4姉妹が抱える悩みや葛藤を描いた名作が、新たなキャストで再演 「ある家族の物語を覗き見する感じで観て欲しい」

4姉妹が抱える悩みや葛藤を描いた名作が、新たなキャストで再演 「ある家族の物語を覗き見する感じで観て欲しい」

 現代家族劇の傑作として何度も上演されてきた舞台『ゼブラ』が新たなキャストを迎え、8月に上演される。母の死期を迎え、久しぶりに集まった四姉妹とその家族が、それぞれ抱え続けてきた思いや葛藤が交錯する、愛と憎を描いた濃密な会話劇。
 物語の中心人物となる4姉妹を演じる中村静香(長女・康子)、ゆにばーす はら(次女・薫)、木﨑ゆりあ(三女・奈央)、佐藤日向(四女・美晴)に話を聞いた。


―――まずは出演が決まった時の心境を教えていただけますか。

中村「過去に何度も上演されている作品ということで、今回初めて参加させていただけてとても嬉しいです。それに、以前共演させていただいた方もいらっしゃいますし、演出の川本成さんとはかなり前に名古屋で一緒にお仕事をしたこともあって、初めて共演者やスタッフの名前を聞いた時はテンションが上がりました」

木﨑「恥ずかしながら、お話をいただくまでは作品自体知らなくて……。でも初めて読んで、すごく面白い脚本だなというのがあって、二つ返事で『出ます!!』と言いました。4姉妹のキャラクターに合うキャストじゃないとしっくり来ないイメージでしたが、配役がわかった時、本当にぴったり合っていて、めちゃくちゃ面白くなりそうだなと思ったので、稽古が今からとても楽しみです」

佐藤「普段ストレートプレイに出演させていただく機会はあまり多くなくて。これまでは女子高生とか若い役が多かったんですけど、今回は今の年齢に近い役で、しかもストレートプレイでというのが、ほぼ初めての形になります。殺人事件といったような大きなものが起きる内容ではなく、日常を切り取って観ていただく作品を舞台で表現するのは難しいと私は感じているので、丁寧にならなきゃという気持ちでいます。
 川本さんとは昨年舞台で共演して、打ち上げの時に『今度俺が演出する舞台に出て』と言っていただいて、社交辞令だと思いきや、ちゃんとオファーしてくださって、あっ、本当に誘ってくれるんだなと思いました(笑)」

はら「本格的な舞台は初めてで、コントですらあまりコンビでやらないのに、ましてや舞台の話なんて本当に来ないので、まずは本当に私で合っているかどうか、マネージャーに確認してもらいました。4姉妹の次女役というので、少し不安はありますけど、周りの方は皆さん実力派ばかりなので、なんとかカバーしていただけないかなという気持ちです」

―――このインタビューの前日に台本の読み合わせがあったと伺いましたが、台本を読んでみてどのような感想を持たれましたか。

中村「お話自体が白黒つかず、はっきりとした答えを提示してないし、あからさまなハッピーエンドで終わっているわけでもなくて。シーンに込められた思いや、どれだけ気づけるかみたいなところは、これから稽古をしていきながら、周りの方々と相談しながら作っていきたいです」

佐藤「私たちが演じる4姉妹は女家系で育っていて、もちろん男性とのシーンもありますけど、私たちサイドから見ると、あまり男性の影を感じないというか。男性とうまくコミュニケーションが取れない子がいたり、この子が結婚できるんだみたいな感じになっていたりするところが4姉妹の魅力だと思います。何度も再演されている中で、自分が積んできた経験によって役者のセリフの受け取り方が全然違うと思うので、この4人だからこそ出来る、いい意味で変な“間”や“空気感”みたいなのが生まれるんだなと読み合わせの時に思いました」

木﨑「家族ならではの空気感が印象に残りました。一緒にいるしかないからこその気まずさや空間をどう表現できるかはすごく楽しみです」

はら「ポスターにも書いてある『言えなかったこと。言わなきゃよかったこと。それでも言ってしまうのは、きっと、家族だから』はどの部分に当てはまるのかは、きっと舞台を観ていないとわからないので、絶対に観て欲しいです」

木﨑「冷たい態度を取れるのも家族だから出来ることってあるじゃないですか。しかも女性しかいないというのが、すごく絶妙な空気が生まれるんだろうなというのはありますね」

中村「家族だからこそ一筋縄ではいかないところもあるし、白黒つけられることばっかじゃないというグレーなところがあるからこそ、『ゼブラ』というタイトルなのかなと感じます。きっとキャストが違えばまた違った見え方になるだろうし、今回集まったキャストさんだからこそ出る空気感をどんどん染み込ませて作っていきたいです」

