小劇場だから感じられる迫力と濃密な芝居を存分に楽しんで 話題作をブラッシュアップし、新たなキャストとともに新たな作品を組み立てる

小劇場だから感じられる迫力と濃密な芝居を存分に楽しんで 話題作をブラッシュアップし、新たなキャストとともに新たな作品を組み立てる

 演劇プロデュースユニット Asterism⁂(アステリズム)が2016年に上演し、話題を呼んだ『Judgment Day』。ある連続殺人事件を担当する刑事たちを中心に繰り広げられる濃厚なサスペンスに加筆修正を加え、新キャストを迎えた2024年版『THE JUDGMENT DAY』が、3月1日(金)よりシアターグリーンBOX in BOX Theaterで上演される。
 主演の日向野祥と演出・出演の樋口夢祈に話を聞いた。

―――まずは意気込みを教えてください。

樋口「今回は再演ですが、この作品はAsterism⁂という団体の中で1、2を争う問題作です。お客さんの中で賛否両論があるというか、どちらが正義か観る方によって明確に分かれる作品。感情論と理想論でぐちゃぐちゃになる結末です。
 初演の時は50分くらいの上演時間でしたが、今回は加筆修正されて1時間くらいになり、キャラクターの深掘りができると思います。2024年に新しくなった『THE JUDGMENT DAY』がどう伝わるのか楽しみですし、いい作品を作りたいと思っています」

日向野「2016年に上演された作品ですが、時が経てば時代や人の価値観も変わっていると思います。そういった部分を新たな要素として盛り込みつつ、人間の奥底にあるもの、汚い部分を詰め込んだ作品になっていると伺っています。それを舞台上で表現することで、観ている方の共感を呼べるものもあると思う。何に共感するかは人によって違うと思いますが、その中で新しい考えを見出してもらえる作品にしたいです。僕としては、ドロドロした話が好きなのでそこもワクワクしますね」

―――お二人が演じる役について教えてください。

樋口「僕が演じるのは藍原という刑事。実はこのキャラクターはAsterism⁂作品で3作くらいに登場しています。今回は藍原が刑事として1つの事件を解決するけど、果たしてそれは解決と言えるのか。警察のあり方としては解決になっているけど、感情論や理想論としてはそれでいいのかというストーリーです。
 相棒に当たるキャラクターがちょっとポンコツで、呼んではいけない人まで呼んでしまって署内で波乱が起きる、ワンシチュエーションに近い芝居。セットについてはまだ打ち合わせ中ですが、シンプルに椅子が5つだけでもいいかなと思っています」

日向野「僕が演じる宇野は人間の本質が1番垣間見える人物なのかなと思います。客観的に見える表側の人間像ではなく、奥底にある部分を感じてもらえたら。ただ、これは難しいところで、お芝居って答えを全部やればやるほど薄く見えてしまうけど、セリフの裏やサブテキストに様々な要素が見えると深みが出てくると思います。僕がどれだけ出せるかで作品の深みも変わっていくと思いますが、とにかく『上部に騙されるな』というところですね。彼が抱える闇はどんなものなのか、感じて欲しいと思います」

樋口「特徴として、Asterism⁂は80年代の演劇テイストだと思う。喋るのが速いし熱量があって、難しいことを言っているけど聞かせるというより当たり前のように頭が良い人同士が論戦し合うみたいな。一瞬で1時間が終わる」

日向野「確かに、1時間って短く感じますよね。最近は長い作品が多いから」

樋口「上演時間が2~3時間が主流の中で、ハーフタイムシアターみたいに濃厚なものをぎゅっと詰め込むスタイルです。円盤化もされず、ザ・小劇場でお芝居が好きな人に向けて作っています。初心者向けではないけど、初心者が観ても楽しい。短編小説を読んだみたいな感覚になると思う」

日向野「いいですね。いい意味で今時じゃない感じ」

樋口「この作品はみんな衣装が違うけど、普段は衣装も同じ。普通の服装の人たちがお客さんと近い距離で芝居をする。そして1日3公演の日もありますよね」

日向野「ありました。一瞬間違えてるのかと思った(笑)」

樋口「マチネとソワレの間の公演はジュルネっていうらしいよ」

日向野「え、本当に? ジュルネ。覚えよう」

樋口「お客さんに教えてもらった。土日で6公演やることもあるから、1公演1時間でも疲れ具合は変わらない。舞台に1回出るとはけられないから、小道具を忘れたら終わりです(笑)」

―――2016年に上演した『Judgment Day』を加筆修正して上演とのことですが、今回演出を変えようと思っている部分はありますか?

