝丸双騎出陣、こまつ座『連鎖街のひとびと』、演劇調異譚「xxxHOLiC」-續・再-(以上、出演)、西瓜糖『いちご』、博多座『新生!熱血ブラバン少女。』(以上、演出)、花組芝居『鹿鳴館』(演出・出演)、結城座『荒御霊新田神徳』(脚本・演出・出演)など。

公演情報

花組芝居 鏡花歌舞伎 『陽炎座』

日:2025年11月11日(火)~16日(日)
場:博品館劇場
料:一般7,000円
  障がい者割引
   [ご本人様と介助者1名まで同額]6,300円
  O-70[70歳以上]4,500円
  U-25[25歳以下]3,000円 
  高校生以下1,000円
  ※各種割引は要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://hanagumi.ne.jp
問:上記HP内よりお問合せください

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