
国民的作品として老若男女に愛される、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』。2022年に舞台版が初めて上演され、大好評を博した。そして今夏、舞台に鬼太郎が帰ってくる! 前作に引き続き主演を務めるのは、荒牧慶彦だ。これまで多くの人気作で、考察を重ねて演じる役柄にアプローチし、魅力的なキャラクターを舞台上に生み出してきた彼に、鬼太郎に寄せる想いを聞いた。
―――2022年の舞台『ゲゲゲの鬼太郎』から約3年ぶりに、再び鬼太郎を演じることになりました。まずは2022年の公演で印象に残っていることをお聞かせください。
「前回はコロナ禍の影響で、役者人生で初めて公演期間中に中止となり、後に再開できたものの悔しさが残りました。ですから、またこうして鬼太郎の作品を上演できることを、嬉しく思います。再演ではなく新作ですし、キャストが前回と変わったところもあるので、また新たな気持ちで、たくさんの方に観てもらえるよう頑張りたいです」
―――国民的キャラクターの鬼太郎を、どのように演じたいと考えていますか?
「鬼太郎独自の高くもなく低くもないテンション感や妖しげな雰囲気は、前回わりと掴めたと思うので、そこは残しつつ、新たな物語でも鬼太郎らしさを前面に出していけたらと思っています。
鬼太郎は幽霊族で、人間と妖怪の中立的立場にいます。優しいけれど、ときに残酷なほど公正なジャッジを下すことができる彼が、僕はすごく好きです。多くの方がよく知るキャラクターを演じさせてもらえることに嬉しさとプレッシャーが強くありますが、前作では作品ファンの方も楽しんでくださっているのが分かり、励みになりました。
鬼太郎は、“必殺仕事人”的なポジションなんです。最後に出てきて締めるという役どころで、物語を動かしているのは実は鬼太郎じゃない。そういう立ち位置で舞台に立つのは、役者としては難しさを感じるところではありますが、それが『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観ですから、今回も役割をしっかり果たせたらと思っています。
ちなみに原作では、鬼太郎は少年の背格好で描かれています。年齢は上ですが、幽霊族としてはまだ子どもなので“少年”の姿なんです。舞台版の鬼太郎は、僕の中ではそこから少し青年になっているイメージ。人間のことも妖怪のことも分かりつつ、それでも中立の立場でいたい、という気持ちで演じています」

―――2022年から演じる顔ぶれにも変化があり、今回はねずみ男役に大塚明夫さん、前回は砂かけばばあを演じた浅野ゆう子さんが、鬼太郎と対決する吸血鬼カミーラ役を演じます。
「大塚さんは第一線で活躍されている声優さんで、大塚さんが演じてこられた中に、僕が好きなキャラクターが何人もいます。大ファンだったので、キャスティングを聞いたときは『大塚さんなの!?』と声が裏返りました(笑)。稽古場が楽しみです。あの声で名前を呼んでもらいたいですね! 仲のいい植ちゃん(植田圭輔)や廣野(凌大)がいるので、僕らが得意な殺陣を見せられたらいいねという話をしています。
浅野さんは昔からテレビで拝見していて、今もなお、外見だけでなく佇まいや内面的な部分まで本当に美しい方です。僕らのことも細やかに気にかけてくださいます。前回も終演後、僕が最後に少し残り、お辞儀をしてハケるのですが、絶対に袖で待っていてくださったんです。僕を『主演だから』と立ててくださる、その心遣いが本当にステキだなと感じ入りましたし、だからこそ芸能界という荒波の中でずっと輝き続けておられるのだなと思いました。
ねこ娘役の上坂(すみれ)さんは前回が初舞台&初アクションだったそうで、普段は声のお仕事が中心で動くことにあまり慣れていないとのことでしたが、自分の弱点を克服しようと、いろいろな方に殺陣のやりかたやポージングのことを聞く一生懸命な姿が印象に残っています」
―――荒牧さんが考える、『ゲゲゲの鬼太郎』という作品の魅力とは?
「妖怪は昔から日本人と共に生きてきた、とても身近な存在だと思います。僕の友人にも、実は水木しげる先生の妖怪ファンがいて驚いたのですが、それぐらい『ゲゲゲの鬼太郎』は多くの人の中に根付いていて、愛されているんだなと実感しました。『鬼太郎』作品の魅力は、時代が変われば妖怪も起こる事件も変わり、そこに社会風刺を交えているところだと思っています。
キャラクターとしては、僕、昔からねずみ男が好きで(笑)。問題児なので腹が立つ部分もありますが、彼がいるからこそ『鬼太郎』の物語が転がっていくんですよね。もちろん、鬼太郎も好きです。それから、キジムナーも! マスコットっぽい感じがかわいいなと思っていました」

