串田和美による新脚色 KAPITALの衣裳も見どころ ユーモアと皮肉を織り交ぜ、農民たちを生き生きと描く

串田和美による新脚色 KAPITALの衣裳も見どころ ユーモアと皮肉を織り交ぜ、農民たちを生き生きと描く

 田舎の酒場を父と2人で切り盛りをする、美人で勝気な娘・ペギーン。ある晩、「父ちゃんを殺しちまった」と語る謎の男が現れて――。アイルランド文芸復興運動の中で生まれた J・M・シングの喜劇『西に黄色のラプソディ』。これまで5度にわたり本作を手掛けてきた串田和美が、今回新たな脚色を施し、渾身の“狂詩曲”として立ち上げる。

 「とにかく本が面白かった」と話すのは、今回初めて串田の演出を受ける那須凜。

那須「1つの酒場で起こる話なんですけど、それはきっと村に1つしかない酒場で、外側にはアイルランドの広大な土地が広がっている気がするんです。私の役も村の人たちも生活に退屈している。そんな時に彼がやって来たことで、人生や生活が大きく変わるのではないかという希望が生まれる。その一方で、希望の裏に村社会の孤独のようなものも見え隠れして……アイルランドの香りが強く感じられました。これを串田さんがどう演出されるのか、楽しみです」

 串田和美の息子で、21年から俳優活動をしている串田十二夜にも、作品の感想を聞くと。

串田「僕が初めてお芝居をした作品で、4年ぶりの上演。当時は演劇祭の中の1本で、緊張と楽しさで、正直あまり記憶がないんですが、今回は噛み締めていきたいです。作品について調べる中で、アイルランド出身の名優が演じてきたこと、初演時に地元のことを揶揄われたと思ったアイルランドの人たちが暴動を起こしたことを知りました。そういうところも含めて興味深いです」

 演劇一家で育った2人。俳優になろうとは思っていなかったそうだが、演劇をはじめたきっかけを尋ねると。

那須「高校の文化祭で劇の演出をやった時に、『那須さんって、こんな才能があったんだね』と先生に言われたことが嬉しくて」

串田「自分が演劇をやる夢を突然見て。翌朝、父から『ワークショップだけでも参加しないか?』と言われたことがきっかけです」

 最後に、読者へ向けてメッセージをもらった。

串田「本作が上演されたアイルランドの劇場も、今回の吉祥寺シアターも、街の中にあって。“生活”が感じられていいなと思っています。笑えて、気軽に観られて、でもちょっと引っかかるものもあって。ぜひ楽しみにしていてください」

那須「U-18など、チケットの種類が多いですし、独特な言葉回しの芝居なので、演劇を勉強したい若い人はぜひ。また、衣裳スタイリングを担うのは、私も大好きなブランド・KAPITAL。ファッション好きの方も楽しめると思いますよ」

(取材・文:五月女菜穂 撮影:立川賢一)

 

自分を主人公にするなら、どんなストーリーにしますか?

那須 凜さん
「自分が主人公の物語を書くなら、どうでもいい俳優の日常を描きたいです。
 稽古に勤しんで、舞台に立つ。その合間に俳優仲間と安い飲み屋で芝居のことをあーでもないこーでもないと喋り倒して、近い年の友達はどんどん家庭を持ったり仕事の話をしていて、なんだか置いていかれたような気分になって、お芝居がない時はしょんぼり落ち込む。それでも舞台に立ってお客様に拍手を貰えば、何もかもわすれて頑張れる。
 そんな物語。共感されるかわかりませんが、私が主人公の芝居だと、そんなことになりそうです」

串田十二夜さん
「役を与えられたいという願望が強いのか、どうしてもどんなストーリーがいいかは思いつかないのですが、他の言語での芝居や映画の舞台版など、やったことがない役にも挑戦していきたいです。あとは、バブルを知らないので、桁違いにお金のかかったとっても派手な舞台にも憧れがあります!」

プロフィール

那須 凜(なす・りん)
1994年10月12日生まれ、東京都出身。2015年、劇団青年座に入団。以降、舞台を中心に活躍。2022年、『アルビオン』、『春の終わりに』、『ザ・ドクター』で第29回読売演劇大賞 杉村春子賞を受賞。

串田十二夜(くしだ・じゅうにや)
1999年2月19日生まれ、東京都出身。2021年、舞台『西の人気者』で本格的に舞台デビューし、俳優活動を開始。最近の出演作に、はえぎわ『幸子というんだほんとはね』(ノゾエ征爾 作・演出)、フライングシアター自由劇場 第5回公演『そよ風と魔女たちとマクベスと』など。

公演情報

フライングシアター自由劇場 第6回公演
『西に黄色のラプソディ』

日:2025年10月20日(月)~27日(月)
場:吉祥寺シアター
料:一般7,800円
  ペアチケット[2枚1組]15,000円
  U-30[30歳以下]4,500円
  U-18[18歳以下]2,000円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.k-jiyugekijo.com
問:フライングシアター自由劇場
  mail:flyingtheatre.jg@gmail.com

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