朗読と歌、生演奏、パフォーマンスとダンスで心情深く描く 斬新で、新しい感覚を味わえるリーディングミュージカル

朗読と歌、生演奏、パフォーマンスとダンスで心情深く描く 斬新で、新しい感覚を味わえるリーディングミュージカル

 昨年9月に上演され、高い評価を得たReading Musical『BEASTARS』が9月28日から東京・大阪で再び上演される。
 本作は、板垣巴留の同名漫画を原作に、脚本・作詞を西森英行、演出を元吉庸泰、作曲・音楽監督を和田俊輔が担当して作り上げるリーディングミュージカル。肉食獣と草食獣が共に暮らす世界で全寮制の学校に通う動物たちの物語が、〈歌い手・読み手〉と〈パフォーマー〉によって綴られる。
 “episode 1”と冠した今回の公演に出演する、ハイイロオオカミ ジュノ役の〈歌い手・読み手〉美弥るりかに、本作への意気込みや役作りについてなどを聞いた。


―――ご出演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。

 「2024年の前回公演が発表されたときは、“リーディングミュージカル”という言葉をあまり聞いたことがなかったですし、先輩である凰稀かなめさんがご出演されていたこともあり、『これはどんな舞台なんだろう』とすごく興味を持ちました。ただ、スケジュールの都合で公演を観に行くことはできなくて。なので、今回、お声がけをいただいたときに、『あのときに観たいと思った作品だ!』とすごく嬉しく思いました。
 その後、原作も拝読しまして、見事にハマりました(笑)。動物たちを主人公にしていますが、人間へのメッセージがたくさん込められている、深い作品だなと感じました」

―――前回の公演は映像でご覧になられたそうですが、ご覧になった率直なご感想は?

 「斬新で、新しい感覚を味わえる作品だなと思いました。私が演じるのは、〈読み手・歌い手〉ですが、自分の発する言葉と〈パフォーマー〉の方で1つの表現を作り上げるというのは初めての体験なのですごく楽しみですし、〈パフォーマー〉の方とお互いに寄り添って作り上げていけたらと思います。
 今、私は原作を読んでいるのですが、それぞれのキャラクターにどんどん愛着が湧いているんですよ。一喜一憂しながら読んでいるので、お客さまと同じように、それぞれのキャラクターがどう表現されるのかワクワクしています。それぞれに全く違う魅力があって、肉食動物、草食動物でも背負っているものがまた違うというのもこの作品の面白さです。大切な人たちとの関係をどう築き上げていくのかが繊細に描かれていて、心が揺さぶられる物語になっていると感じました」

―――今の時点では、美弥さんが演じるジュノはどのようなキャラクターだと考えていますか?

 「彼女は、主人公のレゴシと同じハイイロオオカミでありながら正反対の性格で、生まれ持った華やかさと人を惹きつけるような魅力があり、自信にあふれているキャラクターです。レゴシの後輩なので、演じる上では初々しさも必要。彼女の恋心も可愛らしく、かつ華やかに表現できたらいいなと思っています」

―――ジュノと美弥さんの共通点はありますか?

 「正反対のタイプだと思います。私は、挫折したり心が折れてしまった経験があって今の自分がありますが、彼女は周りから影響を受けない強さがあります。そういう意味でも、私とはあまり似ていないかもしれませんが、だからこそ自分にないものとしてしっかりと表現していきたいなと思います」

―――先ほど、「それぞれに全く違う魅力がある」とおっしゃっていましたが、ジュノ以外ではどのキャラクターが印象に残っていますか?

