
神崎裕也の大人気コミックス『ウロボロス―警察ヲ裁クハ我ニアリー』が初の舞台化。幼少の頃に目の当たりにした事件の真相に迫るべく、密かにタッグを組んで調べを進める2人の男は、やがて警察組織の闇と直面することに……。物語の主人公である2人、刑事の龍崎イクオを室龍太、極道幹部の段野竜也を仲田博喜が演じる。室と仲田に、それぞれが演じる役柄の印象を尋ねると。
室「とくに何もありません(笑)」
仲田「あ、その感じでいいんだ(笑)。気が楽だなぁ」
室「これがいいか悪いか分からないんですけど、僕はあまりイメージを固めずに稽古に臨むようにしているんです。もちろん最低限、作品のベースは頭に入れていきますが、自分の中で先に固めてしまうとよくないなという考えがあって。とくに『こうしよう、ああしよう』とは思わず、役に対して先入観を持たずに、本読みや稽古場で感じたものを大事にしたいと思っています」
仲田「じゃあ、台本はあまり読み込まず?」
室「サッと目を通して、話の内容を頭に入れているという感じですね」
仲田「前から、そういう形でやっていたんですか?」
室「最初の舞台のとき、自分の頭の中で役や演じ方をあれこれ考えて準備して行ったら、稽古でそれが全部ひっくり返ったんです。今はもちろんその理由が分かりますが、当時は『(自分のやり方は)違うんや』と衝撃でした。また、初めての外部公演が錦織(一清)さん演出の『オダサク』という舞台で、錦織さんの演出はその場で起こったことを大事にするので、セリフなどもどんどん変わって。だからガチガチに固めて覚えていると、現場で対応できずノッキングを起こしちゃうんです。だから共演の方には迷惑をかけてしまうかもしれませんが、フワッと覚えるようにしています」
仲田「なるほど。僕は固めたいんですけど、不器用だから固められないまま稽古場に行っています(笑)。室さんの、全体像をフワッと頭に入れておいて役のイメージを固めない、というやり方は相手役や周りの人たちによって芝居も柔軟に変化させられますよね。僕は固まっていない状態で稽古に臨み、ノッキングを起こしながら(笑)、約1か月の稽古を通して生まれてくるものを大事にしていくという感じです。
僕が演じる段野竜也はインテリヤクザで、室さん演じるイクオとの関係性では陰と陽の“陰”。極道という立場上、表立って行動できない側の人間という印象を持ちました。ただ、台本を読んで自分がイメージしていた『このシーンのこのセリフは、この感情で言う』とかって、だいたい覆りますよね(笑)」
室「ははは、間違いない(笑)」
仲田「なんなら、真逆を行ったりしません? このセリフは泣ける感じで言うのかな、と思っていたら怒りの感情で言うとか、トーンを落として言うイメージでいたら、感情を昂らせたほうがいいとか。それが舞台のよさ、面白さだとも思います」
室と仲田は今回が初顔合わせ。コンビとして躍動するにあたり、お互いにどのような印象を持ったのだろうか。
室「今日、仲田さんがスタッフの方と話しているのを少し耳にしたのですが、すごくテンポのいい会話をされていて、(距離を詰めるのが)難しくなさそうやなって思いました」
仲田「ありがとうございます!」
室「役柄はクールですけど、お話ししている感じは関西人のテンポだったので、こんな言い方したらあれですけど『すぐイケるな』って(笑)」
仲田「それはチョロいってこと?」
室「ちゃいますやん(笑)。気さくな方だなと!」
仲田「僕は室さんのこと、写真を見たり、どういう作品に出演されていたのかを少し調べたりさせていただいたんです。写真から受けた印象は“真面目な好青年”でしたが、実際にお会いしたらとても気さくで、頭の回転が速い方だなと思いました。これは嫌われないように、図られないようにしないとなと」
室「なんでそうなるんですか(笑)。タッグ組まなあかんのに」
仲田「僕のいいところも悪いところも含めて、好きになってもらえるよう努めたいと思っています! 個人的には、歳が近いというのが新鮮です。共演する方の歳が近いことがこれまであまりなかったので、すごく楽しみ。この機会にぜひ、友達になってください!」
室「ぜひぜひ!」
本作の脚本・演出を担当するのは、林明寛。俳優として活躍するのみならず、近年は舞台の脚本・演出も手がけ、ドラマティックな作品作りに定評がある。
仲田「僕は林明寛と同い年なんですよ」
室「そうなんですね。僕、アッキーさんが演出するというイメージが全くなくて。一度舞台で共演して以来で、そのときはアッキーさん、ずっとふざけていたから」
仲田「うん、そうでしょうね(笑)」
室「だから“面白い人”っていうイメージ(笑)。そんなアッキーさんが演出されるので、楽しく賑やかな稽古場になるんじゃないかなと思っています。仲田さんはアッキーさんの演出を受けたことはありますか?」
室「僕は1回、受けました。そのときは朗読劇で稽古期間が短かったので、今回はまたちょっと違うのかなと思うけど……。怒ることはまずなく、稽古場の雰囲気がめちゃくちゃいい。そして彼自身が役者もやっているからこそ、役者の気持ちを汲んでくれる。演出としてやりたいプランを推すだけではなく、役者側からのアプローチも受け入れてくれたのが印象に残っています。演出の仕事のときは意外と真面目なんだな、と思ったかな」