はら「20年続いている作品なので、演者によって空気が変わると思いますし、途中から義理のお兄さんや婚約者なども現れて、家族が増えた上でのストーリーがめっちゃ面白いなって思いました」

佐藤「遠回しじゃないけどはっきりさせ過ぎちゃうという変な気遣いやそこまでしなくていいんじゃないみたいな気遣いがある女性側と、“ここははっきりさせたい”という男性側による『白黒はっきりさせるのか? させないのか?』というシチュエーションが何度もあって、そこが魅力になっている作品だと思います」

はら「ストーリーとして、世代を選ばないですよね」

中村「4人の個性がバラバラで、まあまあひねくれてそうなった4人だなと思いました。逆に4人とも似ているなと読み合わせで感じたのは、全員男の人を選ぶセンスがないところです」

はら・木﨑・佐藤「(笑顔で)あぁ~」

中村「今回登場する男性陣がいわゆる“現代っぽいダメな男”で、お姉ちゃんを見て学んだつもりでも、好きだからしょうがないじゃんみたいな形で結果的にダメな男を選んでしまうところは、あぁ姉妹だなって感じてしまいます」

佐藤「4人が4人とも“自分が1番可愛がってもらってない”と思っているところが不思議で面白いですよね」

―――今回皆さん個性ある4姉妹を演じられますが、演じる役とご自身とここが似ている部分などありますか。

中村「康子は長女ということもあって、きっといろいろと耐えていると思うんです。母の死期も近いし、旦那さんのこともあるし。実は、私も溜め込み癖があって一旦口に出す前に考えるタイプですし、自分の中にある感情を言語化するのがやや苦手ということもあるので、抱えてしまうという点では似ているかもしれませんね」

木﨑「私は三女の奈央を演じますが、初めて台本を読んだ瞬間、『当て書きなの?』と思ったくらい私と似ていると思いました。私自身、2人兄妹の末っ子ですけど、曲がったことが嫌いで、自分が信じていたことが仮に違っていたとしても、信じた自分を曲げられないタイプで、奈央はちょっと生きづらいというか、解消できない感じに共感してしまって、台本を読み終わったら思わず号泣しちゃいました」

中村・はら・佐藤「え~!!」

木﨑「本当に気持ちがわかり過ぎちゃって、私がその立場だったとしても、絶対奈央と同じことをするなというぐらい、似ている役だなと思いました。あと奈央のイメージとしては『次女っぽい三女』で、きっと奈央自身が康子の次にしっかりしていると思っているくらいしっかり者という印象でした」

はら「だから本読みの時に『私、三女っぽいですよね』って言ったんだ。私が演じる次女の薫役はどちらかと言えば『三女っぽい次女』で、頼れない姉っぽい感じは似ていると思います」

中村「私は本読みの段階で、はらさんのキャラクターと薫がめちゃくちゃマッチしているように感じました」

はら「本当ですか!?」

中村「多少息苦しくなるシーンもあるので、薫ならではの“ゆるさ”は必要になってくると思います」

はら「息抜きゾーンとしてアピールできたらいいですね」

佐藤「私はよく『兄弟いそう』と言われるんですけど、実際は1人っ子で、親の愛を一身に受けて育ってきたこともあって、台本を読んだ時に、4姉妹だとそりゃ分散するよなと思って。仮に姉妹の誰かが金賞を取ったら、きっとお母さんは褒めるし、選ばれなかったら人にとっては劣等感が生まれると思いますが、そういうのを感じたことがないままここまで育ってきてしまったので、共感はするけど、似ている部分はあまりないです。きっと美晴は多種多様な姉が3人いるので、世の中をうまく生きていく術を持っていて、それをうまく使っている姿を見ていると、4人の中で一番空気が読める子かなというのはありますね」

―――インタビュー前に、チラッと実際の兄弟構成を聞いてみたんですが、中村さん、はらさん、木﨑さんが2人兄妹の末っ子で、佐藤さんが一人っ子ということで、全員姉妹がいないんですね。

木﨑「私、姉妹は憧れます。メッチャ楽しそうですし」

はら「姉妹で協力しているところを見ると羨ましく思うことはあります。今回4姉妹の育ち方が舞台で観られるのは面白いと思いますし、台本を読んで末っ子の美晴がこう育つんだというところも面白かったです」