 「やっぱりレゴシです。応援したくなる要素に溢れたキャラクターだと思います。レゴシは、過去のいろいろな出来事から肉食であることに葛藤を持っています。そんな彼が人々を助けたいという正義感で肉食の欲を抑えつけながら、いろいろな出会いによって強くなっていく。その成長のステップがすごく魅力的だと思います」

―――先日、歌稽古も行われたそうですが、楽曲の印象を聞かせてください。

 「美しくて素晴らしい楽曲ばかりですが、難しいです(苦笑)。美しさの中に繊細さがあるので、それを表現するためには歌い込まなくてはいけないなと感じています。(作曲・音楽監督の)和田さんとは『TRUMP』シリーズでもご一緒していて、楽曲の美しさには全幅の信頼を置いていますし、和田さんの楽曲が大好きなので、また歌えることができて嬉しいです」

―――〈歌い手・読み手〉として朗読と歌唱で物語を伝えることの楽しさと難しさについては、今はどうお考えですか?

 「ジュノもそうですが、ここ1年くらい、これまで演じたことのない女性らしさを表現する役が続いているので、まさに声色の使い分けを学んでいるところです。声帯も筋肉なので可愛らしい声をずっと使っていると、いつの間にかその声が出しやすくなるんですよ。今回は、ジュノの1年生らしい初々しさを声を使って繊細に表現できたらと思っています」

―――共演者の方々の印象を教えてください。

 「(取材当時)実はまだお会いできていないんです。梅田さんとは以前、一度、コンサートでご一緒しているのですが、そのときはそれほどお話できなかったので、今回はたくさんお話しできるのではないかと楽しみにしています。他の皆さんとは初めましてなので、楽しみでもあり、緊張でもあります」

―――レゴシを演じる三浦さんの印象は?

 「この世のものとは思えないほど美しい方で、美しいお芝居をされる印象があります。これまで何度かお芝居を拝見していて、そのときにたまたまそうしたお役だったということもあると思いますが、色気と際立った美しさがあり、三浦さんにしか出せない空気をまとっていらっしゃいました。なので、今回、ご一緒できて嬉しいです。
 レゴシは、その生い立ちに影があるので、三浦さんの持っていらっしゃる雰囲気はきっとすごく合うのではないかと思います。三浦さんは色で言うと紫や濃い青という印象です。原作を読めば読むほど合っていらっしゃるなと思いました」

―――ルイ役の崎山さんはいかがですか?

 「ルイには、隙のない美しさ、洗練された完璧さが合って、そこが魅力だと思います。崎山さんの今回のビジュアルを拝見したときに、まさにルイだと思いました。張り詰めた緊張感がルイのかっこよさだと思うので、きっとすごく合っていらっしゃるんだろうなと勝手な妄想をしてしまいました(笑)」

―――演出の元吉さんとも今回が初めてですね。

 「これまで元吉さんが手掛けられたさまざまな作品を観させていただきましたが、どの作品も繊細で美しい印象があります。この作品は、生と死の隣り合わせであるという張り詰めたものの上にある明るい物語なので、陰と陽の両方を表現する必要がある作品だと思います。そういった意味でも元吉さんの演出はとても合うのではないかと思っていました。ご一緒できると伺い、すごく嬉しいですし、お稽古場でどんな演出をされるのかすごく楽しみにしています」

―――本当に今回は初めての方ばかりの現場ですね。それもまた新鮮ではないですか?

 「そうですね。ただ、どの現場も初めましての方が多いので(笑)。私は人見知りなので、宝塚歌劇団を退団してすぐの頃は顔合わせでも緊張してしまっていたのですが、毎回、初めての方ばかりなので、最近は“どうにかなるだろう”精神が大きくなってきました。人見知りだからといって躊躇していると、コミュニケーションがなかなか取れないですから。やっぱり良い作品を作るためには、コミュニケーションがとても大事だと思うので、限られた時間でご一緒するのに時間がもったいないと思うんです。
 最近の仲良くする秘訣は、最初から自分の失敗談を話してしまうということです。宝塚出身と言うとしっかりしている人と見られることが多いので、自分の抜けているところや緩い人間だということを自分からさらけ出すと、お相手も自分のことを話しやすいと感じてくださるように思います」

―――ところで、劇中でルイが自分たちの世界とそこで生きる動物たちの信念について話すシーンが登場しますが、美弥さんにとって俳優としての信念とは?

