日本発オリジナルミュージカルの傑作『四月は君の嘘』待望の再演 フレッシュなカンパニーと共に作品の魅力を伝えたい!

日本発オリジナルミュージカルの傑作『四月は君の嘘』待望の再演 フレッシュなカンパニーと共に作品の魅力を伝えたい!

 2022年、日生劇場で初演の幕を開けた日本発のオリジナルミュージカル『四月は君の嘘』。2024年、ロンドン ウエスト・エンド、韓国 ソウルでの現地プロダクションによる上演という快挙を経て、今年8月に昭和女子大学人見記念講堂で、待望となる再演の幕を開ける。

 原作は新川直司の同名コミック。主人公・有馬公生は、数々のピアノコンクールで優勝し神童と称えられていたが、母の死をきっかけに自分が演奏するピアノの音が聴こえなくなってしまう。一度ピアノから遠ざかった公生だが、ヴァイオリニスト・宮園かをりと出会い、再び音楽と向き合っていく――。高校生たちの友情や恋、そして切ない別れを描いて大ヒットした作品だ。

 そんなコミックの魅力を、作詞・作曲を担うミュージカル界のヒットメーカー フランク・ワイルドホーンが、キャッチーで美しく、また多彩な楽曲の数々で十全に引き出し、オリジナルミュージカルも高い評価を得た。

 今回、有馬公生を演じる岡宮来夢が、新たな作品に臨む意気込みを、作品の世界観を見事に写し撮ったビジュアル撮影時のエピソードから語ってくれた。

 「めっちや青春だ~!と感じる撮影でした。僕は中学が学ランの制服で、高校は私服だったので、まず制服を着ること自体が15歳以来でした。しかも、ブレザーの制服も初めてで、すごくそわそわして(笑)。実際に学校に行って撮影したのですが、屋上にも上がらせていただいて、牛乳を飲みながらイヤホンをして楽譜を読むシチュエーションなど、もう楽しくて楽しくて。雲1つない青天で、屋上で寝っ転がったのも、本当に気持ち良かったです。メインビジュアルの4人で写っている写真も、なんでこんなに笑っていられるんだろうと思うくらい、みんなでずっと笑っていました。

 加藤梨里香さんとは一度ご挨拶をさせていただいたことがあるのですが、希水しおさん・吉原雅斗さんとはこの日が初めましてだったのに、本当に楽しく過ごせましたし、みんな役にぴったりですごいなと思いながら見ていました。4役が全員Wキャストなので、それぞれの組み合わせが変化していきますから、どの組み合わせでも楽しんでいただけるように、一丸となってやっていきたいです」

 日本の高校生に扮した撮影を存分に楽しんだことが伝わる話をしてくれた岡宮は、取材時(※4月中旬)明治座で絶賛上演中だった『1789 -パスティーユの恋人たち-』で、啓蒙思想に目覚める民衆を代表したロナン・マズリエ役を熱演。1789年のフランスと現代日本を描く舞台で、感じる違いはどんなものなのだろう。

 「『1789 -バスティーユの恋人たち-』は本当にエネルギッシュな作品で、全員で命を削りながら舞台に立っているという感覚があります。命を懸けて人権を勝ち得た人たちを描いているので、僕らが発するエネルギーから、そのパッションがしっかりにじみ出るように演じていきたいという気持ちが一番強いです。

 ロナンの父親が、重い税負担に苦しんでいるなか不当に逮捕され、理不尽に殺されてしまうところから物語が始まるので、僕が演じるロナンは父親の仇を取りたい一心でパリに向かいます。でも、そこで不平等な世の中そのものを正そうとする仲間を得て、もっと大きな敵がいることに気づいていき、革命を志すようになるんです。ただ、ロナンにとっては全てが知らなかった世界なので、多くの情報を得ることによって成長していくのですが、その時々で生まれた感情の処理ができずに気持ちが揺れ動き、ブレる瞬間も多いんですね。特にオランプと恋に落ちてからは、革命と恋の両方に心が引っ張られて、どちらも大切なだけに悩みます。そういうところがすごく人間的ですし、フランス大革命が成就したのは、ロベスピエールやデムーランなど後世に名を遺す革命家たちだけの力ではなく、ロナンのような名もなき民衆の一人ひとりの力が集結したからこそなんだ、ということを描いている作品なので、僕自身が体当たりで役にぶつかっていく一生懸命な姿とロナンがうまく重なっていけばいいな、と思っています。