佐藤「本読みの時にちょっと共通した空気を感じたのは、4人とも姉妹がいないからというのもあったかもしれませんね」

―――本作の見どころや注目ポイントをお聞きしたいなと思います。

中村「観に来られる方の年齢層や性別によってきっと視点は全然違うし、4姉妹のどの役に視点を合わせるかによっても、共感できる部分が変わってくると思うんです。白黒つけられないことばかりだし、家族だからこそ上手くいかないところの気持ち悪さを感じ取るかもしれませんが、私自身いい意味で“考えてもらえる余白”をいっぱい残したいなと思っていて、『そういう気持ち悪い隙間ってあるよね』と思ってもらえたら嬉しいです」

佐藤「この台本には2回どころか3回、4回と同じ言葉が出てきます。演者側からしたらセリフの音の出し方が難しいんですけど、用意されている道筋通りに読んだらとても面白いので、その部分は見どころだと思っています。あと私たちよりも上の世代って、結婚式よりも葬式に参列する方が多くなると思うんですけど、『こういう明るい葬式もあるんだな』という感じで観てもらえると、気持ちが楽になれるところが本作の見どころだと思います」

木﨑「うまくいっている家族も、うまくいっていない家族も、やんわりずっとうまくいっている、やんわりうまくいっていないみたいな空気が多分流れていて、結局はぶつからないと何も解決しないというのがあると思っていて、この作品はずっと止まっていたわけじゃないけど、止まっていたように近しいぐらい進んでいなかった家族がぶつかって、ある出来事をきっかけにホンのちょっとだけ進むみたいなところが見どころだと思います。
 全然進んでいないように見えて、実はすごい大きな1歩だったりする出来事で、決して特別なことではないけど、当たり前の中に潜んでる、みんなが知っている時間みたいなのがリアルに観られるところに注目して欲しいです」

はら「大人になっているけど、知らないことめちゃくちゃ多いという生活が結構あって、4姉妹が家族の死という初めての出来事をどう迎えるかというところと、ので、4姉妹だけでなく周りの演者のストーリーにもフォーカスしてもらえると、『この人も人生生きてきて、この場面が初めてなんだな』という部分がめちゃくちゃあって、とても面白いと思います」

―――先日発表されたビジュアルでは、喪服姿の4姉妹が鯨幕に挟まっているというインパクトのある1枚に仕上がっていますが、撮影中のエピソードなどあったら教えていただけますか。

中村「実は4人バラバラで撮影しました。でも鯨幕に挟まっているところはCGではなく実際に挟まれているんです」

はら「狭いところで撮影しました。あと着替る場所も結構狭かったです」

一同「(笑)」

はら「スタジオ入りした時、ちょうど谷内さんがいらしていて、ちょっと気まずかったです(苦笑)」

佐藤「ビジュアル撮影だけでなく、物販の撮影もしましたが、喪服の私たちが物販で売られる経験は初めてです。しかも笑顔で撮るようなテンションでもないですし、私19歳の時にウエディングドレスの写真の物販を出しているので、冠婚葬祭すべて揃った形になります」

一同「(笑)」

―――先ほど佐藤さんが「よく『兄弟がいそう』と言われる」とおっしゃっていましたが、中村さん、はらさん、木﨑さんは何て言われることが多いですか。

中村「私は長女に見られやすくて『弟か妹がいそう』とは言われます」

木﨑「中村さんはしっかりしているイメージがあるので、よくわかります」

はら「周りから一番言われるのは『1人っ子』ですけど、『実は2人兄妹です』と言ったら納得される感じが多いですね。1人っ子っぽく見えるけど、でもなんかそうでもないような感じで。あと兄弟がいたとしても姉妹じゃないとかもよく言われます」

佐藤「私、最初に『一人っ子』と言われたことは一度もないんです」

はら「本読みの段階で、絶対兄がいると思っていました」

木﨑「私は結構当たることが多いです。『お兄ちゃんがいそう』って。でもよく言われるのは、私がすごいガサツで男っぽいとこがあるから、弟っぽいみたいな言われることがあって、『妹だよね』より『お前は弟だよな』みたいなのを言われることが多いです」

はら「本読み前の段階では、木﨑さんは“超女性”というイメージでしたが、本読みが終わった時は、絶対男兄弟がいると思いましたね。今回のインタビューで答え合わせができました」

木﨑「はい、そうなんです」

一同「(笑)」

―――最後にこのインタビューをご覧になっている方に向けてメッセージをお願いします。

はら「舞台を観たことない人でも面白いと思うし、最低2回は観ちゃうくらいの舞台になっています。またこれまで何回もゼブラを観劇している人は、演者が変わって、どれだけそのキャラクターの個性が違うのかというところに注目して観ていただけたらと思います。初舞台の“女優”はらを観に来てください」

