東京バレエ団が3年ぶりにワシーリエフ版『ドン・キホーテ』の全幕再演を行う。プリンシパルら6ペアが日替わりで主演を踊るなか、ソリストから抜擢されたのが中島映理子。一昨年夏に子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』でキトリを踊り、今回全幕での本役デビューを果たす。
「おてんばキャラは初めてで、大丈夫かなと自分の中では思っていたんですけど。斎藤友佳理さん(東京バレエ団団長)が、『キャラ的にも合ってる気がする。頑張って作ろうとしないで、そのままの映理子でいればいい』と言ってくださって。それで楽しんで、落ち着いてやっていこうと思えるようになりました。でも全幕の主演となると、やはりプレッシャーはありますね」
2021年入団。翌年『ラ・バヤデール』のニキヤ、3年目には『ジゼル』の主演に配役され、順調にキャリアを積み上げてきた。しかし昨年6月に膝蓋腱剥離の大ケガを負い、長期休養を余儀なくされる。舞台復帰は今年2月で、遂に訪れた全幕主演だ。
「しばらくケガで踊っていなかったし、私でいいのかなという不安は正直ありました。ただ友佳理さんが『キトリをやらせたいとは思っているけど、映理子的にはどう思う?』と言ってくださって、ちょっと考える時間をくれたんです。私自身やっぱり挑戦したいと思ったし、これを乗り越えたら強くなれる気がしたので、『やらせてほしいです』と伝えました」
パートナーはプリンシパルの宮川新大。『ラ・バヤデール』、『イン・ザ・ナイト』でペアを組み、相性の良さは立証済み。
「とてもフレンドリーに練習に付き合ってくださって、私の意見も聞いてくれる。頼もしく優しくて、いつも助けてもらっています。新大さんは足のラインがとてもきれい。私も新大さんを見習って、足先で語れるようになれたらと思っています」
主演の6ペア中、最年少の若手ホープとして、どんなキトリを目指すのか。
「1幕の広場のシーンではおてんばで、はつらつとした町の人気者として、最後の結婚式のシーンは落ち着いた大人なキトリにしたいです。ドン・キホーテの理想のお姫さまであるドゥルシネア姫とはまた違った上品さを出せたらと思います。この3つのシーンを違った表現でお見せしたいです。形にとらわれ過ぎず、気負い過ぎず、心のままにキトリを踊れたらと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:平賀正明)
プロフィール
中島映理子(なかじま・えりこ)
埼玉県生まれ。4歳でバレエを始める。2015年、パリ・コンセルヴァトワールで1年間学ぶ。翌年から2年半、パリ・オペラ座バレエ団に短期契約ダンサーとして在籍。2019年よりオーストラリアのクイーンズランド・バレエで活躍し、2021年に東京バレエ団へ入団。
公演情報
東京バレエ団『ドン・キホーテ』全2幕
日:2025年11月18日(火)~24日(月・振休)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席15,000円 A席12,000円 B席9,000円 C席7,000円 D席5,000円 E席3,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp
問:NBSチケットセンター
tel.03-3791-8888(月~金10:00~16:00/土日祝休)