この夏世界初演!  金森穣最新作『アルルの女』 舞踊家の身体で語るいびつな家族の物語

この夏世界初演!  金森穣最新作『アルルの女』 舞踊家の身体で語るいびつな家族の物語

 Noism Company Niigataが、この夏『アルルの女』を上演する。ビゼーの楽曲とドーデの戯曲をもとに、金森穣が描く音楽劇だ。フレデリ役の糸川祐希、母親役の井関佐和子、祖父役の山田勇気、婚約者 ヴィヴェット役の三好綾音の、主要キャストを務める4者に話を聞いた。

井関「私は母親役だけど、母親と思ってやってはなくて。彼女はフレデリを溺愛しすぎて、共依存してる。不健康な家族の姿がそこで浮き彫りになるという」

三好「母親に邪魔されるから、フレデリと2人きりになるシーンが1つもないんですよね(笑)」

井関「でも母親は邪魔したとも思ってないから面白い(笑)」

三好「ヴィヴェットはこのおかしな家族に翻弄されながら、健気にフレデリのことを思っている。それをどう表現するか……」

山田「僕はまず穣さんから小道具に刀を渡され、そこから意味を考えていきました。祖父は恐らく懐古主義。何も変わってほしくないと思っているのではと」

糸川「メインキャストということで、プレッシャーが大きくて。祖父がフレデリに刀の稽古をするシーンでは、彼はそれを快く思っていないのではと考えたり、色々模索しているところです」

 演劇色の強い作品で、そこが最大の課題だと口を揃える。

井関「演劇と舞踊が交わる作品が一番難しい。演劇にある日常の要素は舞踊にはNGで、でも非日常になりすぎて感情がないと伝わらない。そのギリギリの線を追究してる感じでしょうか」

糸川「踊り以前の所作だったり、振付に及ばないものが多く、その部分が大切だと感じています」

山田「ちょっとした目線、表情で、言葉で語れないものを発していく。正解が未だに見えないですね」

糸川「セリフがない分、どうすればお客さんに役の感情や物語の核の部分を伝えられるか……」

三好「すごく難しいけれど、最近表現することが楽しくなってきて、踊りで言葉を伝えたいという欲が出てきました。その欲を自分自身うまく使いこなせたら、という気持ちでいます」

 舞踊家の身体で物語を語り、そこに立ち現れるものとは――。

井関「実は、金森版は通常の『アルルの女』とは結末が違う。オリジナルになっています」

山田「自分が創るからには普通の『アルルの女』にはならない、と穣さんも最初に宣言していて」

井関「金森穣が演劇的な作品を創る、いい意味の違和感があって、それをどう体現するか。今までにない劇的かつ抽象的な作品をお届けできると思います!」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:遠藤 龍)

「1日限定で変身出来るとしたら、何に変身しますか?」

井関佐和子さん
「大谷翔平選手。旦那が大ファンなので、変身して目の前でホームランを打ってあげたい。もちろん投球も! 個人的には彼がどの様な精神状態でバッターボックスに立っているのか感じてみたい」

山田勇気さん
「イルカとか、鳥とか。魚もいいですね。えら呼吸感じてみたい。海とか、空とか普段とは少し違った場所を自由に移動してみるのはいいですね。気持ちよさそうに見えるけど、実際どうなんだろう。身体使いも驚きの連続だろうなと。それか、インドの数学者・ラマヌジャンになって、そのひらめきを体感してみる。数学への憧れがあるので、1日だけでも天才の頭脳で数学の世界に没頭してみたい、とか、マイルス・デイビスやドストエフスキーとか、たくさんあって絞れませんでした」

三好綾音さん
「花。花は妬み嫉み僻みなく与える存在だから美しいそうです。その魂で1日を過ごしてみたいです」

糸川祐希さん
「1日限定であれば馬に変身してみたいです。少し前に人生で初めて競馬場に行ったのですが、そこで生で見た馬の走り姿がとても速くて美しかったのが目に焼き付いていて、自分もあんな風に芝生を思い切り駆けることが出来たら気持ちいいだろうなと思いました」

プロフィール

撮影:松崎典樹

井関佐和子(いせき・さわこ)
ルードラ・ベジャール・ローザンヌでモーリス・ベジャールらに師事。ネザーランド・ダンス・シアターⅡ、クルベルグ・バレエを経て、04年にNoismの結成メンバーとなる。22年よりNoism Company Niigata国際活動部門芸術監督。第38回ニムラ舞踊賞、第71回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

撮影:松崎典樹

山田勇気(やまだ・ゆうき)
北海道教育大学函館校にて清水フミヒトに出会い、ダンスを始める。05年、Noismに入団。退団後、武道家・日野 晃に学ぶ。22年よりNoism Company Niigata地域活動部門芸術監督。

撮影:松崎典樹

三好綾音(みよし・りお
4歳よりバレエを始める。Aki Ballet Groupにて宇佐見亜希、Piotr Nardelli、原田公司、中野綾子らに師事。12〜16年、Japan International Youth Balletに所属。20年よりNoism1所属。

撮影:松崎典樹

糸川祐希(いとかわ・ゆうき)
3歳よりコスモスダンススタジオにて大貫由紀子、花輪麻美に師事。15年より東京バレエ学校で学び、18年にIdyllwild Artsへ留学。帰国後、服部彩子バレエクラスで服部彩子に師事。22年、Noism1所属。

公演情報

Noism0+Noism1『アルルの女』 / 『ボレロ』

日:2025年7月11日(金)~13日(日)
  ※他、新潟公演あり
場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
料:一般6,000円 U25[25歳以下]3,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://noism.jp/noism0-noism1larlesienne-bolero/
問:りゅーとぴあ チケット専用ダイヤル
  tel.025-224-5521
   (11:00~19:00/休館日除く)

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