佐藤「ご来場いただく皆様にとって、身近ではないものの、いずれ経験する方が多い題材になっています。大きなことは起こらないけど、家族の問題や空気感を楽しんでいただきたいですし、ただお客さんとして舞台を観ているではなく、親族として参列している感覚で観劇していただけると、きっと楽しんでもらえる舞台になってるんじゃないかと思います。喪服を着てとは言いませんが、そのような気持ちでご来場いただけたらと思います。心よりお待ちしております」

木﨑「きっと皆さんはいろいろなものを抱えながら生きていると思います。女性の方は4姉妹それぞれが濃いキャラクターで、誰かしらと共感する部分があると思うし、男性の方も、4姉妹以外にも面白い登場人物いっぱいいて、きっと誰かしらと共感してもらえる舞台だと思うので、観ていただいて、ちょっと暖かい気持ちになって、“自分の家族をより大切にしよう”“自分の家族と向き合おう”と思っていただけたら嬉しいです。ぜひ劇場でお待ちしてます」

中村「ある家族の物語を覗き見する感じで観ていただけると、どこかしらの共感ポイントがあると思います。決してすごく暗いお話ではないので、希望を持って作っていきたいです。劇中のやり取りの中で、きっと心地良い間と気持ち悪い間が出てくると思うんですけど、気持ち悪い間の部分の中にもいろいろな思いが詰まっています。そういう部分を感じていただきながら、観ている方に何か刺されば嬉しいです」

(取材・文:冨岡弘行 撮影:平賀正明)

 

もし移住するならどこに住みたいですか?

中村静香さん
「私が移住するならシンガポールです。1年を通して高温多湿なので、寒さと乾燥に弱い私には嬉しいです。お仕事で一度行った時、シンガポールのローカルフードである“カヤトースト”の美味しさに驚きました。ココナッツミルク・卵・砂糖・香草のパンダンリーフを煮詰めて作ったカヤジャムは、日本では味わったことのない美味しさ。また現地で食べたいという憧れが消えません! 街のクリーンを保つために、ゴミのポイ捨てに罰金が課せられていて、至る所にゴミ箱が置かれているのも素敵でした。街並みがキレイで食も気候も合うシンガポールにいつか移住してみたいと思っています!」

木﨑ゆりあさん
「沖縄がいいです! 毎年なんだかんだ1年に1回くらいは足を運んでいて、前に占いに行ったら『沖縄との相性凄くいいから疲れたら沖縄に行きなさい』と言われたので、せっかく移住するなら沖縄に住みたいです! 泡盛は飲めないけど、なんくるないさ!」

佐藤日向さん
「とにかく暑いところから逃げたいので現状はフィンランドに移住したいです。誕生日がクリスマスに近いこともあり、クリスマス一色になる街に一度移住してみたいです! でも食事は日本食が好きなので難しいところではあります……(笑)」

ゆにばーす はらさん
「北海道です。動物が好きなのですがまだ旭山動物園に行ったことがないので、行けるように北海道に住みたいのと、北海道に住んでいる人はキツネを見慣れていてそれに憧れているので、野生のキツネを見てみたいです。もし住んだら何匹か近所に来るキツネを把握して、野良猫みたいな感覚でキツネを家から眺めたいです」

プロフィール

中村静香(なかむら・しずか)
1988年9月9日生まれ、京都府出身。主な出演作に、ドラマ『法医学教室の事件ファイル』シリーズ 伊吹南役、『緊急取調室』シリーズ かやの役、タクフェス 第12弾『夕 -ゆう-』高橋薫役など。

木﨑ゆりあ(きざき・ゆりあ)
1996年2月11日生まれ、愛知県出身。主な出演作に、WOWOW 連続ドラマW 東野圭吾『さまよう刃』村越優佳役、舞台『熱海殺人事件』CROSS OVER 45 水野朋子役、『パンセク♡』主演・緒方景子役など。

佐藤日向(さとう・ひなた)
1998年12月23日生まれ、新潟県出身。主な出演作に、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』シリーズ 星見純那役、『Cutie Honey Emotional』シリーズ ジャンパーハニー役、舞台『ウマ娘 プリティーダービー』~Sprinters’ Story~ ケイエスミラクル役など。

ゆにばーす はら
1989年11月7日生まれ、神奈川県出身、男女お笑いコンビ「ゆにばーす」のボケ担当。M-1グランプリ2017・2018・2021ファイナリスト。本作が舞台初出演。

公演情報

舞台『ゼブラ』

日:2025年8月20日(水)~24日(日)
場:シアターサンモール
料:S席[A ~ H列]9,500円
  A席[I列以降]8,500円(全席指定・税込)
HP:https://zebra-stage.com
問:エイジポップ
  mail:agepop.contact@gmail.com

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