室「へぇー!」
仲田「あとは、飲みに行く(笑)」
室「出た! そこは変わらずなんですね(笑)」
仲田「彼もかなり多忙だろうからどうなるかは分からないけど、今回も行けるんだったらしょっちゅう行きたいなと思っています。室さん、お酒は?」
室「はい。すごく飲むわけではないですが、賑やかな場が好きなので!」
仲田「飲みに行く余裕があればいいけどね。いや、でも余裕がなくても行きそうだな(笑)」
室「稽古は稽古、オフはオフで区切るのも大事ですよ! 作品がシリアスなトーンだから、ずっとそれだけだと苦しくなりそうじゃないですか」
仲田「みんな、何かしらだいぶ抱えちゃっていますからね(笑)。前に演出を受けたときから時間が経ち、彼も色々な経験を重ねているので、一皮剥けた演出家・林明寛を見られるんじゃないかと期待しています。ただ、タメだから演出を受けるのがこっぱずかしいところもあって」
室「そうか。僕にとってアッキーさんは2つ年上で、やっぱり先輩というイメージが強いんですよ」
仲田「まぁ、きっとアイツは『楽しみだなー』ぐらいしか思っていないと思うけど。ハッピー野郎なので(笑)」
室「あはは!」
同世代の俳優たちと演出家を軸に展開される、スリリングで骨太なドラマに期待は尽きない。最後に、稽古や本番に向けて目指すこと、やっていきたいことを聞いた。
仲田「ドラマ版『ウロボロス』を超えたい。観たらやっぱりすごく面白かったので。ドラマ放映からだいぶ時間は経ちましたが、この舞台も原作ファンの方々に楽しんでもらえるものにしたいなと思います。稽古を重ね、自分たちにしかできないものが生まれると思うので、唯一無二の『ウロボロス』になるはず。
それから、かなり細かい話になりますが、竜也にはタバコを吸うシーンがあるんです。僕はタバコを吸わないので、所作をマジでやらなあかんなと思っていて。(と、タバコを吸う仕草をやりながら)そもそも、右手なのか左手なのか……」
室「寿司食べてるんですか(笑)」
仲田「違うから(笑)! 原作ではカッコいい吸い方をしているので、やっぱりカッコよさを目指したいと思っています。そもそも、タバコのシーンがあるのか分かりませんが(笑)」
室「僕は稽古終わり、行きたい人でご飯に行けたらいいなと思っています。さっきもお話ししましたが、賑やかな場が好きなんです。稽古は稽古でちゃんとして、プライベートはプライベートで楽しみたい!」
仲田「そこ、推すなぁ(笑)」
室「ご飯に行ったりすることでも、この座組を大事にしたいです。何の心配もありませんが、やっぱり稽古場は明るく賑やかな場所であってほしい。作品の内容は重いですが、やるからには“楽しく”をモットーに向き合いたいと思っています」
(取材・文:木下千寿 撮影:友澤綾乃)
※シアター情報誌「カンフェティ」11月号・電子版では、室龍太さん&仲田博喜さんのアザーカットも掲載!
プロフィール
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室 龍太(むろ・りゅうた)
1989年5月25日生まれ、京都府出身。2003年に芸能界へ入り、さまざまなステージを踏む。2004年、『DREAM BOY』にて初舞台。以降、舞台を中心に活躍し、主演も多く務める。近年の出演作に、『ムロムカイ』、『あなたに会えてよかった』、キ上の空論『人骨のやらかい』、『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』Vol.4など。
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仲田博喜(なかだ・ひろき)
1987年10月17日生まれ、大阪府出身。ユニット「男劇団 青山表参道X」での活動を経て、俳優として舞台をベースに多数の人気作品に出演を重ねる。近年の出演作に、舞台『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』、『99』、DisGOONie presents Vol.15 舞台『恋ひ付喪神ひら』など。
公演情報
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舞台『ウロボロス―警察ヲ裁クハ我ニアリ―』
日:2025年10月24日(金)~11月3日(月・祝)
場:CBGKシブゲキ!!
料:11,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.ouroboros-stage.com
問:ポニーキャニオン カスタマーセンター
https://www.ponycanyon.co.jp/support/inquiry
(平日10:00〜13:00・14:00〜17:00
/土日祝・会社の指定日除く)