 「自分以外の方が演じた方が良いのではないかと思う役は引き受けないことにしています。やはり自分が演じる意味のある役を演じ続けることが1番大事だと思いますし、自分がその役に適していると感じられないとその疑問がずっと残ってしまい、役にも作品にも失礼になってしまうと思います。なので、自分はこの役の魅力を伝えられると素直に思えるものと出会っていきたいという気持ちを大切にしています。
 それと同時に、何歳になっても前進していたいです。足踏みしていないかを常に自分に問いただしているんですよ。だからこそ、作品選びの際には、自分が前進できるかとかいうことも大事にしています」

―――確かに、美弥さんのご出演される作品はすごく幅広いですよね。こんな役にも挑戦されるんだと驚かされることも多いです。

 「ありがとうございます。なるべくジャンルも絞りたくないとも思っています。例えば、グランドミュージカルにも挑戦させていただきつつ、原作が漫画やアニメの作品にも精力的に出演していきたいです。今回は、新しい形のリーディングミュージカルであるというところにも惹かれました。観に来てくださる方が、毎回、新鮮さを感じて劇場に足を運んでいただけたらという気持ちが大きいです」

―――本作では動物たちが通う学園生活が描いていますが、美弥さんの学生時代の思い出もぜひお聞かせください!

 「宝塚音楽学校時代は、自分で休憩を見つけて自分のペースで進むタイプでした。それ以前からクラシックバレエを習っていたのですが、その練習があまりにもハードだったので、宝塚音楽学校に入ってからの方が気持ちに余裕ができたんです。なので、自分の中で休憩時間をきちんと取って、練習しすぎないようにしていました(笑)。
 性格的なものもあって、仲が良い同期なのに、試験などで順位がつけられるというシステムにもあまり向いていなくて。頑張りたい気持ちはありつつも、ガツガツしているところは見せたくないという複雑な気持ちが入り混じってしまい……。なので、同期からしたらすごくのんびりしている人に見えていたと思います(笑)」

―――ありがとうございました! 最後に公演に向けての意気込みと読者にメッセージをお願いします。

 「私自身も大ハマりしてしまったほど、深い物語を描いた漫画をリーディングミュージカルとして上演させていただきます。原作とともにこの作品も楽しんでいただいても、原作を知らなくても楽しんでいただけるストーリーです。ぜひ新しい感覚のリーディングミュージカルを味わっていただけたらと思います。そして、頑張って初々しさを演じている私も観ていただけたらと思っておりますので、ぜひ劇場にお越しいただけたら嬉しいです」

(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美 スタイリスト:小林洋治郎)

※本インタビューは、シアター情報誌「カンフェティ」2025年10月号掲載の記事を、関西版Vol.11発行に伴い、ロングインタビューとして再編集したものです。

 

自分を主人公にするなら、どんなストーリーにしますか?

「自分が生まれてきたことに意味を見出せない主人公が色々な人の心に触れて、心の温かさを少しずつ知りながら成長していく物語を演じてみたいです!」

プロフィール

美弥るりか(みや・るりか)
茨城県出身。2019年6月、宝塚歌劇団を退団。退団後は独自の個性を生かし、舞台だけでなくファッションやライブなど、様々なフィールドで活動の幅を広げている。近年の主な出演作に、舞台『キングダム』、a new musical『ヴァグラント』、舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』、『ラヴ・レターズ ~ 2024 Summer Special~』、ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』、舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』など。また出演のみならず、2024年7月には自身でのプロデュース公演『ビューティフル・サンデイ』を成功させている。

公演情報

Reading Musical『BEASTARS』episode1

【東京公演】
日:2025年9月28日(日)~10月2日(木)
場:シアター1010

【大阪公演】
日:2025年10月11日(土)~13日(月・祝)
場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

料:10,200円(全席指定・税込)
HP:https://rm-beastars.com
問:Reading Musical『BEASTARS』2025製作委員会 mail:rmbeastars@gmail.com

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