―――今回の脚本・演出を手掛けるのは堤泰之さんです。堤さんの現場、どのような点を楽しみにしていますか?
「堤さんに舞台を演出していただくのは、今回が初めて。2022年版とはまた違った作風になるだろうなと、期待しかありません! 僕は演出家の方とやりとりをするのが好きなので、今回も堤さんが言ってくださることを大切にしつつ、僕からも提案やフィードバックができればと思っています」
―――アニメや映画など、さまざまなメディアミックスで親しまれている“鬼太郎”ですが、舞台版の見どころは?
「舞台は人間が空気感を作り、その場で今、演じているというのが素晴らしいところだと思っています。僕らだけでなく、お客様も空気を作ってくれて、それを共有できるのが僕はとても好きなんです。今回も笑いやちょっと怖い場面、緊張するところなど、五感で楽しんでもらえるはず!」
―――公演CMもたくさん放映されていますね!
「すごいですよね。みんなから言われます(笑)。鬼太郎のビジュアルもグレードアップして、ちゃんちゃんこがより派手に、ウィッグもより僕に似合うようにと新たに製作してくださいました。前髪がさらにスタイリッシュになり、それぞれが上を目指しているなと嬉しくなりました」
―――本作で、お客様に楽しみにしてもらいたいポイントはどこでしょうか?
「視覚的なところでいうと、やはり殺陣などショウアップした部分。それから、鬼太郎ならではの世界観も楽しみにしていただけたらと思っています。少し妖しく、言葉を選ばずにいうとグロさもしっかり表現するのが『ゲゲゲの鬼太郎』の持ち味だと思っています。
水木先生の作品は『人間ってクソだな』というところで完結することが多いのですが、僕はそういう部分にも魅力を感じるんです。僕は人間が好きですし、人間の存在に光を感じていますが、同じように闇もあると思っていて、そういう闇の部分も包み隠さずに出すところがいいなと。そして、決して妖怪が“悪”なわけではなく、妖怪も人間も自分たちのエゴで生きているのだという視点が『ゲゲゲの鬼太郎』ならではだと思います。水木先生が作品を通して伝えたかったことは、この舞台でもしっかり継承されていくと思います。
昨年、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が上映され、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズへの注目度が上がっているのを感じます。僕らキャストのファンはもちろん、“ゲ謎”で魅力を感じてくださった方も、世界観は繋がっているので、新たな“鬼太郎”作品を楽しみにしていてください!」
(取材・文:木下千寿 撮影:間野真由美)

※本インタビューは「カンフェティ」2025年8月号掲載の記事を、関西版Vol.10発行に伴い、ロングインタビューとして再編集したものです。
プロフィール

荒牧慶彦(あらまき・よしひこ)
2月5日生まれ、東京都出身。舞台『刀剣乱舞』シリーズ 山姥切国広役や『あんさんぶるスターズ! THE STAGE』シリーズ 朔間凛月役など、人気作品に出演する他、舞台プロデューサーとしても活躍の場をひろげ、ドラマやバラエティ番組にも多数出演。
公演情報
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舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』
【東京公演】
日:2025年8月2日(土)~16日(土)
場:明治座
料:S席[1階席・2階席正面] 土日14,000円 平日13,000円
S席こども料金[1階左右上段席、平日12:00公演のみ]6,500円
A席[2階席左右] 土日9,000円 平日8,000円
B席[3階席] 土日6,500円 平日5,500円
(全席指定・税込)
問:明治座チケットセンター
tel.03-3666-6666(10:00~17:00)
【大阪公演】
日:2025年8月21日(木)~25日(月)
場:新歌舞伎座
料:S席[1階・2階正面]14,000円
A席[2階左右]9,000円
B席[3階]6,500円(全席指定・税込)
問:新歌舞伎座テレホン予約センター
tel.06-7730-2222