樋口「キャストは僕以外全員変わっているので、自然に変わるかと思います。8年も経っているので、僕が演じるキャラクターの年齢が上がっていました(笑)。あとは時代に合わせて細かな調整も入ります。
 ただ、作品の本質は何も変わりません。命の天秤がテーマで、言っていたことが覆る瞬間が作中にたくさんあります。一部屋で繰り広げられる物語だからこそ人間の表情に注目してほしいし、小劇場だからしっかり見られると思います。資料を見たらイケメンがいっぱいでね。びっくりしました」

日向野「皆さん元々知ってる方なんですか?」

樋口「半分くらいは一緒にやったことあるけど、半分は初めまして。ドキドキしています」

日向野「関係ない話になるんですけど、樋口さんは緊張とかするんですか?」

樋口「するよ! 知らない俳優に囲まれるんだもん。どうやって話せばいいだろうって」

日向野「そうなんだ。樋口さんの第一印象は、すごく爽やかな笑顔で『おはよう!』って言ってくれる人だったから意外です」

樋口「(笑)。なんの話だっけ。演出は大きく変えるつもりはないです。キャストに合わせて、全員が色気のあるキャラクターになったらいいなと。8年前の公演を見ている人はどれだけいらっしゃるか……」

―――お二人はGEKIIKEの『漆黒ノ戰花-再演-』でご一緒されていましたよね。お互いの印象はどうですか?

日向野「演出している時は、他の演出家が気づかないところ、言ってくれないところを言ってくれると感じました。当たり前のことって段々言われなくなっていくけど、樋口さんは当たり前のことをできるようにしてくれる。
 教えてくれる言葉も丁寧ですし、『違う』だけじゃなくて『なんで違うか』、『どうしたらいいのか』を体現してくれるし言葉にもしてくれるんです。それがすごく素敵だなと感じるし、作品に対する愛があってこそだと思います。役者への愛もそうだし、樋口さん自身も役者をやっているので役者の気持ちをわかってくれていると感じます。
 今回はGEKIIKEさんではないけど演出は樋口さんなので、前回を超えた一面を見せたいと思います」

樋口「照れくさいですね(笑)。日向野くんはここ数年で出会った俳優の中でトップクラスにいい俳優だと思います。トータルのバランスがすごくいい。
 声量とか身体能力、ダンス、歌と様々なスキルがある中で、純粋な役者としてのスキルが足りていない人が増えていると感じるんです。日向野くんは声量や大きい動きなど、舞台俳優として当たり前の能力がある上で、殺陣やダンス、歌唱といった今の俳優に求められるスキルもしっかり持っている。すごい俳優だと思います。
 前回は作中で少ししか絡まなかったけど今回は結構絡むので楽しみですね。演出家という感覚があまりなく、プレイヤー目線で考えてお客さんが楽しめるものを作っていますが、コロナ禍で若い子が先輩から技術的なことを教わる機会が減ったのが1番の問題だと思っています。僕はしばらく石垣島に引きこもっていて、東京で起こっていたことを知らない。コロナ禍前の演劇をもう一度持ち込んで、みんなに伝えられたらと思っています。
 あと、日向野くんとは演出という仕事を抜きにしてプレイヤー同士として勝負してみたいですね。『漆黒ノ戰花』も楽しかったですから。今回も演出としてというよりプレイヤー目線で直接ぶつかってセリフの掛け合いをしていけたらいいなと思っています」

―――ビジュアル撮影では、何かディレクションはありましたか?

日向野「こういうキャラだからというのは特になく、色々な表情とポージングで撮っていただきました。稽古の中で作っていくことになると思います」

樋口「それもありますし、この作品自体、白・黒・グレーなので。できることなら、見終えた後、隣の席に座っていた人とかとお酒を飲みながら語ってもらえたら嬉しいです。1時間の公演なので、パッと見て近くのカフェとかで『私はこう思う』、『俺はこう思った』と話してもらえたら。誰の発言が胸に刺さるかも人によると思います」

―――顔合わせ前だとは思いますが、稽古で楽しみなことがあったら教えてください。

日向野「知っているキャストさんは樋口さんを除いて1人くらい。ほぼ初めましてなので、みんながどんなお芝居をするかもわかりません。まずは台本を読んで、自分に落とし込むところからですね。そういう意味で楽しみです」

樋口「1つ言うなら、稽古時間が短いんです。普通なら自分が出てくるシーンと演出で分けられるけど、この作品はずっと舞台上にいるから(笑)。演出卓に誰もいない状態になって、演出をしているというよりみんなと一緒に作っていくことになります。集中力が求められるので8時間の稽古とかはできない。誰かが疲れると失速して、稽古を続けてもだらけちゃう。その時は3時間くらいでスパッと終わることもあります」