 そんな、命を懸けて戦っていた時代から、今回『四月は君の嘘』で演じさせていただく、現代の日本の高校生の有馬公生が生きている世界へと向かうことは、僕のなかでもすごくリアリティを感じられるんです。特にこの作品は、僕にとって本当に大好きなミュージカルの1つで、日生劇場での初演も拝見していますし、韓国での上演も観に行きました。やっぱり桜並木、公園、ジャングルジムなど次々に出てくる情景が全て『知ってる、知ってる』と思える世界観なんですよね。そういう日本から生まれた作品ならではの親しみやすさがあるので、もちろんフィクションなんですけど、ノンフィクションを演じるくらいの気持ちで作品に臨みたいなと思っています。

 なかでも公生が歌う最初のナンバー『僕にピアノが聞こえないなら』は、1曲目にしてとてもハイカロリーな楽曲なんです。実は僕も野球をやっていたんですが、挫折してしまって。これ以上続けていたら野球を嫌いになってしまうと思ってやめた、という経験があるんです。公生の挫折の理由はまた違うものですが、それでも本当に好きだったものを嫌いになる前にやめるというのも、1つの大事な選択だと思うんです。一方で、僕は今ありがたいことにこうして舞台のお仕事、ミュージカルで歌う経験をたくさん積ませていただけていて、元々歌も大好きです。でも、カラオケで楽しく歌っていた時と、作品や役をお客様に届ける責任を持って舞台で歌うのとでは、当然ですがわけが違います。ですから、幼い頃からプロの演奏家を目指した公生の悩みや苦しみに、共感できることがたくさんあるので、公生を演じられることは今からとても楽しみです」

 早くも作品や演じる役柄への理解を深めていることが伝わる岡宮に、ワイルドホーン楽曲の魅力、更に『The Fantasticks』で共に作品を紡いだ演出の上田一豪との稽古についても訊いてみた。

 「ワイルドホーンさんが書かれるミュージカルナンバーは繊細で美しい、というのが最初のイメージでしたが、いざ歌うとなると難しい曲が多いんです。でも最後のナンバー『君が聞こえる』のイントロは幕開きでも使われていて、そのイントロだけで僕は泣けてしまうくらい心に沁みるメロディなので、しっかり歌えるようになりたいです。特にワイルドホーンさんの楽曲って“春”そのものだったり文化祭のキラキラした情景だったりを、不思議なくらい見事に音楽として捉えていて、本当にアメリカの方ですか?と思うほど、日本の空気感を表現してくださっているんです。それだけでなく、先ほどもお話しした冒頭の『僕にピアノが聞こえないなら』や、加藤さんと宮本佳林さんが演じる宮園かをりちゃんと歌う『君がわからない』をはじめ、どの曲にも強いメッセージ性があるので、皆様にきちんとお届けしたいです。

 演出の上田一豪さんは朗らかで、温かくみんなを包んでくださる方です。『The Fantasticks』の稽古場もとても居心地がよくて本当に楽しい稽古だったので、またご一緒できることがとても嬉しいですし、今回は全員が若いフレッシュなカンパニーですから、座長としてみんなを引っ張っていけるように、僕もワクワクしながら頑張ります。是非皆様も遊びにくるような気持ちで劇場にいらして下さい!」

(取材・文:橘 涼香 撮影:友澤綾乃 スタイリング:深澤勇太)

プロフィール

岡宮来夢(おかみや・くるむ)
1998年4⽉23⽇生まれ、長野県出身。2015年、第28回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞。主な出演作に、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、『進撃の巨人』-the Musical-、ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』、『The Fantasticks』、『ロミオ&ジュリエット』などがある。

衣装:ジャケット 64,900円 パンツ 52,800円(ジャンピエール/問:アドナスト 03-5456-5821) カットソー 5,280円(アイバー/問:シアンPR 03-6662-5525) ※その他スタイリスト私物

公演情報

ミュージカル『四月は君の嘘』

日:2025年8月23日(土)~9月5日(金)
  ※他、地方公演あり
場:昭和女子大学人見記念講堂
料:S席14,000円 A席9,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.tohostage.com/kimiuso/
問:東宝テレザーブ tel.0570-00-7777

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