
佐々木三夏率いる大和シティー・バレエ(YCB)が、この夏『いばら姫』を世界初演する。本作はバレエとコンテンポラリーダンス(コンテ)で描く新作で、佐々木と大和シティー・ダンス常任振付家の竹内春美が共同振付を手掛けている。
佐々木「クラシックバレエでは、ペローの童話をもとに『眠れる森の美女』として描かれることが多いですが、今回はグリム童話をベースに、書き下ろしのオリジナル脚本で新たな世界観をお届けします。マイムは使わず、振付もクラシックとはひと味違うスタイルに。誰も見たことのない『いばら姫』の世界へ誘います」
竹内「ダンサーによっては、さっき靴下でコンテを踊っていたのに、今度はポワントでバレエを踊っているなんてことも出てきます。同じ瞬間にバレエとコンテが混在する作品になっていて、そこが新しいところですね」
主演はハンブルク・バレエ団プリンシパルの菅井円加と、イングリッシュ・ナショナル・バレエ ソリストの大谷遥陽。かつて佐々木のもとで同時期に学んだ2人が、Wキャストで踊る。佐々木「2人とも絶対にクラスを休まない子たちでした。“できない自分が許せない”という意識を感じましたね。今回2人はコンテとバレエを両方踊ります。両方できる2人なので、表現も活きてくると思います」
キーパーソンのカエルを踊るのは、YCBの古尾谷莉奈。
古尾谷「カエルと言われて最初は驚きました(笑)。振りにしても、匍匐前進したり、ポワントでスライドしたり、クラシックではしないようなことが多くて」
竹内「バレエにはない登場人物がいくつか出てきて、その1つがカエル。ヨーロッパではカエルは幸運の象徴とされているそうです。作中はカエルが100年前と後の世界を生き続け、時を超えた物語を繋ぐストーリーテラー的な存在です。それを託せるのが莉奈でした」
古尾谷「春美さんの振付は、物語が想像でき、役が伝わる振付が多く、観る人もイメージしやすいと思います。すごくパワフルで、踊りがいがあります」
古典でお馴染みの寓話を題材に、これまでにない作品を創り上げる。そこに込める想いとは。
佐々木「私自身が観たことのない作品を観てみたい。ただ観たこともないものを作っていきたい、というシンプルな想いがあって。そのためにも、これまで培ってきたバレエとコンテを生かし、どうしたら新しいものができるか模索する。今回は1つの新しいチャレンジだと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

佐々木三夏(ささき・みか)
佐々木三夏バレエアカデミー主宰。山路瑠美子に師事。全国舞踊コンクール第1位。『くるみ割り人形』、『白鳥の湖』、『ジゼル』他、多くの古典作品の主役を踊る。また指導者として、全国舞踊コンクール 指導者大賞をはじめ、数々の賞を受賞。

竹内春美(たけうち・はるみ)
2003年〜2005年、オーストラリア ナショナル・シアター・バレエ・スクールに留学。2010年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりドイツヘッセン州立劇場ヴィースバーデンバレエで研修。2012年、ドイツ レーゲンスブルク歌劇場ダンスカンパニーにソリストとして所属。2019年、退団。2023年より大和シティー・ダンス(YCD)のディレクター兼常任振付家となる。

古尾谷莉奈(ふるおや・りな)
2012年、佐々木三夏バレエアカデミー入所。2016年よりSBAジュニアカンパニー、大和シティー・バレエ公演に出演。2018年、クリスマス公演『くるみ割り人形』全幕で金平糖の精を踊る。2020年より大和シティー・バレエに所属。2021年、全国舞踊コンクール第5位、埼玉全国舞踊コンクール第1位。
公演情報

Yamato City Ballet Summer Concert 2025
想像×創造 vol.6『いばら姫』
日:2025年8月11日(月・祝)
場:大和市文化創造拠点シリウス
やまと芸術文化ホール メインホール
料:+S席8,800円 S席6,600円 A席5,500円
B席4,400円(全席指定・税込)
HP:https://www.ycb-ballet.com/2025summer
問:大和シティー・バレエ
tel.050-1310-7318(10:00~19:00)