日向野「短期集中ですね」

樋口「あとはよくみんなで遊んでる。稽古場でUNOとか人狼とかトランプとか」

日向野「へー」

樋口「会話のスピード力と目線を取るレベルを上げるためにね。グループ力が強まるし、やっているうちにみんなの性格や空気感がわかってくる。稽古よりゲームの時間が長いこともあるけど、その後の稽古はみんなすごく良くなったりするんですよね」

―――日向野さんは座長として、樋口さんは唯一の初演経験者として、稽古場でこうしよう、こういうポジションでいようと考えていることはありますか?

日向野「とにかくできることを、といってしまうとおざなりですが、トライすることはやめたくないです。最終的にはお客さんに見ていただくものなので、喜んでいただくのが一番。ただ、泣かせるだけが感動じゃない。心が動く作品になるように取り組みたいです。座長だからというわけではなく、樋口さん含めたみんなで一丸となってぶつかっていけたらと思っています」

樋口「プレイヤーでいられたらいいかなと思っています。演出家として偉そうに指示を出すんじゃなく、同じ目線で。舞台上に年上の演出家がいると思わせないように、お兄ちゃん的な立場でフランクに話し合えたら。あとはできることならみんなでご飯に行きたいですね(笑)」

日向野「行きたい。人数も少ないですし」

―――見る人によって受け取り方が変わる作品ということですが、改めてこの作品を初めて観る方に向けたアピールポイントを教えてください。

樋口「2.5次元舞台を見慣れている人からすると見慣れない舞台だと思います。推理小説を読んでいるような感覚になるんじゃないかな。そして、演劇の良さと若手俳優のかっこよさが共存する舞台です。お客さんによく言われるのは、『こういう芝居が見たかった』ということ。物語に入りやすいですし、1時間だから気軽に来てほしいですね。他の舞台とハシゴもできるので、気楽に見て感想を話して、池袋の街を楽しんでもらえたら。一緒に見た人同士はもちろんSNSでも、それぞれが感じたことを話し合ってほしいです」

日向野「樋口さんは作品の内容について話してくれたので、僕は小劇場の空間について話します。やっぱりお客様との距離が近いので、瞬きや汗の意味、手が震えているとかも見える。当たり前だけど気が抜けないし、舞台の端っこにいても常に見られています。演劇の良さが存分に味わえると思うので、ぜひ注目してほしいです。シンプルなセットや衣装だからこそ、役者の技量や、作品にぶつかっていく姿勢で勝負するしかない。そこを見てもらえたら嬉しいですね」

―――最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。

樋口「再演を希望されていながらずっとやってこなかった作品です。Asterism⁂は絶対に円盤にならないので、今回見逃したら数年、下手したらこの先見ることができない作品だと思います。それが演劇の良さであり一期一会なので、ぜひ劇場で楽しんでもらえたらと思います」

日向野「僕ももちろん劇場に来ていただきたいです。笑って泣ける痛快コメディではなく、重たい題材を扱っていますし、100人が見たら100通りの受け取り方があると思います。劇場も出演者の数やセットを踏まえて、“演劇”を感じてもらえる作品を1時間の中に存分に詰め込みます。貴重な1時間、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

日向野 祥(ひがの・しょう)
1991年1月19日生まれ、神奈川県出身。舞台を中心に、映画・ドラマなど幅広く活躍。主な出演に、2.5次元ダンスライブ『SQ(スケア)』ステージ、舞台『夜明けのうた』、『COLOR CROW』シリーズ、『殺人の告白』、『信長未満- 転生光秀が倒せない-』など。

樋口夢祈(ひぐち・ゆき)
1984年12月22日生まれ、千葉県出身。俳優・演出家として活躍しているほか、演劇集団GEKIIKEのメンバーでもある。主な出演作に、舞台『止まれない12人』、進戯団 夢命クラシックス×07th Expansion vol.5『ROSE GUNS DAYS~Last Season~』など。GEKIIKE、Asterism⁂を中心に、様々な作品の演出も手掛けている。

公演情報

Asterism⁂ vol,08『THE JUDGMENT DAY』

日:2024年3月1日(金)〜10日(日)
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:前売6,800円 当日7,300円(全席指定・税込)
HP:https://asterism-info.jimdofree.com
問:スタービートエンターテイメント
  tel.03-6868-4762(平日11:00~20:00)

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